踏み台から串刺し公×凶獣へと変わった彼。   作:めんどくさがりや

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「俺の魂が何色だろうと関係ねえ。俺は俺だ」




蛇との出会い

とある日、刑夜は森の中にいた。その手にはデバイスが握られ油断無く辺りに気を配り、構えている。

そして次の瞬間、木の上から何かが飛び出してきた。

 

「オラァ‼︎」

 

そちらへ向け引き金を引く。だがそれはそれに当たる直前に突然停止する。そしてそれが地面に降り立つと低姿勢で這うように向かってくる。

 

「チィ‼︎」

 

そして向かってくる者へと視線を向ける。

銀色の長髪、深紅の瞳。ラウラだ。だが今の彼女は眼帯を外しており、その金色の瞳が晒されていた。その手にはデバイスが握られていた。

元々ラウラにも高い魔力が存在していた。刑夜はラウラを関わらせるつもりはなかったのだが彼女が願った為に渋々承諾した。

そして現在、ラウラとデバイスを慣らすための模擬戦をしていた。本来なら聖遺物の使徒である刑夜にあくまで一般人であるラウラが叶うはずがない。ならば何故ラウラはこれほどまでに戦えるのか?

実はラウラと刑夜の間には魂同士のパスが繋がっているのだ。

ラウラの持っているヴォーダンオージェは停止結界を展開させるだけでなく他者の魂とパスを繋ぎ同調する事かできる。それはつまりラウラも聖遺物の加護を受けているという事である。

 

「チィ、速えなオイ‼︎」

 

先ほどから地形を利用してあらゆる方向から攻撃してくる。

 

「しまっ⁉︎」

 

そしてラウラの刃が刑夜をとらえた瞬間、

 

ガギン‼︎

 

「ッ⁉︎」

 

ラウラの刃をあろう事かデバイスの銃口で受けた。先ほどまでの焦った顔は演技である。刑夜は笑みを浮かべて言う。

 

「残念」

 

そのまま魔力弾を放ちラウラの手からデバイスが弾き飛ばされる。

 

「私の負け、か」

「ま、ここまで出来んだったら上々だろうさ」

 

そう言ってデバイスを待機形態へ戻す。

 

「しかしデバイスというのは便利なものだな。非殺傷設定とやらのおかげでためらいなく刃を振るえる」

「あっても無くてもお前は躊躇わねえだろうが」

 

クルクルとデバイスを回しているラウラに刑夜が呆れ顔で言う。

 

「そんじゃ、飯食いに行くか」

「そうだな。もう昼時だ」

 

そう言って森を出る。

 

□■□

 

刑夜達はとりあえず近くにあるファミレスに入る。やはり昼時である為満席のようだ。

 

「すみません。只今混雑しているため相席でよろしいでしょうか?」

 

店員がそう言う。

 

「俺は構わない」

「同じく」

 

そう言うと店員は少々お待ちくださいと言うと席の方へと言った。

 

『お客様、こちら相席でよろしいでしょうか?』

『私は大丈夫です。戒は?』

『僕も大丈夫です』

 

そのような会話が聞こえてくる。刑夜はその声に既知感を感じた。

 

「・・・まさか」

 

そのまま店員に案内されてとある席に行く。そこにはーー

 

「あ⁉︎」

「やっぱりかよ・・・」

 

その席には、ベアトリスがいた。そしてーー

 

「えーと、ベアトリス?彼とは知り合い?」

 

今の彼はだいぶ幼くなってしまったが間違いない。

聖槍十三騎士団黒円卓第二位"死を喰らう者(トバルカイン)"

櫻井 戒。

彼もこの世界に来ていたのだ。

 

「・・・ええ、あなたも知っている人物ですよ」

 

その言葉に一瞬目を見開きこちらを見る。そして納得したような表情で言う。

 

「なるほど、彼が。言われてみればたしかに似ている。ああ、自己紹介がまだだったね。僕は櫻井 戒。よろしく」

「凶月 刑夜だ。てめえの事は一応知っている。後、こっちが」

「ラウラ・ボルネフェルト」

 

そう言って頷く戒の反対側の席に座る。そうするとベアトリスが口を開く。

 

「それで、何故あなたがここに?」

「飯食いに来たに決まってんだろうがこの阿呆」

「ベアトリス。流石にここで今の質問は・・・」

 

二人して呆れた顔を向ける。

 

「な、なんですか二人して。ちょっと間違えただけじゃないですか」

 

そう言っているベアトリスを無視してメニューを見てラウラと共に注文する。

 

□■□

 

「ところで刑夜。この二人は誰なんだ?」

 

突然ラウラがそのような質問をしてきた。

 

「俺と同類。こう言えばわかるだろ?」

「ああ、聖遺物の使徒か」

「そういうこった」

 

すると今度はベアトリスが口を開く。

 

「あの、ベイ、じゃなかった。刑夜、その少女は?」

「ん?ああ、血は繋がっていないが俺の家族だ」

「へえ・・・」

 

ベアトリスは夜刀をまじまじと見てくる。

 

「んだよ」

「いえ、あなたが普通に家族を肯定するのが珍しいなと思って」

 

その言葉にため息を吐く。

 

「俺がそんな人でなしに見えるか?俺は家族を否定したりはしねえよ。・・・一部例外はいるがな」

 

そう言ってジュースを飲み、言う。

 

「俺が何より嫌悪してんのは俺自身の血だ。この身に流れる畜生の血が何より汚らわしい」

「・・・あなたも、ベイ中尉と同じなんですか?」

「詳細は違うがな」

 

ヴィルヘルムは近親相姦で出来た自分の血を、刑夜は自分を捨てた存在の血が流れている事に嫌悪している。

 

「俺の事はいい。お前らに聞きたい事があってな」

「聞きたい事?」

「なんですかそれは?」

 

二人して疑問符を浮かべる。

 

「お前らはどういった経緯でこの世界に来た?」

 

その言葉にベアトリスが言う。

 

「経緯も何も、あの男が突然私達をこちらの世界に送ったんですよ。しかもこんな子供の姿で・・・」

「いいじゃないか。それに僕としてもベアトリスの幼い姿はなかなか新鮮だ」

 

そう言う戒にベアトリスは不満気な表情を見せる。

 

「これでも私は年上なんですよ?」

 

その言葉に刑夜が言う。

 

「ああ、見た目少女だけどお前年m「ナニカイイマシタ?」・・・いや、なんでもない」

 

ベアトリスのイイ笑顔に刑夜は顔を引きつらせる。

 

「それよりもなんでそんな事を聞くんだい?」

 

その言葉に刑夜は答える。

 

「多分だが、カール・クラフトがこの世界にいる」

「「!?」」

 

その言葉に二人は驚愕する。

 

「まだ姿は見せていないが、気配を感じた。おそらく何かしらの動きを見せるだろうな」

「なるほど、あの男が・・・」

「だとしたら僕達も気をつけないと。あの男が闇の書に興味を持ったら彼女が危ない」

 

彼女、というのは今代の闇の書の主の事だろう。

 

「そういや、黒円卓の面子はここにいるので全員か?」

「そうだね。僕とベアトリス、君の中にいる二人を合わせたら四人。いや、カール・クラフトもいるのなら五人か」

 

いったいカール・クラフトの目的は何なのだろうか?いや、あの男の目的はいつもたった一つだ。

 

「これも、女神のためなのか?」

「わかりません。ベイ中尉だけでなく、大隊長までもを犠牲にして何をしたいのか・・・」

 

その時、

 

「愚問。私はいつだって愛しき女神の為に行動しているよ」

『!?』

 

突然隣の席から声が聞こえてくる。そちらに目を向けると、そこにはスーツ姿のカール・クラフトがいた。

 

「久しぶりといったところかな?ヴァルキュリアにカイン。そしてーー」

 

するとカール・クラフトは刑夜を見る。

 

「初めまして。凶月 刑夜、色を持たぬ者。君とあいまみえるのはこれが初めてかな?」

 

そう言われたが刑夜はそれに答える余裕などなかった。

 

「け、刑夜?」

 

ラウラが戸惑ったかにような声を出す。

 

「ア、アア・・・アアアアアア・・・‼︎」

 

今の刑夜の状態は異様であった。身体中から赤黒い杭や深紅の刃が生え、その瞳は獣の如く凶暴なモノへと変貌し、右眼からはとめどなく血が流れ出ている。

何より刑夜の中は溢れ出る強烈な殺意で埋め尽くされようとしていた。

 

「クソガ・・・‼︎聖遺物ガ暴走シテ・・・ラ、ラウラ・・・二、逃ゲ・・・」

 

そこまで言った次の瞬間、

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

刑夜は突然カール・クラフトへと攻撃を始めた。

 

「おや、最早消えたものかと思っていたのだがね」

 

それらの攻撃を避けていく。

店内に一般人はいない。いつの間にかカール・クラフトが異空間のようなものを作り上げていたのだ。

 

「Würfel, Valhalla‼︎」

 

刑夜は叫び声を上げ杭をカール・クラフトへと打ち出す。

 

「ふむ、なかなかやる。流石は彼の軍勢(レギオン)

「Verschwinden Sie‼︎」

 

咆哮を上げ攻撃をしようとする。だが、

 

「だが、お前はもういらんぞシュライバー」

「グゥ⁉︎」

 

突然刑夜の身体が何かに拘束された。必死に動かそうにもビクともしない。

 

「その少年の身体を好き勝手にさせるわけにはいかないのでな。用済みの役者には退場願おう」

 

そう言ってカールが彼の頭に触れようとしたその時、

 

「・・・ざっけんじゃねえぞゴラアアアアァァァ‼︎」

「ッ⁉︎」

 

突然カール・クラフトへと杭が放たれる。

 

「ほう、意識を取り戻したか」

 

刑夜はカール・クラフトを睨む。

 

「てめえごときが、俺のモンに手を出してんじゃねえ‼︎こいつらは俺のモンだ‼︎」

 

その言葉にカール・クラフトは感心したような声を出す。

 

「ふふふ、やはり興味深い。元より奪おうなどとは思っておらんよ。今日は確かめに来ただけだ」

「何?」

 

刑夜は疑問の声を上げる。

 

「君は自分が特異な存在であるという事を認識しているかね?」

「特異?」

「左様。人にはそれぞれ魂の色がある。極悪非道な者なら黒、清廉潔白な者なら白。もちろんこれ以外にもある。魂の色は多種多様様々だ」

 

それに刑夜はカール・クラフトが何を言いたいのかが理解できなかった。

 

「てめえは一体何を言いたい?」

「まあ話を聞きたまえ。魂の色は言わばその人物の存在を表しているのだよ。では問おう。君の魂は何色だと思う?」

「・・・・・」

 

その言葉に刑夜は答えられない。自分の魂の色など知らないのだから。

 

「答えられぬか?ならば答えよう。無色だ」

「無色?」

「そう、君の魂には色が無い。さながらそれは空気のよう。何も知らぬ純粋無垢な幼児のよう。どの色でもなく、故にどの色にもなれる。そう、無限の可能性を秘めているのだよ。君はどの色へと変わるのかな?」

 

意味がわからない。突然お前の魂に色が無いなどと言われてもどう反応すればいいのだろうか?

 

「実を言うと獣殿が君に興味を抱いているのだよ」

「ハイドリヒ卿が・・・」

 

その言葉に目を見開く。するとカール・クラフトが足をトンと鳴らす。すると刑夜の意識が遠のいていく。

 

「いずれまた、グラズヘイムで会おう。少年よ」

 

カール・クラフトのその声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、彼はどのような物語を見せるのだろうか。実に楽しみだ。ふ、ふふふ、ふはははははは、はははははははははは!!!!」

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