踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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「泣き叫べ劣等。今夜ここに神はいない。


狂いし凶獣

『なあ刑夜。家族とはどのようなものなんだ?』

 

 

 

 

 

 

とある日、刑夜はラウラにそのような質問をされた。

 

『いきなりなんだよ』

『気になってな。私は生まれてこのかた、家族というものを知る機会がなかった』

『・・・・』

 

そうだ。ラウラの出生上、家族というものは存在しなかった。育った施設では、ただ殺しの技術を教えられるだけ。

そこに家族愛などは皆無だ。

 

『・・・俺もよくわからん』

 

少しして刑夜はそう言った。刑夜は実の親に捨てられてユリアーネ、義母に拾われた身だ。

 

『ユリアーネはあくまで義理の親だ。本当の家族じゃない。だから、親に捨てられた俺にとっちゃ家族の事なんざわからねえ』

『そうか・・・』

 

それっきり無言になる。

 

『ならば』

『あ?』

 

唐突にラウラが口を開く。

 

『ならば、私達がそれになればいい。血が繋がっていなくとも私達は魂で繋がっている。決して絶える事のない、本当の家族に』

『・・・』

 

その言葉に刑夜は少しだけ目を見開くと、とても穏やかな笑みを浮かべて、

 

『・・・ああ、そうだな』

 

そう言った。

 

□■□

 

その刑夜の家族が襲われた。

身体を貫かれ、リンカーコアを奪われた。

 

「ラウラァ‼︎」

 

全力で駆ける。誰も追いつけない速度で向かう。

 

「ふん、愚かな」

 

仮面の男がそう言うと、突然あらゆる場所からバインドが現れ刑夜を拘束する。だが、

 

「邪魔だァ‼︎」

 

それら全てを切り裂き、引きちぎる。そしてラウラの元へと行き、声を掛ける。

 

「おい、ラウラ無事か⁉︎」

「あ、ああ・・・ぐう‼︎」

「ラウラ⁉︎」

 

突然呻くラウラ。今のラウラはリンカーコアを奪われ、かなり弱っている。

 

「すまん・・・」

 

刑夜の謝罪にラウラは笑みを浮かべて言う。

 

「お前が謝る事じゃない・・・私の不注意が招いた事だ」

「いや、俺のせいだ。だから、だから今は休め」

 

それにラウラは笑みを浮かべて目を閉じる。

それに夜刀はクロノに通信を繋げる。

 

「クロノ。ラウラをアースラに転移させてくれ」

『わかった』

「後一つ、だれ一人として俺がいる場所に近寄らせるな」

『?、それはどういう』

 

そこで強引に通信を切る。もう言う事はない。いや、その余裕が無い。刑夜の全てが殺意で埋め尽くされていく。

 

「・・・行くぞシュライバー。あいつらを生かして帰さねえ」

『もちろんだ。あの劣等達をーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『俺(僕)の轍にしてやる』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□

 

その瞬間、守護騎士が、魔導士が、形容できない程の殺意を感じ取った。

 

「なんだこれは⁉︎」

 

シグナムは驚愕した。数多の戦場を駆け抜けた騎士であるからこそ理解できる。その殺気の異常性が。

 

「これは・・・‼︎」

 

フェイトもそれを感じ取った。あまりにも強すぎる殺気。常人ならば気絶してしまうような殺意。事実、自分でさえもこの殺意の念にあてられたのだ。

 

「一体何が起きているの・・・?」

 

□■□

 

刑夜の意識はもうなくなろうとしている。いや、正確には溢れ出る殺意に溺れようとしているのだ。

右目から血が溢れ出る。さあ消そう。この劣等達をーー

 

 

 

ああ わたしは願う どうか遠くへ (Vorber, ach, vorber!)死神よどうか遠くへ行ってほしい (geh, wilder knochenmann! )

 

刑夜は殺意に染まった声で唱える。

 

わたしはまだ老いていない (Ich bin noch jung, )生に溢れているのだから(geh, Lieber!)どうかお願い 触らないで (Und rhre mich nicht an. )

 

高らかに歌い上げるその姿はオペラの主演の如く。

 

美しく繊細な者よ (Gib deine Hand, )恐れることはない 手を伸ばせ (du schn und zart Gebild!)我は汝の友であり (Bin Freund )奪うために来たのではないのだから(und komme nicht zu stra)

 

 

刑夜のそれから紡がれるは宣告。自分の家族を傷つけた愚か者を八つ裂きにするため。彼は凶獣(ばけもの)へと変わる。

 

ああ 恐れるな怖がるな (Sei guten Muts! )誰も汝を傷つけない (Ich bin nicht wild,)我が腕の中で愛しい者よ (sollst sanft in)永劫安らかに眠るがいい (meinen Armen schlafent!.)

 

 

 

己の大切な存在を傷つけた劣等を轢殺の轍へと変えようーー

 

創造

(Briah)

 

 

 

死世界・凶獣変生 (Niflheimr Fenriswolf)

 

 

ーーここに、地獄が降り立った。

 

 

□■□

 

 

「ルルル・・・‼︎」

 

刑夜の眼が狂気を帯びていく。仮面の男は二人になっており、どちらも今の刑夜の危険性を感じている。

 

「・・・私がバインドで拘束する。その間にお前が仕掛けろ」

「わかった」

 

その瞬間、仮面の男は片方がバインドで刑夜を拘束する。

 

だが、それが合図となってしまった。

 

「オ・・・オォ・・・オアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

咆哮。それだけで周囲一帯を吹き飛ばす。そして次の瞬間、

 

ドォン‼︎

 

刑夜が消えた。そして、

 

「ぐあああああぁぁ⁉︎」

 

突然仮面の男の片方が吹き飛ぶ。

 

「貴様ぁ‼︎」

 

もう一人が刑夜に魔力弾を放つが悠々と避けられる。

 

「Zarfall’in Staub deine stolze Burg!!」

「がああ⁉︎」

 

刑夜が仮面の男の肩の肉を引きちぎる。

 

「End’in Wonne, du ewig Geschlecht!」

「ぐおぁ⁉︎」

「ぐはぁ‼︎」

 

再び疾走して仮面の男達を蹂躙する。

 

「ぐっ、舐めるなあああああ‼︎」

 

仮面の男が叫び、砲撃魔法を放つ。かなりの威力だ。並の魔導士ならばこれで落ちるだろう。だが、

 

「Es sagt, obwohl weg ruiniert hat‼︎」

「何⁉︎」

 

今の彼にそんなものは意味をなさない。刑夜は砲撃魔法を消し去り攻撃する。

 

「ば、化物め‼︎なんなんだお前は⁉︎」

 

仮面の男は完全に怯えていた。

 

「wird ruiniert, verschwinden Sie, Drehung in Staub‼︎」

「ぎ・・・がぁ・・・」

 

それだけで終わらない。終わらせるものか。塵と化せ。

 

「unt ruhre mich nicht an.」

「unt ruhre mich nicht an!」

「unt ruhre mich nicht an!!」

「unt ruhre mich nicht an!!!」

 

貫き、切り裂き、抉り取る。もはや仮面の男達は息も絶え絶え。瀕死の状態だった。

 

「うぅ・・・この・・・化物め・・・」

「Auf Wiederseh´n.」

 

そして刑夜がトドメをさそうとした瞬間、

 

「グゥ⁉︎」

 

突然夜刀を雷が襲った。刑夜はそれを咄嗟に避ける。

 

「お、お前は・・・」

「さっさと行ってください」

 

ベアトリスと戒が立っていた。

 

「・・・礼は言わんぞ」

「そんなものはいらないよ」

 

そう言って仮面の男達は転移した。

 

「全く、戒もお人好しですねー」

「ベアトリスだって賛同しただろう?」

「まあそれはそうなんですけどね。今はーー」

 

二人は刑夜を見る。

 

「ギャ、ガ、アギャヤギャガガガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

刑夜は再び咆哮を上げる。

 

「und so weiter. sollte sich nicht einmischen‼︎」

 

劣等が邪魔するな。そのような意思が伝わってくる。

それに二人が向かう。ベアトリスが戦雷の聖剣を、戒が黒円卓の聖槍を振るう。だが、

 

「Zarfall’in Staub deine stolze Burg!!」

「ぐう⁉︎」

「うあぁ‼︎」

 

たとえ聖遺物の使徒であろうと、今の刑夜は大隊長クラスの力を持っているため力に差がある。さらに、

 

「Es atmet ein und tötet‼︎」

 

刑夜から赤黒い杭が機関銃の如く放たれる。それらを二人は避けていく。

 

「本当に厄介ですね・・・‼︎」

 

思わず悪態をつく。

 

「はあ‼︎」

 

咄嗟に刑夜の腕を切り裂くが、瞬時に再生してしまう。

その時、刑夜に異変が起きた。

 

「ーーーアハッ」

 

刑夜の口からそのような声が漏れた。

 

「アッハハハハハ‼︎アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

笑っている。狂ったように哄笑を上げている。

 

「良イナア。今マデコンナニモ興奮シタ時ナンテナカッタヨ」

 

突然先ほどまでの正気を無くした状態から変わっている。いや、違う。

 

「貴方はーー誰ですか?」

 

それに刑夜は答える。

 

「ウォルフガング・シュライバー。フフ、名付ケノ親ナンテモウイナイケド」

 

間違いない。刑夜が聖遺物と完全に融合した事により人格までもが変わっている。

 

「聖遺物に人格を乗っ取られているってところか」

 

つまりーー彼はまだ目覚めていない。

 

「アハッ、アハハッ、引キ裂イテヤル‼︎」

 

再び向かっていく。瞬間、幾重ものバインドが刑夜を拘束する。

 

「ストップだ‼︎止まれ刑夜‼︎」

 

クロノ達が、魔導士達が刑夜を止める。このままでは本当に殺しかねない。管理局としても友人としても見過ごす事ができない。

 

「これが、あの凶月なのか・・・?」

「まるで獣じゃないか・・・」

 

そして龍宮と園城もバインドをかけていた。だが、

 

「・・・ヲ・・・ナ」

 

刑夜の言葉に全員が目を向ける。

 

「邪魔ヲ・・・スルナアアアアアァァァァ!!!!」

 

バインドを咆哮により消し去る。

 

「貴様ラ劣等ガ私に触レルナアアアアアァァァ!!!!」

 

怒り。劣等風情が自分の邪魔をした事への憤慨。

 

「我アアアアアァァァ!!!!」

 

それからは全員が必死になって戦った。ベアトリスと戒も混ざり、死に物狂いで戦っていく。

そして、奇跡的に死者はいない。ベアトリスと戒は、刑夜が倒れた際、彼が発した声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い・・・愛・・・して・・・」

 

 

それが聖遺物のものなのか、それとも刑夜自身の思いなのかは誰にもわからない。

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