ダンジョンで思い出を抱きつづけるのは間違ってるとは言わせない 作:魔剣姫の従僕
「ヘスティア、お願いがあるの」
「なんだい急に」
相変わらず黒一色の服を身に纏っているイザナミに呼ばれたお茶会
彼女はたった一人の眷属と、この小さな家に住んでいる
彼女とは少し前から友神として付き合いがあり、たまにお茶会をしている
またオラリオにいる神にしては珍しく、たった一人以外を眷属にしないと宣言しきった神であり
ボクと同じくバイトをして生計を立てている神だ
「もし、私がいなくなったら…あの子を貴方に預けるわ」
「ホントに何を言い出してるんだ、キミは!大体、自分の子供を他人にーー「黙って」…ん」
「多分、私は近日中に禁忌を犯すわ」
「禁忌って…
「ソレで済めばいいわね」
「何をするつもりなんだい」
「貴方には言えないわ、知ったらきっと止めようとするもの」
沈黙が支配する
5分10分…それくらいの時間が経つ
「…わかった、降参だ。その願い聞き届けるよ」
「ありがと、ヘスティア。友神として感謝するわ」
「ただいま帰りました、イザナミ様!…ヘスティア様もいらしてたんですね」
扉が開き、満面の笑みで元気よく彼女の眷属が帰ってきて、ボクを見つけると少し恥ずかしそうにしている。
ボクよりも背が低いイザナミと同じくらいの身長
黒髪に青のインナーカラーのセミボブ
笑顔がよく似合う可愛らしい顔
イザナミの着ているのと色違いの白いワンピースを着ている少女がそこにいた
「お帰りなさい、ヨゾラ…ほら、おいで?」
「え、えっとその「ぎゅーってしないの?」ダダンジョンで汚れてますし「ぎゅーっしよ?」ヘ、ヘスティア様も見てますし「ぎゅーっ?」ぎ、ぎゅーっ…エヘヘ」
やたら甘い空気が生まれるが、何時ものことなので大分慣れたし、いつか自分の眷属に対してしてあげたい気持ちも溢れる
要するに、ヘスティアとイザナミは比較的似たもの同士なのだ
だからこそ、ボクは願い、祈る
イザナミの予想が外れることを、彼女達がこれからも幸せであることを…
願いが裏切られたことを知ったのはその4日後
私の住む教会跡に白いワンピースを赤く染め表情が抜け落ち呆然と立ち尽くしている少女、その手にはたった一人の眷属から貰ったと笑顔で自慢していた友神の髪飾りを握りしめていたからだ
奇しくも、ボクがベル君と出会い
彼をボクの眷属にしたその翌日の朝だった
これは、正道の傍で語られる邪道のお話
出会いを求めるお話ではなく、思い出を抱え続けるお話
少女が失い、女神が刻む