踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。 作:めんどくさがりや
「何故こいつがここにいやがんだ?」
刑夜は困惑していた。目の前にいる少女にだ。
何故ISの登場人物であるラウラがここにいる?
本来なら存在しない筈の少女がこの世界にいる。いや、彼女は本人ではない。容姿や特徴こそ似通っているが、同姓同名の似通った人物という事だろうか。
「(ったく、こんな所でイレギュラーと遭遇しちまうとは)」
さて、どうしたものか。そう思案していると、
「おい」
「うおっ」
ラウラがこちらの顔を覗き込んでくる。
「名前」
「は?」
「私が名乗ったのにお前は名乗らないのか?」
少し不機嫌そうにそう言った。
「刑夜。凶月 刑夜だ」
「刑夜・・・?ああ、お前が彼女の言っていた」
納得したような表情でそう言った。刑夜は周りを見て聞く。
「んで?コイツらはてめえが殺ったのか?」
「ああ、銃で撃ってきた上に私を見て欲情したらしい」
「はあ、幼女趣味の変態共が。当然の報いだ」
その言葉にラウラは首を傾げる。
「んだよ」
「意外だな。お前は私が人を殺すしたのを知っても何も言わないのか?」
「・・・まあな」
たしかにこの状況は常人には辛いものだろう。元凶であるラウラに恐怖心を抱くかもしれない。
だが、刑夜はもう常人ではない。今更人間の死体を見たくらいでは同様しない。
「俺も随分と変わっちまったって事か・・・」
「何か言ったか?」
「いんや、別になんも。まあいいから着いてこい」
とりあえずラウラを家に連れて行く事にした。
□■□
家に入るとラウラは興味深そうに家の中を見ている。まるで、というよりはまんま子供だ。
「すぐに飯を用意すっからくつろいでな」
夜刀の言葉にラウラはコクリと頷く。
とりあえず今日は肉じゃがにアジの開き、ご飯に味噌汁といったメニューだ。
「Winter, ade ! Scheiden tut weh.」
いつものように歌を歌っているとラウラが反応する。
「それはドイツの歌か?」
「ん?ああ、おふくろが色々と教えてくれたからな」
というかドイツ語の殆どを母親に教わった。
「母親?お前ユリアーネの息子だったのか?」
「義理のがつくけどな。まあ俺にも一応ドイツ人の血が入ってるらしい」
母親がいつの間にか遺伝子検査をした結果でわかったそうだ。
「うし、出来た」
完成した料理を机に並べていく。
「おら、座れ」
「うむ」
ラウラが座ったのを確認して自分も席に着く。
「「Mahlzeit」」
そう言って夜刀は食べ始めようとするがラウラはじっと見ているだけで食べようとしない。
「刑夜」
「あ?」
「コレはどうやって使うのだ」
そう言って箸を指差す。
そう言えばそうだ。こうして流暢に会話しているが彼女は生粋のドイツ人。箸などとは縁がないのだろう。
とりあえず箸の使い方を教えたが慣れていないためかぎこちなく感じる。
「むう・・・」
「はあ、おいラウラ。口開けろ」
「む?」
疑問の声を上げながらも素直に口を開けるラウラに肉じゃがを放り込む。
「お味は?」
「上手い」
「そりゃ良かった」
するとラウラが再び口を開ける。
「ん」
「てめえは雛鳥か」
呆れながら再び口に放り込む。
□■□
夕食を食べ終え、刑夜はラウラに様々な質問をしていた。
ラウラは今よりも幼い頃に親に捨てられ孤児院で生きてきたのだという。
さらにその孤児院もまっとうなものでなく、人殺しの技術を教えられたという。
「そりゃまた、随分と波乱万丈な人生だこと」
「あの頃は人殺しが日常と言っても過言ではなかった。殺さなければ殺される。そんな生活だった」
だが、その日常も終わりを迎える。
孤児院の存在が軍にバレたのだ。殺人鬼を生み出すような場所を国が黙って見過ごすわけがない。
そのため孤児院は潰れた。路頭に迷ったところをユリアーネに拾われたらしい。
「私があの人に拾われたのは本当に幸運だった。それに、この瞳も受け入れてくれた」
「瞳?」
ラウラは左目の眼帯を外してこちらを向く。
その瞳は、金色に染まっていた。
「それは?」
「私は生まれつき、特殊な力を持っているんだ。そこのボールを投げてみてくれないか」
言われたとおりに投げる。
ボールはラウラの目の前でピタリと止まってしまった。まるでラウラの目の前に見えない壁のようなものがあるようであった。
「私には周囲にあらゆる物の動きを停める結界のようなものを発生させる力がある。あの人はこの目の事を『ヴォーダンオージェ』と呼んでいたが」
そう言って眼帯を着けるラウラ。
刑夜は頭の中で情報を纏める。
人殺しに特化した力、あらゆる物の動きを停める停止結界を展開する瞳。
「(なるほど、おふくろが訳ありって言うのも頷けるな)」
後は自分がなんとかすればいいだろう。
□■□
ピピピピピ。
電子音が鳴り響く。どうやら風呂が湧いたようだ。
「おいラウラ。先に風呂入っていいぞ」
「風呂?」
刑夜の言葉にラウラは首を傾げる。
「おいおいまさか知らねーわけじゃねえだろうな」
「いや、そういうわけではないが」
「だったらさっさと入ってこい。脱いだ服は籠に入れておいてくれ」
「わかった」
そう言ってラウラは風呂場に行った。
刑夜はやることも無くソファーに座り込む。
この数日、様々な事が起きた。
人間を辞めた事、多量の魂を取り込んだ事、ラウラに出会った事。
これらが偶然の上で成り立っているのだから驚愕だ。
さらに自分の身体に住み着いている二匹の化物。
忌まわしき凶獣と闇の不死鳥。その二匹はだんだんと自分に吸収されている。そしてその度に別の誰かの記憶が夢の中に出てくる。
あれらは一体何なのだろうか?
「(ま、気にしても仕方ねえか・・・)」
などと考えているとペタペタと足音が聞こえてくる。
「刑夜、出たぞ」
その声に振り返ると、
「・・・・・・は?」
全裸のままバスタオルで髪を拭いているラウラの姿があった。
「な、っちょ、おま!き、着替え!服!」
「む?服なら籠に入れておいたが?」
「変えの服は⁉︎」
「無い」
「ざっけんじゃねえ‼︎」
刑夜は出来る限りラウラを見ないようにしながらジャージを取り出す。
「さっさとこれに着替えろ‼︎」
「む、何故そんなに慌てるのだ?私は気にしないぞ?」
「俺が気にすんだよ‼︎てめえの羞恥心が皆無なのはよくわかったからさっさと着ろ‼︎」
ラウラは刑夜が渡したジャージに着替える。その間、夜刀はずっと後ろを見ていた。
「ーーったく、何だってんだ」
この正体不明な状況に目眩を覚えながら振り向けば、袖も裾もかなり余らせた状態のラウラがソファーに座っていた。
「やっぱサイズは合わないか」
「いや、着れれば何だっていい」
そうは言うがいつまでもダボダボのジャージを着せるわけにもいかない。
どうしたものかと思案していると玄関のインターホンが鳴り響く。
『宅急便でーす。お荷物お届けに上がりましたー』
届いたのはダンボール(大)が二箱。開けてみると中には女物の服が入っており上にあるメモには『ラウラに着せるように』と書いてあった。
とりあえず服の問題は解決したので、ラウラに服は必ず脱衣所で着るようにと言っておいた。
□■□
数日後、いつも通りに学校に行ったのだが、何処か違和感があった。
「何だあ?」
辺りを見るといつものように談笑しているグループがあった。そして違和感の正体がようやく理解できた。
「高町がいない?」
刑夜の呟きに反応した人物が二人いた。龍宮と園城だ。園城は悲しそうな表情をし、龍宮にいたっては拳を強く握りしめている。
それでだいたいが理解できた。
《よお、龍宮に園城。聞こえてんだろ?》
「「!?」」
二人が驚いた表情でこちらを見て、すぐに落ち着いた表情になる。
《・・・なんだ》
《はっ、そう警戒すんなって。ちと話があってな》
《こっちにはあんたと話す事なんて何もないのよ。だからーー》
園城の言葉に被せて言う。
《高町が落とされたんだろ?》
「「ッ‼︎」」
二人が目を見開く。
《お前、なんで・・・》
《おっと、詳しくは放課後だ。俺の家で話をしよう》
その言葉に園城が不満そうに言う。
《なんで私達があんたの家になんか・・・》
《わかった》
《なっ、ちょっと慎吾⁉︎》
園城が慌てるが龍宮にとっては刑夜に様々な事を聞く機会であると思っている。
園城にとって見たら今まで嫌悪感すら抱いていた相手の家に行く事なんて考えられなかったようだが。
「(それに、あいつの正体を知るちょうどいい機会だ)」
刑夜が一体何になったのか、何を手に入れたのか。
それを知るため、彼は刑夜の家に行く事を決定した。