遊園地に遊びに行ったら怪しげな取引き現場目撃したったwww 作:香椎
コナン愛読者は勘が鋭すぎて鋭すぎて……(笑)
様々な憶測が飛び交ってますが、その答えが今回の話で明かされます。
時計の短針はすでにてっぺんを通り過ぎ、長針が6を指した頃。
米花町2丁目のとある屋敷の門前に、齢50弱の夫婦が立ち止まっていた。
妻のほうがインターホンを鳴らすと中から出てきたのはその夫婦の息子で、先ほどまで何か作業でもしていたのか服が埃まみれだ。
「なんだ、母さん達か……旅行に行ってたんじゃないのか?」
欠伸まじりに彼はそう言った。
「それがねぇ……お父さんったら飛行機乗る前に急に腹痛を起こして、仕方ないから旅行はキャンセルしてしばらくホテルにいたのよ」
「そりゃまた災難だったな」
未だ腹痛が治っていないのか、亭主は二人が話している最中に黙って家へと駆け込んでいく。
その様子を心配そうに、そして少し怪訝そうに彼は見ていた。
「医者にはいったのか?」
「もちろん行ったけど、ただの食あたりだってさ」
食あたりとはこれまた珍しい、と彼は思う。
自分の知っている限りでは父親は食あたりなど起こしたことがなく、家族がナマモノであたった時だって一人だけピンピンしていたくらいだ。
「私も疲れたし少し横になってくるわ」
そんな疑問を払拭する暇もなく、母も彼を横切って家の中に入ってしまう。
彼も彼でやる事があるので、それ以上は気に止めることなく母親の後に続いた。
両親が自室に戻ったのを確認すると、彼は乱雑に置かれた荷物を漁り出した。
「荷物の中にパスポートがないな……」
キャリーケースや上着、鞄の中などを探すがパスポートらしき物は見つからない。盗まれたのか、はたまた最初から持っていないのか……後者はあり得ないだろう。
彼はスマホを取り出して一通のメールを送ると、それ以上はスマホをテーブルの上に放り出していた。
そして途中であった作業を再開し、最後の一つを置いた。
現在この家の至る場所──両親の部屋を除いて、人形が不規則に並べられている。ここに泥棒でも侵入してこようものなら腰を抜かすだろう。
「さて、そろそろだな」
一抹の不安は残るが、きっとその心配は杞憂で終わる。
彼は最後の人形を置いた部屋──実家に暮らしていた頃の自分の部屋で、来訪者を待った。
時計の秒針が刻む音がやけに耳に響く気がする。
深夜12時59分。予告時間まであと数十秒といったところか。あとは息を殺してただ待つのみ。
築何年になるのか、ガタが来ているこの家が軋みをあげる。
瞬間、カーテンが揺れ冷えた空気が部屋一杯に流れ込んだ。
そして真っ暗な部屋に一筋の光が差す。
白い装束に身を包んで、怪盗キッドはやって来た。
窓から侵入したキッドの視界にまず入って来たのは部屋一面に散らばる人形達。雛人形にフランス人形、果ては土偶なんて物もある。
「(うへぇ……マジに人形置いてやがる)」
事前に知ることができたから良いものを、もし知らずに侵入でもしていたら警戒して踏み入らなかっただろう。
月明かりを頼りに部屋中を見回すが人間の気配はない。その代わりにキッドは部屋の隅にある三毛猫が乗ったクローゼットを見つけた。
「(猫がいる……ってことはビンゴか!)」
床に置かれた人形を華麗に避けて、わずかな隙間を縫うようにして歩く。鮮やかなその足取りは、華麗なるパフォーマンスのようにも思えた。
今から1時間ほど前。キッドが仲間にこの家の情報を調べてもらった際、興味深いものが送られてきたのだ。
その内容というのはとある匿名掲示板で立てられたスレッド。安価と呼ばれる方法でキッドへの対抗策を打つというものだった。そのスレ主がこの家の住人であることは、そのスレッドにアップロードされた予告状からして間違いない。
警察には頼らないと言っておきながら画面の向こう側にいる奴の言う通りにするあたり、本人は遊び感覚でいるのだろう。
そう思ったキッドはそれを上手く利用したのだ。
つまるところそのスレッドに自身も匿名として参加し、安価を狙うことで自分の都合の良いようにしたのだ。
と言っても安価を狙うのは難しい。だから一点に狙いを絞り、見事スナイプに成功した。
言わずもがな、スナイプしたのは対キッドに仕掛ける罠のアンカーである。
「(しっかし本当に猫を警備にすんのかよ……)」
おかげでどこに隠したかの目印になってはくれたが、いい大人がこんな悪ふざけをするなんてアホらしく思える。何が面白いのやら。
「(っと、念のため暗視ゴーグルを付けとくか)」
月明かりが窓から差しているとは言え、部屋の隅にまでその光は行き届かない。
キッドは警戒をしながら、そのクローゼットに近づいた。
そして何も仕掛けられていないことを確認すると、キッドはクローゼットの戸を開く。
「ッ!?」
そしてその中身を目視すると、人形を巻き込みながら思いっきり飛び退いた。
「久しぶりだな……怪盗1412号」
中から姿を現したのは眼鏡を掛けた黒髪短髪の男。事前に調べていた情報からしてこの部屋の住人であり、あのスレッドを立てた人物だ。
「……オイオイ、マジかよ」
警戒していなかったわけではない。しかし、それでもだ。一体誰がクローゼットの中から人間が出てくると思うだろうか。マジシャンならまだしも、一般人がやる芸当じゃない。
それに、今なんと言ったか。
聞き間違いでなければたしかに「久しぶり」と聞こえた。
その言葉は怪盗キッドにとって、怪盗キッドの二代目として聞き捨てならない言葉だった。
「まぁ待て。何もこんなドッキリじみたことをしたいわけじゃない」
そんな警戒心がMAXに達しているキッドに、男はゆっくりと優しい声音で話し出す。
「これはこれは……こんないけ好かない泥棒一匹捕まえて、いったい何をするおつもりでしょうか?」
「何、ちょっとした談笑でもしようと思ってな……」
談笑なんてできる雰囲気ではないし、そんな冗談に笑えるほどキッドの内心は穏やかではない。……そして、それは次の言葉でさらに険悪なムードになってしまう。
「最近学校は楽しいかい?」
「ッ!」
一歩。
目に見える形で、キッドか形相を変えて一歩下がった。まるで図星とでも言わんばかりに。
学校という単語が出た以上、怪盗キッドが学生であるとバレてしまったのだろう。だがなぜ彼がそれを知っているのか、たかが一般人にどうしてバレてしまったのか。
その考えこそが勘違いだと気づかないまま、キッドは冷や汗を垂らした。
「なんて、冗談……のつもりだったんだが。その反応……まさか……いや、あり得ない……だが、もしかして……」
今度は男が一人でにブツブツと呟き出す。
動揺しているとはいえ、その隙を狙わないキッドではない。もう既に「聖女の涙」は奪っている。あとは逃げてしまえばミッションオールクリアだ。
「(今のうちに逃げれば……!)」
「君は怪盗1412号ではないな」
しかし、その言葉が今度こそキッドの動きを止める。
それでも流石は自身を芸術家と評するだけある。父親の言葉を思い出して、何とか平静を装おうとキッドは呼吸を整えた。
「……何のことでしょうか」
一度落ち着いたからか、もう表情は崩れない。これ以上こちらの手を明かしてたまるかと、そんな面持ちでキッドは対峙する。
「もう一度言おう。君は怪盗キッドじゃない。少なくとも、俺の知ってるキッドではな」
「俺の知ってる……?」
額から垂れる汗は自身の感情とは裏腹に止まってはくれない。むしろ、これから告げられる言葉を予知して噴き出しているような、そんな気がしてしまう。
「あぁ、俺の知る怪盗キッドはただ一人……黒羽盗一、君のお父さんだけだよ」
そしてやはりか、そうなってしまうのが彼のツキだった。
前書き、本文合わせて約三年前に書いていたものが予約小説として残っていたのを今し方発見しました。(2024/1/31/2:56現在)
内容には一切触れず、当時の状態の物を供養という形で投稿させていただきます。
朝の八時頃に次の話が投稿されますが、そちらの方の後書きに先に色々と書いてしまったので、次回がこの話の続きではないことと、最終回であることだけは伝えておきます。