Vibes Star   作:Crina

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 燐舞曲イベ疲れた


2-13話 PV撮影

 リリリリにDJ指導をした日から数日、スピカはある場所にキャンサーとボーカルを担当した歌い手と来ていた。撮影を見学したいからとフォトンの4人も来ていた。暗くて誰もいない廃墟のような雰囲気を醸し出している場所で朝からPV撮影が行われていた。今はちょうど午前中の撮影が終わり、お昼休憩に入った所だった。

「お疲れヴァルゴ、初めてのPV撮影は大変だろう?昼飯取ってきたから食べな」

「ありがとうございますキャンサーさん、初めてのことで緊張はしていましたけど、良くはなっているとは思いますよ」

「だな、調整役を任せて良かったと思うよ。それに、またヴァルゴのトラックメイク更に上手くなってきているね」

 お昼休憩はキャンサーと今回のツアーアンセムのトラックメイクで話が弾み、気がつけばお昼休憩はとっくに終わってしまっていた。折角だから衣舞紀達にも撮影している時の雰囲気やツアーアンセムの感想を聞いてみたかったが、それは帰る時に取っておこうと思い午後からのPV撮影に気合いを入れなおした。

 

 撮影中のスピカはというと、物凄く真剣で、納得いかないところは何度も取り直してまで納得がいくテイクを撮っていた。その状況を見ていた衣舞紀達はスピカが普段しない顔をしていて、スピカが本当にプロのトラックメイカー集団のメンバーだと再確認していた。その時のことを咲姫は共感覚で見ていて、スピカがいつも出している心地の良い蒼い色をした雰囲気を出してはおらず、紫に近い色をしており、寧ろスピカの姿をずっと見ていた。

「今のカット見せてもらっても構いません?」

「了解です。どうぞ」

「..........よし、今のシーンはこのテイクでお願いします」

 

 キャンサーはというと、撮影慣れしているのか、緊張しているような顔はしておらず、撮影担当がOKとなればシーンは終わりという形でサクサクと終わっていた。二人で取るシーンではスピカに付き合う形で何度もシーンを取り直すことが多かったが、納得がいくまで撮りなおすスピカの姿に驚きの顔を何度かした。その時、キャンサーはスピカをStardustに迎い入れた時を思い出していた。スピカとキャンサーとの出会いはスピカがまだ中学3年生の時、当時無名でM4(実際ではM3)に別のレーベルのメンバーとして活動していたスピカを見つけ、当時のスピカの曲を聴いて衝撃が走った。無名では惜しいくらいの曲の出来上がりだったこともあってM4が終わった時にスピカに声をかけて夕食を誘った。その時の夕食の時にキャンサーはスピカにこう言っていたのだ。

「君の実力を腐らせるわけにはいかない。だからさ、俺達Stardustに君を引き入れたいんだ。ヴァルゴが良かったらこの電話番号に連絡入れてよ。リーダーのアリエスに相談するからさ」

 

 スピカもPV撮影の休憩中にキャンサーに誘われたことを思い出していた。あの誘い文句を言われ、レーベル移籍に相当悩んではいたが、それを後押ししてくれたのは間違いなく幼馴染であるデネボラ、そして当時まだ近くに住んでいたアルタイルの二人だった。デネボラに至っては兄にStardustで活動をしているレオことレグがいたこともあって悩んでいた当時のスピカを後押ししてくれたおかげで今こうしてStardustのメンバーとして活動をしているのだからデネボラとアルタイル、そして引き抜きを考えたキャンサーに頭が上がらなかった。

「...あの時キャンサーさんが誘ってくれなかったら今こうして活動していなかったのかもしれないわね」

 

「PV撮影はこれにて終わります。本日はお疲れさまでした!!」

 気づけば時計は午後8時を差しており、長いこと撮影していたなと思った。(大体はスピカのリテイクが多かったのが原因なのだがw)撮影が終わってフォトンのメンバーと一緒に話しながら帰ることにしたが、スピカは今日は家に帰らずに衣舞紀の家に泊まると伝えた。というのも、衣舞紀の実家が神社ということもあって、ツアーファイナルと来年にまた開催されるライブツアーの成功祈願の為にも泊まったほうが早いと思って言ったらしい。衣舞紀も衣舞紀の両親からも許可は取っていたので、そのまま転がる形になった。そのことに対して乙和とノアからは凄い勢いで羨ましがられたが、咲姫は何故か妬いているような雰囲気を醸し出していた。まあ翌日には咲姫の住むマンションに泊まることになるのはここだけの話。

 

 翌週にはツアーファイナルとしてお隣である神奈川県に向かっていた。そこにはまたしてもフォトンの面々がいたのだが、今回はスピカがツアーライブを体験してほしいという願望の元ツアーライブに誘ったのだ。移動中のスピカは今回のライブのセトリの確認をしていたのだが、その顔には緊張をしている感じは一切しなかった。

 ライブ会場に到着したタイミングでフォトンのメンバーにはゆっくりと時間まで時間を潰してもらうように伝え、その間に最終確認とリハーサル等のやることは全てやっていた。そして来場時間となり、どんどんとお客さんが集まってきていた。そして始まる前にいつもやっている参加者が集まっての円陣を行い、ツアーライブが始まった。

 スピカの出番は中盤に用意されており、丁度出番の前にDJをしていたライブラから盛り上げちゃいなと後押しされ、登壇することになった。

(よし、ここから30分は私の時間だ。私の曲でこの空間を染め上げてあげる!!)

「ヴァルゴです。お前ら、生き残る準備は出来ているか!!!」

「「おおーーーー!!!!」」




ということでTour Anthem編はこれにて終わります。そして次の3部からがこのVibes Starの本番の話になります。今までちょくちょく現れていた存在が遂に本格的に現れたりします。ということで次回、淡い恋心編をお楽しみに

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