プロローグ
話をしよう。
あれは今から3年…いや、4年前だったか…
あの日も今日の様な土砂降りの雨が降っていたのを記憶している。_______
当時中学二年生だった俺は剣道部に所属していた。
いつも通り部活が終わり家に帰ろうと下駄箱で靴を履き替える。
外のバケツを引っくり返した様な雨に思わず顔をしかめ、元々悪い目付きが更に悪くなる。
こんな土砂降りでは傘を挿したところでほとんど意味は無いだろう。まぁ、無いよりはましだ。そう思って鞄の中の折り畳み傘を取りだして開く。
もう既に水溜まりだらけの道を自宅に向かって歩く。気分は憂鬱だ。
歩道を歩いていると横を勢い良く走り抜けた車の車輪にはね上げられた水が脚に掛かる。
「…チッ」
思わず舌打ちした俺は悪くないと思う。て言うかもう少し歩行者の事を考えろよ。
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家に着く頃には雨は止んでいた。
傘を閉じ、玄関のドアの横に置いておく。こうしておくと、だいたい次の日には乾いている。
何時もの様に引くタイプの玄関ドアを気だるげに開ける。
まず玄関のドアを開けた俺は驚愕した。そして混乱した。何時もなら綺麗好きの母によって整頓されている筈の家具は倒され、物が散乱し、花瓶や窓ガラスの破片がそこらじゅうに散らばっている。
何だこれは。何だ。何が起こった。
混乱する頭でガラスの破片を踏まないように気を付けながら家の中に入る。一応念のために竹刀袋から木刀を出して持っておく事も忘れない。
「_____!」
不意に二階から物音が聴こえた。
怪しく思った俺は急いで、尚且つ慎重に階段を上る。
階段を登りきった俺はその先の光景に思わず目を見開く。
其処には見知らぬ大男に馬乗りにされ、首を絞められて息も絶えだえになっている母親の姿と、その奥で恐怖に怯え、しゃがみこむ妹の姿があった。_______________
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_____その日俺は人を殺した。
殺した相手はあの大男。母の首を絞めているところを持っていた木刀で撲殺したのだ。
あの時の頭蓋骨を砕く感触は今でも覚えている。
当然だが俺の行為は正当防衛と見なされ、罪には問われなかった。
妹から聴いた話によるとあの男は強盗だったらしい。抵抗しようとする母親を無力化すべく首を絞めていた所を俺に後ろから殴られ死んだようだ。
まぁ、母親は間に合わずに死んでしまったが。
不思議と涙は流れなかった。悲しいとも思わなかった。妹は泣いていたが。
実を言うと俺達には父親も居ない。俺が小学2年の時に逝った。小さかったのであまり覚えていないがあの時も泣かなかった気がする。
さて、ここで困ったのが俺達の引き取り先だ。俺の父親は実は結構稼いでいたので遺産がかなりある。その『遺産+両親が稼いだ金+家や土地』を狙って親戚が取り合いになった。
俺のご機嫌を取ろうとすりよってきた輩もいたが下心が見え見えだったので丁重にお断りさせてもらった。
結局は何か合った時には一番近所に住んでる親戚の人が責任を取ると言う条件付きで両親の遺産をチビチビと切り崩して妹と二人で今の家に住む事で落ち着いた。
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これが俺の中学二年の時の思い出だ。我ながら酷いと思う。正当防衛であったとは言え、人を殺したからな。
この事件のせいで一部のクラスメイトからは嫌われているが正直どうでもいい。
今は高校三年の秋だ。部活はやらずにバイトをやっている。いくら両親の遺産がたくさんあったとしても無限ではないからな。
遺産は妹の将来の為に使う事に決めている。妹はいいと言うが俺なんかに使うより妹に使った方がいいに決まっているし、そっちの方が金も喜ぶだろう。
__________で、今俺は何をしているかと言うと、電車を待っている。一つ目のカフェのバイトから二つ目のコンビニのバイトへの移動の為にだ。
バイト先のカフェは学校に近いのだが、コンビニは駅を二つ移動しないといけない。面倒だが仕方が無いのだ。これも我が妹の為。
そんな事を考えている内に目的の電車が来た。目の前で停まるかという時、急に俺の視界が前方に傾いた。
「_______あっ」
背中を押されたと言う事に気が付いた時にはもう遅かった。
俺は線路に落ち、急に止まることの出来ない何十トンもの鉄の塊に身体をぶつけ____________________________