踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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「舐めたな、俺を。ならばいいさ、吸い殺してやる。まずはお前だヴァルキュリア」


薔薇の夜

結界外。そこには数人の魔道士達がいた。本当なら自分達も中へと行きたいのだが待機命令が下されている為中へと入れない。先ほどからサーチャーを飛ばしているのだが戦いが激しいためによくわからない。

 

「レイジングハート、わかる?」

 

なのはが自分の愛機へと語りかける。

 

『・・・いえ、戦闘が激しすぎます。残念ながら中の様子はわかりません』

「そっか・・・」

 

なのははそう言って再び結界へと目を向ける。

 

「なんで凶月君は一人で・・・」

 

その疑問にクロノが答える。

 

「アースラで彼が言ったとおりだよ。今の刑夜にとって僕らは文字通り邪魔者でしかないんだ」

「そんな・・・」

 

なのはにとって刑夜にいい思いを持っているというわけではないが、それでも一応は仲間である。龍宮への行為は許し難いものだったが。

 

「しかしあの守護騎士達にまさか協力者がいたとは・・・」

 

クロノの言葉にフェイトが反応する。

 

「今までノーマークだったのに突然出てきたのも驚きだけど何より」

「凶月とやりあっている時点で強敵なのは間違いない。全員警戒をーー」

 

その瞬間、全員の身体に異変が生じた。突然の息苦しさに強烈な虚脱感が襲う。

 

「うぁ・・・い、一体何が・・・」

 

そこでなのはが上空を見上げ声を上げる。

 

「あ、アレは何なの・・・?」

 

その言葉に全員が夜空を見上げ、驚愕する。

 

「紅い・・・月?」

 

□■□

 

頭上に輝く血のように紅い月。今日この時、夜はさらに深い闇へと包まれる。

 

「ぐぅ・・・」

 

ベアトリスが苦しそうにうめき声を上げる。今の刑夜は創造の位階に達した事によりベアトリスと同じ土俵に立ったと言っていい。

さらにこの夜はベアトリスの力を吸い取る為に物質透過も意味をなさない。

ベアトリスの眼前に夜刀が立つ。

 

「どうよ、効くだろう?ヴァルキュリア。最高だろうこの薔薇の夜は」

 

今の刑夜には傷が存在せず、それどころか戦闘の疲労すらも消え去っている。

 

「うぐっ・・・‼︎こ、これは・・・‼︎」

 

ベアトリスはこの創造がかつての使用者と違う事に気づく。強くなっているのだ。

それは至極単純であると同時に、厄介と感じ取るもの。

薔薇の夜が強く、深くなっている。それが意味する事は、

 

「まさか、あの二人の蓄えた魂をも宿しているという事ですか ・・・?」

「まあ、そういう事だ」

 

最悪だ。ベアトリスからしたら今の刑夜はかつての『白騎士(アルベド)』と同等かそれ以上の力を有している事になるのだ。

 

「おいおい、何怖気付いてやがんだ。あんまりボーッとしてるとーーー」

 

 

ーーー殺しちまうぜ?

 

 

「ーーーッ⁉︎」

 

ベアトリスは悪寒を感じ取りすぐさま上空へと退避する。。すると先ほどまで自分が立っていた場所に足元から突き刺すように杭と刃が飛び出した。

 

「まあ、この程度なら避けられるか。だが、まだ終わりじゃねえ」

 

すると上空にいるベアトリスへと杭を機関銃の如くあらゆる方向から撃ち出す。それらを物質透過などでなんとか避ける。だが次の瞬間、

 

「ッ⁉︎」

 

いつの間にか刑夜がベアトリスの上に移動しており、

 

「落ちろやァ‼︎」

 

両手を組んで叩きつけた。さらに追撃として魔力弾を撃ち出す。非殺傷設定は既に解いてある。聖遺物の使徒を相手にそのような手加減など無用だ。

故に全力で潰す。あの黄金の獣のようにーーー

 

「・・・チッ、俺らしくねえな」

 

脳裏に浮かぶ考えを振り払う。

 

「羨ましいよ。お前らみてえに自分を持ってる奴らが」

 

眼下に目を向けるとボロボロになりながらもベアトリスが立ち上がる。

 

「俺にはよお、自分を示すモンが殆どねえんだわ」

 

自分の持つ力は結局のところ貰い物だ。彼自身のものではない。

 

「あの人みてえに総てを愛してるわけじゃねえしてめえみてえに戦場を照らす光になりたいなんて高潔なモンも持ち合わせちゃいねえ。あるのはこの名と、全身に流れる畜生の血だけだ」

 

だからこそ羨ましく感じる。己を示す事が出来る彼らが。

自分に出来るのは、魂の総てを掛ける事だけだから。

そして刑夜は言う。

 

「てめえが黒円卓に列なる者なら‼︎あの人のレギオンなら‼︎魂掛けろやあああああァァァァ‼︎」

 

そう叫びベアトリスへと向かっていく。

 

「言わせておけば・・・‼︎」

 

そう言ってベアトリスもまた、刑夜へと向かっていく。

 

「ふざけるな‼︎何が黒円卓だ、何がレギオンだ‼︎私は死人で出来た道なんか照らしたくない‼︎」

「はっ‼︎言うじゃねえか‼︎くびり殺してやらあああああ‼︎」

 

そう言って再びぶつかり合う。だが、刑夜の創造によりベアトリスは力を吸い取られている為、そう長くはもたない。

このままでは負けてしまう。その時、煌びやかな輝きを放つ武器が飛来してきた。

 

「「!?」」

 

それらを二人は全て避ける。

 

「コイツは・・・‼︎」

 

刑夜はその攻撃に別の意味で既知感を感じた。

 

「おい‼︎そこのモブ野郎‼︎」

 

予想通りの声が聞こえて思わず頭を押さえる。ベアトリスは刑夜の様子を不思議そうに思いながらも警戒する。

 

「・・・なんでてめえが来やがったんだよクソが」

 

そこにいたのは黄金の甲冑を纏った金髪の少年、天道寺 雅臣。

刑夜はすぐさま結界の外にいるであろうクロノへと念話を送る。

 

《おい、どういうつもりだ》

《・・・すまない。止めたんだが》

 

やはり天道寺の独断らしい。刑夜からしたら突然横槍を入れられいい迷惑だ。

 

「おい、てめえn「ああ⁉︎オリ主の俺に何生意気な口きいてやがる‼︎」

 

天道寺の言葉に軽く殺意が湧く。

 

「あの、刑夜?あそこにいる個性的な少年はあなたの知り合いですか?」

「ふざけんな。あの水銀とは別のベクトルでうぜえ奴が知り合いなんざ認められっか」

 

そこで天道寺がベアトリスに気づきニコリと笑いかける。

 

「ーーーッ⁉︎」

 

ベアトリスはその笑みに凄まじい悪寒を感じた。

 

「やあ、初めまして。君、そんな物騒なものは置いてさ、こっちに来なよ。君と俺の仲じゃないか」

「・・・あなたとは初対面ですよね?突然現れて何を言ってるんですか?」

「ははっ、そうツンツンするなよ。もしかして一目惚れしちゃった?」

「(UZEEEEEEEEEEEEEE!!!!)」

 

ベアトリスの顔が引きつっている。

 

「おい‼︎モブ野郎‼︎何彼女に纏わり付いてやがる」

 

今度は刑夜へと矛先を向ける。

 

「・・・一人で妄想垂れ流しやがって」

 

今の刑夜はかなりキレている。戦闘にくだらない横槍を入れられ、挙句にそいつがくだらない事を言っている。

 

「あー・・・あれか?ベイの野郎の呪いが俺にもあると?つまり俺はこの虫ケラのせいで獲物を取り逃がしちまうと?あっはははは」

 

そう笑い、叫ぶ。

 

「ざっけんじゃねえぞこの劣等があああああああァァァァ!!!!」

 

そして夜刀は全力で天道寺の元へと飛ぶ。

 

「てめえ、オリ主に逆r「黙れええええええェェェェ‼︎」ぐっはあああああああ⁉︎」

 

天道寺が行動するより先に殴り飛ばす。天道寺は凄まじい勢いでビルへと突っ込む。さらにそこへ蹴りをいれる。

 

「ごっほああああああ⁉︎」

「まだ終わりじゃねえぞ?歯ァ食いしばれや身の程知らずのカスがあああああ‼︎」

 

再び顔面へと拳を叩き込み殴る。殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

 

「ご、が、ぎぃ、あが、ぶっ、ぎゃ」

 

そして一通り殴り、

 

Fliegen Sie weg.(吹き飛べ)

 

そのまま一気に殴り飛ばす。

 

「はっ、人の戦いにアホな横槍入れやがった報いだ。そのまま寝てな」

 

そう言って視線を外す。どうやらベアトリスはいないようでそれに再び機嫌が悪くなる。

 

「ったく、しょうもねえ。まさかこんなアホに邪魔されるとはな。こんな日は早く帰ってーー」

 

そこで勢い良く振り返る。何かに見られている気がした。だがそれは刑夜が振り返るとゆっくりと霧散していった。

 

「(勘違い・・・いや、違う)」

 

その視線はネットリと、こちらを値踏みするかのようであった。

 

 

ーーまるで、蛇のように。

 

 

「(蛇・・・まさかな)」

 

疑問に思いつつそのまま結界を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、なるほど。その生に色は無く、故に魂を燃焼させその炎で色無き生を照らすか。実に興味深い」

 

刑夜達より遠く離れた場所にとある男がいた。襤褸切れのような外套を羽織りまるで影のように希薄な存在の青年のような老人のような男。

聖槍十三騎士団副首領。黒円卓第十三位 水銀の王(メルクリウス)。『カール・クラフト』。

 

「しかし生に色が無いという事は、逆にどのような色へも成りえるということ。彼はどのように変わるのだろうか?」

 

そう言って踵を返す。

 

「魅せてくれたまえよ少年。君は彼の爪牙に成りえる可能性を秘めているのだから」

 

そのままカールは陽炎のように消えていった。

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