高咲兄妹とスクールアイドルの輝き   作:Ym.S

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どうも!
第61話です。
では早速どうぞ!


第61話 レッツクッキング

 

 

「へぇ、彼方ちゃん数学の成績良かったんだな」

 

「そうなんだよ〜。今回は徹くんと勉強することが出来なかったけど、一人でなんとか平均点ぐらいまで取ることが出来ました〜」

 

 

 澄み渡る空……ではなく、厚い雲が広がっている今日この日。

 

 

 可も不可も付け難い天候だが……どうも。高咲徹だ。

 

 

 ついに決行される虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の夏合宿。今その合宿が行われる場所に向かって、みんなで歩いている途中だ。

 

 

 今彼方ちゃん達同学年の三人に、自分が風邪でくたばっている間に起こった出来事を教えてもらっている。

 

 

 彼方ちゃんは数学が苦手で、一年くらい前は赤点ギリギリのレベルだったのだが、ついに平均点が自力で取れるまで克服できたようだ。

 

 

「彼方ちゃんは努力家だもんね〜。凄いなって思ったよ!」

 

「えへへ〜。エマちゃん、ありがと〜」

 

 

 確かにエマちゃんの言う通り、彼女は相当の努力家だと俺も思う。苦手な科目なんてそう平凡な努力だけでは克服できるようなものではないのだ。

 

 

「流石彼方ちゃんだな。もう俺が教えなくても成績を上げていけそうだな」

 

「そ、それはダメだよ〜! 徹くんに教えてもらわないと、彼方ちゃんダメだから〜!」

 

 

 あまり見ない焦りようである。頼られてるってことだろうか……ならば嬉しいけどな。

 

 

「ははっ、冗談だよ……この感じだと、みんな期末試験は大丈夫だったようだな?」

 

「そうでもないわ。一人赤点取ってたわよね? ねぇ、かすかすちゃん?」

 

「かすみんです!! そのことは徹さんに言わないでくださいって言ったじゃないですか!?」

 

 

 ありゃ……かすみちゃんが赤点になってしまったか……

 

「そうなんですよ徹先輩。かすみさんったら、22点を取ってしまったようで……」

 

「ぎゃー!? 細かい点数まで言わないで! あとしず子、『22点でにゃんにゃん』とか言ってたの覚えてるからね!!」

 

 

 22点ねぇ……こりゃなかなか笑い事では済まされないレベルだ。

 

 勉強会をやったのか分からないが、ライブがテスト前にあったという影響は大きいし、その後に俺は風邪をひいてしまって教えてあげることもできなかった。

 

 彼方ちゃんは自分の力でなんとかそこそこの成績を収めることができたが……今度はかすみちゃんを重点的に教えるか。

 

 

 んで他の子は大丈夫だったのかな……? 

 

 

「……!」

 

 あっ、果林ちゃんが目を逸らした。つまりはそういうことなんだな……というか、かすみちゃんを揶揄っておきながらその始末かいな……

 

 よし、ならば二人まとめて二学期の中間試験の時は、その失速を挽回するぐらいの勢いで教えよう。

 

 

 そう思っている内に、合宿施設に到着した。

 

「虹ヶ咲にこんな施設があったんですか……」

 

「まさかもう一回ここに来るとは思わなかったねー」

 

 

 その施設が虹ヶ咲学園のものであることに驚くしずくちゃんに対して、この施設に懐かしさを覚えているであろう愛ちゃん。

 

 そう、今回同好会が合宿を行う場所は、俺が情報処理学科の合宿の時に行った場所と同じ、学校の近くにある施設だ。

 

 俺の左にいる10人のうち7人は、施設の規模の大きさとこんなに近くにあるということに、開いた口が塞がらない様子だった。

 

 ちなみにこの施設を使ったことがある璃奈ちゃん、そして存在を知っていたせつ菜ちゃんは周りに反して何も動じない様子だった。

 

 

 それにしても、休みに入ってからホントすぐに合宿を始めるなんて凄い気合入ってるし、流石に他の部活はまだ入ってないだろうな。実質俺たちスクールアイドル同好会が独占することになるだろう。

 

 

「せつ菜先輩、私たちここで練習をするんですか!?」

 

 

「そうですよ! 豊富な練習施設が揃っているので、私達のパワーアップに役立つと思います! でもその前に、まずは腹ごしらえしましょう!」

 

「みんなで力を合わせて、料理をしよ〜!」

 

「わぁ……! 楽しみ〜!」

 

 

 もうそんな時間か。飯は用意されているわけではなく、自分で作る感じなんだな。

 

 そうなると……俺の出番だ。

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「徹くん、玉ねぎ切り終わったよ〜」

 

「おう! じゃあフライパンの方、火付けてあるから炒めちゃって?」

 

「分かった!」

 

「徹先輩! コッペパンの具材少し余っちゃったんですけど、何か使えるものないですか?」

 

「おや、どれどれ……おっ、これは刻んだらあれに使えそうだな……余ったやつそこら辺に置いといて! 使えるか考えてみるから!」

 

「了解です!」

 

 ふう、こうやって大勢で料理をするのは久々だな。調理実習以来か? 

 

 合宿施設の調理室において、俺は同好会のメンバー達に指示をしながら手際よく包丁で野菜を微塵切りにしていく。

 

 

 みんなと話し合った結果、なんと俺が料理を作る上でのリーダーを務めることとなった。それもあって、今俺が大半の料理過程を管理しているので、大忙しって状態だ。

 

 

 でも全て管理しているわけではなく、大きく3つのパートに分かれて、それぞれ料理に自信があるメンバーがリーダーとして入っている。

 

 昔から家事には万能の歩夢ちゃん、俺と同じく料理を趣味としている彼方ちゃん、実家のもんじゃ焼き屋を手伝っている愛ちゃんの3人だ。

 

 もちろん、他のメンバー達も料理が出来るであろうと期待している。どんな昼飯になるかとても楽しみだ。

 

 

「……」

 

 

「侑ちゃん! もう沸騰してるよ!?」

 

「えっ? ……うわっ、ちょちょっ!? 焦った〜……」

 

「大丈夫? 疲れてるなら無理しないでいいよ……?」

 

「大丈夫大丈夫! 歩夢も仕事あるでしょ? ほら、行った行った〜」

 

 

「あっ! ちょっ、侑ちゃん……!」

 

 

 

 その一方で、侑は明らかに普段よりもボーッとしていた。歩夢ちゃんに心配されているが、はぐらかそうとしている。

 

 

 これは多分というか、間違いなくあれが関係してるよな……でも、今はここから手が離せない。

 

 

 ……侑の様子も見守りながら調理をするか。

 

 

 そう思っていると、右手の袖が引っ張られた気がした。

 

 すぐさまそちらに振り返ると、璃奈ちゃんが袖を掴んで俺に何かを伝えようとしていた。

 

 

「どうした、璃奈ちゃん?」

 

 

 そう問いかけると彼女は何も言わず、さらに奥の方を指差した。

 

 目を向けると……この世のものではないというか……食べ物としてはあり得ない毒々しい紫色をした汁物が鍋でグツグツと茹っていた。

 

 

「……!? ……なあ、あれは誰が作ったんだ?」

 

 

 あまり騒ぐのはよろしくないので、小さい声で璃奈ちゃんに聞こえるぐらいまでにしゃがんで話しかけた。

 

 

「せつ菜さん。あのままだとまともに食べられない……璃奈ちゃんボード『ガクガク』……」

 

 マジか……確かにあまり料理が得意なイメージはなかったが、ここまでなんだな……

 

 

 実際にその鍋まで行って味見もしたのだが、これは確かに危険だ。どれだけ調味料入れたんだっていうくらいしょっぱくてかつ、舌がヒリヒリするほどの辛さ。

 

 でも味をマイルドにすれば、なかなかに良いスープになると思われる。ただ、調味料の調整は俺だけだと心許ない。誰かの協力を得る必要があるが……

 

 

 周りを見渡して……歩夢ちゃんは忙しそうだ。愛ちゃんも……今オーブン待ちか。じゃあ、彼方ちゃんに助けを求めるしかない。

 

 

 しばらく遠くにいる彼方ちゃんに気づいてもらえるよう目線を送ると、数秒して彼方ちゃんと目があった。目立たないよう小さく手招くと、彼女は手に持っていた物を置き、小走りでこちらにやってきた。

 

 ……あっ、でもこれどうやって状況説明しようか……せつ菜ちゃんのせいにはしたくないな。

 

 

「どうしたの、徹くん……うわっ、何これ……?」

 

 

「これな……実は俺がしくじっちゃってね。こんな出来になっちまったんだ。あははは」

 

 

 せつ菜ちゃんの起こした事だと知られたくないために、俺は自分がしでかしたことであると誤魔化そうとした。

 

 

「え〜、そんなわけないでしょ? 流石にその嘘は通じないよ〜」

 

 

 彼方ちゃんは、悪戯っぽく笑った。

 

 ……流石にこれはカバーしようにもなかったか。ごめんな、せつ菜ちゃん……

 

 

「……すまん、これはせつ菜ちゃんが作ったものらしくてな。璃奈ちゃんがそう教えてくれたんだ」

 

 

「ふむふむ、なるほどね〜。つまり、味を調整するから手伝ってってこと? なら、彼方ちゃんにお任せあれ〜」

 

 

「話が早いな。ありがとう、助かるよ」

 

 

 それから二人でなんとかせつ菜ちゃんの作ったスープを美味しく仕上げた。色は相変わらず紫色で、食べる人からすれば危機感を持つようなスープだけどな……

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

「思ってたより沢山作っちゃったね〜」

 

 

 その場に仮設したテーブルの上には、色とりどりの料理が余すことなく置かれていた。

 

 合宿施設の外の庭に場所を移して、俺たちはランチタイムを迎えようとしていた。

 

 そう、俺はここでみんなに()()()のことを話すんだ……

 

 

「マジでここまで出来るとは思わなかったよ! 流石てっつー!」

 

「いやいや、みんなが頑張ってくれたからこそだよ」

 

 

 愛ちゃんが無邪気に笑いながら肩を組んできた。全く、距離感近いのには慣れてきたが……慣れちゃダメか。

 

 

「それじゃあ、早速頂いちゃいますか!」

 

 

 

「……あの!! ちょっとその前に話したいことがあるんだけど、いいかな……?」

 

 せつ菜ちゃんが飯を食べ始める号令をしようとすると、歩夢ちゃんが珍しく大声をあげて、みんなを注視させた。

 

 

「どうしましたか? 歩夢さん」

 

「えっと……侑ちゃんのことなんだけど」

 

「侑さん……?」

 

 せつ菜ちゃん達が侑の方を向くと、侑は途端のことで驚いた後に作り笑いを見せた。

 

「侑ちゃんの様子がおかしくて……さっき料理してる時も、ぼーっとしたりしてて……」

 

「そ、そんな……! 私は大丈夫だよ!? ちょっと疲れてるだけで……」

 

「確かに、私も侑の様子が変だと思ってたわ」

 

 

 すると、果林ちゃんが真剣な顔で歩夢ちゃんの問題提起に賛同した。

 

 

「侑、貴方何かがあったんじゃない? 悩みがあるなら、それをずっと引き摺ってるのも良くないわよ」

 

「そうですよ! 悩みなら私達が聞きますから!」

 

 

 ……あぁ、これはもう話した方がいいという神様のお告げなのだろうか。

 

 少しタイミングが早いけど、どちらにせよ俺の意志は固まっている。腹を括るんだ。

 

 

 

「えっと……悩みというか、それはどちらかというと私ではなくて……」

 

 

「それについては、俺から話しても大丈夫か?」

 

「徹さん……?」

 

 

 俺がみんなに声を掛けた瞬間、みんなの視線が侑から一気に俺の方に向いた。

 

 その瞬間、少し俺の中で緊張が高まったが、怯むことなく話し続ける。

 

 

「侑がさっきから集中できていない原因なのだが……それは俺の過去に関係している」

 

「徹さんの過去……?」

 

 璃奈ちゃんが疑問符を浮かべる。

 

 

「あぁ。俺がずっとみんなに……侑にさえも話してなかったことだ。みんなにも話しておきたいと思ったんだが……このタイミングでいいか?」

 

 

 俺がそう問いかけると、みんなが首を縦に振ってくれた。

 

 

 そしてついに俺は……今まで妹にさえ黙っていた、記憶の奥底に追いやっていた記憶を言語化した。

 

 

「……ありがとう。じゃあ話すぞ……中学3年の時の話だ」

 

 

 

 




今回はここまで!
次回は徹くんの過去を描きます。
時系列が第1話より前の話になりますので、ご注意ください。
アニガサキ2期はもう8話……早いですね。
ではまた次回!
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