高咲兄妹とスクールアイドルの輝き   作:Ym.S

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どうも!
第107話です。


第107話 着実に

 

 

 果てしない空のむこう……

 

 ミライへと橋をかけよう!

 

 

 いこう!明日(あす)へ───────

 

 

 

『第二回! スクールアイドルフェスティバル、開催決定!!』

 

 

 詩的なフレーズとともに、街中に現れる巨大化したキャラクターを魔法で倒していくスーツ姿の少女達。最後にはその少女達が一堂に会し、第二回スクールアイドルフェスティバルの開催が宣言された。

 

 そんなPVが終わると共に、観ていた我が妹が目を輝かせて声を上げる。

 

 

「流石桜坂監督……!」

 

「気に入ってもらえて良かったです!」

 

 

 侑がしずくちゃんのことを監督と言うのも、今見たPVはしずくちゃんの主導のもとに作られた学校説明会で流すための宣伝PVだからだ。

 

 そう、あのPVがついに完成したのだ。

 

 

 そんな訳でどうも。無事にPVのBGMを編曲し終えることが出来てホッとしている高咲徹だ。

 

 

 PVの撮影が終了した後、俺はせつ菜ちゃんが作曲した曲を編曲したりしていたのだが、ほぼ同時並行でPVの映像編集の作業も行われていた。この編集作業は、しずくちゃんに璃奈ちゃん、そして侑の三人が主に携わっていた。ちなみにこのPVを構想したのはしずくちゃんとせつ菜ちゃんだったが、せつ菜ちゃんは生徒会の仕事があるため、残念ながら通常の作業メンバーからは外れた。

 

 

「璃奈ちゃんと侑ちゃん、徹くんも編集お疲れ様〜」

 

 

 彼方ちゃんが映像編集班のメンバーに加えて俺にも労いの言葉をかけてくれた。

 

 そう、実は俺もPVの映像編集に関わっている。特に俺が編曲作業を終えた後は、映像編集班とともにそれぞれが作った映像と曲がマッチするかどうかを話し合いながら共に作業をしていた。大分長い間の作業であったが、つい昨日の放課後にある程度納得の行くPVが完成し、今日の放課後全員が集合してPVの放映会をしていた訳だ。

 

 

「おう、ありがとな。でもみんなが撮影を頑張ってくれたから、CG付ける前からとても迫力のある映像だらけでさ。おかげで編集が捗ったんだもんな?」

 

「そうなんです! 皆さんが頑張って下さったお陰で、私が想像していた理想のPVに限りなく近づけました!」

 

「CGのエフェクトが付いて、もっとみんながかっこよくなった。璃奈ちゃんボード『よっしゃー!』」

 

 

 結構ハードなバトルアクションをしていて、よくみんながついてこれたなと思っていたが……ホント、むしろあっちがお疲れなはずなんだよな。

 

 

「そうね。確かに、私達に相応しいPVになった気がするわ」

 

「ですね! こんなに素晴らしいPVになるとは……流石です!!」

 

 

 どうやら俺達が作ったPVはみんなに大好評のようだ。良かった……BGMがダメって言われたらどうしようと思ってたところだったんだ。まあ、言われたら言われたで編曲し直すしかないんだけどな。

 

 

「にしても、やっぱりゆうゆが選んだスーツで大正解だったねー! アタシ達めっちゃイケてるし!」

 

「そうだね〜! 侑ちゃんに感謝しなきゃ!」

 

 

 愛ちゃんとエマちゃんが言う通り、侑が直感で選んだ衣装であるスーツはこのPVにピッタリだった。全くスクールアイドル感を出さずにみんなの魅力を引き出してたからな。

 

 

「あはは、私はただ、みんながスーツを着ているのを想像してときめいただけだよ」

 

「それが凄いってことじゃないか? 侑には先見の明があったって言えるしな」

 

「もうお兄ちゃんってば、先見の明ってちょっと大袈裟じゃない〜?」

 

「ふふっ、どうかな? 侑ちゃん……実は超能力者だったりしない?」

 

「歩夢!?」

 

 

 歩夢ちゃんと侑の掛け合いで、その場が笑いに包まれた。

 

 超能力者って、未来予知能力とかだろうな。歩夢ちゃんはたまに面白い冗談を言うのだが、ソシャゲの単発ガチャで最高ランクを引き当てるくらいレアだから、それを見れた時は嬉しいんだよな。『歩夢ちゃんのジョークktkr』みたいな感じで……って、ktkrはもう古いか。

 

 

「超能力者といえば、てっつーが出てきた場面も良かったなー!」

 

「確かに〜。せつ菜ちゃん、あれって世界を元に戻してるんだっけ〜?」

 

 

 一方、その場の話題はなんと俺が出演したシーンに変わっていた。彼方ちゃんがそのシーンの訳についてせつ菜ちゃんに訊くと、彼女は意気揚々と語り出した。

 

 

「そうです! 私達の手によって凶暴化したお台場の名物達を倒して、最後にその変わってしまった世界を魔術師・トールの力によって、元に戻すというあらすじです!」

 

 

 そう、侑を除く同好会のメンバー九人は、敵である巨大化かつ凶暴化したお台場名物のシンボルもしくはキャラに立ち向かい最終的に倒すのだが、敵が暴れたことによって建物や森などの損傷は激しく、取り返しのつかない状態になっていた。

 

 そこでやってきたのが、トールだ。彼は同好会のメンバー九人には知られぬ内に自身の魔法によって、敵達が暴れる前の状態に戻すことに成功する。そして彼は同好会のメンバー達と一度も会うことなくその場を去り、無事ハッピーエンドを迎える……という経緯だ。

 

 ここまで来て、未だにトールという魔術師が何者なのかを俺は何も考えていないのだが、大物の魔術師であることは間違いないだろう。

 

 

「これを聞いた時は、トールってなかなか重要なポジションにいるなって思ったんだが……でも、衣装のおかげでそれっぽくなってて良かったな」

 

 

 衣装の黒いマントが頭まで隠すほどの大きさだから、とても怪しくて胡散臭さを感じさせるような見た目になったんだよな。周りに俺であることをバレないようにするために施した対策だったが、まさかここで役に立つとはな。

 

 そう考えていると、かすみちゃんが誇った顔でこう言った。

 

 

「ふふん、やっぱり徹先輩がPVに出なければならなかったってことですね!」

 

「……あぁ、そうかもしれないな」

 

 

 うーん、あの時のことを仄めかしているような気がしなくもなくもないのだが、大丈夫なのか……? まあ、流石に考えすぎだな。

 

 あっ、かすみちゃんと言えば……

 

 

「そういやかすみちゃん、生徒会に抽選会の参加申請してきたか?」

 

「はいっ! 部長なので、ちゃーんと忘れずに生徒会長に提出してきましたよぉ〜!」

 

「……まあ、生徒会長はここにいるんですけどね」

 

「ははっ、それなら忘れることもないか」

 

 

 かすみちゃんは胸を張って忘れなかったことを強調するが、実際はすぐそばに生徒会長がいて催促してくれるだろうから忘れる可能性は少ないだろう。

 

 すると、目の前に座っていた彼方ちゃんの視線は何故かこちらに向いていた。

 

 

「あとそれに〜、前生徒会長もここにいるよね〜?」

 

「おいおい、そういうのはなんかむず痒いからやめろって」

 

 

 うーん……確かに生徒会長の話題が出て、俺も話題に上がるのかなとは少し思ったよ、少し。でもこんなに早く話題にしてくるとは思わないよな? 俺は今かなり困惑してるぞ?

 

 ……と思ってたのも束の間。

 

 

「確かに、この同好会生徒会長が二人もいるじゃん! それって凄くない?」

 

「そうですね、よくよく考えてみれば同時期に新旧生徒会長が一つの同好会に所属してるのはうちだけかもしれません」

 

「お〜、そう考えると、心強いね〜!」

 

「くっくっくっ……つまりそんな最強のスクールアイドル同好会の部長であるかすみんは最強ということですね!」

 

「それは違う。璃奈ちゃんボード『ムスッ』」

 

「りな子ぉ!?」

 

「えぇ……」

 

 

 気づいたら話が一気に昇華していって、話題を切り替える余裕すらなくなっていた。まあ、生徒会長を経験したことでチヤホヤされたいがためになった訳ではないが、みんながそれを凄いと思ってくれてるなら悪い気はしないな。

 

 そんなこんなでみんなが破茶滅茶している一方、歩夢ちゃんは暫く口を挟まなかった侑を気にしていた。

 

 

「侑ちゃん、何か考え事してる?」

 

「ん? あっ、いやいや! 大したことじゃ無いだけど……」

 

 

 侑がこう言った瞬間、同好会のメンバーもそれに気づいたのか、静かに侑の発する言葉に耳を傾けていた。

 

 

「今度は、もっとたくさんのスクールアイドルやファンの皆んなに参加してもらえるフェスにしたいな……!」

 

 

 この侑の希望に対して、各々が応えていく。

 

 

「前回も盛り上がったし、結構集まるって!」

 

「フェスの動画もすごい見てもらえてるみたいだしね〜!」

 

「前回参加した東雲と藤黄以外にも、色々な高校から連絡が来てるよ」

 

「……なんか、嬉しいね」

 

 

 歩夢ちゃんが嬉しそうにそう呟くと、周りも微笑んで頷いた。

 

 

 同じスクールアイドルが垣根を越えてステージでパフォーマンス出来て、スクールアイドルとそのファン両方が楽しめるライブ……

 

 その輪がもっと大きくなれば、もっと楽しくてときめくフェスにできるに違いない。理想のライブの実現へ向けて、着実に歩みを進めている。

 

 

「じゃあ、俺たちもみんなの期待に応えるしかないな」

 

「その通りです! なので今日も練習、張り切って行きましょう!」

 

 

 こうして、今日の同好会の活動が始ま……

 

 

「……っと、その前にっ!」

 

 ……るかと思いきや、急にかすみちゃんは部室の端に置いてあった紙袋の中からゴソゴソと何かを取り出し始めた。

 

 何が始まるのかと彼女を待っていると……

 

 

「かすみんの特製レインボーコッペパンで腹ごしらえしてくださいね!」

 

 

 なんと、かすみちゃんが自分で作ったとされる色とりどりの食材が乗ったコッペパンだった。それも人数分あり、それぞれが誰に対して作ったかが分かるくらい見た目が異なり、まさに虹みたいにカラフルだ。

 

 

「おぉ! これって、かすみちゃんが全部作ったんだよな? ありがとう!」

 

「いえいえ〜! 皆さんにはブクブクに……い、いや! 気合を入れて欲しいので!」

 

 

 ブクブクに……? それに一瞬の悪巧みの顔……あぁ、なるほど。そういうことか。

 

 これはかすみちゃん、ライバルを邪魔しようとする悪い癖が出てますねぇ……こういうことさえしなければとても良い子なのですが。

 

 まあ、彼女の意図が分かったとしても直接咎めることはない。幸い彼女の仕掛ける小細工はさほど大したものではないからな。ならば、こちらが穏便に済ますための手を打つまでだ。

 

 

「確かにな。でもそうすると、コッペパンを食べた分練習を増やさないとな〜……」

 

「もぐもぐ……確かにそうですね! 徹さん、後でメニュー相談しましょう!」

 

「そうこなくちゃな。了解!」

 

「えっ!? ちょっ、ちょっと徹先輩にせつ菜先輩!?」

 

 

 こうして、かすみちゃんは自分の首を絞めるのであった。めでたしめでたし───

 

 まあ、もちろん無理をさせない程度の練習量にはするつもりだけどな。そこら辺どうするかは一旦置いといて……それよりも何故か俺宛として作られたコッペパンはチョコクリームが塗られているのだが!? チョコは俺の大好物の一つ……これで俺の心が穏やかでいられるか……! 

 

 そんな興奮は心の中に留めておいて、かすみちゃんが心を込めて作ってくれたことに一応感謝はしながら、そのコッペパンに手を伸ばした。

 

 

「それじゃあ、いただきます」

 

「ふふっ。それ、徹らしいコッペパンね」

 

 

 すると横から果林ちゃんがやってきて、俺が食べようとしているコッペパンを見ながらそう言った。

 

「まあな。果林ちゃんも食べてるんだな?」

 

 

 果林ちゃんの手にもコッペパンがあったのが意外だったので、それについて触れると彼女は得意げな表情でこう返した。

 

「えぇ、食べた分練習を増やしてくれるのでしょう? なら、こんなに美味しそうなもの、食べないで我慢するのは勿体ないわ」

 

「お〜、地味にプレッシャーかけてくるな〜……よし、果林ちゃんはレインボーブリッジ50往復だ!」

 

「任せなさい」

 

「What!?」

 

「……と、言うとでも思ったのかしら?」

 

「デスヨネー」

 

 

 レインボーブリッジ50往復なんて、毎朝あそこを走ってる愛ちゃんですらも無理だろうな……我ながらに少し巫山戯すぎたかと反省しながらもコッペパンを頬張るのであった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 翌日の放課後、俺はいつも通り教室を出て同好会の部室がある部室棟に向かっている。

 

 学校説明会で流すPVも完成して、あとはそこでのライブに備えた練習やその他諸々の準備をする予定だ。俺もマネージャーとして色々やるべき事がまだまだあるから、頑張らなきゃな。

 

 ただ、ライブをするためには講堂使用の抽選で当選しなければならない。結局そのくじを引くのは確か部長であるかすみちゃんってことになったんだよな。それでその抽選会の日時が……あぁ、今日だったな。じゃあ今頃かすみちゃんに加えて、付き添いの彼方ちゃんと愛ちゃんの三人が抽選会場の生徒会室でくじを引いているはずだ。当たってると良いな……いや、当ててくれるだろう。

 

 そんな風に考えながら校舎の廊下を歩いていると、向いから見知った子がやってきた。目が合うと、俺は手を挙げて彼女に話しかけた。

 

 

「よっす、三船。会うのは久々だな」

 

「はい。お久しぶりです」

 

 

 ボランティアや曲作りで世話になった三船と廊下で出会った。スクールアイドルフェスティバル後に彼女と会うのは初めてだ。

 

 

「調子はどうだ? 毎日楽しくやってるか?」

 

「はい、おかげさまで楽しく過ごさせていただいています。実は、これから生徒会に行くところなんです」

 

 

 ほう、三船も生徒会室に行くのか。まあもう少ししたら抽選会も終わるだろうし、問題ないと思うが……

 

 

「へぇ、そうなのか。また何か調べ物だったりするのか?」

 

「いえ、今回は別件です。実は私、今度行われる学校説明会の実行委員会に参加することになりまして……その集まりに向かう途中なんです」

 

 

 学校説明会実行委員会……! まさかこんなにタイムリーなところに三船も本格的に関わってくるとはな……

 

 

「おぉ、学校説明会のか! なかなかやり甲斐がありそうだな。頑張れよ!」

 

「はい!」

 

 

 俺は生徒会長の時、実行委員の人と一緒に学校説明会の方針や具体的な内容を議論したり運営をしたりしたが、やっぱりしっかり考えて意見を出してくれる人がなってくれると助かるんだよな。だから三船なら適任だろうと思う。

 

 ……って、ダメだ。三船をあまり話に付き合わせるのは良くないな。

 

 

「三船は集まりに向かう途中だったんだよな。引き留めてすまなかった」

 

「い、いえ! その、私も高咲さんにご報告したかったことがありましたし……」

 

「ん、報告?」

 

 

 一体何だろうか……?

 

 

「……スクールアイドルフェスティバルの動画、拝見させていただきました」

 

 

 ……マジか!!

 

 俺は驚きと喜びを隠せなかった。

 

 

「おぉ! 見てくれたのか! ちなみにどれくらい見たんだ?」

 

「それは……まだ最後のステージだけしか見れていないです」

 

「!?」

 

 

 最後のステージって……俺が作曲したあの曲を披露したステージじゃないか……あれを最初に見てくれたってことか……?

 

 

「あれが、高咲さんが作曲された曲なんですよね? とても良かったです。優しくて幻想的ながらも、どこか勇気をくれるような感じがしました。それに、スクールアイドル同好会の皆さんの想いの籠ったパフォーマンスも相まって、感動しました」

 

「そ、そうか……」

 

 

 とても丁寧な感想も頂いてしまった……なんだか恥ずかしいというか、こそばゆいというか……

 

 

「スクールアイドル、()()()()面白いですね……」

 

「ん……?」

 

 

 やっぱり……? 

 

 彼女の呟きに違和感を抱いていると……

 

 

「てっちゃーん! 見つけたー!」

 

 

 背後からよく聞き慣れた気が抜けるようなクラスメイトの声が聞こえた。何故このタイミングに……

 

 

「どうたんだ瑞翔(なおと)? こっちは取り込み中だぞ」

 

「いやー、ちょっと確認したいことがあってね。この落とし物についてなんだけど……あら?」

 

 

 すると、瑞翔は三船の存在に気づいた。

 

 

「それでは、私は失礼させていただきます」

 

「お、おう。じゃあな」

 

 

 三船は気を遣ったのか、会釈をしてその場を後にした。

 

 

 ……それにしても『やっぱり』って、そういうことなのか? 確かに、今の生徒会長である菜々ちゃんはあの真面目さとは裏腹にアニメラノベを好んでいたしな。可能性は無きにしもあらずだが、まさかな……

 

 

「……ふーん。いつの間にか初顔増えてるじゃなーい?」

 

 

 すると、三船が去る様子を見ていた瑞翔がそう話しかけてきた。

 

 

「初顔? どういうことだよ?」

 

「まーまーまー! ……んで、いつ出逢ったんだい?」

 

 

 俺は彼がニヤリと不敵な笑みを浮かべながらそう言い放った瞬間……

 

 

「……ヨーシブシツニイクゾー、バーイ」

 

「あっ! ちょっと、まだこれについて答え聞いてないよー!?」

 

 

 反射神経でその場から逃げていた。廊下を走ったことは反省するけど、瑞翔のそういうところ良くないって思います、ハイ。

 

 





今回はここまで!

徹くんも参加したPV、見てみたいですねぇ……

ではまた次回!

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