里近くの川原で片月は魚を焼いていた。
静かに火を眺め、黄昏ている様子でいた。
「また、仲間を引き連れているの」
「……勝手についてきてるだけだ。あいつみたいにな」
彼女の目には、彼女の仲間だった少女が映っているのだろう。
その瞳が揺れるのは炎のせいか、それとも……。
「そういうあんたこそ、まだあいつを探してるのか?」
胸を貫くような言葉だった。
そういえば、こいつも知っていたんだったか。
「ええ。悪かったかしら?」
「……あんた、そういう奴だったな」
片月からどういう奴だと思われていたのだろうか。
まあ、それはいいだろう。
「いい加減、諦めたらどうだ」
「……どういう、意味かしら」
「そのままの意味だ。いつまでも、あいつを……。あいつは、死んだんだ」
その言葉を聞いた瞬間、全身の血液が沸騰するのを感じた。
「燐は死んでなんかいないッ!!!」
激昂した。
片月の言葉を認めるわけにはいかなかった。
燐が死んでいるなんてこと、信じたくなかった。
「……本当にあんた、変わらないね。前からそうだった。冷徹なようでいて、その実内面は燃え滾っている」
「……あなたに私の何が分かるの」
「分かるさ……殺し合った仲だろう?」
穏やかな口調で穏やかでないことを言う。
その目には静かに燃える炎が映り、川のせせらぎと炎の音だけが響いていた。
「……まだ、ライダーバトルは終わっていない」
静寂の中に追加された片月の声。
彼女の言葉の真意は容易く読み取れた。
「ええ、そうね。私と貴女、そして十文字が生き残っている。それに、燐だって……」
「ライダーはまだ残っている。だけど、肝心のアリスがいないんじゃ最後の一人になったところで願いを叶えてもらえるか分からない。だから、決めたんだよ」
立ち上がり、私を正面から見据えた片月。
風が、一瞬強く吹き荒んだ。
「エクスを倒す。あいつが世界を狂わせた元凶だ。あいつを倒せば、真のライダーバトルを再開することが出来るかもしれない」
強い決意を宿した瞳で、彼女は言った。
「世界を元に戻して、決着をつける。そして誰かが願いを叶える。分かりやすいだろう?」
「ええ。この上ない単純明快さよ」
また強い風が吹き、焚き火の勢いが強まる。
私の心にも、火が付いた。
「とりあえず、この狂った世界を壊すまでは共闘だ」
「分かっているわ。だけど、まだ戦力が足らないんじゃない?」
「だから仲間を募っている。けどまぁ、そう上手くはいってないってわけ」
まあ、それは分かっている。
先程の里でのやり取りを見た感じ、どの里でもあんな感じだったのだろう。
「ま、あんたが協力してくれるだけマシってもん」
「あんまり、期待し過ぎないように」
そう言って小さく微笑み返した。
すると片月は意外そうな顔をして……失礼な奴。
文句のひとつでも言ってやろうとした瞬間、私達に向けて光弾が放たれた。
私も片月も寸前で回避し、光弾は水面に着弾し水柱が上がる。
「久しぶりだな、咲洲、片月」
「お前は……」
「まさか、そっちから来てくれるなんてね」
ポーカーフェイスを崩さず言ったつもりだが、内心は戸惑いが大きかった。
どうして、こいつがここに……。
「お前達二人が揃ったと聞いたのでな。ライダーバトルの決着を付けに来た」
「十文字、叶……!」
忌々しげに、その名前が出た。
「私達もいるよ~」
「叶様の邪魔をする奴等……! 許さないッ!!!」
十文字の取り巻き二人。
彼女達は初めて見るが、鉛の兵隊の連中とは違う雰囲気を感じる。
こいつらは……強い。
「さあ、私の世界の異物達よ。排除させてもらおうか」
妖しく微笑む十文字。
デッキを構え、戦闘態勢に入る。
巻かれたベルトは私達とは違う、金色のベルト。
私達とは別次元の領域の存在を表す証拠。
そしてなにより恐ろしいのが、それが三人揃ってということである。
「変身」
「変身♪」
「変……身ッ!!!」
三者三様の変身の掛け声のあと、それぞれデッキが手離された。
自由落下するはずのデッキ達は三人の周囲を飛び回り、それぞれのバックルへと収まった。
顕現する、神たる三人のライダー。
「さあ、裁きの時だ」
天秤を象った杖型のバイザーを掲げた十文字叶【仮面ライダーエクス】
銀色の装甲、鱗を思わせる意匠。
三体の神が、神罰を下す時が来た。