高咲兄妹とスクールアイドルの輝き   作:Ym.S

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どうも!
第57話です。
今回はオリジナル要素がかなり多めです。
では早速銅像!



第57話 モデルの世界

 

 

「はいじゃあ朝香さん、今度はおでこに手を当ててみて……そうそうそれ! 良い感じだよー」

 

 

 一眼レフを構え、モデルに声を掛けながらもとめどなくシャッターを切っていくカメラマン。それは、モデルの魅力を引き出すベストな瞬間を逃さないがためだろう。それに対して、モデル自身もカメラマンの要望に答える。相当の集中力を持ってこの場に臨んでいるはずだ。

 

 

 ……どうも、モデルの撮影現場の緊張感に新鮮さを感じている高咲徹だ。

 

 

 同好会の活動が早く終了し、他のメンバーは遊びに行ったり家に帰ってゆっくりするなどしている中、俺は果林ちゃんの仕事を現場の隅から見学している。

 

 いやホント、やっと来れたな。それにまさかのその事を思い出した当日に来れたというね。嬉しいものだ。

 

 

「……あれ、もしかして君はウチに所属したい新人さんかな? ごめんね、ウチは女性しか対象じゃないんだよねぇ」

 

 

 すると、横から一人の女性が声をかけてきた……なんか俺のことを新米のモデルだと勘違いしてるようだが、俺はモデルになるほどの美形じゃないぞ。

 

 

「あっ、違います。そうじゃなくて、自分はこちらの撮影現場を見学しにきた者でして……」

 

 

 このまま勘違いされたままではどうしようもないので、俺は果林ちゃんが撮影を受けている方を向いてそう言った。

 

 

「見学……あぁ! 確かに朝香さん、今日一人見学者が来るって言ってたね」

 

 その女性は少し考え込んだ後、思い出したのか指を鳴らしてそう言った。

 

 なんだ、果林ちゃん事前に伝えといてくれたんだな。流石、そこは用意周到だ。

 

 

「ごめんねー、変な誤解しちゃって……あーそうそう、私はこの雑誌をプロデュースしている、東山(とうやま)って者だ」

 

 

 右手を頭に当てて苦笑いしながら謝ると、今度はスーツの胸ポケットから名刺を差し出した。どうやら、果林ちゃんが出ている雑誌のプロデューサーさんのようだ。見た感じ、意外と年の差はなさそうだし、とてもフランクな感じで話しやすそうだ。

 

「あ、どうも。自分は虹ヶ咲学園3年の高咲っていいます。よろしくお願いします」

 

 

「高咲くんね。こちらこそよろしく! ……ところでさ、君は朝香さんのスクールアイドル活動をサポートしてるマネージャーってことだよね? そっちで朝香さんはどんな感じなのかな?」

 

 

 俺も自己紹介をしてお互いの挨拶が済んだ後、東山さんは同好会での果林ちゃんの様子について質問をしてきた。

 

 

「そうですね……とても熱心に練習に参加してます。それに加えて、冷静に物事を指摘してくれたりして……とても頼りになる子ですね」

 

 

 俺から見た彼女の同好会での様子を素直に言葉にして伝える。

 

 

 ……まあ、そんな彼女の弱点については彼女のためにも言わないでおくが。

 

 

「そうなんだ……なんか安心したかも」

 

「安心、ですか?」

 

 

 ふむ……もしかして、東山さんは果林ちゃんに対して心配をしてたのだろうか?

 

 

「うん。少し前にさ、朝香さんからスクールアイドルをすることになったって聞いてね、最初はもしかしてウチを辞めちゃうのかって思ったんだ」

 

 

 東山さんが、果林ちゃんに対する思いを語り始めた。

 

 

「そしたら、こっちの活動も続けるって言ったんだよ。どっちも活動するなんて厳しいんじゃないかって少し気にかけてたんだけど……高咲くんの話を聞いて、あぁ、いつもの朝香さんだなってことが分かって、良かったのさ」

 

 

「なるほど……果林ちゃんは、モデル撮影の時もそんな感じなんですね」

 

 

「そうだね。モデルとして申し分ないスタイルだし、他のモデルにはそう簡単に真似できないくらいの『美』を維持する努力が見て取れる。朝香さんはとても自分に対してストイックなんだろうなって思うよ」

 

 

 東山さんから見て果林ちゃんがどう映っているのか気になったのでそれとなく訊いてみたが……やっぱりプロの人から見ても、彼女は人並以上にストイックなんだな。

 

 

 俺だって自分に対してかなりストイックになってるつもりだが、果林ちゃんには敵わないだろうな。俺の場合、毎日自分の中で反省会をしてるけどね。ほんの些細なミスでも省みれば、成長に繋がると思ってる。

 

 

 でもそんなことするようになったのもつい最近なんだよな……()()()から。

 

 

「……ふふっ。君今、朝香さんに見惚れてたでしょ?」

 

 

「えっ?……まあ、そうですね。あれは誰もが目を釘付けにされると思います」

 

 

 どうやら俺は無意識に、撮影している果林ちゃんに目を奪われていたようだ。

 

 それにしても、やっぱりモデルの撮影ではしっかりお化粧をしていて……また普段の彼女とは違う、正に『美しい』という言葉が似合う感じだな。

 

 

 そして流石というべきだろうか、撮影中はカメラマンに指示を受けない限り一切表情を変えないのだ。これが読者モデルの凄さなのだろう。

 

 

 

 ……しかし今思えば、果林ちゃんは同好会のメンバーに対して結構キツい言葉を残してここに来ている。今見た感じだと、彼女はいつも通りクールな雰囲気を纏ってこの撮影に臨んでいられているようだ。

 

 

「やっぱりね〜……あっ、マズい。そろそろ編集長と打ち合わせするんだった……じゃ、話に付き合ってくれてありがとね。朝香さんをよろしく頼むよー! あと朝香さんとはくれぐれも()()にはならないようにね〜……!」

 

 

「あっ、はい! ……って、えっ?」

 

 

 どうやら用事が迫っていたようなので、東山さんは別れを告げてここを足早に去っていく。

 

 ……しかし最後に何か妙なことを言ってた気がする。その時は既に俺と距離が離れていたので、何を言ってたのか正確に読み取れなかった。

 

 何か片手の指を立ててたように見えた。一体彼女は何を伝えようとしたのか……

 

 

 そうしばらく考え込んでいると、また誰かに声をかけられた。

 

 

「あら……来てくれてたのね、徹」

 

「あっ、果林ちゃん……おう、約束通りに来れたぜ」

 

 

 その声の主、撮影を一時終えた果林ちゃんが目の前まで来ていた。

 

 

 もちろん、撮影していたときのメイクのままでだ。

 

 

「てっきり私がみんなに強く言ってしまったせいで、ショックから立ち直す役になって来れなくなってるかと思ったわ……あの後、みんなはどんな感じだった?」

 

 

 果林ちゃんは少し申し訳なさそうな様子で俺にそう訊いてくる。

 

 

「うむ、みんなと果林ちゃんに言われたことについて話したね。そしたら、今の同好会ならみんなと争っても怖くないって結論になってな。良い空気になって解散したぞ」

 

 

「そうなの……? 嘘じゃない?」

 

 

「ははっ、こんな具体的な嘘を吐ける訳がないさ。疑うなら百聞は一見にしかず、明日の同好会の活動でみんなの様子を見ればいいと思うぞ」

 

 

「……そこまで言うなら、徹のことを信じるわ」

 

 

「あぁ、それがいいよ」

 

 

 少し彼女の表情が明るくなった気がするが、未だに暗い。

 

 ここまで果林ちゃんが弱気なのは初めて見たかもしれない。

 

 

「……! ……ところで、どう? 私のモデル撮影を見て」

 

 

 すると、彼女は自分自身が暗い顔になっていることに気づいたのか、体裁を繕ってそう俺に訊いた。

 

 俺としては彼女の今の気持ちを聞きたいところだが、無理に聞き出すのもよろしくないので、彼女の問いに答える。

 

 

「うむ、とても刺激的だったよ。モデルの撮影現場とか今まで全然見に来たことないし、スクールアイドル同好会の部室とはまた違う、緊張感を感じられて良かった」

 

 

「ふふっ、徹もそう思う? ここはプロのカメラマンにプロデューサー、その道に本気で挑んでる人達が集まっているのよ。もちろん同好会の和やかな雰囲気も好きだけれど、やっぱりここの雰囲気も最高よ」

 

 

 なるほど……さっき一緒に話した東山さんも、プロフェッショナルとして働いているプロデューサーさんなんだな……凄いフレンドリーだったから、全くそのことを忘れていた。

 

 そんな人々が集まってる中で果林ちゃんが仕事している。だから、あぁいう風に同好会のみんなを引き締めることができるんだな……

 

 

「なるほどね……ここにいる人達は、みんな真摯に自分のやるべきことに徹しているんだな」

 

 

「そうね。でも、読モでこんなに情熱を持って取り組んでるのは……私くらいよ……」

 

 

「えっ?」

 

 

「……なんでもないわ。さて、休憩時間終わるし、この後も見ていてちょうだいよ?」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 今の一言……要は、読モでは果林ちゃんほど情熱を持って取り組んでる人はいないということか? 

 

 

 

 ……果林ちゃん、また悲しい顔をしていたな。

 

 

 

 ──ここは一つ、元気を出してもらうためにエールを送らなければ。

 

 

 そして俺は、撮影現場に戻ろうとする果林ちゃんの背に向けて、少し大きな声で話しかける。

 

 

「最高にカッコいいぞ、果林ちゃん! その調子で頑張れ!」

 

 

「……! ……ふふっ」

 

 

 少し足を止めた後、こちらに振り向かず、手を振り返してこの場を後にする果林ちゃん。

 

 

 しかし果林ちゃんのあの表情……実際過去に何かあったのかもしれないな。

 

 

 そんなことを頭の片隅に、俺は再び果林ちゃんのモデル撮影を見学した。

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「今日はありがとうね。徹に私の活動を見てもらえて嬉しいわ」

 

 

「こちらこそ、とても充実した見学だったよ。また見に来たいくらいだ」

 

 

 時はあっという間に過ぎ、モデルの撮影現場の見学は終了した。結局あの後はそこそこ現場の人に『君どちらさん?』的な感じで声かけられることが多かった。

 

 まあこんなファッションに全く関わりのなさそうな男があんな所にいたら、変だと思うのも無理はない。

 

 そんな感じで、撮影現場の出口まで果林ちゃんと一緒に来たところだ。

 

 

「ふふっ、()()()()()()()()()()()

 

 

「……はい?」

 

 

 俺は果林ちゃんの予想外の返しに、思わず戸惑った。

 

 

 いや待てよ、いつ果林ちゃんにそんなことを言ったか? ……まさか……

 

 

 

「東山プロデューサーから聞いたわ。もう仕方ないわね〜、また今度特別にここに連れてきてあ・げ・る♡ じゃあ、バァイ☆」

 

 

「えっ、ちょま……!?」

 

 

 東山さんんんん!!!! なにしてくれてるんですかぁぁぁ!?!?!?

 

 

 確かにあの人にはそう漏らしたけど、まさか本人に伝わるとは思わないわ……あぁ恥ずかしい、顔から火が出てるわ。こうやって不意に果林ちゃんに揶揄われるのがどんだけダメージがデカいか……

 

 

 でも、俺にも揶揄う材料があるのさ……いずれ仕返ししてやるぞ……覚えてろよ……

 

 

 

 

 ……まあそんな戯言は一旦ドブにでも捨てておこう。

 

 果林ちゃんはあのまま家に帰るのだろうか……いや、彼女の場合は寮か。なら迷う可能性は……ゼロではないんだよなぁ。

 

 それなら果林ちゃんを寮まで送って行った方が良かったか……? せめて、見学するために色々手配してくれたお礼として。

 

 

 ……あっ、ダメだ。そういえばこの後侑達と待ち合わせしてるんだった。まずそっちに行かないとな……

 

 

 そうして、俺は果林ちゃんが行った方向と同じ方に歩き出した。

 

 

 




今回はここまで!
果林ちゃんの揶揄いは……良いものですね←
あと2,3話ほどで原作9話の内容を書き終えると思われます。
アニメ2期のほうでは丁度DiverDiva回でしたね……ロリ愛さんに落とされました←
ではまた次回!
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