今回はいよいよファンネルミサイル装着回です。使うのはラウラ戦くらいかな?
「ここも、久々だな」
外出許可が降り、ハサウェイはアナハイム・エレクトロニクス社の日本支部まで足を運んでいた。IS学園から列車を乗り継いで三時間ほどで到着するのは、だだっ広い敷地面積は国内屈指で、主に部品工場などの工業関連がメインの場所。ISの関連施設もいくつか併設はされていた。
「久しぶりだな、ハサウェイ。いつぶりだ?」
「四、五年振りです。フラナガンさん」
フラナガン博士。父親はその筋では名の通った人物らしい。ハサウェイにとっては大学の一つ上の先輩で、アナハイムとの縁はこの人との間柄から始まった事だった。
「にしても災難だったな、未確認ISと出くわすなんてな」
クスィーを通じてデータは既に転送済みだった。
「本当ですよ。かなり危なかったですからね。それで……今日呼び出されたのは?」
「ああそれなんだが、直接見てくれ。多分その方が良いはずだ」
二人は応接室から研究室へと移動した。
「ミサイル、ですか」
「ああ。発射後はデッドウエイトになるから、パージか収納するかどちらかをしなくちゃいけないけどな」
「成る程……」
クスィーに予定されていた武装だ。大量のマイクロミサイルを発射出来るのは大助かりだが、どのみちこの過剰な戦力を学園で使うことが無いのを祈るばかりだ。
「それに、例の新兵器が開発出来たぜ」
「本当ですか!」
「ああ、『ファンネルミサイル』。搭載されたサイコミュで発射後の細かい動きもコントロールできるぞ」
「サイコミュはかなり良くなってますね。マシンの運動性能を上げてくれましたし」
ハサウェイはパイロットスーツが何度か送られてくる度にレスポンスの上昇を肌で感じていた。人騎一体とまでは行かないにしても、素晴らしいのは本当の事だった。
「だが、危険性もまだある。慎重に使えよ」
「勿論です」
# # # # #
「どうだ、具合は」
通信は良好。博士の言葉はよく聞こえた。
「かなり良いです。エンジンも快調ですし、ビームの出力も安定しています」
「よし、試験運転といこう!」
クスィーは青空へと羽ばたいた。
「稼働率20%から始めてくれ」
「了解」
まだまだ完成とは言い難いミノフスキー・フライトを丁寧に動かしていく。実の所、クスィーはISでは無かった。篠ノ之束博士の論理に、かつて学会を追放されたトレノフ・Y・ミノフスキー博士の理論を組み合わせた擬似IS開発計画、V計画の最新版がクスィー・ガンダムであった。
「稼働率20%を突破、そのまましばらく上に数メートル程度上昇してくれ」
「はい」
そのまま五メートルで静止状態に入る。
「なら、稼働立50%までゆっくり上げて、上げ終わったらそこらを飛び回ってみてくれ」
「了解」
目前の画面には、ミノフスキー・フライトユニットの稼働率が上昇し続けている。これもシノノノ・ミノフスキー型ハイブリッドジェネレーター*1により、ミノフスキー粒子とエネルギーの安定供給は十分といえた。
「凄いな、俺の予想以上だ」
「結構慣れましたよ」
実際のところ、単体で浮遊して飛行することもできるISに、ただ浮かせるだけのミノフスキー・クラフトは下らないと一笑されるかも知れない代物だが、本来の目的自体は別の所にあるので特に問題はなかった。
「うん、推進剤の問題は以前よりも大分良くなってる。あの敵との戦闘データは素晴らしいね。よくぞ、やってくれたよ我が社のエース」
「褒めたって何も出ませんよ」
「なら、続きだ。そのまま70%まで稼働率を上げてくれ。そこが限界だろうから」
「いいんですか、前回よりも上げて?」
「何とかなる。データが欲しいから三分ほど飛行して、適当なデコイを撃ち落としてみてくれ」
「まあ……はい」
「それでは、射出するぞー」
一斉に5体のデコイISが発射され、不規則に動き回る。
「武器は?」
現在、クスィーには一切装備は搭載されていない。全兵装の点検が必要だったので、未だ整備の途中である。それには勿論、ビームサーベルなども含まれていた。
「あ、そうだったな。一般的なアサルトライフルを出すからそれで何とかしてくれ。弾はゴム弾だからな」
地上から一つのパッケージが射出されて、クスィーがそれをキャッチすると、中からアサルトライフルが現れた。
「適当に打つか」
軽く飛び、当たればラッキーくらいの調子でゴムの弾丸を撒き散らす。
「ふむ、予想外だな。ここまで叩き出せるとは……」
稼働率70%のクスィーをここまで上手く扱えるとは正直予想だにもしなかった。サイコミュ関連をかなり有用に動かせるハサウェイ・ノアだからこそであった。
「よし、もう……終わってたか」
「はい、ちょうど良いところでした」
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「今日は転校生が二人来てます!!」
山田先生はニコニコ顔でそう言った。他のクラスメイトも今来るのかと驚いているが、どの瞳も希望の色に満ちている。
「シャルル・デュノアって言います。僕と、同じ境遇の人たちがいると……」
金髪で、女顔の男らしい。何でも一夏が発見された後にフランスで保護されたらしく、政治的、外交的なゴタゴタで入学が遅れたそうだ。
『キャアアアアア!!!!』
ハサウェイと一夏は直感的に耳に栓をしたが、それは正しかった。シャルルはあまりの光景に目を白黒させ、言葉に詰まっている。誰だって突然の爆音には驚くものだ。そして、窓がブルブルと振動しているのが恐ろしかった。
「ま、まあ、よろしくお願いします……」
変わった人たちだな、とシャルルは思いながら自分の席に着いた。
「それでは、ボーデヴィッヒさん。お願いします」
「……」
『……』
銀色の髪をして、眼帯が特徴的な少女。非常に簡潔な自己紹介にクラス中が困惑していた。彼女自身は腕組みをして微動だにしない。自信満々そうな姿にこのクラスの女子達でさえボキャブラリーを失っている。
「あ、あの……」
山田先生が話しかけても尚、無言のまま。山田先生からじんわりと涙が浮かんできていた。
「……ラウラ、自己紹介をしろ」
耐えかねた織斑先生がそう指示する。すると、
「はっ、了解しました教官」
軍人のように敬礼をして、返事をした。ハサウェイは指先の伸ばし方、足の角度、姿勢などから、どう見ても軍人だな。と確信した。意識の前に体に染み付かせている動作は美しいものがある。
「ここでは織斑先生と呼べ……」
織斑先生は呆れたようにそう言うが、彼女は気にも留めていない。
「はっ」
クラスの全員を見て、口を開いた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
彼女は本当にそれだけしか言わなかった。クラスの皆も「流石に何かしら言うだろうなぁ」とは思っていたが、その予想は裏切られた。
「っ、お前はーー」
一夏の方を、敵意と憎しみに満ちた目で睨みつけると彼女は目前まで進軍した。織斑先生はそれを複雑気な眼差しでじっと見つめていた。
「あっ……」
山田先生がすっかり困り顔になっているが、意味不明なこの少女にクラス中も何をしでかすのかと心拍数が加速していく。
「へ?」
一夏は知り合いでは無いらしく、怒ったような転校生の女子に対して不思議そうにしている。
「っ!」
パシン!と頬を勢いよくビンタする音が静かな教室によく響いた。ハサウェイは親父にぶたれた事があるから知っているが、スナップの効いた、物凄く痛いビンタだと解る。
ビンタをされた一夏は痛いに違いないが、何事も突然すぎて、ただ彼女の顔を呆然と見つめ、反射的に赤くて痛む頬に手を添えることしか出来なかった。
「私は認めない……お前があの人の弟だなどと……!」
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「にしても、災難だったね」
「ホントだよ……痛かったし」
ハサウェイ、シャルル、一夏の男子三人組は交友を深めようとテーブルに三人だけで座り、昼食をとっていた。
「どうしてぶたれたんだ?」
ハサウェイはそれが気になって仕方なかった。
「あー、俺さ、昔誘拐された事があって……」
「「誘拐!?」」
「あ、ああ。第二回モンド・グロッソあるだろ?」
「うん」
ISの腕前を競う競技会だ。一回目では織斑先生が優勝している。彼女がブリュンヒルデと呼ばれるのはそこからだ。確か、第二回目の優勝はかなり変わった形と聞いた事がある。
「千冬姉の優勝を邪魔したい奴がいてさ、そいつらに誘拐されて解放の条件が『決勝に出ない』とからしくってさ。千冬姉は助けに来てくれたんだけど……そのせいで優勝を逃してて……」
一夏の表情は曇る。
「でも、何でドイツが関係するんだ?」
「俺の居場所をドイツ軍が教えてくれたから、その恩を返す為にドイツに教官として赴任してた時があるんだ。あのラウラって奴もそこで教えられたんだと思う」
「そうか……」
織斑先生のカリスマ性は今までしっかりと体感してきている。ラウラ・ボーデヴィッヒもそれに強く影響された一人で、だからこそ泥を塗った一夏が許せないのだろう。
「あ、ハサウェイ。ラーメン伸びてるぞ」
「やべ」
この後からは和気藹々と時が流れた。ただ、伸びきったラーメンは悲しい味がした。
劇場版のクスィーは白多めで、結構好きなデザインでした。トリコロールも良いけどね。
ハサウェイの今後(参考程度に)
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主人公たちと敵対
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味方のまま