踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。 作:めんどくさがりや
「散々掻き乱しやがって。これはその報いだ」
今日は終業式だ。ようやく学校に来なくて済む。校長の無駄に長く、意味のない話を聞き流しながら今朝の事を思い出す。
「(ヴァルキュリアめ・・・何のつもりだ?)」
今朝、電話でベアトリスに話があると言われた。何故今向こうから接触してくるのか。
「(まあいいか。とにかく今は目先の問題から解決しなきゃいけねえ)」
そう言ってため息を吐く。
□■□
「というわけでプレゼントですよ‼︎」
「すまん、わからない。お前という存在が」
「私の行動じゃなくて私の存在を否定してきましたね」
終業式が終わり、刑夜は家に帰るとラウラを連れてとある喫茶店に行ったら、ベアトリスと戒がおり、何の為に読んだかを聞いたらクリスマスですよ‼︎などとほざいていた。
「お前が闇の書の主、あー八神はやてだったか?そいつにクリスマスプレゼントを送りたいのはわかった。だが普通敵対している奴に聞くか?」
そう言うが、
「別にいいじゃないですか。ほら、旅は道連れ世は情けって言いますし」
「ベアトリス、それ微妙に違うと思うんだけど」
戒が苦笑して言う。この通りベアトリスは八神はやてにクリスマスプレゼントを送りたいらしいのだが何がいいのかを聞きたいらしい。
「プレゼントなんざ本人に欲しいものをさりげなく聞きゃいいだろうが」
「それがないから困ってるんですよ」
ベアトリスはため息を吐く。少し前に何か欲しいものはないかとさりげなく聞いてみた事があったが、
『んー特にあらへんなあ。強いて言えば目の前でイチャついてるバカップルをどうにかする道具とかかな?』
などと言われた。
「んじゃアクセサリーとかはどうだ?」
「アクセサリーですか。ですがあまり高いものだと遠慮しちゃうんですよねあの子」
「別にそんな高いものじゃなくたっていいだろうが」
「例えば?」
戒の質問に少し考えてから言う。
「ヘアピンとかブレスレットとかか?後は知らん」
「なるほど・・・ありがとうございます」
そう言って帰っていく。ちなみにラウラは隣でパフェを頬張っていた。
□■□
「(しかしプレゼントか・・・)」
ラウラとクリスマスを過ごすなら何かプレゼントが必要だろう。それにラウラも初めてのクリスマスだ。出来うる限り楽しく過ごしてもらう必要がある。
「(だが、ラウラの欲しいものってなんだ?)」
ラウラはあまり何かを欲しがるという事がない。今に満足しているといったら嬉しいと思うがやはり何かしらプレゼントは渡したい。
「(さて、どうすっか・・・ん?)」
そこで刑夜はあるものに気づく。
「・・・ラウラ」
「ん?」
「悪いがジュース買ってきてくれないか?ちょっと買うものがあってな」
「買うものとはなんだ?」
「まあ気にすんな」
「???」
首を傾げながらも買いに行くラウラ。その間に刑夜はとあるものを買う。
「(さて、帰ったらアースラに行くか)」
□■□
アースラに行くとユーノがいた。どうやら依頼を終えたらしい。
「ようユーノ。お疲れさん」
「あ、刑夜にラウラ」
ユーノもこちらに気づいたようだ。
「んで?依頼は終わったのか?」
「うん、だいたいね。後はクロノに報告するだけだ」
流石と刑夜は思った。高町達のような派手さはないがユーノはこの方面に関して天才だ。
ユーノが情報を集めていた場所でもある無限書庫は『無限書庫を探せば全ての答えが見つかる』と言われる程の情報が終結しているのだが、残念ながらその情報そのものを探す事が困難であるという無意味さを持つ。下手したら数週間以上情報が見つからない可能性もあるのだ。それを数日たらずで発見するユーノは本当に天才だ。
「それと、少し面白いものを見つけた。これは地球の情報だけどね。見てこれ」
そう言うとユーノはとある書物を取り出して説明する。それはとある人物についてのものだった。
「ワラキア公国君主、ヴラド・ツェペシュ。通称
「カズィクル・ベイ、ねえ」
つくづくユーノは核心に迫る情報を見つけるものだ。
「刑夜の聖遺物と関係があると思ってね」
「お前探偵とかの職業が合うんじゃねえか?正解だ。俺の聖遺物ーー
「血液そのもの・・・そんなものまで聖遺物になるんだね」
「他にも色々あるぜ。槍や剣などのメジャーなものからギロチン、列車砲、バイク、絞首刑で使用された縄、赤子の顔面の皮膚を使った仮面、とある狂人の日記、果てには人そのもの。とにかくその想念は種別を問わず、信仰心や怨念等、どのような形でも力を得れば聖遺物と呼べる物になる」
「ふーん、色々とあるもんだね・・・ん?ちょっと待って、その理屈で行くと・・・闇の書も」
「当然聖遺物に当てはまるだろうな。しかもそれに向けられる想いもかなり強い。間違いなく最高位の聖遺物だ」
いや、下手したら既にカール・クラフトに目をつけられているかもしれない。
「それじゃあ、闇の書の主は聖遺物の使徒という事かな?」
「いや、違う」
ただ聖遺物を持っているだけでは使徒にはなれない。
「聖遺物の使徒になるにはエイヴィヒカイトと呼ばれる術式が必要でな。それがなければ聖遺物を使用することができねえんだ」
「エイヴィヒカイト?」
「ああ、ニート、じゃなかったカール・クラフトっつー奴が造った術でな。その術があって初めて聖遺物を使用できる」
「・・・とんでもない術だね」
「ああ、まあ当然誰でも使えるっつーわけでもねえぞ?この術式は習得難易度がやたら高くてな、常人では最初の位階すら制御出来ずに自滅しちまう」
「逆に言えばそれさえ制御出来れば強大な力を得るって事でしょ?だとしたら管理局が血眼になって探すだろうね」
そして、それを利用しようとする者が人体実験を繰り返し犠牲者が出る。いつの時代も強大すぎる力はその大きさだけ悲しみを生む。
「(いや、今悩むべきはそこじゃねえか)」
その時、
「やっと見つけた‼︎」
その時、クロノが息を切らしてこちらへと向かってきた。
「クロノ?どうかしたか?」
刑夜がそう聞くとクロノは言う。
「なのは達が交戦を始めてしまったんだ‼︎」
□■□
そこには複数の魔導士と、守護騎士達が激しい戦闘を繰り広げていた。魔導士達は対話を試みるも、追い詰められた守護騎士達にその声が届くわけもない。
そして、再び刃が交わろうとしたその時、その場にいた全員にバインドが掛けられる。見るとそこには仮面の男達がおり、その手には闇の書があった。
「ああぁっ‼︎」
守護騎士達の胸からリンカーコアが抜き出される。
「シグナム‼︎ヴィータ‼︎シャマル‼︎」
「ぐっ、クソ・・・‼︎」
ベアトリスと戒に掛けられているバインドは、他のものよりはるかに強固であるために抜け出せない。
「あ、ああ、ああああああああああ!!!!」
闇の書の主ーー八神はやては見てしまった。守護騎士達が消えてしまう瞬間を、家族がいなくなる瞬間を、
はやての叫びが終わると、足元に魔法陣が展開され闇の書が現れる。そして、莫大な魔力がはやてから吹き上がると同時に体が変わっていく。
「また・・・また、全てを壊してしまうのか」
そこには一人の女性がいた。銀の長髪に紅い眼の女性。彼女は涙を流して言葉を紡ぐ。
「我が主はこの世界が、自分の愛するものを奪った世界が、悪い夢であって欲しいと願った。私はただ、それを叶えるのみ……主には穏やかな夢のうちで永久の眠りを、そして、愛する騎士達を奪ったものには……永久の闇を!!」
□■□
その現場から少し離れた場所、ビルの屋上に刑夜は立っている。
「チッ、結局こうなっちまったか。ヴァルキュリアとカインは何してやがる」
目の先には暴走した闇の書の管制人格がいる。それを見て刑夜はボソリとつぶやく。
「・・・気にいらねえな」
ああ、本当に気に入らない。あの全てを諦めている表情、全てに絶望したような表情。何もかも気に入らない。
「出来れば今すぐにでも手を出してえが、今は」
そう言うと銃を取り出し魔力弾を打ち出す。その標的はーー
「ぐう⁉︎」
「がはっ⁉︎」
魔力弾が仮面の男達を撃ち抜く。
「よお、久しぶりじゃねえか劣等共」
「き、貴様は‼︎」
仮面の男達がようやくこちらに気づいた。その声には怯えが混じっており、恐怖しているのがわかる。
「随分とまあ、好き勝手やってくれたじゃねえか」
笑みを浮かべてはいるが刑夜からは凄まじい殺意が溢れている。
「これでチェックメイトだ。安心しな、不本意だが殺しはしねえ」
心底残念そうに刑夜は言う。
「此処がもし
そして次の瞬間、刑夜が消えた。そして、
ズドン‼︎
「だからと言っててめえらを無傷で済ますっつーわけでもないがな」
二人には何も見えなかった。突然相手が消えたと思ったら魔力弾を打ち込まれていた。
「ぐぅ、舐めるな‼︎」
そう叫び仮面の男達も反撃を試みる。魔法を放ち、相手を拘束しようとする。だが当たらない。ステルス系の魔法か?いや、違う。
単に速すぎるのだ。常人では、目で追う事も出来ない程に。
「ッ‼︎ブレイズカノン‼︎」
仮面の男が砲撃を放つが、
「ハッハー‼︎」
それを軽々と避ける。
「遅え、遅すぎる。この程度でてめえらは俺の相手が出来ると思ったのか?舐めんじゃねえ‼︎」
そう叫びながら至近距離で魔力弾を放つ。さらに、
「目か耳か鼻か口か‼︎穴だらけにしてやるよ‼︎」
顔面へと魔力弾を打ち込み吹き飛ばす。
「まだ終わりじゃねえ。お楽しみは、これからだ‼︎」
刑夜の銃から放たれたのはチェーンバインド。それが二人を拘束し、
「イィィィィヤッハァァァァ!!!!」
それを振り回し、引きずり、叩きつける。
「が・・・ぐふっ・・・」
「ぐ・・・うぁ・・・」
そして、ボロボロになった仮面の男達に向け、
「
そして、砲撃魔法が二人を飲み込む。
□■□
「・・・終わったか」
クロノが転移してきた。
「おう、要望通り殺しはしてない
「そうか。それじゃあ僕はこの二人を連れていくが」
そう言うとクロノは別方向に視線を向ける。
「君は行くんだろう?」
「当然」
そう言うと刑夜はクルリと体を翻し、
「んじゃ、行って来るわ」
「ああ、すぐに僕達も行く」
その言葉と同時に刑夜は消えた。