今回はオリジナル回、第53話です。
ではどうぞ!
「んー……静かだなぁ」
ここで一句。
部室入り
競ってやっと
一番乗り
どうも。同好会の部室で一人佇む高咲徹だ。
しずくちゃんの悩みを聞いてなんとか解決したのは今朝の話で、今はその日の放課後となっている。
今日の放課後は、一直線でこの同好会の部室へやって来ることが出来た。
普段は大体他の同好会のメンバーが先に来ていたりするので、部室に一番乗りをすることが出来なかった。
それがなんと、今日に限っては俺が一番乗りだったのだ。実際一番乗りだからといって何か特別なことがある訳でもないが、なんだか嬉しくて思わず五七五を詠んでしまった。
……てか俺が詠んだ五七五、字余りしてたわ……まあそんなことはどうでもいいか。
そんな訳で俺は部室にて一人で優雅にミルクティーを……飲む余裕なんぞなく、部室のテーブルを使って同好会の活動記録ノートを振り返ったり、書き入れたりしている。
この活動記録ノートは、主に俺と侑が書き込んでいるものだ。日々の活動や練習の内容、俺たちから見たメンバー達の体調、または何か意見交換が行われた時に出たアイデアなど……同好会で起きた出来事をこのノートに記録している。
記録というのは大事なことだ。近い未来、過去にどのようなことをしていたかを振り返るための手段になる。そしてそれが、何かしらのアイデア、発想を生み出すきっかけにもなり得る。この同好会の発展には欠かせないものだ。
だから、そんな大切なノートと俺は真剣に向き合っているのだ。優越感に浸っている場合ではない。例え寝不足でもな。
……そういや、俺の次に来るメンバーは誰だろうか。早く来ている子と言ったら、エマちゃんとか愛ちゃん辺りか? さて、二番乗りの子はいつ来るだろうか……?
集中する、と言ったにもかかわらずそう考え始めてしまっていたその時、部室のドアが開く音が聞こえた。ノートを見ていた俺はその音に気づき、誰が来ただろうかと目線をそちらに向けると……
「あら、徹さんが先に来てたのですね! お疲れ様です!」
「あれ、せつ菜ちゃんか! お疲れ。珍しいな」
二番乗りだったのは、なんとせつ菜ちゃんだった。これは予想外だ。
彼女は生徒会長でもあるので、大体生徒会の仕事がある時はその仕事を終えてから遅れてやって来ることが多い。彼女が早くからここに来ているのを見たことがないな。
「珍しい、とは……?」
俺の声掛けに首を傾げるせつ菜ちゃん。
「せつ菜ちゃんって、いつもはなかなかこんな早めに来ないからさ。生徒会の仕事は一通り終わったってとこかな?」
「あぁ、そういうことでしたか。はい、昨日のうちに処理すべき書類に目を通しておいたので、今日は早めに来ることが出来ました!」
なるほどな。まあ確かにこの時期はそこまで生徒会の仕事は少なめではあるか。もう少しすると期末テストと夏休みがあって忙しくなるけども。
ふふっ、せつ菜ちゃんが嬉しそうな顔してて何よりだ。
「そうかそうか、それは何よりだな。でももうすぐしたらまた忙しくなるよな。その時はまたお手伝いに行こうか?」
「えっ!? そんな、また徹さんに手間を掛ける訳には……!」
せつ菜ちゃんはあわあわ焦った様子だ。そんな遠慮しなくていいのになぁ。
「いいっていいって。そうすれば、練習できる時間が増える訳だからさ。また協力させてくれ」
「……そうですね。いつもありがとうございます。じゃあ、その時はまたお願いしますね」
「うむ、それでいいんだ」
よし、また生徒会で仕事を手伝えるぞ。やっぱりあそこにいるのが一番落ち着くんだよな、未だに。いや、職業病はなかなか治らないね。
そうしみじみと感じていると、外からザワザワと話し声が聞こえてきた。その正体は、部室のドアが開けられた瞬間に明らかになった。
「ちっす〜! おぉ、まだ人が……あっ、てっつーにせっつーじゃん!」
「せつ菜ちゃんが先にいるなんて珍しいね。チャオ〜」
「こんにちは。久々の部室でなんだか懐かしい感覚になりますね」
やってきたのは、愛ちゃんにエマちゃん、そしてしずくちゃんの3人であった。なんだろう、この3人組というのも珍しい気がする。
「これは御三方、こんにちは! その様子だと、朝練の疲れはとれたみたいですね」
「そうだね〜、練習のペースにも慣れてきたかも」
「私も演劇部のこともありながら、そこまで疲れませんでしたね」
せつ菜ちゃんの言葉に、3人は相槌を打つ。
「そうですか……なら、もう少しキツくしても良いかもしれませんね……」
「「えっ……!?」」
「おー! 練習がキツくなればなるほど、愛さんは燃えるよ〜!」
顔が青ざめたエマちゃんとしずくちゃんに対して、むしろ大歓迎な様子の愛ちゃん。
彼女達が更なる高みを目指すためにも練習量は少しずつ増やしていく必要があるのは間違いない。間違いないのだが……
「まあまあ、まだみんなの様子も見てないし、それについては後々話そう。ところで、廊下から君達の楽しそうな話し声が聞こえてきたんだけど、何か話してた感じか?」
話題を切り替えようと、俺はみんなに話しかける。
「あー、しずくのことかな? あの時の合同演劇が凄かったよー! って話してたんだ」
「そうなんです! 愛さんもエマさんも、凄い勢いで褒めてくださるものですから、びっくりしました」
「だって、本当に凄かったって思ったんだよ! 思わずしずくちゃんに見惚れちゃったな〜」
なるほど。まあそりゃあんなの見せられて何も感じないはずがない。今朝話した時は不安そうなしずくちゃんだったが、二人の感想を聞けて今度こそ安心できたのではないだろうか。
「私もです! ライブのパフォーマンスも心に来るものがありました! 素晴らしい表現力で尊敬しちゃいます!」
3人の話を聞いていたせつ菜ちゃんも、しずくちゃんに劇の感想を述べた。
「そんな、尊敬だなんて……いえ、そう言っていただけると自信になります」
そうだな。せつ菜ちゃんの言う通り、しずくちゃんの表現力はこの同好会のメンバーの中でも一番なのではないかと思う。スクールアイドルとしての彼女の武器だろう。自信の持って使えるスキルだ。俺はそう思うんだ。
「あー、愛さんもしずくみたいに舞台の上で何かを演じてみたいな〜」
すると、愛ちゃんが腕を組んでふとそう呟いた。
「確かに……それか、同好会のみんなで劇やってみるのも良いかもね〜」
エマちゃんは、愛ちゃんの言葉に同意を表した。
「でも、11人は少し多くないですか? 役分けが大変そうですし……」
「あっ……そっか」
確かに、せつ菜ちゃんの言う通りこの同好会には10人+俺の11人がいる。これならサッカーをやれる人数であり、演劇にそこまで人数は必要ないだろう。やったとしても、数人は出番が少なくならざるを得ないだろう。
「あの……一つ提案があるんですが、いいでしょうか?」
「おう、良いよ。なんだ?」
「今から私たちでやってみるというのは如何でしょう?」
「「「……えっ?」」」
────────────────────
「それじゃあ、始めますよ〜……よーい、アクション!」
しずくちゃんの掛け声とともに、カチンコの音によって物語が始まる。
……そう、今俺たちは即興劇というものにチャレンジしているのだ。
即興劇では、その場で設定やキャラをどうするか話し合い、披露する劇だ。どうやら演劇部の練習にも取り入れられているらしい。多分、アドリブ力が鍛えられるからなのだろう。
それで、しずくちゃんは監督として劇自体には参加せず鑑賞するとのことなので、愛ちゃんとエマちゃん、せつ菜ちゃんの3人と劇をすることになったのだが……
登場人物を話し合う時、俺が主人公をやるということだけは即決した。
いやどうしてや……俺は脇役が似合うと思うのだがな。というか、こういう劇をやるのも幼稚園とか小学校でやった発表会以来で、そんな主人公の大役を任されるほどの演技力はないのだが……
そんなこともあって色々設定を考えていたんだが、どういうジャンルにしたかというと……いわゆる正義が悪をやっつけるヒーローものだ。
これはせつ菜ちゃんの提案だったのだが、最初はまるっきり特撮っぽいものをやりたいと言っていた。まあ言ってしまえば、仮面ラ◯ダーみたいなやつだ。ただそうすると流石に世界観が限られてしまうので、抽象化してヒーローものとした。
……さて、最初のワンシーンだ。
「マズいなぁ……迷子になっちまった。どこだここ……?」
主人公である俺は、世界を旅する剣士である。途中、森の中で迷子になってしまう。このアイデアはエマちゃんからだ。自然豊かな舞台が良いとのことだ。
「誰か助けて────!」
「ッ……!? こっちから聞こえたか。今行くぞ!」
すると、森の中からだろうか、悲鳴が聞こえてきた。俺は即座に声の方向へと走り出した。
「あれか……君、怪我はない!?」
「……うん、私は大丈夫。でもお姉ちゃんが……!」
「お姉さんがいるんだね……これは
主人公に助けを求めたのは、この森に住む一人の少女だった。彼女には姉がいて、その姉が
ちなみに、今その少女を演じているのはエマちゃんだ。
まさかあのメンバーの中で最年長が妹役をするとはな……じゃんけんで決まったから仕方ない。
「お姉ちゃんが居なくなるなんて私……イヤだよ……」
彼女の手は、恐怖からか小刻みに震えていた。
「……大丈夫だ」
そして、俺は彼女の恐怖感を拭うために、優しく励ましてから姉を助けにいく……
「「「「……!?」」」」
ん……? あっ、やべ。予定にはないのにエマちゃんの頭を撫でてしまってるじゃないか……いや、ここで演技を止めるのは中途半端だ。続けよう。
「必ず君のお姉ちゃんを救ってみせる。またお姉ちゃんと一緒にいることもできるさ」
エマちゃんは、口をポカーンと開けながら俺を見つめている。
「それも、君が大声で助けを呼んでくれたからさ。勇気を持って行動してくれて、ありがとう。お姉ちゃんの場所を教えてくれるか?」
俺はそう言った後、彼女の案内に従って、お姉ちゃんの元へ行く流れなのだが……
「……」
エマちゃんは未だに変わらず動きがない。頬を赤くなってるし、どうしたのだろうか……
このままでは物語が進まないので、彼女に話しかけようとしたその時。
「こんにちはー! 誰がい……?」
部室のドアが開いてやってきたのは侑だった。
彼女が部室を見渡そうとすると、俺らの様子を見てしばらく固まった。
「ゆ、侑……よう、遅かったな」
変な空気が漂いながらも、俺は声を掛けると……
「お兄ちゃん……う、うん、日直だったからさ。それより……何してるの?」
えっ、何してるって……
「……あっ」
うわっ、まだエマちゃん頭に手を置いたまんまだった……! 今気づいてやっと手を離したけど、大丈夫かな……
「こーんにちはー!! 皆さん元気……あれ、これはどう言う状況ですか?」
すると、今度はかすみちゃんが部室の中に入ってきた。この変なタイミングで部室入りラッシュが到来しちまったのか……!?
「あっ、かすみちゃん。なんかまたお兄ちゃんがタラシ属性を発動しちゃったみたい」
「あー……なんとなく分かりました。そろそろ徹先輩を成敗する必要がありそうですね?」
「うん、そうだね。私も加勢するよ」
「侑先輩がいるなら心強いです!」
「……ちょっ、君達どうした!?」
えちょっ、待て待て! なんか物騒な会話になってるし!? しかもまたタラシってやつかよ……相変わらずその意味が分からねぇ!!
これは一緒に演じてたメンバーに釈明してもらうしかねぇぞ……
そう思って横にいた愛ちゃんとせつ菜ちゃん、しずくちゃんの方を見ると……
「……劇の方はここまでにしよ! てっつー、一旦二人に施しを受けてもらった方がいいよ! ガンバ!」
「あはははは……ご武運を祈ります」
「これは仕方ありませんね。この即興劇の続きはまた私と二人でやりましょう。ね?」
「あっ、ちょっしずく!? 抜け駆けはダメでしょ!」
「しずくさん!? それはずるいです!」
三者揃って見捨てられたぁぁ!! えっ、施しってなんだ? マッサージでも受けるのか俺? 成敗するとか言って実はマッサージだったとか……な訳がないでしょうが! 確実に痛い目に遭うやつだろ!!
ていうか最後のしずくちゃんの発言でまたなんか争いの火種が着火された気がするんだが……あーもうカオスだ。
「さて先輩、覚悟はいいですかぁ……?」
「お兄ちゃんがタラシじゃなくなるくらい、くすぐっちゃうよ……」
そう絶望に打ちひしがれいると、悪魔の手はもう迫っていた。
……もう、どうにでもなれ。
そしてこの後、我に返ったエマちゃんと後から来た歩夢ちゃんに止めてもらうまでの間、俺は
そして、部室の隅で焦りながら様子を伺う璃奈ちゃん、ノリノリで観客と化していた彼方ちゃん、落ち着いて傍観する果林ちゃんがいたとか。
今回はここまで!
少しネタを盛り込んでみました笑
でもエマちゃんが妹というのも……いいですよね。
次からは多分原作第9話の内容に入っていきます。
原作の方も2期が始まってますね。早く書きたい……
ではまた次回!
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