第51話です!
ではどうぞ!
『自分を曝け出せていない』
昨日、演劇部の部長さんが口に出したしずくちゃんが抱えている課題。
俺こと高咲徹は未だにこの課題をどう克服するかを考え続けていた。
あの後、スクールアイドル同好会にはちゃんと途中から参加した。しかし、心の中のモヤモヤが晴れずになかなか集中できなかった。
夜もなかなか睡眠が取れず、今日の授業中に少しだけ睡魔に襲われた。寝なかっただけ良かったが、久々に眠さに耐えるという感覚を味わったわ……
そして今の放課後に至る訳なのだが……実は、一息ついた時にふと思い出したことがあった。
そういえば、かすみちゃんと璃奈ちゃんがしずくちゃんとお出かけすると言っていたな、と。
もし仮にこの二人が事情を知っていた上でしずくちゃんを誘っていたとするならば、彼女から何か話を聞いているかもしれない。そして、その話がこの課題解決のヒントになるかもしれない。
今まで演劇部の部長さんの言葉について考えすぎていたせいか、そんなことに気づかなかったとは……やっぱり悩み過ぎるのって良くないな。
そして俺は、二人から話を聞こうとして校内のある場所に集合するようL◯NEで連絡した。
非常に唐突な声かけになってしまったが、二人とも来てくれるだろうか……?
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やってきたのは、校内の中庭の近くにあるベンチ。
まだ二人とも来てないだろうと予想していたが、集合場所が目に入ると、俺に対して話しかける声が聞こえた。
「あっ、徹せんぱーい! 待ってましたよぉ〜」
俺の予想に反し、かすみちゃんだけが既に集合場所に来ていた。
それに驚きながらも、俺は彼女に向かって手を振って駆け寄って隣に座る。
「よっす、かすみちゃん。集まるの早いね」
「ふふ、徹先輩のお呼び出しだったので真っ先に駆けつけちゃいました!」
「おぉ、そうだったのか……そうしてくれるのはこっちとしても嬉しいぞ。ありがとな」
かすみちゃんの健気な姿に感心したのか、俺の手は無意識に彼女の頭に伸びていた。
「えへへ〜」
頭を撫でられ、かすみちゃんの頬が緩んだ。
自分のためにすぐ来てくれた、なんて言われたら誰だって嬉しいものさ。つい頭を撫でてしまうのも、かすみちゃんの可愛さもあって無理はない。
「そういえば先輩、聞きたいことがあるって言ってましたよね?」
……おっと、いかんいかん。本来の目的を忘れてはいけない。
我に返った俺はかすみちゃんの頭から手を離し、彼女の問いに答える。
「そうそう。実は……」
「……あっ、もしかして……私が昨日しず子とりな子と一緒に何をしたのかが聞きたいんですねぇ〜?」
「えっ……? あぁ、それも気になるけど、すぐに聞きたいのはそれじゃなくてな……」
「も〜、先輩ったら知りたがり屋さんなんだから〜♡でも今回は特別にかすみんが教えてあげます! 聞いてくださいよ、実はですね……」
俺の発言を遮りながら、かすみちゃんは昨日の出来事について話し始めた。
凄い楽しそうな感じだから、よっぽど話したかったんだろうな。まあ俺も昨日一年生組が遊びに行くって聞いて何をしたのかは気になってたから、わざわざ彼女の話を止めるようなことはしなかった。
「……それで、もうとっても楽しかったんですよ!」
「ほう、二人と仲良くやってた訳か。楽しかったようで何よりだよ」
どうやらかすみちゃんの話によれば、あの有名なレインボーパンケーキを完食したというのだ。俺もスイーツはどちらかと言えば好きなので、その話は耳に入っている。
あの量は流石に女の子が一人で食べれる量じゃないからな……しずくちゃんと璃奈ちゃん、3人で力を合わせて完食できたといったところだろう。
それに、ショッピングも3人と一緒にいれば捗ったようで、かすみちゃんは満足そうだ。
……ふむ、この話だけを聞くと、かすみちゃんはしずくちゃんに起こっている事態を知っているかどうかが分からないな……少し深掘りしてみるか。
「……で、その後は普通に帰ったのか?」
「……! えっと……あっ! そんなことより、先輩の訊きたい事ってなんですか!? かすみん、それが聞きたいです!」
……ん、今露骨に話を逸らしたな。これはその後何かあったということだろうか。
まあ、俺からこの事は切り出すか。話を振ってくれたし。
「そうか? じゃあ単刀直入に言うけど……しずくちゃんが主演を降ろされたって話は知ってるか?」
「……!! 徹先輩
かすみちゃんは、先程の可愛い笑顔とは一転、真剣な表情になった。
『も』ってことは、そういうことだよな……
「やっぱり……そうだよ。クラスメイトから話を聞いたんだ」
「そうだったんですか……なら、昨日は私の誘いを断って何をしてたんですか?」
すると、かすみちゃんは少しムスっとしてそう問い詰めた。多分なぜしずくちゃんのそばにいてあげなかったのか、という疑問だろう。
「演劇部の部長さんに主演を降ろした理由を聞いてきたんだ。俺も最初はしずくちゃんの所に行こうと思ったけど、その時かすみちゃんが3人でお出かけするって聞いたからさ。本人は2人に任せようって思って、他に何ができるかって考えた結果、そうすることにした」
俺は、少し疑っている彼女に細かい訳を説明した。
「なるほど……で、演劇部の部長はなんて言ってたんですか?」
「それがな……『自分を曝け出せてないから』らしい」
「自分を……曝け出せない……?」
彼女は、その抽象的な言葉に頭を抱える。
……少し言い方を変えてみるか。
「まあつまり、『本当の自分を隠している』ってことだ」
「んー……なんとなく分かったような、分からないような……」
かすみちゃんは、それに対してある程度の理解を得たようだ。
「まあ、結構難しいことだよな……あっ、このことは本人には内緒してくれないか? 多分それを本人が聞いたら気を遣いそうだからさ」
「……確かにそうですね。分かりました」
そうして、俺が演劇部の部長さんに話を聞いてきたことをしずくちゃんに話さないよう釘を刺した。
俺はその『自分を曝け出せない』という言葉の意が分かっても、どうその問題を解決できるか、どう彼女にアドバイスをしてあげればいいか分からなかった。だから、かすみちゃんの意見を聞いてみたい。他者がどう思うかを聞けば、何か分かるかもしれないと思ったのだ。
「……なんか、今先輩の話を聞いて思ったんですけど……しず子は私とは違うのかなって」
「違う? ……それって、かすみちゃんは本当の自分を出せているってことか?」
かすみちゃんの口から出た『違う』という言葉。その言葉の解釈はしたものの、俺の解釈が彼女が言おうとしていることと合致しているかが分からないので一応確認をした。
「そうですねぇ……私はかわいいので、自分を隠すとかそんなことはしないですから!」
なるほど、そうか……かすみちゃんは自分が事実的に可愛いか否か関係なく、自分が可愛いと思っているわけだ。
要は、自分に自信があるってことか。まあ実際にかすみちゃんは本当に可愛いとはいえ、そこまで自信を持てるというのは凄い事だなと思う。今思えば、彼女の普段の発言からも『自分が一番可愛い』という意志が如実に出ていたな。
「あっ、別にしず子を馬鹿にしてる訳じゃないですよ!? その……私も自分が嫌になったことは……ありますから……」
「えっ?」
かすみちゃんの表情に一時影が見えた。自分が嫌になったこと……一体何があったのかを俺は咄嗟に問おうとした。
「徹さーん、かすみちゃーん!」
すると、俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「あっ、りな子!」
かすみちゃんは、暗かった顔をすぐに切り替えて璃奈ちゃんを迎え入れた。
俺も考え込んでる場合じゃないな。
「璃奈ちゃん、来てくれてありがとうな」
「はぁ……ごめんなさい。はぁ……ずっと待たせちゃって……」
璃奈ちゃんは少し急ぎ足で来たのか息が上がっていた。
「それは大丈夫だ。それよりほら、座って休んでな」
「分かった……ありがと」
感謝の言葉を述べた後、彼女は俺の向かい側にあるベンチに座った。
俺は少し休んでから話し合いを始めようと思ったが、璃奈ちゃんが休む事なく話を続けた。
「それで、徹さんが私達を呼んだっていうことは、しずくちゃんのことだよね?」
「……! ……そうだ。ついさっきかすみちゃんと少し話してたところだ」
さすが璃奈ちゃん、察しが良くて助かるな。
「なるほど……かすみちゃん。しずくちゃんと別れた時のこと、徹さんに話した?」
すると、かすみちゃんの方を向いて璃奈ちゃんはそう訊いた。
「えっ? ……あっ、まだだった……」
しずくちゃんと別れた時……やっぱりその時に何かあったんだな。さっきかすみちゃんはその話題を振った時、それを逸らしたからな。
「かすみちゃん、何があったか教えてくれるか?」
「あっ、はい! 実は……」
ここから、かすみちゃんの説明に璃奈ちゃんが補足する形で、別れた時の二人から見たしずくちゃんの様子を聞いた。
どうやらしずくちゃんが暗い顔をしているところを目撃し、主役を降りたことを励ましたところ、本人は『大丈夫だよ!』の一点張りでそのままその場を去ったという。
多分、自分のことで他人を心配させたくない、そう思った故の行動だったのだろう。
2人が説明し終わり、俺も納得したところで、かすみちゃんがその出来事について感想を述べる。
「その時私はびっくりしました。しず子って実はこんなに頑固だったんだなって!」
かすみちゃんは、参ったと言わんばかりに上を見上げる。
「……きっと、今のしずくちゃんもしずくちゃんだよ」
「えっ……?」
璃奈ちゃんが放った言葉に、かすみちゃんは驚きの声を上げた。
「……多分しずくちゃんは、そういう自分を出すのが嫌なんだと思う。私もその気持ちが分かるんだ」
「……! ……あっ、そっか……」
……そうか。璃奈ちゃんも感情が表情に出せなくて悩んでたよな。
自分が嫌になること……誰にでも一度はあるのかもしれないな。
「私の時は、愛さんと徹さんがグイッと引っ張ってくれた。みんなが励ましてくれた。だから、ライブが出来た」
璃奈ちゃんの表情からは、自分の思いを伝えようとする意志が感じ取られた。
……俺の名が出たことに驚きが隠せないが、確かにあの時愛ちゃんがジョ◯ポリスに誘わなければ、今みたいに璃奈ちゃんはスクールアイドルになってないのかもしれない。そして、同好会のみんなの暖かい励ましがなければ、彼女の初ソロライブは実現しなかったかもしれない。
ここから分かることは、誰かの力によって何かを成し遂げることが出来たということだ。つまり……
「私には愛さんと徹さんがいた。しずくちゃんには……」
「……っ! 私、行ってくる!!」
すると、璃奈ちゃんが言いかけたことを遮ってかすみちゃんは一目散に走り出した。
……そうだ。さっきかすみちゃんから話を聞いたことも思い出して、今気づいたことがある。
しずくちゃんの陰を照らすのは、かすみちゃんが適任だと。かすみちゃんが言う言葉には、説得力があるからだ。それに、こういうのは同い年の2人で話した方がお互い気が楽で、本音で話し合うことができる。
俺は……彼女にその役割を託す。
「……ファイト!」
かすみちゃんの走る姿を、璃奈ちゃんはボードを『笑顔』にして見守る。
「……頼むぞー!!」
俺もそれに続いてかすみちゃんに向かって叫ぶ。
彼女の姿が見えなくなってから、璃奈ちゃんが話しかけてきた。
「……徹さんは行かなくていいの?」
「……あぁ、俺が行く必要はない。かすみちゃんに任せるさ」
俺は、本当の自分を隠している……いや、今思えば……
「それより、そろそろ部活に戻ろうか。璃奈ちゃんは昨日サボっちゃってるでしょ?」
「うん。せつ菜ちゃんがご立腹そう……璃奈ちゃんボード『ひぇぇぇ……』」
俺たちはそんな感じで同好会の活動に戻っていった。
今回はここまで!
しずくちゃんとかすみちゃんの掛け合いには徹くんは加わりませんでしたね……これも彼が抱える何かが故……それは今後明らかになっていきます。
しずくちゃん回は次の回で終わりにする予定です!この後は更新をできる限り早くしようと思っています……汗
ではまた次回!
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