仮面ライダーツルギ EPISODE X   作:大ちゃんネオ

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Xー6 レジスタンス

 瓦礫を運び出す。

 あちこちでは消火活動や怪我人の救護等が行われている。

 

「……ひどいものね」 

 

 傍らで廃墟の壁に凭れていた、仮面ライダーアイズこと咲洲美玲さんがそう呟いた。

 

「ひどいです、こんな……。みんな、戦いたくないからここにいるのに……」

「戦いたくない、か……」

 

 美玲さんはそう呟くと、呆れたと言いたげなため息をついた。

 

「……戦いたくないってことは、悪いことですか」

「別に。ただ、戦いたくないと言っていた人を思い出していただけよ」

 

 ……少々、悪い方に捉えすぎていた。

 咲洲美玲という女性が少々冷淡という印象のせいもあったとは思うが何より、この状況に対する苛立ちがそうさせたのだろう。  

 

「おい」

 

 乱暴で素っ気ない呼び掛けに反応すると、そこにはレジスタンスのリーダー。片月瀬那がいた。

 

「咲洲、それからそこのお前。話がある」

「あなたと話すことなんてあったかしら」

「お前にはなくてもこっちにはある。黙ってついてこい」

 

 それだけ言うと片月瀬那は踵を返し去ってしまった。

 ついてこいという意味だろうか?

 それを見た美玲さんは再びため息をつくと、彼女の後を追ったので私もついていく。一体なんの話だというのだろうか?

 

 

 

 

 片月瀬那についていくと役場に着いた。

 役場には大勢の人が集まっていて、なにやら不穏な空気が漂っていた。

 

「……で、話し合いはどんな感じ?」

「瀬那さん聞いてください! こいつら腑抜けの中の腑抜けです! 男のくせに!」

 

 小柄で二本のアホ毛が特徴的な少女が片月瀬那に泣きついた。

 

「えっと……皆さんは何の話し合いをしていたんですか?」

「こいつら、俺達に協力しろって言うんだ」

「神を倒すためだってな。そんなの無理に決まってる」

 

 神。

 それはその名の通り、この世界の神。

 この闘争にまみれた世界を作り上げた張本人達。

 あれは、一年半ほど前のこと……。

 

 

 

 

 白い息を吐きながら、家路についていた。

 高校受験を間近に控え、学校でも塾でも家でも勉強の毎日。正直、うんざりしていた。

 

 聖山高校なら安全圏なので大丈夫だとは思うが、勉強をしないことの不安感が想像以上に重い。今の私は安心を得るために勉強をしていた。

 そんな安心するための生活の中にあっては刺激というものを求めてしまうのが人間だ。

 

 この退屈な繰り返しの毎日を脱却したいとは思いつつ、実際に何か普段とは違うことをしようと行動には移さなかった。人間には想像することでそういった衝動を発散するという自慰能力が備わっていると以前、図書室でパラパラと読んだ本に書いていた。

 その本に書かれていたことをそのまま実践して、例えば高校に入学したら友達と遊んで、部活ではすごい才能を発揮して一年生ながらにレギュラーになって、カッコいい彼氏と付き合って……なんていう高校デビューの算段を夢想することで自身を慰めていた。

 

 だけど、そんな可愛らしい妄想のような非日常ではなく、闘争と恐怖に彩られた非日常に私は、世界は誘われた。

 

 突然響く耳鳴り───。

 

 痛みを孕んだ耳をおさえ、立ち止まるとどこからか少女の声が響いた。

 

『これより、世界は闘争の時代へと変わる。法は機能せず、全ては闘争が決める。気に食わぬ者がいるなら闘って殺せ。復讐したい者がいるなら闘って殺せ。負ければ死。負けた者が悪である。弱さは悪である。闘争こそが正しく、善である』

 

 少女は、鏡の中にいた。

 家の窓ガラスに、カーブミラーに、停まっている車に。

 少女は映るもの全てに存在していた。

 

 まるで、意味が分からなかった。

 これは現実に起こっていることだと信じられなかった。

 幻覚を見せられているのだと。

 だが、町の。いや、世界の様子がおかしかった。

 世界の変貌していく様をまじまじと見せつけられる。

 看板の文字が反転し、鏡が波を打つ。

 そして、路駐していた車の窓ガラスから何かが地面へと落ちた。

 

『さあ、デッキを手に取れ。そして、戦え』

 

 意味が分からなかった。

 戦え?

 なにと?

 なんのために?

 湧き出る疑問。しかし、すぐにその疑問は解決、もとい、考える余裕がなくなった。

 

 ────鏡の中から出づる、怪物。

 

「なに……? なんなの!?」

 

 腰を抜かし、地面にへたりこむ。

 緑色の鱗に覆われた半魚人のようなそれは、私を見つけると動きを機敏に襲いかかってきた。

 こいつに襲われて死ぬ。

 そう覚悟すると、巨大な羽音が風を切った。

 

「な、に……?」

 

 目の前に現れ、半魚人を突き飛ばした巨大な昆虫。

 真っ直ぐに伸びた長大な二本の顎。

 緋色の甲殻。

 巨大なクワガタムシがそこにはいた。

 こいつも、私を襲うのだろうか……?

 空中で向きを変え、私と相対した巨大クワガタ。

 数秒間見つめあって……。

 この子は、私を襲うことはないと確信した。

 

「あり、がとう……」

 

 お礼を伝えるが、果たして通じているだろうか。

 そんなことを考える余裕が生まれていたが、先程の半魚人はまだ生きていた。

 唸り声を上げて、巨大クワガタを威嚇している。

 どうしよう…このままクワガタに戦ってもらう……?

 その時までは私自身が戦うという選択肢はなかった。

 だけど、あるものを再び目に映した瞬間。その選択肢は生まれた。

 

 緋色の薄い箱のようなもの……『デッキ』を手に取る。

 それにはクワガタのエンブレムが刻まれていて、あのクワガタさんと関係があるのだと理解した。

 そして、流れ込んでくるこれの使い方。

 どこからともなく現れたベルトが巻かれ、バックルにデッキを装填する。

 

 それが私の初めての変身。初めての闘争。

 いや、あれを闘争と呼ぶのは甘いというものだ。

 何故ならあれはチュートリアルだったのだから。

 本当の闘争はもっと……怖い。

 

「だから! お前達に協力なんて出来るかよ!」

「なにもあなた達みんなを戦わせるつもりはないんです。物資を分けてくれたり、休む場所を提供してくれたり……。その変わりにモンスターや鉛の兵隊からは守りますから……」

 

 小太りでスキンヘッドの少々威圧感を覚える見た目の青年がそう説明するが皆は拒否をする。

 

「大体! お前達が近くにいたからこの里が襲われたんじゃないのか!?」

 

 誰かの発言が燃料を投下した。

 与えられた理不尽の原因は自分達ではないと思いたかったのだろう。

 皆、口々にレジスタンスの人達を罵り始めた。

 次の瞬間、椅子が宙を舞った。

 

「せ、瀬那さん……」

「……哲、飯」

「は、はい……」

 

 小太りの青年、哲と呼ばれた人物は片月瀬那に命じられて部屋を出ていった。

 

「……はあ。まず言っておくけど、私達は別にレジスタンスなんてもんじゃない。こいつらが勝手についてきてるだけだ」

 

 後ろの小柄な少女を指差し、そう語った片月瀬那。指を差された小柄な少女は何か言いたげに片月瀬那を見つめるが、当の本人は全く気付いていない。

 

「協力を要請する、なんて言ってるが別にあんたらに協力してもらうつもりも義理もない。私が勝手にやってるだけだからな。ただ、これだけは言わせてもらう。……いつまでも隠れて怯えてるつもりか?私は嫌だね」

 

 そう言い残して、片月瀬那は部屋を出ていった。

 小柄な少女がそのあとを追って、部屋を出る前に私達を睨み付けた。

 

「まったく……。相変わらずの狂犬ぶりね」

 

 これまでずっと黙っていた美玲さんが口を開いた。

 またため息をついて……幸薄そうな顔をしているが、余計に幸が薄くなってしまうだろう。

 

「美玲さんは片月さんとどういう関係なんですか?」

「何度も殺し合った。とだけ言っておくわ」

 

 ……この人もまた、戦う人なのだなと再認識した。

 先程の戦いぶりを見てもそうだが、改めてそう思わされた。

 どうしたら、そんなに強くあれるのだろう……。

 

「瀬那さん! スープあっためたやつ持ってきました! ……って、あれ?」

 

 哲と呼ばれた青年が鍋を持って帰ってきた。

 もう既に、そこに主はいないというのに。

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