荒廃した世界において唯一文明保っている場所。
それは神と呼ばれる者達の住まう場所である。
旧聖山市中央市街地。
富裕層向けに建てられた高層マンションの一室に彼女達はいた。
白を基調とした内装に黒い家具で統一したシックな部屋。この部屋の主の趣味が現れていた。
「それで、アイズとスティンガーを見つけたというわけか」
ソファに身を預ける十文字叶が自身のデッキを弄びながら部下からの報告を聞いていた。
「ええ。純正が現れたら撤退せよということらしかったですので。……一部、不満が爆発しそうな方々がいらっしゃいますが」
糸杉が友美と牙を横目で見ながら報告する。
その二人は今正に爆発せんといった雰囲気で、二人で殺し合うのではないかと思わされた。
「大体なんなんだよ純正って。二人ぐらい数で押すなり出来るだろ」
「……純正はお前達粗悪品とは違う。真のライダー。真のライダーバトルを経験した者。真なる願いを持つ者だ。もう一度言うが、お前達とは違う」
ソファに身を預けていた十文字叶がデッキから一枚のカードを取り出し眺める。
「そのカードは?」
「真のライダーたる証。メモリアカードだ」
「メモリアカード……?」
「このカードには願いが記録されている。真のライダーバトルで最後の一人となった者はこのカードに記録された願いを叶えることが出来る」
どこか遠い目で語る十文字。
彼女の瞳には周囲の景色など映っていなかった。
「へえ! だからあの二人のデッキは他の連中より綺麗なんだ! いいな~欲しいなぁ」
「……真葉は置いといて、あんたは願いを叶えたの?」
「話をちゃんと聞いていなかったのか古羽根。最後の一人が願いを叶えることが出来ると私は言ったんだぞ。純正のライダーは私を含めて四人。いや、三人だったか。一人は既に始末したからな」
懐かしむような顔で語る十文字。
彼女の脳裏には嵐の中、白き騎士が倒れ、荒れ狂う海原へと落ちていく様が浮かんでいた。
自身の仇敵を下した瞬間である。
私は死なない。死なせないだと?
笑わせる。
そのような戯けたことを言う輩はこの手で始末した。
奴は私のことを理解したような口ぶりだったが、砂の一粒程も私のことを理解など出来ていない。
部分点すら与えることは出来ない程にだ。
「叶ちゃん? 怖い顔してるよ?」
「どうかなさいましたか?叶様?」
私の最も大切な二人が私に語りかける。
この二人こそ、私に必要な二人。
「大丈夫。ちょっと嫌なことを思い出しただけだから」
「本当に大丈夫ですか? 何かあれば私が敵を打ち倒してみせます!」
「本当に大丈夫よ清香。清香と椿がいれば私に怖いものなんてないわ」
清香に微笑む十文字。
そこは、三人だけの世界。
だけどこんなものでは物足りない。
真に美しい世界のためにも、真の私の願いのためにも。
純正のライダー達は消さなければならない……。
「確実に葬るためにも、私が出よう」
「いいの?」
「たまには、運動しないとね」
年頃の少女らしく話し、笑う。
この三人との時間こそ、神ではなく少女であれる時間。この瞬間を私は……。