「早く! みんなこっちに来て!」
子供達を避難させる。
鉱山を利用して作ったシェルターがあり、そこに子供達や戦えない人達が避難するようになっている。
それでも危ない場合は隠し通路を通って里を捨て、他の里を目指すというのがマニュアルである。
「誰か! うちの子を知りませんか!?」
響く、女性の悲痛な声。
母が子を探していた。
「ここにいないんですか?」
奈々はこの女性と、その子を知っていた。
かつては服飾を行い、今は里の住人のための服を作っていて奈々はその手伝いをしたことがあった。
その子……香澄ちゃんと遊んだことがあった。
「ここに来る時に人混みではぐれてしまって……。場所は知ってるから来ていると思ったんですけどいくら探しても見つからなくて……」
「怖くて動けないでいるのかも……。私、探して来ます!」
「奈々ちゃん!」
奈々は駆け出した。
────震える脚に鞭を打って。
里には既に
これ以上は進ませまいと里の者達が抵抗するがそれも虚しく次々と葬られていく。
「そんな……なんで、なんで……」
その光景を受け入れまいと頭が拒否反応を示す。
どうしようもなく、あの日の光景を思い出してしまい身体が震える。
だけど、私よりきっと香澄ちゃんの方が怖いはずだ。
「怖くない……怖くない……怖くない……」
呟いて、勇気を振り絞る。
そうして、戦場へと一歩ずつ足を踏み入れていく。
「香澄ちゃん!いるなら返事して!」
声を張り、名前を呼ぶが爆音によって掻き消されてしまう。それなら次はもっと大きな声で叫べば良いと息を吸って……。
「うわぁぁぁぁ!!!!」
撃ち落とされたシャナオウが落下し、近くのあばら家を壊した。土煙がたち、シャナオウの呻き声が響く。
「大丈夫ですか!?」
奈々はシャナオウ……。鞍馬隆治に駆け寄った。
鞍馬は気絶し、一命は取り留めているようだが見つかってしまったら確実に命を絶たれてしまうだろう。
彼もなんとかしなくては……。しかし、そこで見つけてしまったのだ。あばら家とあばら家の間に隠れていたであろう香澄ちゃんが、瓦礫の下敷きとなっていた。
「香澄ちゃん!」
瓦礫をどかし、香澄ちゃんを抱き起こす。
幸いにも息はあるし、香澄ちゃんの上に覆い被さった瓦礫はトタンや軽い木材だったことが幸いして大事にはならなかったようだ。
しかし、問題は山積みである。
鞍馬さんのこともあるし、なによりこの戦場を人を運んで進めるだろうか……。
だが、そんな悩みより大きな壁が私の前に立ちはだかった。
────舞い降りる、深紅の殺戮者。
「なに? あんた、変身もしないでこんなとこにいて。死にたいの? まあ、殺すんだけどさ」
仮面の下から発せられた声は少女のものだった。
恐らく、自分と変わらないくらいの歳の。
そんな者から、こんな殺気が放たれるなんて……。
動きが取れなかった。
蛇に睨まれた蛙とはこのことかと理解した。
「あんたもデッキ持ってるんでしょう? 戦うってんなら、変身しな。戦った上で殺してやるよ」
戦う……。
羽織っていた薄手のパーカーのポケットから緋色のデッキを取り出し、見つめる。
変身して戦えば、二人を助けることが出来る……。
だけど、人と戦うことなんて……。
『お兄ちゃん!』
『奈々、逃げろ……』
記憶が蘇る。
思い出したくない記憶が。
「あ、あぁ……」
どうしようもない震えが身体を襲う。
とても、戦うなんてことは出来ない……。
「嫌だ……。戦いたく、ない……」
「はんっ! 戦うことが嫌いな奴等の集まりとはいえ、まさかこんな腑抜けがいたなんて……。そのまま、大人しく死んで」
少女の剣が振り上げられる。
あれが、そのまま私に振り下ろされればそれで私は終わる……。
「死ね」
片刃の長剣が真夏の太陽を反射する。
もう終わりだと確信した時、風が鳴った。
「なっ!?」
驚愕の声をあげる殺戮者。
長剣が弾かれ、隙だらけの体勢となった彼女を襲う矢の嵐。
一体、どこから……。
「私を探してる暇があるなら逃げなさい」
どこからともなく響いた声に驚いていると、ぼろぼろのローブに身を包んだ謎の人物が私の目の前に舞い降りた。
そして、怯んだライダーに向かい駆け出し、手に持つ青い両刃の剣で切り伏せる。
その勢いでローブで隠していた顔が表れる。
少女……というには大人びた女性。
キリッとした目付きからは威厳だとか冷厳さを感じさせる。
「貴女は……」
「いいから逃げなさい。……変身」
デッキを取り出し、バックルへと装填した彼女は青い騎士へと変身した。
青い、鳥を思わせるような姿……。
「お前……アイズか!」
深紅のライダーが青い騎士の名を忌々しげに叫んだ。
アイズ……。
以前、聞いたことがある。
闘争主導者達が必死になって探している、【純正】と呼ばれるライダーの一人が確かそんな名前だった。
「派手にやり合うつもりなんてなかったのだけれど。私、自分で思っているより堪えがきかないみたい」
「なにを一人でごちゃごちゃと……!」
長剣を携え、アイズに迫る深紅のライダー。
上段からの大振りな攻撃はアイズに容易く避けられ、アイズの剣によって反撃の袈裟斬りが繰り出される。
そして、私が剣だと思っていたもの。
それは弓であった。
背中の矢筒から矢を三本取り出し、一本を番え敵に向かって放つ。矢は真っ直ぐと敵の胸部に直撃。
見た目よりも威力のあるそれは、巨大な火花をあげさせながらライダーを吹き飛ばす。
「次」
跳躍し、背中に契約モンスターであろう大きな青い鳥を備えたアイズは次々と矢を放っていく。
戦闘不能となっていく雑兵達。
だが、このやり方では時間がかかってしまう。
そのことはアイズ自身がよく感じていた。
「チッ……。数が多いわね」
苛立ちを吐き出すアイズ。
だが、ここで新たな勢力が登場したことにより戦局は変わった。
吹き飛ばされ、地面を転がる一体のポーン。
そのポーンを踏みつける、一人のライダーの姿にアイズは驚いた。
「片月……。あいつ、なんで……」
「咲洲か……」
黄色と黒のスズメバチのライダー、【仮面ライダースティンガー】が混沌とした戦場に現れた。
「レジスタンスだ! レジスタンスが来たぞッ!!!」
誰かが叫ぶと同時に、ライダー達が戦場に現れた。
彼等は、里の味方であった。
「あぁ……ふんッ!!!」
スティンガーは踏みつけていたポーンを蹴り飛ばすと、気怠げにライダーの群れへと向かっていった。ナイフで斬りかかってきたポーンを殴り飛ばす。
「まさか、純正が二人も揃うとは……」
アイズとスティンガーが次々とポーンを倒す様を見たローチスが呟いた。
「たかが二人だろう? 殺ればいい」
血気盛んなヴェイスはそういうが、ジェーンが許さなかった。
「……」
「ジェーンさん、撤退ですか?」
「はぁ!? 里を潰すって命令はどうする!」
「……」
「なるほど、そのような命令が……。了解です。撤退しましょう」
ジェーンの意を理解したローチスが言葉に変換して命令を発する。
そして、鉛の兵隊は撤退していった。
里全体に、焼け爛れた臭いが充満した。