転生してカリギュラになったらかなりの魔改造されたカリギュラなんですが..... 作:リン・オルタナティブ
「(うへぇ。気持ち悪い.....)」
初のテイクオフから数日経ったある日。溶解したのか、今にも溶けて崩れそうなビル街をフラフラと歩いているのは、 真っ白な体色に鈍い銀色の装甲を装着した、ハンニバルのようでカリギュラのような異形のアラガミ。
そのアラガミの背中にはカリギュラのブースターがあるが、その2つのブースターの上に、体色とほぼ同じ色で染められたシールドのようなモノが取り付けられていた。彼女の言葉を借りるなら、“アームドアーマーDEモドキ”だろうか。
「(私が目覚めた時に、灰色の嵐が襲ってきたけど.....)」
ある程度酔いが覚めて落ち着いたところで、そんなことを考え始めたが、思考停止していたからかまだ思考速度が遅いと感じる。
彼女はボーっとしていた頭を回すため、
ビルの壁には穴が開いていたが、
彼女は人間だった頃と同じように腰を下ろし、壁に背中を預けようとするが、ブースターとDEモドキに阻まれたため、背中を預けることを諦めた。
そして、先程まで考えていた灰色の嵐のことについて考え始めた。
____ドス黒く灰色の嵐、そして先程自身が口走った
それらをかけ合わせた結論から言ってしまうと.....、
「(.......此処って、
当たり前だが、彼女の頭ではそんな結論にしか辿り着かなかった。
彼女がひょこっとビルの中から顔を出すと、下の地上では二足歩行で大きな尻尾をもつ小型のアラガミ十数頭を、オレンジ色で短冊のようなものを背中から何枚もマントのように生やした、虎のような容姿を持つ大型のアラガミが数頭で追いかけ回す光景が、目に映った。
まさしく、弱肉強食をそのまま体現したような世界が、この
「(まず最初に狩っておきたいアラガミと言えば.......)」
ビルに顔を引っ込めた彼女が思い浮かべたのは、第一に
何故に感応種なのか。それは、
感応種のみがもつ特異なこの能力は、周囲の偏食場パルスを歪め周囲のアラガミを自身の支配下に置いたり、オラクルを操作し不完全ながらもアラガミを形成したりと、他にも様々な能力があるが、共通する特徴に
ゲームでは
「(そうと決まれば、早速動かないと)」
気づけばさっきの喧騒は嘘のように収まっていたため、彼女が再び顔を出してみると、そこには先程の虎のような大型アラガミが一匹取り残されていた。はぐれたか、置いて行かれたか。
「(そんなことはどうでもいい!行くぞぉ!)」
一匹だけなのは好都合。この体のスペックの確認とこの世界での戦闘知識の積み重ねの礎になってもらおう。
その意志が読み取れたのか、大型アラガミ___ヴァジュラは彼女を“獲物”と判断したらしく、大きな咆哮と共に彼女のところへ走る。
「(斬り捨て......)__
何処かの時代劇の一言を言い__アラガミ語だが___ヴァジュラの猫パンチ(?)が炸裂する直前に両腕にある仕込み刃を展開しようとした直後、仕込み刃がクルッと180度回って
これにはカリギュラハンター(笑)である彼女でさえ内心驚いた。だが今は戦闘中、そんな思考をする程彼女に余裕などはなかった。
背中のブースターを多少吹かして突進の軌道を変えてヴァジュラの腕を掻い潜り、右腕についているその曲刀状の仕込み刃を振り上げるように刃を振るった。
アクションゲームに自信のあった彼女が振るった刃は唸りを上げてあっさりヴァジュラの首筋を捉え、勢いをそのまま維持しながら進み、次の瞬間、ザシュッと言うある意味気持ちいい音が鳴った時には、ヴァジュラの首と胴体はおさらばしていた。
彼女が速度を落とし、後ろを振り返るよりも先にヴァジュラの胴体が倒れ、その次に頭がゴトンと音を立てそうな勢いで地面に落下した。
◇◆◇◆◇
初めての狩りは大成功に終わったが、彼女は一つ言いたかった。
「(......何このハイスペック)」
空は飛べるわバッサリ斬れるわ仕込み刃は回転して剣になるわ、そして___、
「(隠し腕標準装備とか、どんなロマンという浪漫を詰めたらこうなるのかなぁ、私には理解できない)」
彼女は今、元いたビル街とは別のビル街を移動している。だが飛んではいない。太腿にある___恐らく皆さんのトラウマでお馴染みハバキリ先輩のモノであろうスラスターユニットを稼働させ、ホバー移動の要領で移動していた。
さらに肩付近からはもう一対の腕が生え、その腕がヴァジュラの死体をガッチリと保持していた。はっきり言って楽である。むしろその腕はどちらかと言えば人に近く、エヴァのような既視感を感じた。
元々彼女はガンダムやアーマード・コア等のロボットものはかなり好きで、それなりにプラモデルやそれに準ずる物を買い揃えていた。
中でも彼女のお気に入りは、機動戦士ガンダムNTに出てくる[ユニコーンガンダム3号機 フェエクス]、そしてアーマード・コアの顔たる存在[ホワイトグリント]である。
「(........っと、ここなら良いかな)」
そんなことを思い出していると、家となる場所を探していたが、自身の条件に合う場所が見つかった。
そこは高いビルが幾つも立ち並ぶ場所で、彼女が目をつけたそのビルには穴がいくつか開いており、他のビルに支えられ、ある程度の傾斜で保たれている。且つ、建物に重なっているため、ゴッドイーター達の死角になっているというおまけ付きだ。
「(よし、此処をキャンプ地とする)」
某モンスターをハントするゲームのようなことを言いつつそのビルへと入ってヴァジュラの死体を下ろすと、役目を終えたと判断したのか自動的に隠し腕は収納されてしまう。
彼女は不服に感じたが、千切って食べたヴァジュラの味にその感情は吹っ飛ばされてしまった。
「(旨ッッッッッッま!)」
口に放り込んだヴァジュラの肉は、霜降り肉の如く口の中であっさりと溶けてなくなってしまう。
初めて食べる味に彼女はヴァジュラの死体を貪り食べ始める。ふとガリッと氷を齧ったような感覚が口の中で感じると、彼女が食べていたヴァジュラの死体は、沼のように黒く染まった地面の中へと吸い込まれ、消えてしまった。
恐らくコアを食べてしまったのだろう。そう結論づけ、久々の食事を堪能した彼女だったが、こんなことを思った。
「(......頭、何処やったっけ?)」
◇◆◇◆◇
初めてアラガミを喰らったその日、彼女は夢を見た。まだ人間だった頃の夢だ。
行き交う人々の中、彼女は立っていた。
誰にも邪魔されず、誰にも気づかれない。
その時だ。後ろから視線を感じ、彼女は首を後ろへと向ける。そこには、もう一人の、彼女が___■■■■■がそこにいた。
背丈や服装、髪型、果ては髪につけていた赤いピン留めを付けているため、間違いはない筈。
だが、その少女は生前の彼女とは違い、髪の毛の色は色が抜けてしまったように白く、肌も青白い。その上顔は俯いて下がった前髪のせいで目元は見えず、口元しか見えていない。
ふと、少女の口元が歪んで笑みが浮かぶ。しかしその笑みは、純粋な子供がする無邪気な笑みではなく、狂人が浮かべる三日月のような笑みだった。
そして、彼女が目を覚ますと___、
___目の前では、
(後悔は)ないです。
アサルトリリィのRTAじゃないRTA書こうと思っている今日この頃です。
ではまた第3話で。