生きていくのが詰みの状態から勝つ話 作:真人嫌い
本作を書くにあたって、与家の情報等をこっちで考えたものを採用しています。なるべく原作に沿う予定ですが、幸吉は死なないです。
神様の手違いだとかなんだとか、よくわからないが俺はネット上の一大コンテンツである異世界転生をし、第二の人生を手に入れた。転生の際に特典を与えると聞き、絵にかいたような展開に胸を躍らせた。特典については転生した先で自身を助けるものになると言っていた。
転生の際には、生前と定義される記憶はほぼすべて消えた。引き継いで持ってこれる知識は大きく分けて三つ。これから転生する世界が『能力の持たない人を襲う化け物を、能力を持つ主人公たちが倒す王道ストーリー』という神様からのお達し、そして転生先の物語を知っていればその展開の知識。最後に神様が選ぶ知っていたら助かるであろうというその他の知識だ。
以上のことだけ告げられて俺の意識は一度暗転した。
再び目を覚ました時に感じた感覚は
痛い
俺が生まれ変わって最初に得た感覚だ。
新たな生を謳歌できるという喜びでも、自身が望んだ世界に転生した感動でもない。ただ全身をつんざく痛みだけが俺の中になった。
生まれ変わった世界は事前に伝えられていた通りのものだった。非術師には見えもしない呪霊が跋扈する世界、人々を襲う呪霊を呪術を操る呪術師が祓う王道ストーリー。当然知っていた、しかし一番の問題は転生した先だ。
呪術廻戦
推しが死ぬ、展開がえぐい。早く殺してくれと毎週某青い鳥のSNSが阿鼻叫喚になっていた原因でもある。
そんな世界の中、俺は
天与呪縛。生まれつき与えられた縛りの代償に強力な能力を得る先天性の特異体質のことだ。俺は右腕と膝から下の肉体を失い、さらには下半身の感覚欠如に加え月の光に触れるだけで焼けてしまうほどに肌は脆い。その縛りの対価として日本を軽く超える広大な術式範囲と、圧倒的な呪力を得たキャラクターだ。
転生先の世界を圧倒的火力で俺ツエーするどころではない。全身を指す痛みの生で俺は満足に動くことすらできなかった。
転生ということで幼少期から自我が確立していたのもまずかった。生まれながらに痛みにさらされ続けることは想像できないほどに苦しい。自我の無いただの赤子だったらどれだけよかっただろうか。
与家は京都に本拠地を置く小さいながらも呪術師の家系としてあった。
呪術師としてはよくて二級程度の術師しか排出してこなかったが、変わった術式を持つことでその地位を確立してきた。モノづくりを通して呪術にアプローチをかけるというほかにはない形で術式を使う。例えば、彫刻に術式を刻み結界の起点にすることや、絵画を通して人だけではなく空間に暗示をかけるなど。強力ではないものの、得意な性質を持つ術式は価値があったのだ。もちろん人の意識を操るような強力な術式ではないが、結界術としてはそれなりに有名だった。ほかにも、表の顔で芸術家として活動していたため、呪術界でも現実世界でも必要となる金銭は十分に確保できていた。
天与呪縛が生まれたのは与家始まって以来初めてだった。さらに他に聞く天与呪縛よりも圧倒的に縛りが大きいため、与家の術式が更なる形へと進化するのではないかと考えた与家は全財産をはたく勢いで俺の治療を試みた。しかし、時間をかけてもなかなか好転しないことから、治療よりかは延命処置を行うこととした。
結果、中学一年の年の頃である俺は表皮の治療液剤が満たされた生命維持装置に全身を浸し、体には様々な機材につながるチューブが接続されていた。あらゆる害が届かないような地下深くでおれは体の自由を完全に失ったのだ。
しかし慣れとは恐ろしいもので、生まれてから365日ずっと同じ痛みにさらされ続けた結果苦しいもののある程度無視できるようになってしまった。
そうして生まれた少しの余裕を使って、俺は原作同様に呪操傀儡の作成に乗り出した。広大な術式範囲により全国どこでも稼働できるような汎用性を最終目標に俺の開発は始まった。
まず初めに俺が手を出したのは傀儡作成の補助となるアームだ。右腕がないことからも俺の片手でできることなどたかが知れている。そのためまずは作業用アームを作らなくてはならない。しかし、これに関しては与家が融通を利かせてくれた。用途と要望する機構で発注したら、俺の満足にいくものではないものの一応作業ができるようなアームが届いた。これでいろいろと作っていける。
そうして初めての自作傀儡として選んだのは偵察用の傀儡だ。この地下室に隔離されてからどれほどの時間が立ったのかがわからない。今の状況を確認しなければせっかくの原作知識も使うに使えない。転生した結果唯一与幸吉という存在が物語の中でのイレギュラーになるかと思うが、現状俺は何もできていないので原作が大きく変わることはないだろう。
そんなわけでまずは偵察タイプだ。これのイメージは固まっていたのですぐにでも作業に入った。まず手始めにガラケーを要求した。これから作成するのは生前に見ていた作品に出てくるロボット、フォンブレイバーだ。フォンブレイバーとはガラケーから変形する偵察用途を中心とした小型ロボットだ。本作であるケータイ捜査官7では自立型のロボットだったが今回俺が作るのはあくまでも自身で操作するため構造が簡単になるから幾分か楽だろう。
初めての作成で躓く点は大いにあったが、転生したときに与えられた特典の影響かわからないが機構や仕組みについてのアイデアが次々と湧いてくるので、あとはそれを自身が知覚する術式にあてはめながら実装していくだけだった。
そうしてできた試作機。呪索傀儡『携帯術師
携帯電話のようなサイズでありながら呪霊を祓う機能を盛り込むことを想定しての命名だ。今後は偵察性に加え、攻撃性を持つ追加装備を作成する予定だ。ちなみに破壊されたとしても、精神的なセーフティを組んであるのでフィードバックで俺が傷つくこともない。
性能としては通常の携帯電話としての機能に加え、呪霊をとらえるセンサーに電池を改造し呪力をため込み放出する電源ならぬ呪源。さらには人間のように呪力で傀儡自身を強化できる呪力伝達系。まだ試したことがないのでわからないが、低級呪霊ならこれで対応できると思う。
早速自身の術式を零壱に繋げる。
随分と視点が低い映像が頭に流れる。機体を操作して変形させて俺を見てみる。俺本体の意識は残ったままなので俺を見る俺というなんだか不思議な感覚になるような映像が頭に流れる。俺が見る映像と零壱がのぞく映像が同時に流れてくる、イメージとしては複数のディスプレイを見ているような状態だろうか。
カシャカシャと無機質な音を出しながら小さな五指が動く。傀儡越しではあるが生まれて初めて指を自由に動かせる感覚に不意に感動してしまう。その後も飛んだり跳ねたりしてみたが問題なく動くことが確認された。動いてる感覚に感動して一日ずっと傀儡を動かしてたわけない。ちょっと感動して遊んでいただけだ、これもテストなんだ。
「よし、呪術の世界を見てやろうじゃないか」
気合いが入ってる様子を表すように、零壱に呪力が迸る。
俺の目標はこの世界で快適に生きること。そのためには原作同様に真人の無為転変で体を五体満足の状態に戻してもらうこと。しかしそこで必ず真人と勝負することになるだろう。少なくとも、原作を読んでる時点で俺は呪霊サイドの考えは理解できども賛同する気にはなれなかったからだ。
あくまでも俺は普通に生活したいのだ。
幸いにも神様から与えられた俺の脳内にはなんとなくいくつかのプランがすでに思いついている。そのためにも十全な備えが、備えるための時間が必要だ。
その時間を確保するためにも今が原作で考えた時のどこなのかを考える必要がある。
今後の目標としてはこのまま安全なところで高専の京都校に入るまで軍備拡張をどんどん進めることだな。
てなわけで第一話でした。
俺は新宿編で活躍するメカ丸が見たいぞ。
P.S. アニメでメカ丸動いてましたね。かっこよかった