てことで第2部【Tour Anthem】始まります。
2-1話 召集
残暑が残りつつある9月、夏休みが明けて学校生活が始まり数日が経っていた。そんなある日、昼休みにはミサミサが担当の時に風邪で寝込んでしまい、代わりとしてDJマッシュこと明石真秀がお昼のDJを担当したのだが、途中に転校してきた愛本りんくが乱入し放送事故を起こしてしまった。その頃スピカはというと、また教室の自分の机で作業しながら頭を抱えていた。というのも、数日前に遡る事にはなるのだが...。
数日前、スピカはStardustのリーダーのアリエスに事務所に来るように呼ばれていた。スピカは何故呼ばれたのか分からないまま事務所に向かうことにした。そこにはアリエス以外に師匠のキャンサーがいた。
「キャンサーさん?そうしてここに?」
私は疑問だったのだが、それはキャンサーも同じだったみたく、それについてはアリエスのみが知っていることだった。
「集まったね、じゃあ早速だけど本題に入ろっか」
急なことで頭が追い付いていなかったのだが、次のアリエスの言葉に驚くことになった。
「二人には来年のTour Anthemを作って欲しんだ」
急なことで驚きを隠せなかったのだが、まさかの師弟関係である私達がツアーアンセムを作ることになるとは思わなかった。私達Stardustは全国を巡るDJライブイベントを行っている。私も去年メンバーとして加わって全国を巡ったことがあり、その時にツアーの表題となる曲を1,2曲ほど作ってライブで流すということをしているのだ。そんな重要な役目を私と師匠であるキャンサーさんとやることになるとは思っていなかった。師匠のキャンサーさんは一昨年に作った経験があり、慣れてはいるのだろうが、私に限ってはアンセム自体作ったことがなく、更なることを言えば、キャンサーさんの得意とするガバではなくてフレンチコアやハードルネッサンスを作っている為に上手くできるのか相当頭を悩めていた。
「私達がですか?」
「そうだ。ヴァルゴは夏コンでソロアルバムを出し、更なるレベルアップをした。なら今ならできるのじゃないかと思ってお世話になっているキャンサーと一緒に作ってもらえれば良いものができるんじゃないかって思ってるんだ」
「そうですか...」
納得ができる理由ではあった。私もあの夏コンでDJクノイチに出会ったことによってボーカル曲の作り方を教えてもらい、DTMに知識は更に深まったのだが、大きな役目を急に投げかけられたことに相当頭を悩ませてしまっていた。
「まだ時間はあるし、じっくりやろうよ。それに、やるかやらないかはヴァルゴ次第だしね」
その一言のおかげで私は冷静さを取り戻し、3日時間をくださいと言って帰宅をすることにした。
家に帰ってもどうすればいいのかで頭がいっぱいになり、作業することすらままならない状態になっていた。翌日が丁度休日だったので幼馴染のデネボラに明日相談に乗ってもらうことにした。翌日のお昼時に二人でよく遊んだ公園のベンチでデネが来るのを待っていた。デネボラは私が到着して10分後に現れ、私にとコンビニで売っている私の好物であるチーズケーキを渡してきた。
「成程ねそれは悩むよ、私がもしスピカと同じ立場でも同じことになっていると思う。レグ兄は作った経験あるみたいなんだけど、どうなのかね」
レオこと獅子島レグは過去に他のメンバーであるサジタリアスとツアーアンセムを作った経験があり、やり方を知ってはいるのだが、スピカは他のメンバーにそのことを伝えるのには少し抵抗があった。さすがに他のメンバーに助けを求めることは逃げなのではないかと思ってしまっていて、さらに八方塞がりな状態になっていた。けれどそんなスピカを救ってくれたのはやっぱり幼馴染のデネの一言だった。
「スピカはスピカでしょ?無理かそうじゃないかはやってみないと分からないんじゃない?昔やっていたリミックスを思い出してみてよ」
その言葉に私はハッとされ、昔やっていたリミックスを思い出した。粗削りで上手くできなくて周りからそこまで評価されず、されても酷評ばかりついていた頃のこと。それを見返すためにとレオさんにやり方を教えてもらい、その時の曲で優勝をして周りを見返したこと...。
「ありがとう、デネボラのおかげでやるべきことを思い出せた気がする。相談に乗ってありがとうね」
「スピカ、無茶だけはするなよ」
その後に帰宅せずにゲームセンターに向かっていたが、その間にもアリエスさんにツアーアンセムはやりますと連絡を入れた。返信が帰ってきて、やってくれると信じていたとだけ書いてあった。
そして今の時間に戻り、キャンサーと相談して序盤のメロディ作りに相当頭を抱えているという訳であった。勿論のことながらDAWは落ちた。
【お前、やるってなった時に邪魔してくるよね】
ここからアニメと同じ時間軸となります。