IS:ハサウェイの閃光   作:凧の糸

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 閃光のハサウェイの予告見て、書きました。スニーカー文庫でかなり前に読みましたが、ベルトーチカ・チルドレンの方は流石に見つからず、読んでないのでどうかご容赦を。


その名はハサウェイ

 

 

「……いつまでも友達だと思っている。忘れないぜ?」

 

 

「ああ、僕もだ。大佐……」

 

 

 足音は段々と遠ざかる。ハサウェイは気が狂いそうで、全身から絶叫を発しそうになるのを喉元で必死に堪えた。

 

 

 

「ケネスッ、急いでくれ!!」

 

 

 ケネス・スレッグ大佐は友人の意を汲んで、今直ぐに乗馬用の鞭を振り下ろす。

 

 

「射てーっ!」

 

 

 何発もの渇いた音が同時に響く。ハサウェイ・ノアは銃弾を受けて即死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙世紀105年、マフティー・ナビーユ・エリン、本名ハサウェイ・ノアが銃殺刑に処される。

 

 

 

 

 ケネス大佐はこの時、アデレード基地にやって来たハサウェイの父親であるブライト・ノアに配慮してマフティーが彼の息子である事を必死に隠していた。

 

 しかし、とある理由からとある日の一面にはこう書かれた。

 

 

 

『マフティー・ナビーユ・エリンの正体はハサウェイ・ノアだった』

 

『南太平洋管区司令官のブライト・ノア大佐がその処刑を実行した』

 

 

 

 ハサウェイに些細な復讐心を抱いた連邦官僚のこの愚かしい行動が、結果的にマフティーの名を民衆に刻み込み、更に連邦軍への不信感を煽るという皮肉な顛末を辿る。

 

 

 

 

 

『マランビジー』

 

 ギギ・アンダルシアによって形容された、「枯れることの無い水道」の様に彼の名前は永遠に受け継がれていくだろう。

 

 

 

 

 

 たとえ、それが別世界であろうとも……

 

 

 

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

 

「コイツが、新型ですか?」

 アナハイム社のテストパイロット、ハサウェイ・ノアは秘密ドッグへと招かれていた。

 

 

 ミーティングをするという用事で呼び出されたハサウェイは、新型との対面をミーティングルームで知らされて、情報秘匿の契約書を書いた後に三時間の車による移動をした。

 

 

 黒塗りで防弾仕様の厚いドアは重厚感がある。天下のアナハイム・エレクトロニクスが用意した高級車なだけあって、乗り心地も良く、うっかり居眠りをしてしまうほどだった。そこで妙な夢を見たが、今はすっかり忘れてしまっている。

 

 

 

 何処とも知らないドッグに案内されて、こうしてトリコロールの巨人と対面しているのである。

 

「ああ、そして、君の乗機にもなる。本来ならば貴重なISに乗れる男として実験なんかをする予定だったらしいが、上の政治取引なんかでね。うん……言いづらいが、君は数ヶ月後にIS学園に通ってもらう事になった」

 

 ハサウェイ・ノアは非公式ではあるが、世界で最初の男性操縦者である。

 

 

 

「分かりましたが、大丈夫でしょうか?」

 些かの不安は覚える。なんせ、学校生活など終えて久しい。

 

 

「そこら辺は何とかなるだろう。詳細は追って伝える」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

# # # # #

 

 

 

 

 

「さて、お前も乗ってみたいだろう。歩行までなら許可されている」

 

「よし」

 

 新型に駆け寄ると、装着する前に案内の男の方を向いて言った。

 

 

 

「この機体の名前は?」

 

 

「そうだった。そいつはΞ(クスィー)。14番目の機体という意味だ」

 

 

「なるほどね……」

 そう言いながらクスィーに触れて、装着し終える。ハサウェイにはこの新しい相棒が何故かとても懐かしく思えた。

 

 

 

 

「どうだ、センサー類は稼働しているか?」

 

 

「こいつは結構良い。新型は伊達じゃ無いって事だな」

 ハイパー・センサーは良好。ハサウェイがデータの開示を要請すると簡易なデータが送られてくる。移動中の車内で読んだカタログスペックよりもずっと上質なものだ。

 

 

 

 

「嘘だろ、マッハ2を易々出せるのか」

 フルスキン型で、かつ通常のISよりも巨大なクスィーは各部分のビームバリアーを展開する事で人形状態のまま、高機動戦闘を可能にする。

CGモデルによるサンプル映像では身体の前面にビーム膜が展開されていた。

 

 

 

 

「ああ、そうだそうだ。ビーム兵器の実験機でもあるからな、それ」

 補足する様に彼はそう言った。現時点でもISの武装にビーム兵器は存在する。最も有名で、始まりのインフィニット・ストラトスと呼ばれる白騎士にはそれまで実戦レベルに実現されなかったビーム兵器である荷電粒子砲が搭載されていたのはIS関係者でなくとも広く知られている。

 

 

 だが、実際の所、研究は芳しく無い。IS自体に謎が多すぎる上にどこの国も第四世代のIS開発に躍起になっているのでそちらに割く余裕が無い。そもそもの話、エネルギー効率があまり良くない荷電粒子砲よりもミサイルや近接兵装を使った方がコスト・パフォーマンスが良いのだ。

 

 

 では、何故クスィーはビーム兵器試験機なのか。大きな理由としてアナハイムはとある粒子のデータによってビーム兵器に止まらないジャンルの拡大の可能性を掴んだ。それによる落とし子達の一体がこのクスィーなのである。

 

 

 

 

 

「なあ、まだ研究者は来ないのか?」

 二人とも新型にはしゃぎ過ぎて、すっかり忘れていた。そろそろインカムで連絡辺りが来ても大丈夫な筈なのだが、不気味な沈黙が保たれている。

 

 

 その時であった。

 

 

 

 

「!」

 突然、硬い地面がぐわんと大きく揺れた。吊り下がっているライトが左右に大きく揺れ、ISを着ていても不意に転びそうになるほどだ。

 

 

 

 

「じ、地震か?」

 ISを装着したハサウェイは無傷であるが、男の方は尻餅をついて額に皺を寄せながら腰をさすっている。

 

 

 

「パイロット、マズイぞ……」

 案内の男の額に汗が滲む。険しい皺がより深くなった。ハイパー・センサーによって自分の心拍数や発汗がゆるやかに上昇しているのが手に取るように分かる。男の身体も危機に対しての反応を起こしている。大きく深呼吸をし、湿り気のある手を軽く叩くと幾ばくかいつもの状態に戻った。

 

 

 

「これを見てくれ」

 嵌め込み型のディスプレイを起動して、録画映像を見せる。何機かISと歩兵が侵入し、銃を乱射している。人間の喚く声で騒がしい。研究者は徹底的に殺すか、耐え難い苦痛を与える事で生捕にして歩兵が器具を使い、運び出していく。一方のISは様々なエリアを蹂躙。そうしている内に監視カメラの存在に気づいて破壊されてしまう。

 

 

 

 

「もしかして、コイツらが亡国企業(ファントム・タスク)か……」

 男性IS操縦者である事から、上層部の意思によってこの組織のさわりを聞いていた。まさか、こんな穴倉まで見つけ出すとは余程鼻が良いのだろう。

 

 

 

 曰く、先の大戦中に産声を上げた「裏の世界」で暗躍する秘密結社。

 

 曰く、その目的、構成員、規模など殆どの詳細が闇の中である事。

 

 

 兎にも角にも、この状況は危機的だ。脱出孔は既にスタンバイが完了している。

 

 

 

 ドン!

 

 

 頑丈な壁が吹き飛ばされた。警護隊も一緒に穴から吹き飛ばされて、壁に歪みを作る。

 

 

 

「へえ、これが噂の新型か」

 不気味な蜘蛛のIS。フルスキンに多脚を模したユニットというもの珍しいタイプだ。フェイスガードも蜘蛛の複眼で構成されている。

 

 

 小刻みな細切れのステップは金属の皮膚を食い破ろうと襲いかかる。脚は砲門として八つの光条が空を切った。

 

 

 

「ほう、避けるか」

 

 

「くっ、早く逃げろ!!ここを自爆させるっ」

 機密の塊であるクスィーを奪われる訳には行かない。それにみすみすここを奪われては後が恐ろしくて堪らない。

 

 

 

 

「あっ!」

 男が手元の緊急用レバーを勢い良く引くと、勢いよく壁が降りて防壁となる。緊急用で、数倍の硬さと多くの体勢を持っているが、あの砲撃にいつまでも耐えられる筈が無い。

 

 

 

「くっ……逃げるか」

 彼の献身を無駄にしないためにも、バーニアを暖めていく。

 

 

 

 

 

「あら、逃げるのかしら」

 堂々と仁王立ちする金色のISがいる。ゴツゴツとした見た目、尻尾を生やした奇妙なIS。ハサウェイは敵機をデータなどで全く見たことは無かった。

 

 

 

「チッ、待ち伏せか……」

 

 

「さて、味見させてもらうよ」

 尾付きのISは出会い頭で凄まじい温度の火球を放つ。生身で喰らえば炭化するほどの温度がセンサーを介して認識できる。見ているだけでも汗をかきそうだった。

 

 

 

「舐めないでもらおうか」

 パッケージから備え付けのアサルトライフルを取り出し、弾幕で牽制をしているが、やはり通じない。

 

 

「豆鉄砲では私は倒せないよ?」

 炎の鞭も厄介だ。単純に強力な上、高速回転させる事によって防御へと転用していた。ただの火の粉でさえもヘタな銃弾より威力を持っている。

 

 

 

「仕方ないな……」

 アサルトライフルとビームライフルを高速で入れ替える。エネルギーパックから逆算して、五発しか発射出来ない。

 

 

「そこ、当たれっ!!」

 脳内に生じた、痺れるような一瞬の光と同時に引き金を引く。

 

 

 

「だから豆ッ……!?」

 ピンク色のビームが圧倒的な速度で金色の装甲を吹き飛ばす。パイロットの生命保持の為に絶対防御が発動した兆候が見られた。

 

 

 

 

「レーザー、いやビームか……厄介だな」

 厄介だという割には十分に余裕があるようにハサウェイは思えた。黄金の輝きは決して霞んでいない。が、ダメージでよろけている。ハサウェイはこの技量を前にこれ以上は耐えられそうに無いし、第一もうじき施設が爆破されるだろう時間だ、と思った。

 

 

 

「悪いが、アンタとデュエットする気は無い」  

 漸く脱出孔への道が開ける。脱出には今しか無いと直感的にハサウェイは悟り、ぶっつけ本番のフライトフォーム使用へと躊躇いなく踏み切った。

 

 

 

(ビーム・バリアのスタンバイ確認。ミノフスキー・フライトユニット展開を確認。これよりフライト・フォームによる音速飛行に入る)

 

 自動的に調整されていく。フライトユニットが曲がり、頭部に対して垂直に近い角度を取る。そして、ビーム・バリアがフライトフォームのクスィーを覆う。エンジンはより一層の唸りを上げて加速度的に、音速の世界に駆けていく。

 

 

 ほんの短い間に音を通り越して、クスィーはマッハ2以上の速度を完璧に制御し、ソニックブームで周囲を吹き飛ばしながら月の明かりと出会った。

 

 

 

 

 

 

 

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「クスィー、聞こえるか、クスィーのパイロット!」

 

 フライトフォームもクスィーをもエネルギーの為に解除していた時だった。唐突に通信が届く。男性の声だった。

 

 

「はい、聞こえます。テストパイロット、ハサウェイ・ノアです」

 答えると、随分ほっとしたようで、深い溜息を吐いている。

 

 

 

「おお、良かった良かった。其方に集合地点のデータを送付する。疲れているだろうが、至急頼む」

 

 

「了解しました。ハサウェイ・ノア、ポイント1へ急行します」

 距離はあるが、今のクスィーでも十二分にたどり着ける位置だった。

 

 

 

 

 

 

「……クスィー、俺に力を貸してくれ」

 トリコロールカラーの腕輪は月明かりを反射して、まるで答える様に妖しく光った。ハサウェイは少なくともそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

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「では、次は……ノア君!!」

 俺は時折彼の方を見ていた。女の園の中、同じ男だからという理由もあるが、大人びた雰囲気の彼に密かに関心を持っていた。それは周囲の女子も同じ様だったが、中々険しいのか近寄れない。布音さんが昔からの知り合いのように話しかけていたのを見て、度胸があるなあ、とも思った。

 

 素人目ではあるが、剣道に励んでいたこともあり、彼がなんとなく強いことは理解出来ていた。

 

 

 

 

 彼は山田先生に一礼し、起立して前に立つ。名前からして外国人なのだろうが、やや日本人のような顔立ちをしている。少し親しみを抱く。ヒゲなんかも剃られており、清潔感がある。

 

 

 

「ハサウェイ・ノアです。アナハイム所属のパイロットです。皆さんより年上ですが、仲良くしたいと思っています。どうぞ、宜しくお願いします」

  

 

 やはり、悲鳴が上がった。しかし、千冬姉ほどでは無かったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハサウェイの今後(参考程度に)

  • 主人公たちと敵対
  • 味方のまま
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