魔弾魔法戦士リュウジンオー   作:岸辺吉影

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第10話

洞窟内の壁面に、灯火が幾つも備えられている。煌々と照らす内部は、カーペットや水飲み用のタンク、物干し竿やテーブルが所狭しと置かれていた。コウイチはベッドの上でザンリュウジンの刃を白い石の上で、何度も滑らす。押しては引くを繰り返すと、水平な面に白い粉状のものが出てくる。

コウイチが手元に置いた桶に刃を浸からせると、ザンリュウジンが何とも言えない声を出した。

 

「くぅ〜。何度やっても、たまらないねぇ〜」

「そいつはよかったね」

「いや〜最高だ。こう磨かれるとスッキリするぜ」

「別にさ、自己修復でやればいいじゃ無いか。一々手を煩わせて…」

 

ザンリュウジンは古代ベルカ式とはいえ、デバイスである。通常どんなデバイスにもある程度の自己修復機能が搭載されており、定期的なメンテナンスが受けられない状況下でも、一定以上の機能を損なうことがないように設計されているのだ。

ザンリュウジンにも当然機能は搭載されてはいるが、彼曰くコウイチに刃を研いでもらうと格段気持ちがいいらしい。デバイスのいう気持ちいいが全く理解できないが、言うもんだから仕方がないのである。

 

「何だってまた…」

「その代わりに温泉見つけてやったじゃねえかよ〜。おあいこおあいこ」

「そりゃそうだけど…」

 

洞窟から遠く無い場所に、規模は大きく無いものの天然の温泉を、ザンリュウジンが発見してくれたのである。コウイチが知らされた時、対価として研ぎを提案された訳だが、一度あの全身が溶けていくような解放感を知ってからは、面倒だと思う研ぎも我慢するのであった。

 

「今日は晴れだし、夕方から行こうかな」

「おっ、いいねぇ。近くで魚でも取ってから行こうじゃないの」

「そうするか」

 

1日のスケジュールが決まったコウイチが身支度でもしようとベッドから降りた時だ。

いきなり彼の眼前にディスプレイが展開された。表示されたマップ上には、複数の赤い点が何個も表示されており、先端についた矢印の方向に細々としていながら、動き回っている。

 

「また襲撃だ。数多いな…」

「場所は… ありゃありゃ、ちょっと深い場所だな。もう管理局はあそこまで調査しているのか?」

「うん、そうみたい。でもどうしようか」

 

コウイチはベッドに置いていたザンリュウジンを右手に装着すると、相棒に尋ねてみた。

 

「だがなコウイチ。少し考えてもいい頃合いだ、見送るのも手じゃねーか?」

「そう、かな」

「いい加減管理局の連中がここいらに気がつくのも時間の問題だ。正直あいつらは信用できるかどうか、俺様は判断できねぇ」

「まぁ、ヘルマンさんのこともあるしね。あんなのが通っちゃうってのも、心配になるっていうか…」

「それもそうだが、覚えているか?この前の祭儀場近くのアレ。正直どう思うコウイチ?」

「そりゃ、いい気分はしないけど」

「だろう? ま、今回の場所はマップを見て、管理局の調査している最深部だと見えた。管理局はいくらなんでもそこまで馬鹿じゃねぇ、それなりの部隊を派遣しているさ」

「そうだといいけど」

 

まだ釈然としないようなコウイチだが、ザンリュウジンは赤眼を光らせ、警告するような口調で喋った。

 

「俺様は今回ぐらい、様子見てもいいと思うぜ。ちょっとぐらい休んでもバチはあたらねぇさ」

「そうする?」

「管理局がどういう立ち回りをするか、一度見るのもありだな。それによ、身のこと考えたら、馬鹿な真似になっちまうと思うぞ。賢く立ち回っても、いいんじゃねえか?」

 

 

管理局の本部では、緊急警戒を知らせるベルが天井を赤く鳴らしている。仮眠室や休憩室、事務作業をしていたオフィスなど現場担当のいる場所では、アラートの表示が所狭しと発表されていた。

廊下を慌ただしく人々が移動し、続々と駐車スペースにある移動用トラクターや陸戦用ヘリコプターに、戦闘態勢を整えた職員が乗り込む準備を終え、直立整列して待機していく。

機動4課の面々も準備を終え、専用である移動用のヘリコプターの前に、ゲーリング部隊長も到着した。

 

「小隊長!!」

「はっ!」

「各員欠員はおるか?」

「おりません!」

「武器、備品に不備はないか?」

「ありません!」

「よし!!」

 

ゲーリング部隊長は、用意された箱の上に立ち、メガフォンを手に取る。今彼の視界には、一斉に整列した機動4課の戦闘員が、6人1列ずつ、規則正しく整列した状態で彼を見上げている様が、はっきりと入っていた。

彼はひくつく頬を何とか抑え込みながら、メガフォンを通して行動開始の陣頭指揮を取る。

 

「皆、緊急警戒態勢が発令された! これより我々は当該地域に向かい、速やかに敵を排除する!」

「「「「「はい!!!」」」」」

「場所はポイントRH-33-4だ! 神殿と推測される地点、特に本殿らしき場所で、多数の次元犯罪者を確認した! 」

「「「「「はい!」」」」」

「警告はなしで結構! 標的発見次第、発砲を許可する!」

「「「「「はい!」」」」」

「管理局に栄光あれ!」

「「「「「管理局に栄光あれ!」」」」」

「いざ、出動!」

「「「「「おう!」」」」」

 

バダバタバダバタ…

 

次々とヘリコプターが羽根を回り始め、後部を上げながら空中へと飛び立っていく。ゲーリング部隊長が自分の機体に乗り込もうと片足を上げた時だ。

 

「ゲーリング部隊長!」

 

ドアの向こうからシグナムが駆け寄ってくる。すぐ後ろにはエリアとキャロ、他に自然保護隊の職員が何人かついてきていた。

 

「ゲーリング部隊長、お待ちください!」

「見て分からんか!! 私達は出動するのだぞ!」

「承知しています! ですが発砲を許可されたとは本当ですか?!」

 

ゲーリング部隊長は一瞬眉を顰めるが、シグナム達を無視して身体を機体の中に潜り込ませた。シグナム達が機体近くに辿り着いた頃には、既にヘリコプターの後部が浮き、出発寸前である。

巻き起こる風にシグナムが頭を伏せると、上空から男の苛立ちと挑発が入り混じった叫び声が、置き土産として残った。

 

「いいか、手出しは無用だ!! これは我々機動4課の仕事だ!大人しくしていたまえ!」

 

みるみる内に小さくなっていくヘリコプターを睨みつけているシグナムは、何かをエリオとキャロに命令している。2人は驚いた表情をしながらも、自然保護隊に命令を随時伝達した。どうやら機動6課も、大人しくするつもりはないようだ。

 

 

管理局が大騒動に巻き込まれつつある頃、コウイチとザンリュウジンは近場の川辺にいた。コウイチがザンリュウジンを構えると、ザンリュウジンの赤眼が一瞬光る。

 

『アーチェリー・モード』

 

コウイチは生身の状態であるが、ザンリュウジンはアーチェリー・モードに通常通り変形した。コウイチがザンリュウジンの頭部の後ろに手を置くと、右手に合わせて斧の柄がしなっていく。川辺にザンリュウジンの口を向け、コウイチは軽く左目を瞑りながら、狙いを定めるようにし構えていった。

 

『ショット』

 

左手の動きを止めたコウイチが右手を離す仕草をすると、ザンリュウジンの口から矢が飛び出る。行き着く暇もなく水中に飛び込んだ一撃は、高い水飛沫をあげて消え去った。

泡と波紋が鎮まるのを待っていたコウイチは、水中に手を突っ込むと、水底を掻くような仕草をする。彼の手には、何匹かの魚が捕まっていた。魚の腹部や頭部には、3、4センチほどの穴がポッカリと空いている。

 

「ヒュー! 見事な腕だぜコウイチ!」

「ありがとう」

「全く飲み込みがはぇーったらありゃしねぇ。『インビジブル・ショット』もできていたし、練習は上々だな」

「一昨日の鳥撃ちでコツを掴んだからね。あの感覚を忘れていなくて、正直安心した」

 

川辺の岩に収穫した魚を乗せると、コウイチは川面にもう一回向き直った。

 

「今日は温泉入るし、豪勢にしたいね」

「んじゃ、第2弾といきますか!」

 

 

コウイチとザンリュウジンがやけにのんびりした生活を送る頃、地点RH-33-4では大混乱が巻き起こっていた。

 

『D小隊、状況報告は?!』

『…こ、… た、…』

『おい、カバーに行ったC小隊はどうした?!』

『…ちら、C小隊であります! 現在D小隊は活動不能です!』

『何だって…敵の攻撃はどの程度だ?!』

『敵の攻撃では、ありません! 神殿の…』

 

原因の分からない通信不備と、連携の取れない小隊同士。単純な、有史以来の敗退する理由である。単純な理由だが、魔法と科学が発達した現代においても、尚防ぎきれないのが厄介であった。

 

古代遺物管理部・機動4課。古代遺物管理部とは、管理局のエース部隊と称される。理由は古代遺物管理部が扱うのが、古代ベルカの遺跡だからだ。

古代ベルカ。記憶するものはほぼ居ない程過去に滅んだ、人間世界。そして人間の業が溜まりに溜まった、マイナスの世界。

長く続いた戦争の歴史が現代に残すのは、石造りの建物や日用雑貨だけではない。現代では禁止された、人体実験が齎した人体改造技術に隠匿性と殺傷力が極めて高い毒物。

 

次元犯罪者が古代ベルカに蔓延るのは、自明の理だった。管理局は次元犯罪者から遺物を守るため、専門部署を設置したわけである。

つまり古代遺物管理部は日々危険に飛び込むことが仕事だ。要求される能力は当然、他の部署と比べ高くなっている。

機動4課は、この能力に絶対の自信を持っていた。他の課とは能力が違うと考える人間は、殆どの割合を示している。

 

だが現状は、次々と問題が発生していくのだ。高まっていたプライドが更なる負のスパイラルを呼び、事態は膠着していく一方だった。

 

「ゲーリング部隊長、どうなさいますか…」

「…」

「ゲーリング部隊長…」

 

ゲーリング部隊長は、ヘリコプターを降りることができないまま部下の報告を聞くことしかできない。何故なら彼が想定した展開とは、全く違った。

 

「…B小隊とE小隊を、突入させ、ろ」

「宜しいのです、か?」

「…ああ…」

 

絞り出すように出した命令を、女性の部下が代わりに伝達するが、通信先の現場部隊と激しい意見交換を重ねていく。

記憶にない女性の部下をみて呆然とするゲーリング部隊長は、ヘリポートに爆音と爆風が巻き起こるのを、ぼんやりと眺めていた。

 

 

ドン… ドン…

 

遠くから爆音が聞こえたのは、コウイチが川海老を捕まえていた頃だった。捕まえた川海老をひび割れたバケツに放り込むと、彼は音のした方角を判断し、様子を窺う。

 

「予想よりも激しい戦闘みてーだ。みろ、煙が上がってるぜコウイチ」

「うん、よく見える。2つ、いや3つ目が昇りそうだね」

 

森林の奥に、灰色の煙がモクモクと立ち込めていた。近くの木々からは小鳥達が一才に飛び立ち、小動物達も騒動から逃げようとしているのか、小さいながらも獣の声が重なって聞こえてくる。

 

「どうなるんだろうね〜。様子見させてもらいますか?」

「…」

 

 

「ゲーリング部隊長」

 

ヘリポートでは、到着した応援部隊が続々と戦闘準備に入っている。皆杖形のデバイスを構え、いつでも突入できる格好であった。しかし指揮官と直属の部下達は、話が違うようである。

 

「我々に援護許可を」

「それは…出来ん。許可は出せない」

「ゲーリング部隊長! もう時間はありませんよ?!」

「そうです! 早くしないと小隊の人々が危険な状況に陥ります!」

 

ヘリコプターから一歩も出ないゲーリング部隊長であるが、応援にきたシグナム達を現場に向かわせることには、未だ抵抗を続けていた。彼が応援を渋る理由は、もうシグナム以外にも暗黙の了解であるにも関わらず、認めようとしないのだ。

 

「貴様の部下の命の問題なのです。貴様の面子の問題ではない」

「貴様、貴様とぬかしおって… 私を侮辱するのか?!」

「私からすれば、貴様の堕落した精神の方が、よっぽど侮辱だ」

「舐めた真似を…」

 

喧嘩越しのシグナムに応戦するかのようにゲーリング部隊長も口調がヒートアップし始めようとした、正にその時だ。

 

「部隊長! C・D小隊が、小隊が!」

「シグナム小隊長! 現場で急激な魔力値の上昇を確認しました!」

 

 

コウイチは、生活拠点の洞窟ではなく、新緑の大木に立っている。周りの樹木の中でも一際背が高い大木の枝に腰掛ける彼は、右腕の相棒に胸の内を明かした。

 

「なぁ、ザンリュウジン」

「おう。どうしたコウイチ?」

「僕もさ、まだ管理局を信じ切ってはいない。この前の祭儀場でのことは、忘れるつもりはないしね」

「そりゃ、忘れてるなんて言ったら俺様がお前に幻滅するぜ」

「そんな状況でさ、今からあの煙が立ち込める場所に行ったら、どんな目に遭うか、簡単に想像出来るよね」

「まぁな。今からのうのうとあそこに行ったら、知らねぇ誰かさんに、馬鹿な奴だと笑われちまう」

 

コウイチは右腕を正面に突き出すと、手を握りしめる。

 

「だからさ」

「僕は」

「馬鹿になってみるよ」

 

握りしめた右手を開くと、胸の前に持ってくる。ザンリュウジンが待機モードへと姿を変えた。

 

「それでこそ、俺様が相棒と認めたコウイチだぜ。心配するな、地獄まで付き合ってやるよ」

 

ザンリュウジンの頼もしい一言に、コウイチは軽く笑った。右腰に現れた魔弾キーホルダーから、リュウジンキーを取り出す。

 

龍装変身(ドラゴニック・チェンジ)

 

『斬龍・変身。チェンジ・リュウジンオー』

 

「っ…ハッ!!」

 

左手のザンリュウジンに、リュウジンキーを差し込むと魔弾キーに込められた龍の魂が解放される。X字にザンリュウジンを振ってから、コウイチが天高くザンリュウジンを振りかぶると、龍の魂は遙か上空へと舞い上がった。

黒みがかった、しかし鮮やかな金の龍がコウイチの身体に乗り移ると、彼の身長が成人男性ほどに急激に成長する。次々と成熟した身体を龍の鎧が護るように包み込んだ。

 

「リュウジンオー、来刃!!!」

 

ザンリュウジンとの絆が深まったリュウジンオーが、一気にその躰を加速させ木々の隙間を走り抜ける。目指すはただ一ヶ所のみー

 

 

地点RH-33-4では、傷ついた戦闘員達が片膝をつき、身動きが取れずにいた。肩肘に鋼色のプロテクターを付け青色のジャケットを身に纏う男達だが、今の彼らはプロテクターは砕けジャケットは焼き焦げて服の様子を呈していない。

彼等が相対する敵は、杖や銃、剣といった混合した構成のデバイスを各々持ち、管理局員である彼等をジリジリと追い詰めていた。

 

「おい、さっさと爆弾設置しちまえ! もう後粘れるのも限界だぞ!」

「焦らせるなよ、大きめだから時間かかるんだよ!」

「おい、右からの攻撃に気をつけろ、さっきトラップ仕掛けてやがった!」

「めぼしいものだけでいい、探すのに手間かけるな!」

 

数十人規模で動く盗賊団は、機動4課とは対照的に明確な指示形態と、自分の仕事を理解する下部の人間、適切な判断を下す上部の組織構造が整っていた。口では急かすようにいうものの、彼等の手足は迷いなく本殿を支配していく。

動き回る盗賊達を見張っていた人物が、管理局職員に武器を構えるグループのリーダー格に肩を寄せた。

 

「こいつら、結構強え。聞いてた話と違うぜ。親方、こいつはちょっときな臭ぇ匂いがします」

「おう。どうやら損切りに合いそうだな」

「すぐにずらかりましょう」

「ルートはプランCで行く。一応変更を入れておけ」

「ガッテンです」

 

管理局職員は盗賊団の動向を把握できてはいるものの、本部との連絡手段を持ち合わせていない。何故か通信の類が機能不全を起こし、回復すら見通しが立たないのが現状である。

初めは現場対応で応戦していたが、今回のような大規模での作戦は、初めてと言っても過言ではなかった。練習を積んだとはいえ、実戦と練習では不安定要素の数が違う。特に先行部隊として突入したD小隊は、盗賊団の砲撃魔法で一網打尽にされ、援護活動を行おうとしたC小隊は、敵の集中砲火の餌食となってしまった。

 

「まだ通信は回復しないのか?」

「だめです、回線自体が生成されません…」

「信号弾は、やはりないか?」

「はい、先ほどの砲撃魔法の余波で、信号弾の発火装置が逝かれたみたいです…」

 

通信が出来ないための信号弾も各員持ち合わせているのだが、D小隊を壊滅させた砲撃魔法の衝撃で、少なくない人員と共にお釈迦になってしまったようだ。

他にはデバイスを手旗のように使って信号をバケツリレー方式で伝える手があるが、満身創痍の戦闘員しかいない今、夢物語と言わざるを得ない。

職員達は、ひたすら盗賊団の逃避行を眺めているしかないのだ。

 

「親方、爆弾設置完了です」

「よし、もう行け。俺らも後に続く」

「では、Cブランで」

「頼んだ」

 

盗賊団の大半は崩落した本殿の左側から、随時森の中へ消えていった。

手早く去っていく彼等を守るようにデバイスを向ける集団に、職員の1人が我慢できないかのように質問をぶつける。

 

「待て、お前ら何をするつもりだ?!」

「何って…決まっているだろう、トンズラだよ」

「爆弾がどうとか… 教えろ!」

「教える義理はねぇ」

「この…!!」

 

生命の危機を直感した職員数名が、杖型デバイスを構えて攻撃態勢をとった。途端返す技で盗賊団の銃型デバイスが火を噴き、職員らに魔法の銃雨が降り注いでいく。

 

「ぐううう、う」

「シールド、シールド展開!」

「も、持たない…」

「お、おいおいしっかり、しっ」

 

傷ついている職員など、今の盗賊団の敵ではない。的確に急所を狙って放たれる魔法弾は、少数残っていた戦闘可能な職員らをノックダウンするには、十分すぎた。

戦闘を見守るしかなかった職員らが、膝をついていく職員を必死に引き寄せ、応急処置を施していく。盗賊団から目を離したその間に、敵は跡形もなく消え失せてしまった。

 

残されたたのは、巨大な長方形の木箱である。応急処置の為の道具を仕分けていた職員が、盗賊団の置き土産に気がついたのは、それから数分が経ってからだ。

 

「あれって… あいつらが言っていた爆弾のことじゃないか?!」

「不味い、あいつら何分前に離れたんだ?!」

「駄目です、私達のデバイスはダメージ過多で一時停止状態でした」

「私も同じく」

「だれか、誰か見に行かなきゃならないぞ!」

 

職員の1人が杖型デバイスを支えにして、木箱へと近づこうとした時だ。カウントダウンを告げる、あまりにチープな音色が木箱から奏でられ始めた。やけに規則正しく、やけに単純なあの音色である。

 

「あっ、あっあっ」

「間に合わない…」

「お母様!!」

 

職員全てが生存を諦め、来る地獄への招待券から目を背けるように、頭を抱えて蹲った時だ。

 

 

世界が灼熱に包まれ、景色を一変するような激しい爆発が起こった。

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