高咲兄妹とスクールアイドルの輝き   作:Ym.S

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どうも、Ym.Sだ。
今回で第72話である。
では早速どうぞ。(急にどうした)


第72話 新境地

 

 

「うぅ〜、暑いよぉ……」

 

 

 ホント、今日も暑いなぁ……俺も侑のように横になって一緒にダラっとするか………じゃなくて。

 

 

「おいおい、そんな部屋の床で寝ちゃってるのかよ……しっかりしろよ〜」

 

 

 そう言って、俺は侑の身体を揺さぶって起こそうとする。

 

 俺までバテてしまっては、家事やらを普段通りにする人がいなくなってしまうからな。親がいるならまだ良いかもしれないが、うちは俺と侑の二人暮らしだ。

 

 ……まあこんな暑さなんだから、起き上がる力さえ失ってしまうのは仕方ないよな。俺も昔はそうだったし……

 

 そんな同情もしてしまう今日この頃の高咲徹である。

 

 

「うぅ……お兄ちゃん、エアコンつけて……」

 

 

 侑の目線の先には、テレビ台の上に乗ったエアコンのリモコン。仰向けになりながら手をその方向へ伸ばし、そう懇願してくる。

 

 

「エアコンか……まだ10時だけどなぁ」

 

 

 正直、俺もエアコンがなんの懸念もなしにつけられるのなら既につけている。なんなら、近日の暑さなら常時つけているだろう。

 

 しかし、エアコンを長時間つければつけるほど電力代がかかる。家計が厳しくなるのだ。それに加えて、冷房をつけることは地球温暖化が進むと言われている。だから、こんな早い時間からエアコンをつけることに抵抗があるのだが……

 

 

 でも、それで侑が本当の意味で倒れられることはあってはならない。第一、エアコンをつけるにしても程度を考えればつけてもいいだろう。冷房をガンガンに効かす、なんて極端なことをしなければよいのだ。

 

 

「分かった。でもエアコンだけじゃなくて、水分補給もしとこうな? 俺も飲むから、こっちに来い」

 

 

 俺はエアコンのリモコンを操作した後、冷蔵庫から麦茶が入ったポットを取り出し、食卓の前に移動してからそう言って手招きをした。

 

 ちなみにこれは、俺がティーバッグを使って作った麦茶だ。

 

 

「ありがとう……! 私、そんなお兄ちゃんが好き」

 

「……えっ!?」

 

 

 ……俺は一瞬自分の耳を疑った。

 

 

 えっ、俺の妹が今俺に『好き』って言ったよな? おいおいおい、今手に持ったポットを落とすところだったじゃないか……お兄ちゃん今、雷に打たれた気分だぞ?

 

 

「あっ、あーえっとこれは……普段からお兄ちゃんに助けられてるから、何か感謝の気持ちを伝えられたらなーって感じで……あはははは」

 

 

 ……なるほど、そういうことか。

 

 いやぁ少し舞い上がっちまったが……ほんと、侑は優しいやつだな。

 

 そんなしみじみ考えていたら、彼女は既に食卓についていた。

 

 

 ……ここは、俺からも返してやらないとな。

 

 

「……そうかそうか。ははっ、どういたしまして。俺もそんな侑のことが好きさ」

 

「……! ……えへへ」

 

 

 とても嬉しそうに笑みを浮かべている侑。ホント、うちの妹は可愛いな……

 

 ……はっ! そんなシスコンを発動してる場合じゃないんだ。ん? 誰だ今俺のことをシスコンって言った奴は? いや、俺か……

 

 ともかく、侑には話さなきゃいけないことがあったんだ。

 

 

「……そういえば、今日からまた同好会の活動が始まるよな。俺は残念ながら行けないけど……生徒会に出す書類、本当に書けるよな?」

 

「えっ? ……いやそれは出来るって言ったじゃん! 現生徒会長のせつ菜ちゃんだっているんだし!」

 

 

 ……あの空気からこんなこと言いたくなかったんだが、どうしても今一度確認したかったのだ。

 

 俺だって、どこかで聞いたように『できるできる絶対にできる!!』って言ってあげたいものだが、無責任な発言になってしまうかもしれないから言えないんだよな。

 

 まあ彼女のいう通り、現生徒会長であるせつ菜ちゃんもとい菜々ちゃんがいるので、そこまで心配しなくて良かったか……

 

 

「出来るんだったら良いんだけどな……」

 

「……お兄ちゃんは、参加するボランティアを探すんだっけ? それこそ大丈夫?」

 

 

 すると、少し不機嫌そうな侑がそう訊いてくる。

 

 

 そう、俺が今日同好会の活動に参加できない理由はボランティアセンターに行ってどこに参加するかを決め、参加を申請するためだ。

 

 

 合宿を終え帰宅した後、ボランティアについてネットで検索をすると、今日までの募集のものが結構あったため、行かざるを得ないのだ。

 

 

「ん? あぁ、大丈夫大丈夫。どんな活動をしてみたいかは、ある程度考えついてるから。あとは成り行きさ」

 

 

 初めてボランティア活動に参加するので、不安がない訳ではないが……まあ、そこまで考えていればなんとかなるだろうといったところだ。

 

 

「ふーん……まあ、お兄ちゃんなら大丈夫かっ! 頑張ってきてね!」

 

「おう! 侑も俺の分の仕事、お願いするな?」

 

「うん!」

 

 

 いつもの明るい表情に戻り、励ましてくれた侑。

 

 同好会でいつも俺がやっている仕事を代わってやれるのは侑だけだからな。頼りにしてるぞ。

 

 

 そんな訳で午後からはお互い別行動をとり、俺はボランティアセンターへ向かった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 

「ここがボランティアセンターか……フロアの一角にあるのは初めて知ったな」

 

 

 目的地であるボランティアセンターへと辿り着いたは良いものの……どうすれば良いのか分からず、立ち尽くしている状態だ。

 

 まずこのボランティアセンターというものが、地域の福祉センターのあるフロアの一部にあることに驚いた。てっきりそのフロアまるまるボランティアセンターであると思っていたが……

 

 そして、誰に話しかけて良いのかが分からない。そこにいる人達はみんなパソコンの画面に集中し、カタカタとキーボードを打っている。

 

 何か受付らしいスペースはあるのだが、誰もいないから本当にそこから声を掛けていいものか……

 

 

「ごめん、ちょっとそこ通してー」

 

「あっ、すみません」

 

 

 すると、後ろから大きな荷物を台車に載せて運んできた男性がやってきた。声を掛けられ、俺は詫びを入れながら通路を開けた。

 

 

 居心地悪いなぁ……こういう時どうしたら良いものか……

 

 

「何かお困りでしょうか?」

 

 

 すると、今度は凛とした女性らしい人に声を掛けられた。

 

 

「あぁ、えっとそのー……あっ」

 

「あっ……貴方は……」

 

 

 後ろを振り返ると、その人は以前虹ヶ咲学園で会ったことのある人物だった。

 

 サイドに黄色の髪飾りが結ばれ、肩の長さまで伸びたショートヘア。赤っぽい目をしており、口からはほんの少し八重歯を覗かせる少女。

 

 あの時とは違って彼女は私服だが、その特徴から彼女があの時にうちの高校で会った後輩であることが分かる。

 

 

 この子の名前は確か……えっと……あっ、そうそう、三船栞子さんだ! 良かった、人の名前の記憶力はまだ健在だったわ。

 

 

「確か、少し前に私が生徒会室へ行った時に……」

 

 

 えっ、そっちも俺のことを覚えててくれたのか。俺あの時名乗り出てすらなかったけど……じゃあ、流石に今回で名乗ろうか。

 

 

「そうそう! 高咲徹っていう者だ。君は確か、三船さんだよね? あの時以来だな」

 

「はい……えっと、高咲さんももしかしてボランティアに参加されるんですか?」

 

「あぁ。何か経験を得たくて今日初めてここに来たんだが……」

 

「……何をどうしたらいいか分からない、といったところでしょうか」

 

「……そんなところだ」

 

 

 三船さんは、俺が言おうとしたことを察してくれたようだ。自分で『どうしたら……』ってなかなか恥ずかしくて言えないから助かった……

 

 

「でしたら、私がお手伝いしましょうか? 幸い、私はボランティアの経験がある程度豊富だと自負しておりますので」

 

 

 すると、彼女は俺にとってとても得な提案をしてきてくれた。今まで彼女の態度を見る限り、とてもしっかりしていて信頼できそうな人物であることは感じていた。

 

 

「っ! ……良いのか? じゃあ、ボランティアについて色々一から教えて欲しいのだが、それもお願いできるか?」

 

「はい。私で良ければ」

 

 

 そんな訳で、俺は三船さんにボランティアについて色々と教わることになった。

 

 

 ────────────────────

 

 

「……ボランティアの詳細については、大方そのようなところです」

 

「……なるほどな。分かりやすく丁寧に説明してくれてありがとうな」

 

 

 ボランティアの参加申請に加えて、ボランティアについて色々説明をしてくれた。いやぁ、とても助かった。

 

 なんなら、彼女は何か説明を省略することはなく、一から順序立てて丁寧に説明してくれたのだ。

 

「いえいえ、お役に立てたのなら何よりです」

 

 

 姿勢を常に真っ直ぐにし、微笑みながらそう話す三船さん。

 

 ……ホント、このまま彼女に出会わなければどうなってただろうな? 何も出来ずにそのまま帰ってたかもしれない。同好会の活動を欠席してまで行ったのに成果なしは流石に許されなかっただろう。仮にみんなが許してくれたとしても、俺が許さなかっただろうな。

 

 

 それになんと、俺が選んだボランティアには三船さんも参加するとのことだ。たまたま偶然だが、これで安心してボランティア活動に参加できそうだ。

 

 

「しかしまさか、高咲さんがまさか前生徒会長だったとは……驚きました」

 

「あははは……あまり表には明かさないつもりだったんだけど、実はそうだったんだ」

 

 

 そう、どうやら三船さんは、生徒会長として俺の名前が載っている校内の新聞を見たことがあるらしく、俺が名乗った時点で気づかれたみたいなのだ。まあバレたって何もないのだけれど……自分から『俺は元生徒会長だ』って、わざわざ言う必要もないしな。

 

 

「なるほど。現生徒会長となんだかとても親しげな様子だったので疑問に思ってましたが、それでしたら納得です」

 

「あぁ……三船さんが思っている通り、中川は俺が生徒会長だった時の部下って感じだな」

 

 

 現生徒会長と前生徒会長か……最近は生徒会には忙しくて尋ねられてないな。また生徒会に行ってお手伝いしたいものだ。

 

 

「……高咲さん、一つ質問よろしいでしょうか?」

 

 

 すると、三船さんは少し真剣そうな表情でそう訊いてきた。

 

 

「ん、良いよ。どんな質問かな?」

 

「生徒会長になると、同時にボランティア活動を続ける余裕はあるのでしょうか?」

 

 

 生徒会長を務めながらボランティア活動、か……前に聞いた話だと、三船さんは次の生徒会長を狙っているんだよな? その上での疑問なのだろう。

 

 

「んー……三船さんが将来生徒会長になろうとしているからってことだよな?」

 

「はい。生徒会長が実際どれくらい多忙なのかは存じ上げないので」

 

「なるほど……」

 

 

 うーん……俺はさっき言った通り、ボランティア活動は初めてだし、実際生徒会長の時にはそういう仕事のようなものをやっていなかったからな……俺の経験からじゃ何もアドバイス出来ないか……?

 

 

 ……いや、ここでは生徒会長としての仕事以外の時間に余裕があるかないかが問題なんだよな? なら俺の答えは自ずと出てくるな。

 

 

「まあ結論から言えば、続けられるとは思うぞ。生徒会長だって、仕事が多すぎて自由時間が全然ない訳じゃないしな」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ。俺の場合はボランティアをやろうとは思わなかったからやってないんだが、趣味の時間が持てたり、妹や友達との時間が過ごせたり……だから、三船さんは三船さんでボランティア活動とかに力を注げば良いんだ。時間を有効活用してな」

 

 

 生徒会長の時だって、色々情報を収集していたり、ゲームしたり、我が妹・侑のためにご飯作ったり、侑と歩夢ちゃんで一緒にお出かけしたりした。案外、時間を作ろうと思えば作れるものさ。

 

 

「なるほど……参考になりました、ありがとうございます」

 

「いいっていいって。俺は今日三船さんに色々お世話になったしな。お礼になったか分からないが、そんな感じだ」

 

 

 こんな先輩の当てになるか不明な話をお礼としていいのだろうかってな。まあ、タメになってくれるなら何よりなんだけども。

 

 

「ふふっ、さん付けで呼ばなくて結構ですよ? 私は高咲さんの後輩ですから」

 

「ん、確かにそうか……じゃあ三船、改めて今度のボランティアはよろしく頼むよ」

 

 

 そうだよな……何だか三船は凄い大人びているからさん付けで呼んじまったな。

 

 しかし、そんな笑顔も見せるんだな。彼女はしっかりしていて堅いようで、意外と温かさも持ち合わせているのかもしれない。

 

 

「はい! ……そういえば、高咲さんには妹さんがいらっしゃるのですね。私も姉がいるんですよ」

 

「へぇ〜、三船って妹だったんだな! しっかりしてるから、てっきり兄弟いるんだったら一番上の姉かと思ってたよ」

 

「そんな、私はまだまだ未熟者ですよ」

 

「そうかね〜? そんなに謙遜しなくても良いのにな〜……」

 

 

 そんな感じで、俺と三船はしばらくの間自分の姉妹について語り合ったのだった。

 

 




今回はここまで!
再び栞子ちゃんに登場してもらいました!
この後原作の流れに関わらない形で登場する予定です。
次回から原作第11話の内容に入っていきます。
ではまた次回!
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