高咲兄妹とスクールアイドルの輝き   作:Ym.S

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どうも!
第56話です。
今回は若干長めです。
では早速どうぞ!


第56話 恐れに克ち進化へ

だいばーふぇす(Diver Fes)……?」

 

「夏の音楽の祭典で、毎年やってるわよね」

 

 

 音楽の祭典、ね……つまりスクールアイドル以外にも色んなアーティストが出るライブってことか。

 

 

 突然のライブへのお誘いに一同驚愕し、落ち着かない者もいる中、俺たちは遥ちゃんと藤黄の綾小路さんから説明を受けている。

 

 まあ、侑みたくこのフェスを知らない人もいるから、きっちり説明してもらわないとな。

 

 ちなみに、俺は生徒会長の時に一度そのフェスの名前だけを聞いたことがある。

 

 

「今回はスクールアイドル枠として東雲と藤黄が出ることになったのですが、遥さんと相談して虹ヶ咲のスクールアイドル同好会の皆さんを推薦することになったんですよ」

 

 

 綾小路さんが俺たち同好会に声をかける経緯を話すと、一人遥ちゃんに向かって近寄る者がいた。

 

「はーるかちゃーん、ありがと〜!!」

 

「わっ!? ……えへへ」

 

 その正体、彼方ちゃんは嬉しさのあまり妹である彼女を抱きしめた。

 

 

 そうか、多分遥ちゃんの声が無ければ俺たちはこうやって誘われなかったかもしれないのか。そう考えると……遥ちゃん、グッジョブ。何かお礼をしたいところだ。

 

「それにしても、なぜ私たちを……?」

 

「ふふっ。私たち藤黄と虹ヶ咲の合同演劇があったじゃないですか。そこで桜坂しずくさんのライブパフォーマンスを見まして、みなさんのパフォーマンスを見てみたいと思ったんです」

 

「わ、私の……?」

 

 

 なるほど、あの時に綾小路さんもいたんだな。

 

 

 ほら、こうしてしずくちゃんの演技を良く言ってくれる人はここにも居たぞ。やっぱり彼女の演技はこう人を惹きつけるくらい凄いんだよ……

 

 

「特に朝香果林さんはモデルの雑誌でよく拝見いたしますので、貴方のスクールアイドルとしてのパフォーマンスには興味があるんです」

 

 

「……!」

 

 

 ほう。果林ちゃんが出ている雑誌の読者ときたか。俺も実はこっそり彼女が出ている雑誌は一冊だけ買ってみて読んだことはあるのだが、綾小路さんは普段から雑誌を読む人なのかな? ……ちょっと聞いてみるか。

 

 

「ふーん、綾小路さんは雑誌をよく読むのかな?」

 

「そうですね、結構……ってひゃっ!? な、なぜここに男のひとが!?」

 

 ……えっ? 

 

 

「姫乃さん……虹ヶ咲は共学ですよ。男性がいてもおかしくありません」

 

「あっ、そうでした……ごほん。取り乱し大変失礼しました。そうですね、私はファッションに関心を持ってるので、よく読ませていただいてます」

 

 あぁ……なるほどな。この同好会自体女の子しかいなくてもおかしくない……いや、男がいる方が珍しいもんな。

 

 それに、この虹ヶ咲学園自体男女比が圧倒的に女子に傾いているからな。男の存在は場合によって忘れられることもあるだろう。

 

 しかし、まさか顔を赤くして慌てふためくとは……まあ遥ちゃんに初めて会った時も似た反応だったし、女子高の子は男への耐性はないものか。

 

 

「そうなんだな……いや、こちらこそなんか驚かせちゃってごめんな。自己紹介すると、俺は高咲徹っていう者で、こっちは妹の侑だ」

 

「あっ、よろしくお願いします!」

 

 多分同好会のスクールアイドルである九人のことは知っていても、裏方の俺たちの事は知らないかもしれないと思い、一応自己紹介をしておいた。

 

「あら、貴方方は兄妹なのですね。こちらこそ、よろしくお願いします。徹さん、侑さん」

 

 綾小路さんは柔らかな笑顔でそう返してくれた

 

 

「えーっとぉ……質問なのですが! このライブって沢山の人が来るんですよね!?」

 

 すると、話に区切りがついたのを見計らっていたのか、かすみちゃんが身を乗り出して綾小路さんに訊いた。

 

 

「はい。例年だと、三千人くらいですかね」

 

「三……千……人……!! 皆さん! このライブ、参加しないわけにはいかないですよ!!」

 

 やっぱり……相当な規模のライブだ。今までのライブとは比べものにならないくらい……これはかすみちゃんの言う通り、このチャンスを逃す訳がないな。多分みんなもやる気満々なのではないだろうか? 

 

 

「でも、一つだけ問題が……」

 

 

 そうやってみんなが感心している中、遥ちゃんの表情には憂いの色が見えた。

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「ねぇ、みんなでメドレー形式にするのはどうかな?」

 

「いいね〜、それならみんな出ることが出来るね」

 

「でも、それだと最短でも10分を超えますよ!?」

 

 

 エマちゃんの案に彼方ちゃんが賛同するが、それに対してしずくちゃんの鋭い指摘が飛んでいる。

 

 

 遥ちゃんと綾小路さんが部室を後にして、場所は移って普段同好会が練習をしている校内の屋外。

 

 

 そこで何故このように真剣な議論が為されているかを説明しよう。

 

 

 あの二人がいうには、実はこのライブでスクールアイドルが披露出来る持ち時間はたったの三曲分。東雲と藤黄がそのうちの二曲を占めているので、俺たち虹ヶ咲の持ち時間は一曲分ということになる。

 

 そこで、このスクールアイドル同好会がソロアイドル活動をしている点から問題が生じた。同好会のメンバー全員が十分にパフォーマンスするためには、少なくとも九曲分の時間が必要である。仮に一曲分に収めようとするならば、一人ひとり碌にパフォーマンスが出来ないだろう。

 

 

 こんな感じで一悶着が起きているのだが、そこに一人物申す者がいた。

 

 

「あれこれ考えるだけ無駄よ。今回のステージに立てるのは、この中の一人だけ……誰がライブに出るか決めましょうよ」

 

 

 ふむ……果林ちゃんの言う通り、そうならざるを得ないだろう。しかし、こういう状況に置かれたみんなは……

 

 

「……」

 

「……!」

 

「「……あははは」」

 

 

 かすみちゃんとしずくちゃんが手を挙げようとしたが、同時に挙がり、二人の間になんとも言えない空気が立ち込める。

 

 

 ……そうだよな。彼女達の性格を考えると、仲間のことを思うがあまりお互いを遠慮してしまうんだよな。特に、元々同好会を結成した時からいる五人はそうだろう。まあ、一時みんなの仲に亀裂が入った過去があるからな……

 

 

「くじ引きとかどうかな……?」

 

「そ、それが良いかな……!」

 

 

 

「……互いに遠慮し合った結果運頼み……そんなので良いわけ?」

 

 

 この険悪な空気を断ち切ろうと歩夢ちゃんはくじ引きを提案し、エマちゃんも賛同したが、それも果林ちゃんはバッサリと却下した。これには、周りのみんなも驚きを隠せない。

 

 

「ですが、私たちは……!」

 

「衝突を怖がるのは分かるけど、それが足枷になったら意味がないわ」

 

 

 せつ菜ちゃんが反論しようとするが、構わず果林ちゃんは話を続け、みんなにこう問いを投げかけた。

 

 

 

「……それで、本当にソロアイドルとして成長したと言えるの?」

 

 

 同好会のメンバー達は、息を呑みながら果林ちゃんの話を聞いている。

 

 彼女の今まで見ない真剣さを目の当たりにして、俺にも緊張感が走っている。

 

 

「……今日は帰るわね」

 

 

 最後にそう言い残し、彼女はその場を去った。

 

 

 

 

「果林ちゃん……」

 

 

 エマちゃんは、心配そうに見つめている。

 

 

 ……うーむ、このままだとずっと深刻な雰囲気のまんまだろう。

 

 実際、今はそうしてる場合ではない。このタイミングで一つ議論すべきことがあるのだ。

 

 ……よし、俺がそのきっかけになってやろうか。

 

 

「……なぁみんな、一つ訊いて良いか?」

 

 

「あっ、はい! なんでしょうか……?」

 

 

 俺の声掛けに一番早く気づいたせつ菜ちゃんに続いて、みんなの視線がこちらに向く。

 

 

「今の果林ちゃんの言葉についてなんだが……少しキツい言い方だったかもしれないが、俺は彼女の言うことは正しいと思うし、今後俺たちが克服すべきことだと思う。そこでだ……みんなは彼女の話を聞いて、どう思ったか? 率直な意見が聞きたい」

 

 そう問いかけると、みんなは考え込み始めた。

 

 

「……私も、果林さんの言うことはごもっともだと思います」

 

「うん、本来遠慮すべきではないのにね〜……そういうところはなんとかしなきゃって、彼方ちゃんも思う」

 

「かすみんも、少しなんなのとは思いましたけど……衝突を恐れないようにしなければいけないのは、分かってます」

 

 

「なるほどな……でも、やっぱり難しいんだよな。それを克服するのって」

 

 

「はい……同好会が一時廃部になったあの出来事もあり、私としてはなかなか踏み出せないんです……」

 

 

「うん、争いで仲が悪くなるのは嫌だよね……」

 

 

 うーむ……そうだよな……

 

 いや、まさかソロアイドルになってからこういう形で再び衝突が起きるとは思わなかった……とはいっても、今回は経緯が違うか。今までグループでやってた時は、メンバーの個性同士の衝突。今回は、メンバーの中から選ぶ上での衝突。少し訳が違うのかもしれない。

 

 

 いずれにせよ、衝突に対する怖さというものをどうにかしなければ……

 

 

「……ねぇ、あたしから一つ良い?」

 

 

 すると、愛ちゃんが発言をしようと許可を求めてきた。

 

 それに対して俺も含めたみんなが頷くと、愛ちゃんは話し始めた。

 

 

「あたしは同好会が廃部になったーとか、過去の話とかを知らないから、それに対しては何も言えないんだけどさ……果林みたいに、なんでも歯に衣を着せずに言ってくれる人が居たら、安心できるんじゃないかって思うんだけど?」

 

 

 愛ちゃんがそういうと、元々同好会にいた5人の顔が驚きに変わった。

 

 

「確かに果林さん、みんなの為に真剣に言ってくれてる気がした。もしかすると誰かが喧嘩した時でも、何とかしてくれそう」

 

 続いて璃奈ちゃんが愛ちゃんの言葉に同意を示す。

 

 

 なるほどな……確かに今までの同好会には、あんなにサバサバしていて冷静な人はいなかったもんな。俺はアイドルじゃないのもあってなかなか色々物を言えないこともあるが、彼女なら……

 

 

「そっか……確かに果林ちゃん、彼方ちゃん達に真剣に向き合ってくれてた」

 

「前の同好会とは違うんですもんね……何だか勇気が出てきた気がします!」

 

 彼方ちゃん、しずくちゃんは腑に落ちたようにそう話す。

 

 

「そうですよ……今の同好会は違います! 同好会を再び戻してくれた、侑先輩もいますし!!」

 

「えっ、私!?」

 

 

 かすみちゃんの侑への名指しで、本人は予想していなかったのか驚愕している。

 

 そうだ……お前がいるじゃないか……

 

「……そうですね。私、ソロアイドルとしての覚悟が出来そうです!」

 

「……うん! 私もだよ、せつ菜ちゃん!」

 

 先程まで特に深刻な表情をしていたエマちゃん、せつ菜ちゃんも今はとても笑顔の様子だ。

 

 

 ……この同好会は、頼もしいメンバーが増えたことによってもっと成長できる。そう信じてみようかな。

 

 

 こうして後日に改めて誰がDiver Fesに出るかを決めようということとなり、今日は解散となったのであった。

 

 

 ……あっ、この後果林ちゃんのモデル撮影に同行するんだった。向かわなきゃ。

 

 

 




今回はここまで!
割と同好会のみんなの意識を変える、アニメにはない重要な回になったかなと思います。
次回は今回の最後の一文にある通り……そういう回になります。
ではまた次回!
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