オフラインミーティングから帰宅したヨウタはデスクチェアに座り込んだ。ツールボックスから出てきたセレンがアブルホールスカイウォーカーに駆け寄る。
「気に入ったのか、それ」
「うん。ナツキの作ってくれたこの子で早く飛びたい」
セレンはナツキからアブルホール
「燻ってるだけ、か……」
ヨウタは別れ際に言われた言葉を思い出す。ヨウタはツールボックスからヅダを取り出すと、ハァと息を吐いた。
「セレン、少し作業をするから離れとけ」
「?何するの?」
首を傾げるセレンにヨウタは頭をかきながら答えた。
「何と言うか、燻ってるもん吐き出す為の準備さ」
ヨウタは机に立つヅダを見る。セレンはその時のヨウタの目に燃える炎の様な何かを感じた。
***
第8話
灰色の太陽
***
浮遊感と共にルナはログインし、シークレットガーデンのフォースネストに転送される。
「ふぅ……」
ルナは少し広めの執務室の様な自身の部屋に転送されると、扉を開いた。
「皆、良い子にして……って、また散らかしてるじゃない!」
扉を開けて早々に広がっている惨状にルナは大声をあげてしまう。
部屋は色々なもので散らかっており、足場は辛うじて存在しているくらいだ。
「んー、リーダーもう来たー?」
大きなコートを袖余り、裾が引き摺ってしまっている位に小柄な体格をした少女『レム』が寝転がって寝ている。
「レム、GBNで寝ようとしない!リアルで寝落ちしちゃうわよ!」
「うぃー、ごめんなさいぃー」
ルナがレムを持ち上げると、立ち上がらせる。レムは眠たそうでフラフラしているが、急に倒れる様子は無かった。
ルナは次に窓際で煙管を吹いている一見ロリに見える着物の少女に話しかけた。
「シェリーさん、室内で煙草はダメです!」
「えー、でもここは電脳世界じゃから吹いても問題ないじゃろ?」
「モラルです!モラルの問題です!」
「そうかぁ……仕方ないの」
和服ロリの『シェリー』はルナに指摘されて仕方ないと言った様子で煙管をしまう。
次にルナは机に向かう。そこにはボサボサの黒髪に眼鏡をかけた陰気な女性の元に向かう。彼女は作文用紙に何かを執筆しており、足元は潰した紙屑の山だった。
「ローズさん、創作活動も良いですけどゴミはゴミ箱に入れてください!」
「そんな……書いてる二次小説が夏フェスに間に合わなくなる……」
「待ってください。それってどんな内容です……?」
ルナに小説の内容を聞かれた『ローズ』はにへらぁと笑いながら答える。
「えへへ……キョウヤ×テイトです」
「また実在する人で腐向けを書いているじゃない!それで怒られたの忘れたの?ほら、早く片付けて!」
ルナに片付けるように言われたローズは「そんなぁ」と残念そうに執筆道具を片付け始める。
ルナは色々と混沌としているフォースネストに頭を抱えていた。
「もう……ノゾムも何とか言ってくれないかしら?」
ルナは視線を壁際に立つ一人の少年……ノゾムに目線を向けた。ノゾムはそれに気づいてルナの方を見る。
「俺からか?……他の奴が何したって勝手だろ」
ノゾムは少し言葉につまるが、すぐに顔を背けて呟く。ルナははぁとため息をつくが、すぐに明るい表情になってノゾムに近づく。
「最近荒れてるけど、もしかしてナツキの事?」
ナツキの名前が出た途端にノゾムの表情が険しくなる。
「アイツの名前を出すな!あんな勝手な奴、戻ってこなければ……」
「ノゾムが何でナツキに対して突き放す様な態度なのか分からないけど、せめてフォースの皆とは仲良くしてね」
釘を刺されたノゾムは険しい顔ではあるが、少し舌打ちした後黙った。すると、二人の元に一人の少女がやってくる。
「ルナ様、キョウヤ様がいらっしゃいました」
「えぇ!?もう!?皆、早く片付けて!あ、ありがとうね、エレーナ!」
アイスブルーの髪をポニーテールにしたメイド服の少女『エレーナ』にルナは感謝を述べながら片付けを行う。
その後ろ姿を見ていたノゾムにティーカップを差し出された。差し出したのは、エレーナである。
「……これは?」
「紅茶です。客人が来る前にリラックスしてみてはどうでしょう」
エレーナの差し出されたティーカップをノゾムは受けとると、「ありがとな」と感謝の言葉をポツリと呟いて一口飲んだ。
***
オフラインミーティングから数日後、ナツキはセレンのアブルホールSWの練習に付き合っていた。
と言っても、流石ガンプラの声を聞けるELダイバーと言った所か。すぐにセレンはアブルホールSWを乗りこなしていた。
「そう言えば、最近アッシュさんと会えてないけど、どうかしたの?」
ナツキはふと疑問に感じた事を聞く。ここ最近、セレンとはアッシュの隠れ家ではなく、エントランスで合流しているのでアッシュを見ていなかった。
「ん、ガンプラ作ってる」
「ガンプラ?もしかして、またバトルに復帰するのかな?」
ナツキにとっては嬉しいニュースだった。自分の後押しが功を奏したと思うと喜びと安心を感じる。
「それじゃあ、製作途中なの?」
「ううん、完成はしたんだけど……」
セレンが途中で口を止める。言うべきか言わないべきか悩んでいる様子だ。ナツキは一瞬アッシュの身に何かあったのかと心配になる。
「何かあったのかい?」
「……徹夜のしすぎで寝てる」
ナツキは思わずずっこけそうになった。そりゃ大の大人がプラモ作りで徹夜しまくって現在爆睡中なんて言えるわけがない。
「そ、そっかぁ……それじゃあ、今日は二人でディメンション巡りでもしてみる?」
「ん、お散歩、楽しみ……!」
ナツキは様々な状況でも飛ぶ練習の為に各ディメンションでの空中散歩を提案する。セレンは空を飛べるなら大歓迎と言わんばかりに跳び跳ねていた。
「待っててね」
ナツキは受け付け嬢のNPDに話しかけると、とあるミッションを受注する。
それは『GBNスタンプラリー』と言い、様々なディメンションを回ってスタンプを集めると言ったミッションだった。
ナツキはセレンと一緒に飛ぶ練習をするに見越して探索系ミッションを探していた。
「これで良し……セレン、行こうか」
「ん……!」
二人はハンガーに転移すると、ガンプラに乗ってカタパルトに移動する。
「ナツキ!スターダストガンダム、出ます!」
「セレン。アブルホールスカイウォーカー、行ってきます」
2機は出撃すると、様々なディメンションへ巡りに行った。
***
シークレットガーデンのフォースネストにて、ルナがテーブルを跨いで相対しているのは一人の男性だった。
GBN屈指のトップフォースAVALONの制服に身を包んだ金髪の好青年と言った風貌だが、実際はGBNの頂点に立つ文字通り最強のダイバー……『クジョウ・キョウヤ』である。
「わざわざ来てくれてありがとうございます、キョウヤさん」
「気にしないでくれ。むしろ感謝すべきなのは私の方なのだから」
GBNの頂点……所謂チャンピオンであるキョウヤを前にしても動じない様子を見せるルナ。実を言うとルナはGBNでこう言った年上や有名人との対面は何度も経験済みなのである。
「それで、今日はどの様な件でいらっしゃったんでしょうか?」
「あぁ、ここ最近、厄介なフォースが存在していてね。フォースネストを解放しておきながら、入ってきたダイバーを侵入者扱いして襲撃するらしい」
それを聞いたルナは表情を険しくさせる。GBNには様々なダイバーが参加する。その中には悪意ある行為……俗に言う荒しをするダイバーもいるのも当然だ。
キョウヤ等のかつて有志連合と呼ばれた組織の参加者やG-Tuberのキャプテン・ジオンが荒しダイバーを懲らしめている。ルナ達シークレットガーデンもその一部だった。
「そんな方が……そのフォースネストは何処に?」
「フォースネストがあるディメンションは……シュバルツバルトだ」
***
一日中夜が続き、深い森が広がるディメンション・シュバルツバルト。
ナツキとセレンはスタンプラリーの最後のスタンプへと向かっていた。
「次で揃うね」
「ん、揃う……!」
山岳や砂漠、雪原等の局地でも飛び回ってスタンプは残り一つになった。ナツキはセレンが無事だった事に安心していた、その矢先だった。
「っ、セレン、回避!」
「え?っきゃあ!?」
警告音が検知したナツキがセレンに叫ぶ。二人を狙って弾丸やビームが飛んできた。
「何だ、今の一体……!?」
『オラァ!食らいなァ!』
困惑するナツキのスターダストにハイザックが現れてヒートホークを振るう。スターダストはそれをシールドでそれを防御するが、シールドが切断されてしまう。
『勝手にフォースネストに侵入しやがって!』
『BC出すかポイントになれやァ!』
複数のハイザックやジム・クゥエル、マラサイがスターダストとアブルホールSWが群がっていく。
「フォースネスト!?普通はアライアンスを結んでないと入れないのに……!」
「ナツキ、大丈夫……!?」
「大丈夫ッ!何とか乗りきろう!」
弾幕の中、アブルホールを庇いながら応戦するスターダスト。ジム・クゥエルが撃ったビームがスターダストの左腕に直撃してしまうが、反撃のビームがジム・クゥエルの東部を撃ち抜く。
しかし、アブルホールSWの背後からマラサイがフェダーインライフルを振るう。
「セレぇぇぇぇン!!」
スターダストはアブルホールSWを庇うようにマラサイの前に立つと、ビームジュッテを展開してそれを受け止める。
「離れろォッ!」
スターダストはマラサイを蹴飛ばすと、バックパックのビームサーベルを引き抜いて両断した。
「はぁ……はぁ……早く、抜け出さないーー」
『逃がすと思ってんのかァ?』
その時、スターダストの上に大きな影が現れる。スターダストは即座に振り替えるが、大きなアームがスターダストとアブルホールSWを地面に叩き落とした。
「ば、バウンド・ドック……!」
それはニュータイプ用可変MA『バウンド・ドック』だった。
『俺達のフォースネストに侵入しちまった事、後悔させてやるぜ……!』
ジム・クゥエルやハイザック、マラサイも集まってきて、ナツキとセレンは完全に追い詰められた状態になる。
ナツキは後ろにいるセレンの為にも一歩も下がるわけにはいかないと覚悟を決めるのだった。
***
「あー、やべ、寝すぎた」
頭をかきながらアッシュはエントランスにログインしてくる。やっとガンプラを作った後に徹夜の疲労でぶっ倒れて長い時間寝てしまった。
「セレンとナツキは何処行ったんだ……?」
メールを開くと、ナツキが『セレンと一緒にミッションに行ってきます』と書かれたものが送られており、ナツキがいるならセレンも無事かと考えて隠れ家に行こうとする。
「あれ、アッシュさんっすか?ナツキさんやセレンさんは別なんすかね?」
「アンタは……スカロプか。二人はミッションに行ったらしいぜ」
すると、スカロプがアッシュを見つけて話しかける。
「あれ、スカロプじゃん……と、誰?」
更にヴィオレがスカロプを見つけて会話にやって来る。しかし、ヴィオレはアッシュを知らないので疑問符を浮かべている。
「ヴぃ、ヴィオレさん!?えっと、この人はナツキさんの師匠で、セレンさんの保護者をしているアッシュさんっす!」
「へ~。あ、どもー。ナツキの幼馴染のヴィオレって言います」
「ナツキの幼馴染……あぁ、話は聞いてるぜ。ペリシアの時セレンがお世話になったな」
アッシュはセレンとナツキから既にヴィオレの話は聞いており、ペリシアでセレンが世話になった事で感謝を述べる。それに対してヴィオレは「どういたしまして~」と返事をした。
「あ、そう言えば、最近新手の荒しが現れたの知ってる?」
「新手の荒しっすか?」
ヴィオレの話題にスカロプが反応する。アッシュも隠れ家に戻っても何もすることが無いので会話を聞くだけ聞いておこうと考えてその場に留まった。
「そうそう。フォースネストだって分かりずらいようにした状態で解放しておいて、入ってきたダイバーを侵入者扱いしてリンチしてから、BCを巻き上げるか、撃墜するらしいよ」
「ズル賢い奴等っすね。他にやることないんすかね?」
ヴィオレの噂話をスカロプは呆れたように呟く。アッシュは「まだそんな事してる連中がいるんだなー」と内心思いつつ、話を聞き流していると、メールが送られてきた。
「ナツキか?」
アッシュはメールを開くと、それはセレンからだった。ミッションが終わったのか、それとも記念写真かと考えながらメールを開くと、そこにはたった一文のみだった。
『助けて』
その一文を見たアッシュは目を見開いた直後、険しい表情になる。
「?アッシュさんどうかしたっすか?」
「……なぁ、アンタ、その荒しって何処にいるとか分かるか?」
「え?あぁ……ファンからのリプで知ったんだけど、ディメンション・シュバルツバルトらしいですよ」
それを聞いたアッシュはすぐに何処かへと歩き出す。スカロプとヴィオレは急な出来事で困惑していた。
「ちょ、アッシュさん、何処に行くんすか!?」
「あ?あー……娘とバカ弟子助けに一暴れしに行くのさ」
スカロプの問いにアッシュはそう答えると、ハンガーへと移動した。
「どうしたんっすかねぇ……ヴィオレさん?」
「ん?アッシュって名前何処かで……あぁ!」
スカロプが何かを考えている様子をしたヴィオレは何かを思い出した素振りを見せる。
「アッシュって、最後のGPD世界大会出場経験のある、あの『灰色の太陽』じゃん!GBNで最初の大会の後すぐに失踪したって言われてたけど、いたんだ……!」
「え……もしかして、アッシュさん無茶苦茶凄い人っすか?」
ヴィオレからアッシュの素性を聞いたスカロプは「ちょっと有名じゃ済まない様な人では?」とオフラインミーティングでの話を思い出しながら心の中で呟いていた。
***
一方、ディメンション・シュバルツバルトでは大破したスターダストとアブルホールSWが森の中で隠れていた。
「ナツキ、大丈夫?」
「大丈夫。コアファイターまではダメージはいってないけど……」
コアファイターが搭載された胴体部分のダメージは最小まで押さえ込めたが、両腕や下半身のダメージは酷く、立つのもままならない状態である。武器も全て破壊されており、戦える状態では無かった。
「……セレン、コンテナは壊されてない?」
「ん、全部無事」
アブルホールSWが運んでいた三つのコンテナは全て無傷……と言うより、アブルホールSWは一切の傷を負っていなかった。ナツキの必死の抵抗が役に立ったのだろう。
「良かった……今から換装しよう。その後、セレンはここから逃げて」
「逃げる……ナツキは?」
「僕は……セレンが逃げる時間を稼ぐよ」
ナツキが言っている事はセレンが逃げるまでの間、囮をすると言うことだった。それをすぐに察したセレンは首を振る。
「や、ダメ。ナツキ、ダメ!」
「それでも、二人揃って共倒れよりマシだ。それに、もうあんな悲しい思いはしたくない」
ナツキが思い出すのは二年半前の悲劇だった。あの時の様に何も出来ずに終わってしまうと言う悲しい出来事は二度としたくなかった。
『ここら辺ですぜ兄貴!』
『絶対に遠くには逃げてないはずだ。追い詰めて搾り取ってやれ』
『探せ探せ~!』
近くで敵の声が聞こえる。これ以上ここに留まることは出来ないと悟ったセレンに強く言ってしまう。
「セレン、時間がないんだ。早く!」
「やぁ、やぁぁぁ……!」
ナツキの説得にセレンは首を振って嫌だと拒否する。気づけば、レーダーの中に一機近づいるのが見えた。
『こことか怪しそうだなぁ~……!』
近づく敵にナツキは焦燥感に駆られる。最悪、ボロボロの状態でも抵抗するしかないと考えていた、その時だった。
「え?」
『あ?』
『何だ……?』
常闇が広がるはずのディメンション・シュヴァルツバルトが昼のように明るくなっていた。見上げてみると、そこには無色の照明弾が打ち上げられていた。
『照明弾?一体何ーーー』
ナツキ達に迫っていたハイザックが見上げている間に胴体部分が薙ぎ飛ばされた。宙に飛ばされたハイザックの上半身はクルクルと回りながら地面に落ちていった。
『な、何だぁ!?』
『さっきのガンダムか!』
『あそこら辺から聞こえたぞ!』
大きな音を聞いた仲間達が集まってくる。ナツキも片目しかないスターダストのカメラアイでそれを見た。
「あれは……ヅダ?」
それは灰色に塗装されたヅダだった。
『テメェ、何モンだ?』
ジム・クゥエルやマラサイ、ハイザックが銃口をヅダの改造機に向ける中、バウンド・ドックが問いかける。
「あー……ここにゼフィランサスとアブルホールの改造機を見なかったか?」
『偶然だな。俺達もソイツらを探しているんだよ。お前みたいに勝手に俺達のフォースネストに侵入したからな』
それを聞いたヅダに乗ったダイバーはハァと息を吐く。
『て言うか、お前誰だよ!』
ハイザックの一機がザクマシンガンを構えながら聞いてくる。ヅダに乗るダイバーは手に持つヒートホークを納めた。
「俺?俺は……」
その時、ヅダは両足に懸架された二丁のザクマシンガンが引き抜いて前方に発砲する。バウンド・ドックはそれを避けるが、それ以外の機体が撃ち抜かれてしまう。
「俺はァ、灰色の太陽・アッシュだァァァッ!」
ヅダに乗るダイバー……アッシュは咆哮と共にヅダの改造機『サンズ・オブ・ヅダ』を前方に進める。他の機体がサンズ・オブ・ヅダを狙って発砲をするが、サンズ・オブ・ヅダはそれを避けることなく前進しながら左右にザクマシンガンを発砲する。
「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉ!!」
回転しながら次々と敵機を撃ち抜いていく。サンズ・オブ・ヅダが引き金を引き続けるが、カチカチと弾切れを報せる音が聞こえる。
背後からマラサイが迫るが、サンズ・オブ・ヅダは二丁のザクマシンガンを投げ捨てると、左右の背中にマウントされたザクバズーカと対艦ライフルを構える。
「砕けろォ!」
ザクバズーカから放たれたミサイルがマラサイを爆散させる。次々に迫る敵にミサイルと砲弾を立て続けに食らわせていく。
「どうしたァ!?甘っちょろい攻撃で攻撃しようとすんじゃねぇぞ!」
サンズ・オブ・ヅダは残り一発になったザクバズーカの銃口をジム・クゥエルにぶつけると、至近距離から炸裂させる。
『な、何だアイツ……!』
『灰色の太陽……聞いた事がある。最後のGPD世界大会の個人戦と団体戦をたった1人で挑戦して、両方ベスト8入りしたヅダ使いがいるって……!』
『こ、こんなの勘弁だぁッ!』
近くで見ていたハイザックがその気迫に押されて撤退しようとする。しかし、アッシュはそれを見逃しておらず、サンズ・オブ・ヅダは逃げていたハイザックの首を掴んだ。
「オイオイ、逃げてンじゃねぇよ。男なんだろ?玉ァついてんのかァ!?」
サンズ・オブ・ヅダは持ち上げたハイザックの股間を蹴りつけてから地面に叩きつける。そして、対艦ライフルをハイザックに向けて至近距離で発砲する。
「す、凄い。あれが、アッシュさんの実力……!」
「アッシュも、あの子も、嬉しそう」
アッシュとサンズ・オブ・ヅダの戦っている様子を見ていたナツキは口を引き締めてセレンを見る。
「セレン、換装しよう。僕達も戦うんだ」
「ナツキ……ん!」
ナツキはディスプレイを操作してトップフライヤーを外すと、コアファイターを発進させる。
アブルホールSWは二つのコンテナを開くと、トップフライヤーとボトムフライヤーを飛ばす。更に三つ目のコンテナからパッケージ装備を飛ばす。
「スターダスト、ドッキング!」
コアファイターがトップフライヤーと合体してから、ボトムフライヤーと合体する。更に頭部にゴーグルを、バックパックにレドームとミサイルポッドを、両肩にシールドが装着される。そして、手にビームスナイパーライフルを握った。
スターダストの派生武装・スナイパーパッケージである。
「セレン!足場お願い!」
「ん!」
セレンはコンテナを捨てると、スターダストを上に乗せる。スターダストはビームスナイパーライフルを構ると、
接近する機体を支援する機体を狙撃していく。
「アッシュさん、支援します!」
「ナツキとセレンか。やるじゃねぇか!」
一騎当千の立ち回りをするサンズ・オブ・ヅダを支援するスターダストの元に一つの影が飛んでくる。レドームで検知していたナツキはセレンに指示を送る。
「セレン、回避っ!」
「ん、避けるっ」
回避をするアブルホールSW。攻撃してきたのはMA形態のバウンド・ドックだった。
『お前らのせいで全部が無茶苦茶だ……!せめてお前らだけでも潰してやる!』
バウンド・ドックは拡散ビーム砲を放つ。
「シールドビット!」
スターダストの両肩にあるシールドが外れると、シールド裏の推進機で動いてビームを全て防ぐ。シールドが左右に動くと、ミサイルポッドからミサイルを放った。
『そんなもの……っ!?』
バウンド・ドックは応戦しようとするが、ミサイルはバウンド・ドックの前で煙を出しながら爆発する。
『煙幕ミサイルかっ!?』
スターダストはゴーグルによって煙の中が見えており、煙に浮かぶバウンド・ドックを狙ってビームを放つ。
「これでぇぇぇっ!」
『舐めるなぁぁぁぁぁ!』
しかし、バウンド・ドックはギリギリの所で回避した。片足を撃ち抜かれて落下していくが、バウンド・ドックは前進して迫ってくる。
『逃がさねぇぞぉぉぉ!』
「ぐっ、ビットっ!」
MS形態に変形したバウンド・ドックは右腕のクローアームでスターダストを握り潰そうとする。スターダストはそれをシールドビットで防ぐが、シールドビットを握り潰されて、爆発が起きる。
「アァ?まさか、ナツキかっ」
その爆発に気づいたサンズ・オブ・ヅダが空を見上げる。
そこには、空中戦を広げるアブルホールSWに乗ったスターダストとバウンド・ドックがいた。
「あそこまでは結構高度があるな……」
アッシュの脳裏に浮かぶのは、チャンピオンとの戦い。あの時の様にまた自壊してしまうのかと内心思うが、すぐにその考えを振り切った。
「やれるよな、ヅダ!俺と……お前ならぁぁぁぁぁっ!」
サンズ・オブ・ヅダは対艦ライフルを捨てると、スラスターを一気に吹かせると、真上へ急上昇していく。
『逃がさねぇっつってんだろ!』
「コ、イ、ツゥゥゥ……!」
バウンド・ドックが伸ばしたクローアームはスターダストが手に持っていたシールドビットを掴んでおり、スターダストは押されまいと耐えていた。
「ナツキ!そのままでいろよ!」
「アッシュさん!」
急上昇していたサンズ・オブ・ヅダが腰から引き抜いたヒートホークでバウンド・ドックを切り裂く。シールドを手放して地面に落下していくバウンド・ドックをビームスナイパーライフルで撃ち抜いた。
『う、嘘、だろぉぉぉ!?』
断末魔と共に爆発するバウンド・ドック。爆煙はすぐに電子の粒に変わって消えていった。
スターダスト、アブルホールSW、サンズ・オブ・ヅダの三機は地上に着地した。
「大丈夫か、セレン」
「ん、大丈夫。ナツキのおかげ」
「そうか。ありがとうな、ナツキ」
「そ、そんな!えへへ……」
ナツキが照れていると、周りから更に敵の機体が現れる。
『兄貴の仇だ!』
『全員やっちまえ!』
『うおぉぉぉぉぉ!!』
まだ来るかと警戒をする三人。
その時、黄金の刃が一気に敵を薙ぎ払った。
『な、何……ギャッ!?』
『おい大丈ぐはぁ!?』
残りの敵は白い影が両断し、黒い影が撃ち抜いていく。
「……あれって、ノゾム!?」
ナツキは黒い影の方はノゾムの駆るブラックローズだと気づく。
「何が、起きて……」
「ありゃあ……最強がおいでなすったって事だろ」
ヅダが見上げる先には最強の男……クジョウ・キョウヤの乗るガンダムトライエイジマグナムがいた。
「このフォースネストを所有しているフォースのダイバーの告げる。今すぐ投降してほしい。無駄な荒事は、君達だって望んでないはずだ」
キョウヤからの警告に敵はすぐに武装を解除する。
チャンプの存在感、そして影響力にナツキは気圧されていると、白いシナンジュ……シナンジュヴィエルジュがこちらに寄ってきた。
「そこのダイバー、大丈夫……」
「え、あ、はい!こちらこそ、助けてくれて……」
シナンジュヴィエルジュに乗るダイバー・ルナも、話しかけられたナツキも硬直する。二人は体や声を震わせながら通信相手の名前を呟いた。
「ナツキ……!?」
「ルナ……!?」
二人の間に起きる空気感にセレンは心配になって通信越しにアッシュを見る。アッシュは何かを察しながらも「大丈夫だ」とセレンに言った。
***
事態が終息した後、ナツキ達のいるフォースネストを使用していたダイバー達は次々と拘束されていった。
「ほら、早くお縄につきなって」
「これで全員ですね」
「そうか。ありがとう」
フォースAVALONの一員であるカルナとエミリアが全員の拘束を確認すると、キョウヤに指示を仰ぐ。キョウヤは頷くと、ルナの方を向いた。
「シークレットガーデンも協力感謝する。彼らの護送は任せてくれ」
「はい。また何かあったら呼んでください。協力します」
ルナはキョウヤの感謝の言葉に返答するが、どこか浮かない様子だった。キョウヤはその様子をすぐに察しており、優しい笑みのまま言葉を続ける。
「君はフォースのリーダーだ。色々なしがらみはあると思う。だが、自分を圧し殺すような真似は良くない。君はまだ子供なんだ。今の内に後悔のない選択をしてくれ」
「……すみません。お気遣い、感謝します」
ルナは頭を下げて踵を返すと、その場から離れようとする。
「ルナ!」
その時、ナツキが現れてルナを呼ぶ。ルナが声のした方向を見ると、ナツキが嬉しそうに笑顔でいた。
「……久しぶりね、ナツキ」
「やっぱりルナなんだね!ヴィオレから話は聞いてたんだけど、まさかこんな所で会えるとは思わなくて……また会えて良かった」
ナツキの安堵の笑みを見てルナは何か我慢していた何かが込み上げてきそうになる。
その時、ルナの元に一人の少年が歩み寄ってくる。それに気づいたナツキは険しい表情になった。
「……ノゾム」
「まだ、GBNに残ってたんだな」
それはGBNに復帰した時に一番最初に再開した相手……ノゾムだった。ノゾムはナツキに詰め寄ると、その胸ぐらを掴んだ。
「言ったはずだぞ。二度と戻ってくんなって」
ノゾムが怒気を孕んだ口調でナツキに言う。ナツキは少し気圧されるが、表情をすぐに引き締める。
「僕だって言ったよ。もう二度と逃げたくないんだって」
「お前は取り返しのつかない事をしたって理解してんのか!」
「分かってるよ!」
ナツキはノゾムの胸ぐらを掴み返して自分より背丈が上のノゾムを引っ張ると、顔を引き寄せた。
「分かってる上で向き合おうって言ってるんだ。だから僕は僕なりに前に進んでみる。そして、必ず皆に追い付くよ」
ナツキの真っ直ぐな目にノゾムは舌打ちしながらナツキを解放する。ナツキもそれに合わせてノゾムの胸ぐらから手を離した。
「だったら……だったら、早く追い付いてきな。真っ向からぶっ潰してやる」
「うん、待っててね。すぐに追い付くから」
ノゾムはルナの横を通り過ぎながら「行くぞ」と囁く。ルナはナツキを見て名残惜しそうにしながらノゾムを追いかけていく。
「覚悟が改めて決まったって感じだな」
「アッシュさん……はい。あ、助けに来てくれてありがとうございます!」
アッシュがナツキの隣に歩み寄る。アッシュは普段通りに飄々とした様子だったが、何か憑き物が取れたような様子だった。
「俺が助けに行けたのは、お前が後押ししてくれたからだ。一応、感謝しとくぜ」
「アッシュさん……!」
「でも、あの程度でへばってちゃまだまだだな。これから師匠としてしごき回してやるよ」
「ぐぁぁぁ……頑張ります」
ゲンナリするナツキを見てアッシュはケラケラ笑いながらその場を立ち去っていく。ナツキは頭をかきながらアッシュやセレンと共に帰路に向かった。
今回色々やりたいことを詰め込みました。
アッシュの本気とか、ルナのママムーブ、ナツキとノゾムの対話……ここから第一章は新たなステージに進みます。
今回は色々設定追加するので大忙しになりそう(白目)。良ければ設定参考にしてウチの子出してくれると嬉しいです。
では、次回予告へ……
***
次回予告
アッシュとの修行に励むナツキ。
彼らの元にとある依頼が来る。
その依頼に苦戦するナツキだったが、ヴィオレが動く。
次回、紫色の天使
お楽しみに……