────魔理沙が言ったことを三行でまとめるとこうだ。
・珍しい茸を大量に見つけた。
・興奮し急いできれていた醤油を買いに行ったはいいが、何故か2本も買ってしまった。
・鮮度が落ちてしまうし、もったいないので誰かにあげようと思ってここへ来た。←今ここ
………意味がわからない。
え、何この娘、茸のためにあせって醤油1本無駄に買って来たの?おかしくない?普通あせっても財布忘れる程度のものじゃないの?
しかもなんで私の処に来たのかしら。醤油なんてめったに使わないのに。
呆れたように私がそう聞くと
「え、アリスって醤油つかわないのか?」
と、まるで意外とでも言いたげな顔で聞いてくる友人の自分への興味関心の薄さに若干不機嫌になりつつ、それを表に出さずに答えてやる。
「貴女も私がほとんど洋食しか口にしないの知ってるでしょ?それとも私が醤油使っているところでも見たことあるのかしら?」
「……そう言えば見たことないな」
記憶を探り、該当する場面が見当たらなかったのか思考を打ち切り此方を見る魔理沙。
「それにそういうのだったら私よりもっと欲しがる人物が身近にいるでしょうに。ほら、万年腹ぺこ貧乏巫女とか。」
「………あー、霊夢か。思いつかなかったなすっかり忘れてた」
無類の親友と言っても過言ではない存在を眼中にも置かないって……随分と酷いわね、貴女。
私は数少ない友人の内の一人の、酷な一面に呆れ額に手を当て溜め息を吐き頭を左右に振るのであった。
そんなこんなで霊夢の
「そういえば珍しいって言ってたけど何の茸見つけたのよ」
「ん?あぁ、これだよ」
ふと思い出し気になった質問をした私にドヤ顔で魔理沙が懐から取り出し見せたモノとは、まぁなんともおどろおどろしい色形をした気色悪いナニカだった。本当に気色悪い。
それはもう食べた瞬間に激しい吐き気と共に腹を下し体中の穴という穴から液体を垂れ流した
「これが美味いんだよな」とか言いながらその気色悪いナニカを懐にしまう魔理沙を尻目に、私は博麗神社の境内に降りて行った。……って、それ食べる気!?頭おかしいわよこの娘。
ちょっとだけ友人の正気を疑った。
境内から歩いて神社の裏に周ると、霊夢の日光浴場兼お茶(極薄)飲み場と化した縁側に出る。
いつも柱より三尺三寸(約99.99cm)ほど離れた場所に在る座布団の上に霊夢は居るのだが、今日は居ないようだ。
代わりと言ってはなんだが、そこにはブーメランをそのまま頭に突き刺したような立派な角を生やし、身体のあちこちに分銅や鎖やらを大量に括り付けた長髪のょぅι“ょが居た。
彼女は伊吹萃香。幻想郷にはすでに存在しないと言われている種族の鬼である。伊吹瓢という酒が無限に出る瓢箪(実際は水を酒に変えているだけ)をいつも持ち歩き、それから出る酒を昼夜問わず常に飲み続けているため常時酔っぱらっている。
そして今日も例に洩れず酒を飲んでいる。それももう、浴びるように。
その姿には呆れるしかなかった。
「よう萃香ぁー、霊夢いるかー?」
「ん、魔理沙かぁ。霊夢は買い物にいったぞ?」
魔理沙が近づきながら萃香に聞くと、彼女は間延びした声でにへらと答えた。
どうやら食料品を求めて人里まで向かったらしい。………そんなお金あったのね。
数少ない内の友人はどうやらまだ暫くは飢えに苦しんで死ぬことはなさそうだ。と、心の中で安堵すると共に私は気付いてしまった。
これって私付いていく必要ある?
いやだって醤油渡すだけよ?それだけのために態々付いていくのってちょっとばかっぽくない!?いや、でもここは最後まで付き合ってあげるのが友達というか………って、今の付き合うってのはそういう意味じゃなくて、そもそも魔理沙とは女の子同士だしそういうのは変っていうかなんていうか……って私は誰に説明してんだ!!ここはそうじゃなくて………
「おーいアリスー。何してんだ、行くぞー?」
「……あ、うん」
あーうーと、訳の分からない思考で悩んでいた私に萃香と話をしていた魔理沙がいつの間にか箒に跨って此方を見ていた。
毎度のことながら思うのだが、別に一々箒に跨らなくてもいいのではないだろうか。
魔理沙曰く「この方が魔法使いっぽくていいだろ!」らしいのだが、正直メンドクサイと思う。邪魔だし、今時箒に乗って空を飛んでいるのは絵本の中の魔女ぐらいだ。
別に箒が無くても飛べるだろうに。
そう考えながら私は、魔理沙と共に霊夢を探しに行くため飛び立つのであった。