第58話です
では早速どうぞ!
「ねぇせつ菜ちゃん、今日はせつ菜ちゃんがハマっているラノベを買いに行くってことだよね?」
「はい、今日新作の発売日なんですよ! まさか当日にゲットできるなんて思いもしませんでした!」
侑が今日のお出かけの目的を確認するのに対し、手に拳を作って熱く語るせつ菜ちゃん。
いやぁ、自分が好きで追っているコンテンツがなんらかの動きがあった時はこう熱くなっちゃうもんだよな。
……あっ、どうも。顔に出してないが、内心少々ワクワクしている高咲徹だ。
果林ちゃんのモデル撮影見学を終えた後、今お台場の中心を走る道路沿いを歩いているところだ。侑、歩夢ちゃん、せつ菜ちゃんと待ち合わせし、合流して目的地に向かって進んでいる。
先程侑が言った通り、今日の目的はせつ菜ちゃんが大好きなラノベの新作が出るので買いに行こうということだ。
最初は俺とせつ菜ちゃんで行こうと話していた。俺もそのラノベの読者だから、彼女とはときどきその話で盛り上がったりしてたのだ。まあ、俺はせつ菜ちゃんと比べて読み始めて日が浅いし、全巻読めてる訳じゃないんだけどね。
たださっき同好会の活動が終わった後、どうやらその話をせつ菜ちゃんが侑と話していたらしく、興味を持った侑が行くことになって、侑がそれを歩夢ちゃんに話したら彼女もついて行くということになって今に至るらしい。
いや、撮影スタジオについてすぐに侑からL◯NEで、『せつ菜ちゃんとお出かけするみたいだけど、私も行きたい!』と来てOKした数分後に、『歩夢も行きたいみたいなんだけど、大丈夫だよね?』って来て、「案外人数増えるな!?」って驚いちまったよ。
まあでも、人が増えても問題ないんだけどね。侑と歩夢ちゃんも、あのラノベにハマってくれるチャンスでもある。せつ菜ちゃんと共にあのラノベの良さを布教するしかないな。
「そっか……私たち今まで練習で土日以外忙しかったもんね」
「そうなんですよ歩夢さん……ラノベの発売日がいつも平日で、大体休日に、親に『参考書を買いに行きます』と嘘をついて買いに行ってたんです……」
苦笑いしながらそう話すせつ菜ちゃん。
そうか……確かに参考書といえば真面目な印象を持たれるし、親御さんは安心するもんな。嘘も方便……は違うか。
うーん、でもラノベも参考書と同じく書籍だから強ち嘘ではないんだよなぁ……ラノベは人生の参考書、なんてな。意外と人生に役立つことを学べたりするもんだぞ?
「でも、こうやって皆さんと一緒に買いに行けるとは思いもしませんでした! これを提案してくださった徹さんには感謝しかありません!」
「いやいや、俺もせつ菜ちゃんとラノベを買いに行ってみたかったもんだからさ。今日は楽しい一日にしような」
……そういや、せつ菜ちゃんと学校以外で行動を共にするのは久々か。璃奈ちゃんの家で例のアニメを一緒に見た時以来だろう。
「はい! ……そういえば、徹さんは今回の最新話についてどんな展開になるか予想しませんか!?」
すると、せつ菜ちゃんは意気揚々とそう提案してきた。
「おっ、いいな。予想しようか……と言ってもさ、あの流れで次の展開を予想するのって難しくないか?」
「やっぱりそうですよね……あそこが主人公にとって最大のターニングポイントになると思われますから……でも、私はある程度予想をつけてみました!」
「マジか! それ、聞かせてくれないか?」
「もちろんです!! あのですね……」
それから、せつ菜ちゃんの予想を聞きながらお互いちょっとした談義を交わした。彼女の予想はオーソドックスな展開でありながらも読者をワクワクさせるものであり、俺もその話を聞いていて最新話を読むのがますます楽しみになった。
そうやって俺たちが二人で盛り上がっていると……
「きゃっ!?」
誰かの悲鳴と同時に、俺の脇腹辺りを手で掴まれる感触がした。
何が起こったかと思い目線をそちらの方に向けると、そこには転ぶ寸前で俺の脇腹を掴んで転ばずに済んだであろう歩夢ちゃんの姿があった。
「だ、大丈夫か? 歩夢ちゃん」
「あっ……え、えっと……」
大事がないか確認をすると、歩夢ちゃんは少し戸惑いと恥ずかしいという表情を見せながらも、体勢を立て直して後ろの方を見た。
俺も彼女の視線の方を向くと、そこには侑がいた。
……もしかして、侑が何かいたずらでも仕掛けたか?
「おいおい、歩夢ちゃんに何してくれてるんだよ、侑」
「えっ? ……あっ、違う違う! 歩夢がお兄ちゃんと話したがってそうだったから一押ししちゃっただけで……」
侑を少しきつめに諌めると、彼女は少し慌てながらも事の経緯を話した。
えっ、俺と? そうなのか……てか、近いうちに歩夢ちゃんを誘って久々に料理を作ろうと考えてたんだった。それについてでも話すか……
「もしかして……歩夢さんも例のラノベに興味がおありで!?」
すると、せつ菜ちゃんが見たことない速さで歩夢ちゃんの目の前に駆け寄り、目を輝かせながらそう訊いた。
「えっ……? そ、そうじゃなくてねせつ菜ちゃん……」
「それなら任せてください! 私、ビギナーの方にも分かりやすく解説しますから!」
歩夢ちゃんの主張を他所に、せつ菜ちゃんは話を進めていく。
「あれ〜、そうなっちゃったかー……」
一方、仕掛けた張本人の侑は苦笑いをしていた。いや、逆にどうなることを意図してたんだよ……?
まあとりあえず、気づいたらもう目的のお店が見えてきてるし、一旦せつ菜ちゃんに声をかけるとするか。
「まあ待て待て。歩夢ちゃんに布教するのもいいが、もうそろそろで店に着くぞ? 準備はしなくていいか?」
「あっ……そうですね、心の準備をしなくては……!」
そうそう。発売当日に買えるという特別感があるし、心して掛からきゃいけないのだよ、ワトソンくん。
……いやいや、こんなこと言っちゃって
そうやって再び歩き出そうとした瞬間……
「……ん? ねぇみんな、あれって……」
すると、目を大きく見開きながらそう話しかけてきた。
その目線の方向を見ると……
「……果林ちゃん……?」
そこにいたのは、ついさっき別れたはずの果林ちゃんだった。後ろ姿ではあるが、間違いない。
あれ? おかしいな……さっき俺が行った方向とは逆方向に走っていったはずなんだけど……しかも俺を盛大に揶揄いながら。
「あれは……果林さん!」
「っ!?」
せつ菜ちゃんが少し先にいる果林ちゃんに声をかけると、彼女は振り向いてこちらに近づいてきた。
それに応じて俺たちも近寄り、果林ちゃんと相対する。
「先程ぶりですね!」
「お買い物ですか?」
「えっと……」
歩夢ちゃんの問いかけに、果林ちゃんは言葉を詰まらせる。
「もしかして……!」
もしかして……果林ちゃん迷って……
「果林さんもこういうのに興味があるんですか!?」
「……えっ!?」
いやそう来たかい……ってこの流れさっきも見たぞ!?
果林ちゃんの手を両手で握って目を輝かせるせつ菜ちゃん……これには果林ちゃんも困惑しちゃってるな……
「ならばやる事はただ一つ……一緒にこの店を回りましょう! 行きますよ〜!!」
「ちょっ、ちょっとせつ菜!?」
すると、せつ菜ちゃんは果林ちゃんを引き連れ、勢いよく店の中へと入っていった。
「ちょっとせつ菜ちゃん!? 待って〜!」
それに驚いた侑と歩夢ちゃんも彼女の後を追って店の中へ入っていった。
果林ちゃん……用事とかあるのか分からないが、大丈夫かね……
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「私、そろそろ行かなきゃ」
せつ菜ちゃんと俺は無事目的の新作ラノベをゲットして、再び店の外に出た。
ラノベの購入を済ませて侑たちがいる所へ戻ると、彼女らは店のスクールアイドルコーナーのグッズを眺めていた。
スクールアイドル関連のグッズを取り扱うコーナーはつい最近出来たのだ。ここら辺の学校だと、遥ちゃんがいる東雲学院だったり、綾小路さんが在学している藤黄学園のスクールアイドルのグッズが売られていた。
それを見た果林ちゃんがせつ菜ちゃんのグッズがないことに驚いていたのだ。それは俺も同意なのだが、本人は自分の人気はまだまだだと謙遜していた。
「用事があったんですか?」
「引き留めてしまってすみません……」
「良いのよ。時間までに辿り着けるといいけど……」
そしてやっぱり、果林ちゃんは何か用事があるようで、これからその目的地まで向かうようだ。
「目的地まで遠いんですか?」
「そんなことはないのだけど、なんだか分かりにくいところにあって……どこだか分かる?」
侑の質問に対して、果林ちゃんは困り果てた様子でスマホのマップを俺たちの前に見せた。
やっぱり迷子になってるじゃん、と思いながら俺もそれを覗き込む。
「……!」
すると、せつ菜ちゃんは正面の建物を指差してみせた。
……なんと、果林ちゃんが目的地としていた建物はすぐそばにあったのだ。
「……気づいてなかったんですか?」
「地図を見ても分からないなんて…」
「もしかして果林さん、方向音痴?」
「……!? わ、悪い!?」
あぁ……やっぱりそうなってしまったか……彼女は誰に対しても見栄を張っていたんだろうから、ちょっとショックを受けているかもしれないな。
これに対して我が妹は……
「意外だけど、可愛いです!」
「っ…!」
……だそうだ。良かったな、果林ちゃん。まあ誰しも何かしら弱点があると思うし、弱点が割と魅力の一つになったりするからな。
「ふふっ、やっぱり迷子になってたんだな。さっき揶揄ったりしなきゃ案内したのにな」
「……!? それは言わないでちょうだい!!」
果林ちゃんは頬を赤く染めながらそう言い張る。よし、仕返し完了。
「えっ、お兄ちゃんって果林さんが方向音痴だって知ってたの!?」
すると、俺の発言を聞いた侑が驚いてそう言った。
「ま、まあな……!?」
侑の言葉に応えようとした瞬間、横から途轍もない圧を感じた。
「……」
果林ちゃんがこれ以上何も話すなと言わんばかり睨んでくる。流石に怖いので話をすり替えようか。
「……ところでさ、さっき同好会で話したことについて果林ちゃんに話さない?」
「あぁ、そうですね!」
「……それ、私から先に話しても良いかしら?」
その場にいなかった果林ちゃんに話した方がいいと思いその話題を振ると、その果林ちゃんが先に話してもいいかと許可を求めてきた。
みんなが頷くと、彼女は頭を下げた。
「……あの時はごめんなさい。強く言い過ぎたわ」
「そんな! 果林さんの言う事は正しかったです!」
果林ちゃんの詫びに、せつ菜ちゃんははっきりとそう言う。
「ソロアイドルは、こう言う時に妥協しちゃいけませんよね。果林さんに言われて気付かされました!」
「果林さんのお陰でみんな、成長しなきゃってなったんです!」
歩夢ちゃん、侑が順に果林ちゃんへ言葉を伝えた。
「……本当にそうだったのね」
そうそう。俺が言ったことは嘘じゃないのさ。みんな果林ちゃんが忖度なしに指摘してくれて、目が覚めてプラス効果だった訳だ。彼女はそういう立場でも、同好会に欠かせない存在だと思ったものさ。
「……あの、私から一つ提案いいですか?」
「ん、なんだ?」
すると、せつ菜ちゃんが小さく手を挙げてそう言った。
「今回のDiver Fes、果林さんが出るというのはいかがでしょうか?」
「えっ!?」
……ほう。
「良いと思う! 果林さんならみんな文句がないし。ねっ! 歩夢!」
「うん! 今回は果林さんが適任だと思います!」
侑と歩夢ちゃんは賛成のようだ。俺も、みんなのためを思って厳しくしてくれた果林ちゃんへの敬意を込めて選出するのは良いと思う。
「……それは嬉しいけど、明日みんなと話してからの方が良いんじゃない?」
「それはもちろん、みんなには許可を取ります。でも、皆さんもきっと了解してくれると思うんです」
「みんな同じことを考えてると思います!」
「そうだな。決して果林ちゃんに怖気ついたって訳じゃないぞ? みんなの意思だ」
せつ菜ちゃん、侑が言う通り、みんな果林ちゃんが相応しいと思うと確信している。
「……分かったわ。ご指名されたからには、全力で受けて立つわ!」
果林ちゃんは、覚悟を決めた表情でそう言い放った。
「ありがとうございます! ……あっ、それでしたら今グループチャットでみんなに訊いてみませんか?」
「良いと思う! せつ菜ちゃんから送る?」
そうして、せつ菜ちゃんはチャットを開いてメッセージを打っているようだ。それを、侑と歩夢ちゃんが駆け寄ってきて横から覗き込んでいる。
俺は隣にいる果林ちゃんに話しかけて
「……良かったな。これで今度ライブが出来るじゃないか」
「そうね……ホント、あの子たちの優しさには敵わないわ」
……そうだな。みんな根は優しい。
「でも、みんな優しいだけじゃないだろう?」
「ふふっ、そうね。みんな個性が強くて……強すぎるんだけど、だからこそそれが……刺激的なのよ」
「刺激的……か」
様々な個性があるからこそ、自分が感じたことのない感性を体験できたりする……世界が変わるって感じか。まさに俺がモデルの撮影現場を見た時と似た感覚なのだろう。
「……だから、私はこのライブで同好会を人気にしたい。あと……徹も盛り上がるライブをしたい」
「えっ、俺?」
な、なぜそこで俺が出てくるのか……?
「だって徹、なかなかはしゃいだりする姿見せないじゃない。だから徹を目標にするのよ」
ふーむ、はしゃぐ、ね……それはかなり高難度だぞ?
「なるほどなー……それは不可能といえるほど難しいと思うがね。まあ、どれだけ俺を盛り上がらせることが出来るかな?」
「そう言われると闘争心が燃えてくるわね……! 絶対虜にしてあげるんだから」
……別に煽ったつもりはなかったんだが、どうやらそう取られてしまったようだ。でも、彼女のライブは本当に楽しみにしてる。はしゃがないとは……思うが。
そんな感じでせつ菜ちゃんがチャットへの送信を終えたところで、果林ちゃんはダンススクールへ、俺たちはそれぞれの家へ帰宅することになった。
そして、グループチャットの返信は、全会一致で果林ちゃんの選出に賛成となり、果林ちゃんのDiver Fes出場に向けて練習や準備が進んだのであった。
今回はここまで!
次回で原作第9話が終わると思われます
アニガサキ2期第5話は……A・ZU・NAがヤバかったです(語彙力)
ではまた次回!
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