仮面ライダーツルギ EPISODE X   作:大ちゃんネオ

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Xー13 夜

 聖山市の隣町には景勝地、百九里浜《ももくりはま》がある。

 リアス式海岸という入り組んだ地形が造る独特な景色は地球という星の(いにしえ)と生命を感じさせる。

 晴天ならば、どこまでも広がる太平洋を望むことが出来るがその日は生憎の大雨。 

 いや、嵐であった。

 

「終わりだ御剣燐。お前は私には敵わない」

「……だとしてもッ!」

 

 雨風に逆らい、雷を背負い、ツルギが迫る。

 かつてならば太刀打ち出来なかった相手であるが、今は違う。

 最早、私の方が上。

 別次元の存在となったのだから。

 

 太刀が振り下ろされるより早く、私の棒がツルギの胸を打つ。

 後退したツルギを薙ぐ、突く、払う。

 

 ツルギが膝をついた隙に棒型のバイザー、天秤が備わる部位にカードを装填する。

 

【CURSE VENT】

 

 棒の先端に赤黒い光が灯る。 

 

「ふっ……!」

「ガッ!?」

 

 光の灯る棒が穿つ。

 赤黒い光はツルギを包み、絞めつける。

 

「こ、これは……」

「お前はここで殺す。だが、ただ殺すのでは面白くないからな。事切れる瞬間まで苦しんで死ね!」

「く……ぐぁっ……! うぅ……」

 

 御剣燐は自身に与えられた()()に喘ぐ。

 少しずつ呪いが身体を蝕んでいくのだ。

 さぞ、苦しいだろう。

 

「ふふ。変身を解除しなければ呪いは君を蝕むことになるぞ。だが今の状況で変身を解除なんて出来るか? まあ、してもしなくてもお前は死ぬ。死ぬッ!!!」

「僕は……! 貴女を……貴女を、()()()を救うッ!!! はあぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 無謀にも駆け出すツルギ。

 勝負は決したも同然。

 赤子を捻るのと同じく感覚で棒を薙ぎ払うとツルギは火花を散らし、荒れ狂う黒い海へと転落していった。

 

「なんだ、もう少し痛めつけてから殺すつもりだったが……。まあいい。御剣燐……私の宿敵、今ここで討ち取った……」

  

 ──────────

 

 少し、寝ていたようだった。

 一人だけでいるには広すぎる真白の自室。

 部屋の中央には大きな鏡が置かれている。

 窓の外には星空と月。

 戻ってきてからうたた寝をするとは、神と言われるようになっても自分がまだ生命ある人間であることを思い知らされる。

 夢を見たのは恐らくあのツルギの影の如きライダーと(まみ)えてしまったからだろう。

 

 一年と少し前、私の世界に反逆を続けるツルギの討伐に私の部隊を送り込んだ。

 だが、数でどうにかなるというものでもなかった。

 ここに純正と粗悪品の差が現れる。

 ()()()()()()()()()()()()()

 世界を闘争に満たすためカードデッキを複製したがやはり一度にあれだけの数を用意するとなればそれなりの出力低下、品質低下は免れなかった。

 まあ、品質自体の問題は大きな問題ではない。

 数だけいたってツルギに勝てないということが判明したのであれば私自らが出向けばいいこと。

 そして、ツルギを討ち取った。

 もう、私は誰にも負けない。

 

 一枚のカードを手に取る。

 

 カードの名はSURVIVE。

 ライダーを別次元の領域へと誘う、まさに切札とも呼ぶべき特別なカード。

 選ばれし者のみが持つことを許される物である。

 

 鏡の前に立つ。

 

「私にこれを与えてくれて……いや、全てを与えてくれてありがとう()()()

 

 鏡に映るのは私ではなく、かつてのライダーバトルの管理者アリス。

 口うるさい奴であったが今は眠れる乙女。

 アリスの権能は今やこの手にある。

 

「叶ちゃーん。終わったよ~」 

 

 鏡の中から椿の声がする。

 そして鏡の中から裸の椿と清香が出てくる。

 椿の言葉通り、()()()が終わったようだ。

 

「はあ。早くこれしなくていいようになりたいな~」

「これに結構時間取られますからね……」

「大丈夫。すぐにこんなことしなくてもいいようになるからね。そうしたら……ね?」

 

 二人にバスタオルを渡しながら言葉を掛ける。

 いつか、いつの日か三人で今度こそ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸のざわつきを抱えたまま部屋へ戻ると中は真っ暗であった。

 夜はいつもこうだ。

 ミイラさんは部屋に灯りをつけるということをしない。

 夜になったらつけておいてほしいと毎回言っているのだが。

 

「また蝋燭つけてない……」

 

 蝋燭に火を灯す。

 ぼう、と部屋が明るくなる。

 やはり、寂しい部屋だ。

 ベッドに腰掛け、仕切りの向こうへと声を掛ける。

 

「ミイラさん寝てる?」

「起きてるよ~」

 

 仕切りの向こう側から返答が。

 起きていたのならおかえりなさいぐらい言ってもらいたい。

 

「それで、話ってなんの話?」

 

 まさか、あの話について聞かれるとは。

 ミイラさんが気になる話題であるのか、まあ執事さんからお嬢様がお呼びですなんて言われて行った先でどんな話があったのか。

 私がミイラさんの立場なら恐らく、気になっていただろう。

 

「……闘争主導者に反撃する。そのために仲間を集めようって」

「そっか……。それで、君はどうするの?」

「え?」

 

 どう、するの。

 私の身の振り方?

 私はあの人達とは違う。

 だから……。

 

「戦うのって、怖いよね」

「……うん」

「僕も、最初はそうだった」

「ミイラさんも……?」

「うん。だけど、戦いから逃げちゃ駄目なんだって気付いた。たとえ、戦う人でなくとも。いや、戦う人じゃないからこそ戦わないといけないのかもしれない」

 

 戦う人じゃないからこそ戦わないといけない。

 その言葉がずしりと胸にのし掛かる。

 戦いたくないのに、だからこそ戦わなくてはいけないなんて一体どういうこと?

 

「戦いって一言に言ってもさ、暴力だけじゃない。いろんな戦い方があるんだ。だからどうか、君の戦いをしてくれ」

「私の戦い……。私の戦いってなに?」

「どうだろう。暴力で戦うのかもしれない。言葉で戦うのかもしれない。文字で戦うのかもしれない。それとも、まったく違う方法で戦うのかも。ともかくそれは君が探し、選ぶものだ」

「……ミイラさんは、自分の戦いを見つけたの?」

「ああ。今も戦ってる真っ最中なんだ」

 

 今も?

 ベッドで日がな一日寝て過ごしているというのに。

 それのどこが戦いだというのか。

 

「戦いも戦い。一世一代のね。僕が苦手な……()()という戦いを」

 

 待つ?

 一体、何を待っているというのだろう。

 これもまたミイラさん得意のはぐらかし誤魔化しだろう。

 ともかく、私の戦いというものについて考えよう。

 そうすれば、この胸のざわつきについての答えも得られるかもしれない──────。

 

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