踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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「人間ってのはどいつも変わらねえんだな」


闇の書

医務室のベッド。そこに刑夜は眠っている。そこでうっすらと目を開ける。

 

「う・・・ここは・・・」

 

刑夜はむくりと起き上がる。頭が痛む。全身も悲鳴を上げている。

 

「たしか俺は・・・」

 

そうだ。あの仮面の男を殺そうとして・・・そこからの記憶がない。

 

「いったい何が・・・」

 

するとそこで、

 

「目覚めたか」

 

クロノが部屋に入ってきた。片手にはカップを持っている。

 

「クロノ?何があったんだ?」

「・・・覚えてないのか?」

 

怪訝そうに聞いてくる。それに首肯する。最後の記憶はたしか、自分の全てが殺意に埋め尽くされていって、そこで意識が途切れた。

 

「あー・・・そういう事か」

 

つまりは一種の暴走状態。制御を失った戦闘機のような有様になってしまったと。

 

「全く。あの二人がいなければ危うく僕達が死ぬところだったぞ?」

「ははっ、まあ軽く水に流してくれや」

 

それにクロノはため息を吐く。そして、しばし無言になった後、クロノが口を開く。

 

「・・・なあ、刑夜」

「あ?んだよ」

 

そしてクロノは夜刀にこう言った。

 

「君はーー何者なんだ?」

 

そう質問してきた。それに夜刀はこう答える。

 

「とある知り合いのクソ野郎いわく、色を持たぬ者だそうだが・・・そんなのは答えにならねえか」

 

そう言ってクロノと向き合う。

 

「俺は俺だ。凶月 刑夜ーーそれが、俺を示すたった一つの真実だ」

 

そう言った。

 

「ああ、そうだな。お前はそういう奴だったな」

「おいおい、そんな対応でいいのか?執務官殿?」

 

刑夜がからかい口調で言う。

 

「これでいいのさ。凶悪犯罪者がロストロギアを持つよりも多少は問題があるとはいえこちら側に属してもらっている方がずっといい」

「そうかい」

 

そう言って笑い合う。

 

「・・・仮面の男の正体がわかった」

「ーーーへぇ」

 

一転、刑夜は凶暴な笑みを浮かべる。

 

「面白え。で、誰なんだ?人の戦闘にくだらねえ横槍入れて、挙句の果てに俺の家族を傷つけやがった劣等はよぉ」

「・・・リーゼアリアとリーゼロッテ。僕の師匠のような存在だ」

「ふぅん。通りで」

 

そう言うとクロノに言う。

 

「俺のデバイスはどこだ?」

「ああ、預かってきている」

 

そう言うとクロノは二つの鉤十字のブレスレットを渡す。

それを起動させ、状態をチェックする。

 

「最初にそれを見た時は驚いたぞ。質量兵器を使用しているのかと思ったからな」

「あー・・・」

 

たしかにそうだ。ルガーP08とモーゼルC96は銃、いわゆる質量兵器をベースにデバイスへと変えたものだ。

 

「んで、これからどうすんだ?」

「今ユーノが闇の書について調査している。っと、噂をすればってやつだな」

 

そう言うとクロノは空中にモニターを映し出す。

 

『クロノ、頼まれてた件だけどって、起きたのかい?刑夜』

「おう、ついさっきな」

 

するとクロノが言う。

 

「それで何かわかった事は?」

『ああ、うん。これだね』

 

そう言うとユーノはとある情報を映し出す。

 

「夜天の魔導書?」

『うん。今のところ分かってるのは闇の書ってのは本来の名前じゃない。古い資料によれば正式名称は夜天の魔導書本来の目的は各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究する為に作られた主と共に旅する魔導書だったんだ』

「いや待て、じゃあ何で守護騎士達はその魔導書の事を闇の書って言ったんだ?」

 

クロノがそうユーノに問うと、ユーノは頷きながら答える。

 

『歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したからだと思う。それでプログラムにバグが生じて破壊の力を振るうようになった。多分ヴォルケンリッターもその時記憶をすり替えられた』

「かいつまんで言うと元々は優秀なデバイスだったのをどこぞの欲に目をくらませた阿呆のせいで闇の書になったと。なんで人間ってのはこうも欲深いんだか」

 

刑夜はため息を吐きつつ言う。

 

『さらに一番最悪なのが持ち主に対する性質の変化、一定期間蒐集が無いと持ち主自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる、無差別破壊の為にね。だからこれまでの主は完成してすぐにーーー』

「おいおい、マジで何がしたかったんだその阿呆は。どこをどういじったらそこまで改悪しちまうんだよ」

「全くだ。欲に目がくらんで安全性を確認しないで改造しようとするからそうなる」

『あはは・・・そうだ。クロノ、もう一つの件だけど』

「あ?もう一つの件?」

 

それに刑夜が疑問を感じていると、クロノが頷きながら言う。

 

「どうだった?」

『こっちはわかった事が少ない。似たようなのはあるんだけど、どれもいまいちピンとこないものばっかり』

「そうか」

 

そこで刑夜がクロノへと言う。

 

「おい、いったい何の話をしてんだ?」

「ああ、君が持っているものについてこっちで調べてたんだ」

「俺が持っているもの?・・・聖遺物か」

『うん。正直、これを探すのは闇の書以上に手間取ったよ。そのうえ本当に少しだけしか見つからなかったし』

 

そう言うとモニターにとある情報を映し出す。

 

『ロンギヌスの槍。地球だとこれらが一番有名かな?』

「聖人を突き貫いた槍、か。夜刀、これに見覚えはあるか?」

「・・・・・・・」

 

刑夜はクロノの質量に答えず、ただモニターを見ていた。

 

「夜刀?」

「あ?・・・ああ、すまねえ」

「これを知っているのか?」

 

クロノがそう聞いてくる。

 

「・・・ああ、よーく知っているさ」

「本当か?」

 

ロンギヌス。彼の者を突き貫いた伝説の神槍。究極にして最高位の聖遺物。

そして破壊の君、黄金の獣が所持する聖遺物である。

 

「それの所持者には会ったことがないがこれだけは言える。その人には管理局が総出でかかっても絶対に勝てない」

「バカな・・・管理局を壊滅させる程の力を一個人が有しているというのか⁉︎」

 

クロノが驚愕に目を見開く。

 

「ああ。だが、それだけじゃねえ。あの人がその気になれば管理局どころか、次元世界全てを壊しちまう」

「『・・・・・』」

 

二人は絶句している。当然だ。次元世界を壊す程の規格外の力を有している者が存在しているなど信じられるわけがない。

 

「クロノ、この件は報告しねえ方がいい。どっかの阿呆が下手に介入したらそれこそーー」

「管理局の終わり、か・・・そうだなこの件は内密にしておこう」

『僕も異論は無いよ。その件が事実なら、それは人が管理できるものじゃない』

 

クロノもユーノも賛成のようだ。

 

「さて、そろそろ行こう」

『僕はもう少し調べてみるよ』

 

そう言って部屋から出ていく。すると、

 

「刑夜‼︎」

 

その言葉と共にラウラが抱きついてくる。

 

「お、おいラウラ?」

 

刑夜が戸惑うもラウラはより一層抱きしめる力を強くするだけだった。

 

「目覚めたら刑夜が運ばれたと聞いて・・・本当に良かった」

「目覚めたらってお前・・・」

 

たしか、ラウラもリンカーコアを抜き取られている筈じゃなかったか?そう疑問に思っていると、

 

「私も一応は聖遺物の使徒だ。リンカーコアの負傷程度ならすぐに回復する」

「そうか。ならいいんだが」

 

そう言って離れようとするが、

 

「・・・おいラウラ」

「・・・・・・」

 

離れない。離れようともしない。

 

「あー、その、なんだ」

 

クロノが気まずそうに言う。

 

「すまないが続きは家でやってくれ」

 

続きってなんだコノヤロウ。

 

「まあクロノは後でシメるとして「なんでだ‼︎」とりあえず今日は上がらせてもらうわ。つーわけで帰るぞラウラ」

「うむ」

 

クロノが叫んでるが、刑夜は気にせずに帰っていく。

 

□■□

 

そして、刑夜とラウラは無事に家に帰ってきた。のだが・・・

 

「・・・おい」

「なんだね?今はマルグリットの写真を整理している最中なのだが」

 

カール・クラフトがくつろいでいた。

いつ侵入したやら勝手に入ってんじゃねえやら勝手に人の家の茶を飲んでんじゃねえやらその写真全部盗撮したやつじゃねえかやら色々言いたいが、とりあえず。

 

「・・・オラ」

「私のマルグリットがああああああ⁉︎」

 

写真を全部吹き飛ばす。

 

□■□

 

「ふむ、なかなかの味だ。シュライバーも料理は出来たがこれは美味だ」

「・・・褒められたのに嬉しくないって思ったのはこれが初めてだ」

 

何故かカール・クラフトと食卓を囲む事になった。

 

「んで?何の用だ?ただ飯食いに来たってわけじゃねえだろ?」

「無論だ」

 

カール・クラフトは味噌汁をすすりながら言う。

 

「単刀直入に言うと、獣殿が君に会いたがっているのだよ」

「ハイドリヒ卿が⁉︎」

 

思わず驚愕する。

 

「ああ、まあ何も今すぐというわけでもない。君が今関わっている事件が解決した後にでも会ってもらおう」

「待て、なんでだ?なんでハイドリヒ卿が俺なんかに・・・」

 

刑夜の疑問にカール・クラフトは言う。

 

「愚問。二つの聖遺物を自在に操り、すぐに創造の位階へと達した。これだけでも充分すぎると私は思うのだが?」

「それは・・・」

 

たしかに言う通りだ。二つの聖遺物を自在に操るなど、誰一人として存在しない。

 

「まあ、せいぜい気張りたまえよ。・・・おかわりを貰いたい」

「少しは遠慮しやがれ」

 

そう言いつつもちゃんとご飯をよそう自分は案外甘いのかもしれない。

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