転生。
皆の一般的なイメージは、絶望的な人生を送ってきた人間がトラックに轢かれたり、通り魔に刺されたりして、そこから神らしき者に出会って異世界で無双!ハーレム!人生最高!という感じだろう。
だが、俺は違った。
あの日、俺はいつも通り会社から家に帰ってきた後、風呂に入り、ビールを飲みながら映画やアニメなどを堪能し、見終わったら就寝するというごく普通の生活をしていた。
目覚めた時、俺は寝室ではなく、草が茂っている平原に立っていた。
それだけではなく、見た目にも変化が起きていた。
服は無地の紫色の着物で、靴は下駄だった。
髪の毛は黒色でセミロング、そして女にあって男にはない発達している胸があった。大きさはCの中間くらいだろうか。
身長も生前180はあった俺が、かなり縮んでしまっている。
そう、俺は転生しただけでなく、女になってしまったのだ。
色々と意味がわからない。最初は夢だと思い、自分の頬を引っ張ったりしてみたが、普通に痛かったため、現実だということに気づいた。
普通はこういう状況になってしまったら、パニックになると思うのだが、なぜか俺は全然動揺していなかった。
とりあえず、今は自分に何が起きているのかを知る必要があるな。
昨日何があったっけな。
えーと、たしか俺は自分の部屋で寝ていた。そして……それだけしかないじゃん。
上司に怒られたりしなかったし、家で心霊現象が起きたりとかもなかった。
え、本当に転生した理由がわからないんだけど。
仕事に不満はないし、友達は決して多いわけではなかったが、皆いいやつらだ。
うーん、とりあえず歩くか。
方向は……適当でいいや。
そして歩き始めてから1時間近くたった。
気がついたら一人称は俺から私になっており、精神も女のものになりつつあるようだ。
口調はあまり変わっていないが。
歩き続けて1時間、私はこの体の異常さに気づいた。
身体能力が人間とは思えないほど高くなっていたのだ。
そこら辺に転がっている石を蹴ったら、石は弾丸のような速度で真っ直ぐ飛び、遥か彼方へと飛んで行った。
軽くジャンプをしたところ10m以上飛び、そんなところから落ちても足に一切の負担が無かった。
これだけでもかなり人間離れしているが、腕と手はもっとやばかった。
転生前より遥かに小さくなった人差し指の爪で、石を引っ掻いてみると、石に大きな傷跡ができた。
他にも指で木を突いたら風穴が空き、大岩を手刀で切り裂いたりなどなど……
まるで南斗聖拳だ。
だが南斗鳳凰拳奥義天翔十字鳳は使えなかった。無念。
この
もしかしてこれが転生特典というやつなのか?
だとしたらかなりいいものを手に入れてしまったな。
この世界が生前、私がいた地球ならばやりたい放題だ。アメリカ合衆国と個人で条約結べちゃったりとかもできそうだ。
だが、こういう転生をしたときには基本的に地球とは別の異世界に飛ばされるというのがセオリーだ。
私の場合はどうなんだろう。
空は青くて雲があるし、今、私が歩いている平原の緑色の草だらけだ。
やっぱ地球かなぁ。
色々考えながら歩いていると、集落のようなものが見えてきた。
その集落の民家は、すべて日本史の教科書で見た竪穴住居で、人間たちが着ている服も、今の私が着ている着物のように和風ではなく、縄文時代の人間が着ていそうな毛皮のベストで、ワイルドだった。
ていうかここ、縄文時代じゃね?
まさか私が転生したのは……過去の日本か。
え、でもこの時代に転生しても、今得た力は狩りくらいでしか使えない気がするのだが。
一気にテンションが下がってきた。
今の時代に転生したって何もやることないでしょ。
あ、なんか皆、土器作り始めてる。
まあ、生きていくしかないか……
だが、私は後に知ることになる。
自分の体の本当の凄さと、この世界がかつていた地球ではないことを……