踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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「塵も積もれば山となる?残念。所詮塵は塵でしかねえ」


餌と轢殺

アースラから戻った彼は自宅へは戻らず近所の森の中にいた。

あの後、魔導士達にあの力について説明を求められたので適当に誤魔化しておいた。

そして戻ってきたのだが夜だというのにやたら五感が冴えてしまっているため外に出てきたのだ。

そして現在ベンチに座り缶コーヒー(ブラック)を飲んでいる。

 

「そーいや高町とテスタロッサ、凄え睨んでやがったな」

 

人の事をまるで親の仇みたいに睨んでいた。ちなみに龍宮は肋骨にヒビが入っていたらしい。

 

「ま、愛しい彼をボコられたら嫌だわな」

 

もうとっくにあの二人が龍宮の事を好きだったのが理解できていたのだ。だけどくだらないプライドと勘違いで間違った考えを持っていた。

ケラケラと笑いながら再び缶コーヒーに口をつける。

 

「ちっ、もうねえのかよ」

 

そう言って空の缶コーヒーを上へと放り投げそれに杭を放つとパン、という音と共に弾け飛んだ。

ふと、自分の手を見る。

 

「今更だが、どうなっちまったんだろうな。俺の身体は」

 

直感的に理解できる。自分がもう人でなくなった事が。身体の成長はもうない。放っておけばずっとこのままだ。

まあ、身体の成長などいくらでも変えられるが。

 

「ま、心臓を抉り潰して生きていたら人間じゃねえわな」

 

そう言って立ち上がり、帰ろうとした瞬間、

 

ーーーァーーアァーーァーー

 

「あ・・・?」

 

何かが聞こえる。森の奥からだ。これはーー声だ。

ただの声じゃない離れてなお常人なら恐怖を覚える声だ。

だが、

 

「おいおい、面白そうなモンがあんじゃねえか。どれ、ちょっくら見物に行くか」

 

今の刑夜にとって見たらただの興味の対象でしかなかった。

 

□■□

 

「よっと、ここか?」

 

森の奥へと進み、たどり着いたのは小さな洞窟であった。

だが、その入り口は木の檻のようなもので閉じられ多大な量の札が貼られていた。

 

『ア・・・アアアァアアアアアァァァアア』

 

奥から響いてくる声。

 

「おっと、こいつは凄えな。どんだけ死にやがったんだ?」

 

それに類するものを宿しているから分かる。これは生者のものじゃない。亡者の声だ。

怒り、悲しみ、恐怖、恨み、それらが入り混じった怨嗟の声音。それも一人二人なんてもんじゃない、数え切れない程の恨みの持ち主達がこの奥にいる。

 

「そんじゃ、お邪魔しますよっと」

 

バキィ‼︎

 

木の檻を蹴りで粉砕する。洞窟の中は外よりも低い冷気が漂っている。

 

「・・・こいつは気温のせいじゃねえな」

 

そう言って奥に進んでいく。途中、様々な物が見つかった

妙な金属片や折れて錆びた刀や一昔前の生活用品、そしてーー

 

「当たり、だな」

 

刑夜の目の前にあるのは骨。しかも人のものだ。

 

『ア・・・アアアアァァアアアアァァア』

 

再び響く怨嗟の声。だんだんと近くなっていく。こちらが近づいているからだけでなく、声の主達もだんだんと近づいて来ている。

 

ーージャリ。

 

すると、目の前に一人の男性が現れた。

 

「よぉ、おっさんこんなとこで何やってんだ?」

『・・・・・・』

 

答えない。ただずっと俯いているだけだ。それに舌打ち一つ。

 

「まあどうでもいいけどよ、さっさと帰ったほうがいいぜ。ここ、かなりやべえからよ」

『・・・くい・・・』

「あ?」

 

男性がゆっくりと顔を上げる。その目は狂気で血走っていた。

 

「ははっ、んだそりゃ?顔芸でもしてんのか?」

『憎い・・・憎いいいいいぃぃぃ!!!!』

 

男は叫びながらこちらへと走ってくる。だが、

 

「うぜえ」

 

ザシュ‼︎

 

『ぎゃ・・・が・・・』

 

刑夜の杭によって身体を貫かれた。

 

「身体も持たねえ劣等以下の虫ケラが俺に勝てっと思ってんのか?」

 

そう言って杭を引き抜く。するとその男性が煙のような状態に変化し、杭へと吸い込まれていく。

 

「これで三匹目、か」

 

刑夜の持つ武器ーー『聖遺物』と呼ばれる物にはとある特徴がある。

それは、魂を喰らう事で力が増すというものだ。

他人の命を喰らえば喰らう程力を増す。さらに身体能力や防御能力も向上していき、それらも魂の数に比例していく。

肉体の損傷・欠損に関しても、魂を糧に瞬時に再生することが可能である。

そこで、ふとある事に気づく。

 

「なるほど・・・」

 

近くに落ちている骨を拾い、それを手で弄りながら言う

 

「ここが作られたのはかなり前。戦時中、いやそれよりもずっと昔、何らかの理由で浮かばれない魂が生まれそれが生者に死を誘発し、再び浮かばれない魂ができる。それが鼠算式に増えていきーー」

 

手の中の骨を握り潰し、眼前の光景に目を向ける。

 

「これ程の数になった、と」

 

そこにいたのは膨大な数の亡者の群体。ここで死んでいった者たち。この洞窟に大量にいた浮かばれない魂達が自分につられて現れたのだ。

 

『殺す・・・殺す・・・』

『どうして・・・なんで・・・』

『お父さん・・・お母さん・・・』

『苦しいよ・・・』

『死なせてくれ・・・頼む』

『許さない・・・』

『裏切りやがって・・・見捨てやがって・・・』

 

口々に言葉を発する。それらには様々な負の感情が込められており、常人なら発狂するかもしれない。

だが、彼は違う。

 

「ーーッカハ、ハハハ、ヒィーハハハハハハハハハ‼︎」

 

刑夜は眼前の光景に狂ったように哄笑する。

 

「面白え。塵も積もれば山となるってか?残念、所詮てめえらは塵でしかねえんだよ‼︎」

 

身体の全身から杭を生やし、それらを全て亡者達に向ける。そして、

 

「逝けや、ヴァルハラァァァ!!!!」

 

一気に打ち出した。

 

□■□

 

「ハッハー‼︎」

 

凄まじい勢いで駆け抜けながら亡者達を蹂躙していく。

 

「まだいやがんのか。しかも奥に行くにつれて数がさらに増えていやがる」

 

刑夜はうんざりといった表情で言う。

 

「仕方ねえ。塵如きに使うのは勿体ねえが・・・冥土の土産だ。涙流して感激しろや」

 

そう言って杭を身体の中に戻す。

 

Yetzira(イェツラー)ー――」

 

刑夜がそう口にした瞬間、彼の胸が光り、そこから何かが現れる。

 

暴風纏う破壊獣(リングヴィ・ヴァナルガンド)

 

現れたのは一台のバイク。だが、それから感じる圧倒的なプレッシャーからそれが闇の賜物と同じ聖遺物であるとわかる。

 

「ヒーーーヤッハーーー!!!!」

 

刑夜はそれに乗り、爆走する。ただ走るだけだが魂だけの彼ら亡者には耐えられるわけもなくただ轢殺の轍と化していく。

 

「オラオラオラァ‼︎」

 

さらに杭を連続で放っていく。

離れれば杭で貫かれ、近づけば粉砕される。

もはや一方的な蹂躙でしかなかった。

 

「うし、これであらかた片付いたか」

 

そう言って奥に行く。すると、比較的開けた場所に出た。

 

ーーガシャン。

 

何かの音が聞こえる。そちらに目を向けるとそこには妙なモノがいた。

 

「んだありゃあ・・・鎧か?」

 

そこにいたのは武士の鎧。鎧は手に持った刀を引き抜き、構える。

 

「へえ、なーんだお前」

 

そう言って腕から杭を生やす。

 

「殺る気満々ってか?いいぜ、上等だ。ぶっ壊してやっからかかって来な」

 

すると鎧はかなりの速さで斬りかかって来た。

それを杭で受け止め蹴りを放つが鎧は後退して避け、突きを放つ。それを身体を逸らして避け、そのまま掌底を放つが鎧は後ろに下がる事で衝撃を和らげた。

 

「魂だけの塵にしちゃあ結構やるじゃねえか」

 

その言葉と共に弾丸のように飛び出し、膝蹴りを放ち、それを鎧は両腕でガードするが勢いを殺しきれず後方へと吹き飛ばされる。

それに刑夜は疾走して追いつき鎧を引き寄せ拳を叩き込む。

吹き飛んで行く鎧に向けて杭を射出する。鎧は壁に叩きつけられ次に飛来してきた杭によって磔にされる。

 

「『Auf Wiederseh´n』ま、それなりに楽しめたぜ」

 

すると、鎧が持っていた刀が光の粒子と化して刑夜に吸い込まれていく。

 

「これは・・・」

 

そう言いながら杭とは別のイメージで聖遺物を出す。

それはいつもの杭ではなく、紅い刃であった。

 

「へえ、面白えじゃねえか」

 

そう言って帰ろうとした時、視界の端にとあるものが映る。

 

「なんだこれ?」

 

そこには木箱があった。少し大きめであり、多少は古く感じるが、それ程劣化していない。

その木箱にはとあるマークが着いていた。

 

「ハーケンクロイツ・・・ナチスのもんか?なんでこんな場所に・・・」

 

木箱を開ける。

中に入っている物を見て刑夜は驚愕する。

 

「おいおい・・・何の冗談だ?こりゃ」

 

そこにあったのは二丁の銃だった。独特の形状をしたグリップの銃。

『ルガーP08』と『モーゼルC96』どちらもドイツが使用していた銃であった。

 

「兵器の密輸・・・ここに隠してやがったのか?たしかにここは隠すにはうってつけの場所だが・・・」

 

木の箱の近く。そこには朽ち果てた骸があった。

 

「亡者共の死の誘発に耐えられなかったか、もしくはあの鎧に殺られちまったか。どっちにしろ死んじまったら本末転倒じゃねえか」

 

呆れ顔で言う。

 

「ま、折角だ。こいつは貰っていくか」

 

箱の中にある二丁の銃を手に持って元の道を進む。

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