衣舞紀が泊まった日から数日、遂に陽葉祭が始まった。陽葉祭は陽葉学園の文化祭で、かなり大きな文化祭ということで他校や地域の人からの認知度はかなり高いものである。そんな陽葉祭の大トリといえば夕方に開催されるサンセットステージという一年の締めくくりの一大イベントなのだ。朝、開催される前にスピカはフォトンのメンバーと話していた。
「それじゃあ陽葉祭楽しもうか、でもごめんね、私は一緒に行くことが出来なくて」
「気にしないでください、スピカさんの事情では仕方ないですよ」
一緒に行くことができないことに謝罪をすることになったのだが、フォトンのメンバーからは問題ないと言われたので、スピカは安堵した。
「4人には伝えるよ、私はサンセットステージの準備をしているわ。その後に私は屋上で陽葉祭の様子を見ているわ。そこでなんだけど...」
スピカはある人物のことを伝えた。見た目は黒髪のショートボブで、紅い瞳をしていて、おそらく着てくるであろう服装を伝えた。
「特に乙和、この人には気を付けて」
「え?なんで私なの?」
「一番話しそうだから」
「「納得がいった」」
全員がそう答えて乙和が「ええ~」と答えるという姿がみれた。
陽葉祭が始まり、フォトンのメンバーは楽しく会場を回っていた。衣舞紀も今日は羽目を外していろいろと回って食べていた。十分に楽しめているらしく、用意が終わって屋上にいたスピカが双眼鏡で確認が取れた。...そして例の人物がデネボラとアルタイルと一緒に現れるのを確認した。
「来たわね、Leia...私達の過去から離れられない...か、もし今日決着がつくなら付けないとな」
そう言いながらスピカはLeiaと言っていた人物の動きを確認していた。
陽葉祭が楽しみすぎて色々と回っていて、気づいたらサンセットステージまであと2時間まで迫っていた。衣舞紀は咲姫と一緒に回っていて、そろそろスピカに連絡を入れようと電話をしようと思っていた。
「新島衣舞紀と出雲咲姫だね」
その時、後ろから二人に声をかける人物が現れた。その人物はスピカが言っていた通りの黒髪のショートボブで、スピカが言っていた通りの服装をしていた。特に印象付いていたのは、ハイライトがない紅い瞳をしていたことが驚いた。
「ええ、貴女は誰ですか?」
「私は【Leia】と言います。以後お見知りおきを」
Leia、スピカが一番警戒し、悩みの種になっているスピカが昔組んでいたという元ユニットのボーカルだ。だがその見た目を見て衣舞紀と咲姫は何か重い空気を感じていた。咲姫は共感覚でLeiaのことを見ていた、その色はおぞましく暗い黒をしていた。
「Leia、何故私と咲姫に?」
「ここまでずっと見ていました。転校してきてスピカと一緒に楽しそうに話しながら登下校していたことも、一緒にゲームセンターで音ゲーを教えてもらっていたことも全てね」
「「!?」」
「だから教えてほしいの、【スピカが...ヴァルゴが何処にいるか知りませんか?】」
その一言が二人に重くのしかかってきた。だがスピカとの約束、Leiaにスピカの居場所を教えてはいけないということを守ることにした。
「スピカさんなら今はサンセットステージの最終準備をしていると思いますよ。別れ際にサンセットステージの用意をしていると言っていましたし。それに、もう少ししたらサンセットステージが始まりますし」
そう咲姫が強くLeiaに答えた。
「そう、準備ですか、なら終わってから会うとしましょう。最後に一つ忠告しておきますよ」
【これ以上ヴァルゴの傍にいることを止めてください。ヴァルゴは私と一緒にいることが幸せなのだから】
そう二人に伝えてLeiaはその場を去っていった。
「やはり接触してきたね...Leia、どれだけ私に迷惑をかけるのよ」
その情景を勿論のことながらスピカは見ていた。恐らく衣舞紀と咲姫にLeiaが接触してくるであろうとは予想していたので、予定調和ではあった。途中で衣舞紀と咲姫が買ってきた出店の食べ物を食べながらそのまま時間になるまでずっとLeiaの動きをずっと見ていた。途中にチラッとLeiaが見てきたように思えたのだが、実際はどうなのかはスピカも知る由はなかった。
「屋上に誰かいたような気がした。まさかね?」
「Leia、やっと追いついた。勝手にウロウロしないでよね」
逸れていたデネボラがLeiaにやっと追いついてからスピカに会わなさないように行動をし始めた。サンセットステージまであと2時間を切っていることもあって、Leiaが行きたい所を最後に聞くことにした。
「Leia、最後にどこに行きたい?」
「屋上かな、誰かいたような気がしたんだよ。白髪だったし、もしかしたらスピカかもしれないから」
その一言でデネボラの背筋が凍る感じがした。スピカが隠れている場所を当てられたので、どうやってやり過ごそうか考えていた。
「屋上?私達一般参加は確か特定の場所以外の校内に入れないはずだよ」
「あ、そっか...ねえデネボラ、トイレに行きたいのだけれど」
「分かった、付いていくよ」
これまでスピカをストーキングしていた存在が遂に登場です。ここから話は大きく展開していきます。