前話投稿から間隔が空いてしまいすみませんでしたぁ!!!(土下座)
大変お待たせしました。第69話です。
では早速どうぞ。
「先輩、しず子は大丈夫なんですか……?」
「そうだね……脈はあるし、息もしてるから、単に気絶してるだけかな」
「よ、良かったぁ……!」
ここは、広いプールの端に位置するベンチだ。
……どのようにしてここへ来たかを話そう。まず、しずくちゃんが溺れているのを俺が見つけ、救い出した。
幸い手首から脈拍も感じ取ることができ、呼吸も止まってはいないので、卒倒しているのだろうと判断できた。
ただそのせいで少し身体が冷えているように感じたので、急遽俺のタオルを掛けてあげ、様子を見ているところなのだが……体温はどうなってるかな?
そう思い、彼女の首元に手を当てる。
「……うん、身体も温まってきたかな」
よし、これで不安要素はほぼ掻き消すことが出来たはずだ。あとは意識を取り戻すまで見守ろう。
「てっきり心臓マッサージとか、人工呼吸が必要かと思いましたよぉ……」
「そこまで事態を深刻に見てたんだな……でも、そうならなくて良かったよ」
かすみちゃんは、未だとても心配そうにしずくちゃんの右手を握っている。
……そうだ、一応事情を聞いておこう。
「……それでかすみちゃん、さっきは一体何があってこうなったんだ?」
「えっと……実は最初、しず子と彼方先輩、エマ先輩がビーチバレーをやってたんですけど……」
俺が問いかけると、かすみちゃんは何も隠そうとせずに素直に状況を説明してくれた。
「なるほどな。かすみちゃんが途中で参加して、勝負に熱が入ってしまった挙句、彼女に強いスパイクを入れてしまったと……」
「はい。まさか顔に直撃するとは思ってなくて……」
一体どれくらいの力量でスパイクをしたのか分からないが……顔に直撃してしまうのは、多分バレーボールに疎いからなんだろうと予想がつくな……
「ふむ、しずくちゃんはバレーボールが苦手なのかもしれないね……」
「……」
……かすみちゃん、今までに見た事がないくらい深刻そうな面持ちだ。
彼女は俺が思っている以上に、しずくちゃんがこのような状態になっていることに責任感を持っているようだ。
かすみちゃんは、一見自分が第一で周りをライバル視しバチバチしている印象を受けるかもしれない。
しかし、根は優しい心の持ち主だ。しずくちゃんが悩んでいたときだって、彼女のために叱咤激励をしたのだ。その直前に俺と話していた時だって、かすみちゃんは真剣に彼女と向き合おうとしていたのが窺えた。
かすみちゃんは、人一倍に仲間を大事にできる子である。
「……でも、大丈夫だ」
俺は、そんな心優しき彼女に寄り添い、彼女の頭に手を置いてそう語り掛ける。
「今回は一大事にならなかった訳だ。誰にだって失敗はあるんだから、これから気をつければいいと思うぞ?」
「はい……でもしず子、許してくれますかね……?」
「うん、それも大丈夫。かすみちゃんのその表情を見れば、本当に反省してるんだなって分かるから」
明らかに反省しているような表情をしていながらも許してくれないほど、しずくちゃんは鬼ではないと思うな。
「かすみん、そんなに酷い顔になってましたか……?」
「いやいや、酷いなんてことはないさ。ただ、少し深刻そうだったから」
「やっぱりそうでしたか……
だから酷くないって……あれ?
「ん、あの時? あの時って……」
「……!? な、なな、なんでもないですぅ〜! 今のはかすみんの言い間違いなので、忘れてくださいね!?」
「そ、そうかい……?」
……いや、強いて言うなら、最初に会った時か。あの時は買いたてのコッペパンをぶつかったことによって散らかしてしまい、彼女はショックを受けてたんだよな……今思えば懐かしいし、彼女には申し訳ないことしたなと、今でも反省すべき出来事だ。
しかし、そんなことなのだろうか? 多分彼女が経験した昔の出来事のことである方が確率が高い。これ以上詮索しない方がいいか?
「……ん」
そんなことを考えていると、かすみちゃん以外の声が聞こえてきた。
「っ……! しず子!」
しずくちゃんが意識を取り戻し、目を覚ましていた。
「……かすみさん? それに、徹先輩まで……」
「ん、目が覚めたか。良かった……気分は大丈夫か?」
「は、はい。なんとか……でも私、ボールが直撃して……」
ん、記憶は残っているようだし、気分が悪いとかはなさそうか……
「そうだな。プールに溺れかけてたから、今このプールサイドのベンチで寝かせてたってところだ」
しずくちゃんに、今の状況をなるべく分かりやすく説明する。
「そうだったんですね……えっと、このタオルは……?」
すると、彼女は自分にタオルが掛かっていることに気づき、そのタオルを左手に取りながら俺に訊いてきた。
「それは俺のタオルなんだ。気絶してたから、身体を冷やしちゃダメだと思って掛けたんだ」
本当はしずくちゃん自身のタオルを掛けてあげたかったんだが、彼女のタオルは更衣室にあるから……急遽俺のタオルを持ってきて掛けたって感じだ。
まあ、洗濯後未使用のタオルだから、触り心地が気持ち悪いなんてことはない……と信じたい。
「徹先輩のタオル……ってことは、先輩が助けてくれたんですか? それでしたら……」
すると、彼女はゆっくり起き上がり、俺と真正面に向き合い、深くお辞儀をした。
「本当に、ありがとうございました」
「……ううん、礼を言われる程のことはしてないよ。しずくちゃんが無事で何より」
……なんだろう、こんなに礼儀正しく感謝を伝えられると恥ずかしいな。
「かすみちゃーーん!! 氷と水持ってきたよー!」
すると、今度はプールサイドの遠くの方から二人がこちらに近づいてくる姿が見えた。
「あっ、しずくちゃん起きてたんだね! よかった〜……じゃあこれ、顔を打ったところは少し腫れてるかもしれないから、これで冷やしてね!」
「あと彼方ちゃんからはお水をあげるね〜。ゆっくり飲むんだよ〜?」
エマちゃんが保冷剤、彼方ちゃんがお水を持ってきてくれたのだ。
確かにしずくちゃんは顔を打ってるわけだし、少し腫れているだろうからアイシングは大事。そして溺れて水分も奪われているから補給する必要があるな。
「エマさんに彼方さん……ありがとうございます」
しずくちゃんは両方とも受け取り、保冷剤を頬に当てながら水を飲む。
「二人ともお疲れ様。ただ、プールサイドを走ると危ないぞ」
「あははは……分かってるんだけどつい……」
そう、二人とも完璧なアシストをしてくれたのだが……プールサイドは走ってはいけないんだよな。もし二人のうちどちらかが転んでしまっては、怪我人が増えてしまうのだ。まあ、しずくちゃんの為に早く……という気持ちは分かるがな……
「そういえば、徹先輩は愛さんと果林さんと競泳してたと思うんですが……」
「……あっ」
あかん、個人メドレーの勝負してたのをすっかり忘れてた……
「愛ちゃんのところに行った方がいいんじゃないかな?」
確かに……愛ちゃんはどこだ……
少し見回してみると……あっ、いた。果林ちゃん、璃奈ちゃんと話しているみたいだ。
もうしずくちゃんは大丈夫そうだし、みんなに任せようかな。
「そうだな……悪い、ちょっと行ってくる」
「いってらっしゃ〜い」
こうして俺は、再びプールへ戻っていった。
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時はしばらく経ち、俺もプールを十分満喫した。
あの後俺は愛ちゃん達3人と合流し、事情を話した。3人ともとても心配していたが、かすみちゃん達がいるから大丈夫と話すと、安心したようだ。
その後、せつ菜ちゃんも合流して、俺含め5人で色々遊んだりした。
いやぁ、なかなか楽しかった。思わず大分体力を使った故に、ちょっと疲れてしまったな。
そんな訳で、今はプールの真ん中あたりに位置するベンチに行こうとしている。
まあ、そこのスペースがなんとベランダみたいな感じになってて、外の風に当たりながら休めるというなかなかいいスペースなんだよな。夏限定ではあるが。
そんな訳でそこに向かうと、既に先客がいた。
「よっ、二人とも。休憩タイムってところか?」
「あっ、お兄ちゃん! うん、なんか十分遊んで疲れちゃったなーって」
そこにいたのは、侑と歩夢ちゃんだった。
どうやら二人とも、俺と同じく遊び過ぎて一休みしにきたようだ。
「そうか、実は俺もなんだ。いやぁ俺たち、だいぶ長い間プールで楽しんでたってことだな」
「ふふっ、ホントにねー」
侑がとても楽しそうな表情をしていて何よりだ。
歩夢ちゃんはどうだったのだろうか?
「歩夢ちゃんも楽しめたか? みんなとも仲良さげに話してたけど」
「えっ? ……あ、うん! とても楽しかったです!」
「ふふっ、それは何よりだ」
歩夢ちゃんも、見た感じいつもよりウキウキしてそうだな。
そう歩夢ちゃんと話してると、侑が遠い夜空を見ながらぼーっとしている様子が目に映った。
「どうした侑、そんな上を見上げちゃって?」
「ん? ……あっ、ううん! 別に何かある訳じゃないんだけど……何だか、感動しちゃって」
「感動?」
俺は、侑の言葉に疑問符を浮かべる。
「うん……私がさ、こうやってスクールアイドルのサポートを出来ているのって、歩夢が勇気を出してくれたおかげなんだよね」
「私?」
「そうか……侑を後押ししてくれたのは、歩夢ちゃんだったんだ」
「そう! 歩夢と一緒に夢を追いかけようって……そこから全てが始まった」
なるほど……過去のことを思い出してたって訳か。
侑が歩夢ちゃんを後押しして……歩夢ちゃんも侑を後押しした。
互いが互いを励ましたってことか。
「そして……みんなとも!」
「えっ……?」
……? 歩夢ちゃん? 今そんなに驚く要素があったか?
「みんなが集まったことで、このスクールアイドル同好会に大きな力が生まれていた。だから……」
すると、侑は立ち上がり、俺らの方にくるりと向き直った。
「歩夢、お兄ちゃん。ありがとう!」
侑が俺らに礼の言葉を伝えた。
「なんだか急だな……ていうか、そのことで礼を言われるようなことやったか?」
「何言ってるの! せつ菜ちゃんを説得するのだって、お兄ちゃんが一緒に考えてくれたし、みんなの役に立ってるじゃん!」
ま、まあ確かに……ただ急にそんなことを言われて、少々困惑気味だぞ……
「……それに、昨日私に言ってくれたよね。『今はやりたいことをやってれば良い』って」
「あぁ……」
昨夜、侑と一緒の布団で話した時のことだな……
「……私、やりたい事を一つ見つけたかもしれないんだ!」
「お、マジか!?」
そんなに早く見つかったのか!?
一体全体何なのだろうか……侑のやりたい事というのは……?
「うん! ……あっ、そうだ! この際みんなに話そうかな!」
みんなを集める……同好会のメンバーにも関わることなのか?
疑問が深まるばかりだが、俺はみんなに召集をかけた。
「侑さんから話したいことがあると聞いたのですが……何でしょうか?」
みんなが集合して早々、せつ菜ちゃんが侑にそう問いかける。
「もしかして……ついに侑先輩がかすみん専属マネージャーになることを決心してくれたんですかぁ〜!?」
「かすみさん、侑さんはみんなの侑さんだから、メッ!」
……あっ、しずくちゃんはもう体調が良くなったんだな。それに、かすみちゃんもいつも通りの彼女に戻ってるし、安心したな。
ちなみに侑は俺の妹だからな。それだけは誰にも譲らんぞ?
……まあそんなくだらないことは置いといて、侑は何を語るのか、だな。
「私、ダイバーフェスを見てて思ったんだ」
みんなが侑の発言に耳を傾ける中、彼女は話し始めた。
「観客はみんな、最初はスクールアイドルに興味がある訳じゃなかったんだよね。バンドだとか、ミュージシャンとか……それを楽しみに、あのライブを見に来てた……でも!」
すると、侑はベンチから立ち上がり、希望に満ちた表情でみんなに語り掛ける。
「東雲、藤黄……そして果林さんが、みんなを盛り上げて……気がついたら、観客全員が一つになってた気がするんだ!」
「一つに……か」
あのライブの一体感……俺もそれに惹かれたんだよな。そして、もう一度あのようなライブを見てみたい、そうとも思った。
……まさか。
「だから私……虹ヶ咲だけじゃなくて、大きなライブにしたい! ダイバーフェスみたいにどこの学校とか関係なくて、誰でもライブに参加できる……スクールアイドルとファンの垣根を越えた、お祭りみたいなライブ!」
「スクールアイドルとファンの垣根を越える……」
「お祭りみたいな……ライブ……!」
侑が語るその言葉を、せつ菜ちゃんとかすみちゃんはしみじみとしながら復唱する。
マジかお前……そのことを考えていたのか。お兄ちゃん、正直びっくりし過ぎてて声も出ないぞ。
ライブをどうするかは、せつ菜ちゃんかその辺りがいい案を出して方針を決めるんじゃないかと思っていた。
しかし、まさか俺の妹からそのような言葉を聞けるとは……
「ほんと、侑は面白いことを考えるわね」
「これは、どこかの兄も鼻が高いんじゃな〜い?」
果林ちゃんが感心している中、愛ちゃんは俺を横目に見ながら肘で突いてきた。
「ははっ。どこも何も、ここにいるぞ? 本当、侑ってやつはな……」
……成長してるな。
そう呟いた瞬間、視界の隅で鮮やかな色が瞬き始めた。
今は真夏。近くで花火大会をやっているようだった。
「「「わぁ……!」」」
それに気づいたみんなは、目をキラキラさせながら眺めていた。
花火が打ち上がる様というのは、風情があって良いものだな。
そんなことを考えながら、夢中になって眺めていると……
「
侑の呟きが、再び俺を含めたみんなの視線を集めた。
「スクールアイドルが大好きなみんなのためのお祭り、スクールアイドルフェスティバル!!」
「……! やりましょう、スクールアイドルフェスティバル! 私達なら出来ます!」
せつ菜ちゃんの一声が、みんなの士気を上げた。
スクールアイドルフェスティバル……か。
「……最高に面白そうじゃないか。俺もその夢、追いかけさせてくれ」
「お兄ちゃん……!」
この瞬間、俺は侑の夢、みんなの夢を全力で応援しようと決意したのだった。
今回はここまで!
まず前書きで言及しました、投稿間隔が空いてしまった理由についてですが、リアルが忙しい時期にあったからです。
今は余裕が出来つつありますので、今後は以前の投稿ペースに戻ります(多分)
なので、失踪したわけではないことをお伝えしておきます。(自分はよっぽどのことがない限り失踪するつもりはありません)
ということで、この後は2話ほどオリジナル展開の回を挟んで原作第10話にあたる回が終わる予定でいます。
長くなりましたが、ではまた次回!
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