踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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決戦

時間は少し遡る。

そこは何もない、真っ暗な空間。そこに車椅子に乗った一人の少女ーー八神はやてがいた。

うとうととしながらも、彼女は目を覚ます。

しかし、まだ眠い。もう少し、眠っていたい。

 

「そのままお休みを、我が主」

 

そこには、銀髪の女性がいた。

何故だろう?初対面の筈なのに不思議と安心できる。初対面とは思えないほどの親しさを感じられる。

 

「あなたの願いは、全て私が叶えます。目を閉じて、心静かに夢を見てください」

 

ああ駄目だ。意識が朦朧としてきた。

そこでふと疑問が生じた。

 

私はーー何を望んだっけ?

 

「悲しい現実を、全て消してしまいたいと」

 

悲しい現実を消す?それが、自分の夢?

 

「健康な身体。愛する者達。貴女を苦しめるものは何も存在しない。ですから、お眠りを」

 

その言葉に引っかかりを感じる。だが、今はそれを考える余裕がーー

 

「ーー本当にそれでよいのかね?」

 

その時、自分でもましてや目の前の女性でもない声が聞こえてきた。誰や?

 

「誰、なん・・・?」

 

朦朧とした意識の中でも、不思議とハッキリわかる。

おぼろげな輪郭。その容姿は青年のようであり、年老いた老人のようでもある。まるで蜃気楼のようでもある。

 

「初めまして。八神はやて、そして闇の書ーーいや、夜天の魔道書の管制人格。私はカール・クラフト=メルクリウス。他にもカリオストロ、サン・ジェルマン、パラケルスス、トリスメギストス、ノストラダムス、クリスチャン・ローゼンクロイツ、マグヌス、ヨハン・ファウスト、名は星の数ほどあるゆえ、好きに呼びたまえ」

 

メルクリウスはそう言うと、再び言葉を紡ぐ。

 

「もう一度問おう。八神はやてよ、本当にそれを良しとするか?覚めない夢の中で、偽りの平和を手にする事に満足するか?」

 

その言葉にはやては反応する。

 

「たしかに、君が得た苦しみを考えれば此処で夢を見続けるのも是であるかもしれない。永遠に己が望んだ幸せを見続けるのもよいかもしれない」

 

そこでメルクリウスはだが、と区切る。

 

「所詮は夢、虚構の幸せにすぎない」

 

そうだ、その通りだ。

一切の不安が存在しない夢の世界・・・なるほど、たしかに魅力的だ。

だが、所詮は夢、仮初めにすぎない。

私の望みは、そんなものじゃない。

そもそも、自分は人であるのだから、苦しむのは当然だ。

良いこともあれば悪いこともあるし、満たされない夢を抱えて飢えてもいる。

不満で、不安で、いつも揺れて・・・だからこそ、私は夢を見続けるのに首肯しない。

そもそも、自分の望みは他にあるのだから。

 

「ほう、では君の渇望(のぞみ)はいったいなんなのかね?」

 

メルクリウスはそう問うてくる。

その言葉で思い浮かぶのは、守護騎士達との日常。

シグナムは、頼れる姉のように心強く守ってくれた。

シャマルは、母のように優しく見守ってくれた。

ヴィータは、姉妹のように笑顔で接してくれた。

ザフィーラは、常に一歩引き、全員を守れるように立っててくれた。

全員が私の大切な家族であり、私が尊ぶ刹那だ。

だから、その絆を傷つけたくない。守りたい。絶やしたくない。私はーーー

 

「『家族との絆を守りたい』」

 

その言葉と共に周囲の空間にヒビが入る。

 

「そうか。それが君の渇望か・・・なるほど、とても美しい。ああ、至高と呼び差し支えない程だ」

 

メルクリウスは笑いながら言う。

 

「よかろう。君に我が術を授けよう。君ならば、獣の爪牙にふさわしい」

 

だんだんと、メルクリウスの体を消えていく。術?獣の爪牙?何を言って・・・。

 

「外に出たらカインとヴァルキュリア、そして彼に話を聞くといい」

 

カイン?ヴァルキュリア?何のことだ?そして彼とはーー

 

「さらばだ。これから先、ここでの"選択"が真に意味あるものであったと思えるように願うよ」

 

その言葉と共にメルクリウスは完全に消えた。彼の言葉は疑問だらけだった。だけど自分のやるべき事は理解した。

さあ、覚悟は決まった。まずは、この新しい家族に名前を与えなければ。名前は既に決まっている。

 

 

 

「夜天の主の名において、汝に新たな名を贈る。強く支える者、幸運の追い風、祝福のエールーーリインフォース」

 

 

 

 

□■□

 

「とりあえず、なんとかなったか」

 

銃を下ろして言う。ちらりと隣にいるヘルガへと目を向ける。

 

「案外、上手くいくもんだな」

 

正直、これは賭けでしかなかった。

聖遺物である闇の賜物そのものと化したヘルガをデバイスではなく人の形に『形成』し、深く同調した状態で闇の賜物の概念を内にある魂と共に打ち出す、という試みは見事成功した。管制人格はその身に概念を受け、落ちた。

その分結構な量の魂を消費してしまったが、また集められる量なのであまり問題はない。

 

「マスター、そろそろ創造を解いたほうがよろしいのでは?」

 

ヘルガがそう言ってくる。たしかにそうだな。このままあいつらを呼んだら本気でまずい。ただでさえ前に同じ事やってまずい事になったのだ。

 

「・・・よし」

 

創造は解いた。クロノ達に連絡もした為、後少しで来るだろう。

 

「んで、今更だが調子はどうだ?」

「ええ、問題ありません」

 

ヘルガは確かめるように手を閉じたり開いたりしている。

 

「しかし、今更ながらよく成功しましたね」

「ん?ああ、一応実例はあるからな」

 

魂を聖遺物の要領で形成する。これをやったのは今までで俺だけじゃない。

藤井 蓮(ツァラトゥストラ)は聖遺物の魂ーーカール・クラフトの想い人であるマルグリットを形成で人の形にしたし、遊佐司狼(ゲオルギウス)も同じような事をした。

 

「にしても・・・」

 

自分の腕に持つ銃に目を向ける。

銃から聖遺物の概念のみを打ち出す。元々は遊佐司狼(ゲオルギウス)が弾丸に聖遺物の性質を乗せた攻撃を行っていたものから思いついた力だ。

試して見たが、思いのほか扱いやすい。

 

「んじゃ、俺らはーー」

 

戦いの準備でもしてるか。そう言おうとした瞬間、肩をガッシリと掴まれた。

・・・何故だろう、冷や汗が出てくる。

 

「マスター?少しお聞きしたい事があるのですが」

 

あれ?笑顔ってこんなに怖かったか?

 

「・・・なんだ?」

 

俺が顔を引きつらせながら聞くと、ヘルガはとてもイイ笑顔で、

 

「あの銀髪に眼帯をした少女ーーあの娘はダレデスカ?」

 

いや、あの、ヘルガさん?なんでそれ程までに圧力を放っているのですか?それと目からハイライトが消えておるのですが。

 

「モシヤーー彼女?」

 

その言葉と共に圧力が強まる。

 

「ちょ、ちょっと待てちょっと待てちょっと待て‼︎」

 

マズイ。なんか知らんがマズイ。

とりあえずラウラについての説明をする。そうすると、納得したように頷く。

 

「なるほど、そういうことでしたか。すいません、私とした事が思わず取り乱してしまいました」

「あ、ああ。気にするな」

 

ヘルガの性格が変わった気がする、今日この頃。

 

「君たちは何をやってるんだ・・・」

 

呆れた声に振り向くと、クロノを筆頭に魔導士達、そしてカインとヴァルキュリアが集まっている。ヘルガはいつの間にか消えている。

それらを見渡して一人足りない事に気づく。

 

「ん?おいクロノ。あのパチモン野郎は何処いった?」

「パチモン野郎?・・・ああ、天道寺か。彼ならアースラで眠ってるよ」

 

ため息を吐きながら言う。まあだいたい察しはつく。

 

「フェイトも脱出できたし、後はーー」

 

そこで頭上にまばゆい光が現れる。

 

「これは・・・」

 

そして、光から声が聞こえてくる。

 

『ーー形成(Yetzirah)

「なっ⁉︎」

「まさか⁉︎」

 

カインとヴァルキュリアが目を見開く。その言葉は、水銀に祝福された(のろわれた)者が紡ぐものだった。

すると、光が収まり、八神はやてがその手に一冊の本を携えていた。

 

夜天の魔道書(グリモア・ナハトヒンメル)

 

見間違えるなど在り得ない。それはまさしく聖遺物であった。

 

□■□

 

守護騎士達も無事戻り、後の問題は一つだけになった筈だったのだが・・・

 

「はやて、もう一度言ってくれませんか?」

 

ヴァルキュリアが真剣な表情で言う。カインも同じような表情だ。

 

「え?せやから、メルクリウスって人に会ったんやけど・・・」

 

そう、いつの間にかカール・クラフトが八神はやてに接触していたのだ。

 

「一応、気をつけていたつもりなんですがね・・・」

「油断していた僕らの落ち度だ」

「あの変態は何処に出てくっかわかんねえからな」

 

何にせよ、八神はやてはエイヴィヒカイトを施され聖遺物の使徒になった。

 

「あの、何かマズイ事でも・・・?」

 

はやては不安気な表情で聞いてくる。

 

「マズイっつーか、なんつーか・・・」

 

もう常人ではない事はたしかだ。言ったらめんどくさい事になるから言わんが。

 

「すまないが、その話は後だ」

 

そこでクロノが割って入る。海上にある巨大な淀みにめを向けながら説明する。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。時間が無いので完結に説明する。闇の書の防衛プログラムがあと数分で暴走を開始する。僕らはそれを、何らかの方法で止めなければいけない」

 

現在のプランは二つ。

一つ目は極めて強力な氷結魔法で停止させる。

二つ目は軌道上の艦船アースラの魔導砲、アルカンシェルで消滅させる。

だが、そのどちらも難しい案だった。

全員が考え込んでいると、そこで刑夜が新しい案を出してきた。

だが、その案は荒唐無稽で成功するとは思えないものだった。

しかし、彼らは聖遺物の使徒。荒唐無稽な案であろうと成功させる自身がある。

端から部の悪い賭けばかりだ。躊躇している暇はない。

さあ、始めよう。

 

□■□

 

「ふふ・・・」

 

刑夜達の場所より離れたビルの上、カール・クラフトはそこにいた。

 

「かくして役者は演壇へと集結し、歌劇は終曲へと歩を進める。それが悲劇になるか、はたまた喜劇になるか。何にせよ、彼は未知を見せてくれるだろう」

 

八神はやて。

この世界の魔導士達。

ヴァルキュリア。

トバルカイン。

ラウラ・ボルネフェルト。

そして、凶月刑夜。

踊れ、遍く万象よ。我が脚本に舞う舞台装置よ。

全ては女神の治世の為に。

 

「さあ、最後の歌劇を始めようか」

 

□■□

 

「始まる」

 

その言葉と共に複数の闇の柱が立ち昇る。

 

「夜天の魔道書を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム

ーー闇の書の闇」

 

柱が消え、澱みがはじけると、中から現れたのは額に女性を乗せた怪物だった。

 

「チェーンバインド!」

「ストラグルバインド!」

 

 アルフとユーノがバインドを放ち、周りの触手を縛り、千切る。

 

「縛れ、鋼の軛‼︎」

 

守護獣ザフィーラの放つ光の鞭が触手を薙ぎ払う。

 

「よし、んじゃこっちも動くか。その前に・・・カイン、ヴァルキュリア」

 

二人は夜刀へと目を向ける。

 

「これが終わったらカール・クラフトをぶん殴るぞ」

「「Jawohl」」

 

それじゃ・・・こっから先は、口以外で語り合おう。

 

□■□

 

ああ わたしは願う どうか遠くへ (Vorber, ach, vorber!)死神よどうか遠くへ行ってほしい (geh, wilder knochenmann! )

 

わたしはまだ老いていない (Ich bin noch jung,) 生に溢れているのだから(geh, Lieber!)どうかお願い 触らないで (Und rhre mich nicht an.)

 

刑夜は己を変える歌を紡ぐ。

 

私が犯した罪は( War es so schmhlich,ーー)

 

心からの信頼において(ihm innig vertraut-trotzt’) あなたの命に反したこと (ich deinem Geb)

 

ヴァルキュリアも、己が渇望を歌い上げる。カインの出番はまだ先だ。その間に魔導士達は行動を開始する。

 

「合わせろよ、高町なのは、龍宮 慎吾」

「言われずとも」

「ヴィータちゃんもね!」

 

最初にヴィータがグラーフアイゼンを構える。

 

「鉄槌の騎士ヴィータと、(くろがね)の伯爵グラーフアイゼン‼︎」

 

ヴィータの持つ槌が凄まじい大きさの巨大な槌へと変わる。

 

「轟天爆砕!ギガントシュラーク‼︎」

 

巨槌が一枚目の障壁を破る。

 

「なのは、行くぞ!」

「うん!」

 

高町と龍宮がデバイスを構える。

 

「エクセリオン・バスター‼︎

「クリムゾン・ブラスター‼︎」

 

桃色と紅色の砲撃が二枚目の障壁を破壊する。

 

美しく繊細な者よ (Gib deine Hand, )恐れることはない 手を伸ばせ (du schn und zart Gebild!)我は汝の友であり (Bin Freund )奪うために来たのではないのだから(und komme nicht zu stra)

 

「次!シグナムと麗奈ちゃんにテスタロッサちゃん!」

 

シャマルの合図に三人が動く。

 

「剣の騎士シグナムが魂、炎の魔剣レヴァテイン。刃と連結刃に続く、もう一つの姿」

『Bogen Form.』

 

レヴァテインがカートリッジを排出し、姿が弓へと変わる。

 

「翔けよ、隼‼︎」

『Sturmfalken』

 

弓より放たれた矢は、三枚目の障壁を破壊する。

 

「それじゃ、行くよ麗奈!」

「了解!」

 

フェイトがデバイスを構える。

 

「貫け、雷神!」

『Jet Zanber.』

 

振り下ろされた魔力で構成された巨大な刃が振り下ろされ、障壁ごと本体を切り裂く。

そして、続くように麗奈が行動を起こす。

 

「それじゃあ・・・この一撃、手向けと受け取れ」

 

麗奈の手にあるのは一本の紅い槍。

 

突き穿つ(ゲイ)ーー死翔の槍(ボルク)‼︎」

 

投擲された魔槍が闇の書の闇を穿つ。

 

「『私は愚かで あなたのお役に立てなかった (Wohl taugte dir nicht die tr' ge Maid,)

 

だからあなたの炎で包んでほしい (Auf dein Gebot entbrenne ein)』」

 

そして、詠唱は終わりを迎える。

 

「『ああ 恐れるな怖がるな (Sei guten Muts!) 誰も汝を傷つけない (Ich bin nicht wild,)我が腕の中で愛しい者よ (sollst sanft in)永劫安らかに眠るがいい (meinen Armen schlafent!. )』」

「『我が槍を恐れるならば(Wer meines Speeres Spitze furchtet,)この炎を越すこと許さぬ(durchschreite das feuer nie!)』」

 

ーー創造(Briah)

 

死世界・凶獣変生 (Niflheimr Fenriswolf)

雷速剣舞・戦姫変生 (Donner Totentanz――Walkre)

 

そしてーーーここに、凶獣と戦乙女が降り立った。

 

□■□

 

魔導士達がバリアを破壊し終わると同時に刑夜が飛び出す。

 

「Zarfall' in Staub deine stolze Burg‼︎」

 

周囲の触手を高速で切り刻み、本体の動きも止めていく。

 

「あれは・・・‼︎」

 

クロノは目を見開く。彼の銀髪は腰まで伸び、右目からは血がとめどなく溢れ出ている。

間違いない。彼が仮面の男ーーリーゼロッテとリーゼアリアに襲撃された際のものだ。

 

「おおおおォォォ‼︎」

 

瞬間、雷光と化したベアトリスが闇の書の闇へと向かっていく。夜刀程ではないが、彼女も凄まじい速さだ。

そして周囲の触手をあらかた消し、本体にも大きいダメージを与えると、二人は距離を取る。

上空では、はやてが魔道書を開いていた。

 

「彼方より来れ、ヤドリギの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け!」

 

詠唱と共に周囲に光の槍が複数現れる。

 

「石化の槍、ミストルティン‼︎」

 

放たれた槍が闇の書の闇へと突き刺さり、そこから石化していく。

だが、それだけでは終わらず、肉のようなものが膨れ上がり、醜く変貌する。

そして再び触手が現れて砲撃を放とうとするが、放たれる直後に一瞬で破壊されていく。

 

「End' in Wonne, du ewig Geschlecht‼︎」

 

そして凶獣変生した(かいぶつにかわった)刑夜が本体を蹂躙していく。

 

「Leb' wohl, prangende Gotterpracht‼︎」

「はああああァァァ‼︎」

 

刑夜とベアトリスが再び闇の書の闇へと攻撃していく。

 

「僕らも負けていられないな。行くぞ、デュランダル」

『OK,Boss』

 

デュランダル。元々のクロノのデバイスであるS2Uとは比べものにならない性能を誇るデバイスだ。

 

「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与えよ」

 

詠唱と共に周囲の気温が下がっていき、海が凍りついてきている。

 

「ーーー凍てつけッ‼︎」

『Eternal Coffin.』

 

凄まじい冷気の魔法が叩きつけられ闇の書の闇は全身を凍りつかせる。

 

「行くよ、フェイトちゃん、はやてちゃん」

 

なのはの言葉に二人は頷く。

 

「全力全開‼︎スターライトーーー」

 

なのはの元へ周囲の魔力が収束していく。

 

「雷光一閃‼︎プラズマザンバーーー」

 

フェイトの魔力刃へと雷が落ちていく。

 

「ごめんな・・・おやすみな・・・」

 

はやては一度瞑目し、再び目を開くと、覚悟の決まった表情になっていた。

 

「響け、終焉の笛。ラグナロクーーー」

 

三人の魔法陣に凄まじい魔力が集まっていく。

 

「「「ブレイカアアアアアアアァァァァ!!!!」」」

 

莫大な威力の砲撃により、コアが露出されたのを確認して、櫻井戒は動き出した。

その手には聖遺物、『黒円卓の(ヴェヴェルスブルグ・)聖槍(ロンギヌス)』が握られていた。

 

『血の道と 血の道と 其の血の道 返し畏み給おう』

 

戒の口より呪詛が紡がれる。

 

『禍災に悩むこの病毒を この加持に今吹き払う呪いの神風』

 

闇の書の闇よ、貴様の存在は容認されない。

 

『橘の 小戸の禊を始めにて 今も清むる吾が身なりけり』

 

貴様があの子を穢す事など許さない。僕がその穢れを引き受けよう。ゆえにーーー

 

『千早振る 神の御末の吾なれば 祈りしことの叶わぬは無し』

 

すべて腐り、(ごみ)となれ。

 

『創造』

 

許許太久禍穢速(ここだくのわざわいめしてはや)佐須良比給千座置座(さすらいたまえちくらのおきくら )

 

そして戒は核へと槍を振りかぶりーーー

 

「消えろ」

 

振り下ろした。

凄まじい腐敗の奔流に飲み込まれ、闇の書の闇は塵と化した。

 

これにて、歌劇は幕を閉じた。

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