第49話です。
では、どうぞ〜
「じゃーん! みんなの初めてのインタビューが校内新聞に載りましたー!」
「「「おー……!!」」」
俺たち同好会のメンバーが新聞部のインタビューを受けてから、3日くらいが経った。
今日の活動を始める前に、侑はミーティングを開いてある発表をしている。
それは、彼女が今言った通り、同好会についての記事が校内新聞に載ったということだ。
電子版の新聞なので、侑はタブレットを持っており、その画面に新聞が映っていた。
俺もみんなに知らせる前に、新聞の一面を侑に見せてもらったけど、まあ相変わらず完成度が高い。たまに校内新聞を読むことがあり、毎回ハイクオリティの新聞を出してくるなとは思っていたが、流石虹ヶ咲の新聞部と言ったところだ。
……そういや校内新聞と聞いて、俺が生徒会長になった時を思い出した。その時、俺が写った新生徒会員の集合写真が目立つように載っていてな。一面の四分の一を占めてただろうか。
俺はその写真のど真ん中にいた訳なので、侑と歩夢ちゃんにもすぐ見つけられた。その日の昼休み、なんとそれを報告するためにわざわざ俺の教室まで来てたんだよね。いやぁ、あの時は恥ずかしかったな……
「みんな綺麗に撮れてる。璃奈ちゃんボード『イェーイ』」
「この記事のおかげで私達の認知度が上がりますね! そう思うと、更にレベルアップしなければ……!」
部室内の大きいテーブルをメンバー全員で囲み、真ん中にタブレットを置きながらお互いが自分の感想を呟く。
「……かすみんも予想以上に可愛く撮れてますねぇ、うふふ〜……これはかすみんがこの中で一番良い写真が撮れたスクールアイドルってことで間違いないですよねっ!」
かすみちゃんは、ドヤっと胸を張って周りにそう問いかけた。
「あら、それはどうかしら? クールで大人な私が一番じゃない?」
すると、かすみちゃんの言葉に果林ちゃんが異議ありと言わんばかりに反論した。
「あっ、ならあたしの元気なスマイルも負けてないよ〜!」
「私も〜。おめめぱっちりさんだったから自信あるよ〜」
……あれ? 何か小さなバトルが始まってないか……?
なんと果林ちゃんの反論に触発されたのか、愛ちゃんと彼方ちゃんもかすみちゃんに反論する。
……というか、お互い張り合ってると言ったところか。
なに、記事に写る九人の写真の中で誰が一番良く撮れてるかを競うのか? それってなかなか決着つかない気がするんだが……
「ぐぬぬぬ……! こうなったら、誰が一番良く撮れてるか決めてもらいましょう……侑先輩と徹先輩に!」
「……えっ?」
What!?!?
ちょっ……待て。何故俺に意見を求めて来た?
いや、そうか。本人たちにとって公平に評価できるのはスクールアイドルではない俺と侑しかいないから、こうなるのは自然なことなんだね。なるほどな、理解。
……いやいや何納得しちゃってるの俺!? そんな誰が一番なんて決める必要ないだろうが! それに、選ぶこっちの精神がすり潰されちまうわ!!
こんな問いに答える必要ないよな……? いや、答えなかったら答えなかったでみんなが悲しむかもしれないし……それだけは絶対避けたい。でもそんなこの中から選んだとしても、選ばれなかった子達は悲しむかもしれないし……あぁ、どうしたものか……
俺の頭の中では、様々な葛藤が渦巻いていた。
俺のそばに近づいていた存在に気付かずに……
いきなり俺のお腹辺りが締まるような感覚に襲われた。
「徹せんぱぁい……」
「うわっ!? ど、どうしたのかすみちゃん……?」
その正体はかすみちゃんだった。抱きついてきた彼女に話しかけると、俺の目線を捉えてこう言った。
「かすみんが……一番ですよね……?」
……うわぁぁぁ!!
その瞬間、俺の心はかすみちゃんのしおらしい表情をなんとかしたいという気持ちでいっぱいになった。
……分かった! 一番はかすみちゃんで良いから、そんな目で見ないでくれぇぇぇ!!
その思いを即座に口に出そうと思った瞬間、今度は背中の方に柔らかな感触を覚えた。
「こらこら、嘘泣きしないの。徹が困ってるじゃない……ねぇ徹、私が一番よね?」
俺が少し顔を横に向けると、果林ちゃんの顔が目の前にあった。
……えっ、今俺二人から板挟み状態になってるの?
いや、男である俺にとってこの背中の感触は刺激が強過ぎる……
それに今気づいたんだが……果林ちゃん、わざと当ててるな?
かすみちゃんが嘘泣きしているのかは分からないが、果林ちゃんとはそこそこ付き合いは長い。だからそれくらい分かる。
てか、俺を困らせるなって言ってる果林ちゃんが今俺を一番困らせてるんだよなぁ……後で仕返ししてやる。
俺は二人の誘惑に必死に耐えながら、理性を保とうとしていた。
「コラコラ〜、二人とも落ち着いて。徹くんも困ってるし、まだ新聞見終わってないでしょ?」
すると、テーブルの向かい側にいたエマちゃんが、闘争モードの二人を諌めるために声をかけた。
それに対して、かすみちゃんと果林ちゃんは俺をホールドした状態のままエマちゃんの方を向いた。
「そうだよ、続き読もう! 歩夢、続きはどんな感じ?」
それと同時に侑が仕切り直すようにして歩夢ちゃんに続きを読むように促した。
「えーっと……あっ、このページにしずくちゃんの合同演劇についての記事も載ってるよ!」
テーブルに置いてあるタブレットを持ち上げ、画面をなぞって新聞のページを切り替えた歩夢ちゃんは、侑にそう返事した。
「あっ、しず子……」
すると、かすみちゃんは俺にしか聞こえないくらい小さなの声でそう呟き、それと同時に腕の締めが緩くなった。
それを勝機と見做して、俺はこの板挟み状態から脱出した。そして、俺はみんなの話題の中心人物であるしずくちゃんの方を見た。
……すると、彼女は焦るような表情で、新聞をワクワクしながら見るメンバー達を見ていた。
おや、しずくちゃん……?
「それにしても、主役なんて凄いよね〜!」
「彼方ちゃん、絶対観に行くよ〜」
「……はい、ありがとうございます」
記事を見て侑と彼方ちゃんがそう感想を述べると、それに対してしずくちゃんはいつも通りの柔らかな笑みでそう言った。
……しずくちゃんの表情に陰りが見えていると思ったのだが、俺の気のせいだろうか。
一瞬の出来事だったため、自分が目撃した出来事に確信が持てない。
「どうしたんですか、徹さん?」
すると、俺がボーッとしてたからだろうか、そばにいたせつ菜ちゃんが心配そうに話しかけてくれた。
「ん?……あぁ、なんでもない。それより、記事読もうか」
「あっ、はい! 私のインタビューも自信が持てるような出来に仕上がってるので、是非見て下さい!」
「そうか。後でじっくり見るよ」
そうやってみんなである程度記事を見た後、普段の活動をこなしていった。
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翌日、いつも通り高校の授業を受けて、午後の授業を終えた。
今日の最後の授業は物理だった。俺のクラスもとい学科は理系の人が集まるので、この科目を一番得意とする人が多い。
「よーし! 最後の授業が物理なのは楽だな〜!」
得意な科目が最後の授業だと気が楽になるっていうのは俺も感じる。逆に現代文とかだったら……ちょっと嫌悪感抱いちゃうな。
「お疲れさん、瑞翔」
「おー、てっちゃんもお疲れ〜!」
俺が隣の席の彼に話しかけると、瑞翔は陽気に返事をしてくれた。
「あっ……! ……えっとねー……」
すると、彼は唐突に声を上げたかと思いきや、考え込むような動作をとる。一体どうしたのか気になったので、訊いてみる。
「ん、どうしたんだ?」
「あのねー、てっちゃんに言っておかなきゃいけないことがあったんだけど……ド忘れしちゃってね、アハハッ」
瑞翔は頭に手を当てて苦笑した。
「えぇ……ちゃんとしてくれよ〜気になるじゃ……」
「あっ、思い出した!」
呆れていると、俺の言葉を遮って彼はそう叫んだ。
人の言葉を遮るなって……まあいつものことだから今更気にしてないけども。
「お、まじか。教えてくれ」
「うん。あのね、今度藤黄学園と合同演劇があるの知ってるよね?」
「あぁ、知ってる。うちの同好会からも出るからな」
「そうその子だよ。桜坂しずくちゃんだっけ? うちのクラスの前まで来たことあったよね。あの子さ……」
彼が話す内にいつもの気の抜けた笑顔から段々真剣な表情になっていた。そして、次の言葉で俺は途轍もない衝撃を受けることとなる。
「……主役降ろされたみたいだよ」
「……えっ!?」
今回はここまで!
徹くんがしずくちゃんの主役降板を知る回でした。
今後彼がどうするのか……お楽しみに!
ではまた次回!
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