てな訳で第2話です。
果たして久々のGBNでナツキは何を見るのか……
浮遊感の後に来る重量感は宛らエレベーターの様な心地だった。ゲートが開かれてエントランスへとやって来たナツキは久々のGBNに胸踊らせる。
ナツキのダイバースキンはブラウンカラーのツナギに黒いベストを上に着ていた。
「さて、皆を探してみようかな……」
ナツキは早速幼馴染達を探すためにエントランスに向かおうとする。すると、ナツキの背後から肩に手を置いた。
「わぁっ!?」
「あーゴメンゴメン。君、初心者だよね?」
「え、えっと、新しくアカウントを作って復帰したんです」
ヘラヘラと笑いながら謝罪をする男性ダイバー。ナツキはその雰囲気に気圧されかけてしまう。
「丁度良かった!俺と一緒にミッションを受けて欲しいんだ」
「一緒に、ですか?」
「大丈夫だ。初心者向けミッションだからね」
ナツキは少し思案する。怪しい雰囲気の男であるが、困っている相手を簡単に見捨てようとは思えない。
「……分かりました!手伝います!」
「本当か!いやぁ、助かった!今から受注してくる!」
男は嬉しそうに笑いながらミッションを受注をしに受付嬢のNPDの元に向かう。
しかし、その顔に浮かべていた笑みは怪しげな笑みに変わる。
「完全な初心者じゃねぇが……釣れたのなら殺るしかないよなぁ?」
男が呟きながらそのミッションを選択する。そのミッションの概要欄のフィールドにはこう書かれていた。
ハードコアディメンション・ヴァルガーーと。
***
第2話
再開の黒薔薇
***
何も知らないナツキはロボットハンガーに来ていた。そこには12cmのプラモデルから18m近くまで巨大化したスターダストが立てられていた。
「わぁ、生のMSサイズのスターダスト……!」
「興奮するのも良いけど、早くミッションに行こう……チンタラすんなよ、まったく」
「あ、はい!今行きます!」
相手を待たせる訳にはいかない。ナツキは慌ててスターダストのコックピット内に転送する。
男も白いザクⅡ……連邦軍カラーに乗ってハンガーに向かう。
「久々の出撃……緊張するなぁ」
エレベーターによって搬送されていくザクとスターダスト。ザクは先にカタパルトに固定された。
「それじゃあ、お先に」
「はい!いってらっしゃい、です!」
ザクがカタパルトレーンから発進していく。
スターダストもその後にエレベーターでカタパルトレーンに固定される。
「ふぅ……ナツキ、スターダスト、行きます!」
カタパルトレーンを高速で射出され、出口を目指して前進していく。出口と同時にスターダストは跳躍、スラスターでそのまま空へと飛び立っていく。
「わぁぁぁ……この感覚、久しぶりだ!」
ナツキはスターダストでゲートを潜る。
ゲートの先に広がった光景はーーー
「え゛っ」
ごんぶとのビームだった。
「わぁぁぁぁぁっ!?」
慌てて回避をすると、辺りを見回す。
そこはまさに地獄。ビーム、弾丸、爆発……どこを見ても流れ弾まみれの戦場だった。
「な、何、これ……!?」
ナツキは知らないが、このハードコアディメンション・ヴァルガは全フィールドフリーバトル可能なアナーキーディメンションなのである。
困惑している余裕なぞなく、空中にいればすぐに打ち落とされると判断したナツキはスターダストを地上まで降下させる。
「あ、あれ、さっきの人は……」
『ここだよぉ!』
背後から白いザクⅡがヒートホークを振りかぶりながら襲いかかってくる。
スターダストはそれを避けるとライフルをザクⅡへ向けたが、引き金は引くことはなかった。
「何でこんなことを!?ミッションは!?」
『あぁ!?分かんないなら教えてやるよ!お前は、騙されたんだってなぁ!』
ナツキは空かさずライフルからビームを放つ。しかし、ザクⅡはそれを簡単に避けてしまい、お返しと言わんばかりにザクマシンガンを発砲する。
「うわぁぁぁっ!?」
ビームライフルを構えていない片腕で防御する。ザクマシンガンの弾丸は全てチョバムアーマーが全て防いだ。
「かてぇな、コイツ……」
『俺達に任せな』
『初心者一機、すぐに潰してやるよ!』
ザクⅡのダイバーの元に通信が入る。その直後、何処からともなく飛んできた砲弾がスターダストの肩に直撃した。
「っ、が!?」
スターダストはふらついてしまう。肩のチョバムアーマーは大きく凹んでおり、マトモに受ければ大ダメージは避けられないのが分かる。
「今のは……!」
『おらおらぁ!』
体勢を立て直すスターダストにヒートサーベルを構えたドムが迫る。
スターダストはバックパックのビームサーベルを引き抜いて受け止める。
「あの人の、味方……!?」
『おら、背中ががら空きだぞぉ!』
鍔迫り合いをするスターダストにザクⅡがヒートホークを振りかぶってくる。スターダストはドムとの鍔迫り合いを受け流してその場を離脱する。
「さっきのは砲撃……!」
スターダストのカメラを動かして辺りを見回すと、迷彩色のザメルがいた。
ザク、ドム、ザメル……現在ナツキは3VS1を強いられていた。
『そうした、もう抵抗もおしまいかぁ?』
「ぐっ……!」
ナツキはぐっと操縦レバーを握る。諦めるしかないのかと絶望しかけていた時、あの時の記憶を思い出す。
仲間を倒され、何も出来ずに地面を這いつくばって諦めてしまった自分ーーあのまま変われなくて良いのかと、自分に問いかける。
『さっさと堕ちて、ポイント寄越せぇ!』
ドムがバズーカを構えて発射させる。
その時、ナツキは吠えた。
「終われるか……こんな所で、終われるかぁ!」
その咆哮と共にスターダストのカメラアイが発光する。その直後、バズーカが着弾、爆発した。
ドムのダイバーが撃墜を確信したと思った、その時だった。
「うおぉぉぉぉぉっ!」
爆煙の中から
『コイツぅ!』
『しぶとすぎか、コイツ!』
ザクがザクマシンガンを、ドムがバズーカを撃ち続けるが、全て避けられてしまう。ドムのバズーカが弾切れになった所をスターダストが直進し始める。
『このぉ!』
『待て!突っ走んな!』
バズーカを捨てたドムはヒートサーベルを構えてスターダストと真っ向から向かう。
『これでぇぇぇ!』
ヒートサーベルが振るわれ、スターダストを一刀両断ーーはしなかった。
ドムが両断をしたのは、スターダストがパージしたチョバムアーマーだった。
『え?……あっ』
ドムが徐に己の胸元を見る。ドムを操縦するダイバーが見たのは、胴体を斬ろうとするビームサーベルだった。
『あ、あああああぁぁぁぁぁっ!!?』
「やぁぁぁぁぁ!!」
スターダストがドムの胴体を横に叩き斬る。切り裂かれたドムが爆発するが、スターダストはそれを傍目にすら見ることはなく、そのまま突き進む。
「チョバムアーマー、全装甲解除。これが僕の、スターダストガンダムだッ!」
白と青をメインにしたトリコロールカラーが特徴としたカラーリングをした、本来のスターダストガンダムなのである。
『コイツゥ!!』
ザクがヒートホークを構えて前進をする。ヒートホークはスターダストのコックピットを目掛けて振るう。
「タイミング……今っ!」
ナツキはコンソールを操作してザクがヒートホークを振るうタイミングを合わせてその機能を起動させた。
『なっ……!?』
ザクのダイバーが見たのは、ヒートホークで斬られたスターダストではなく、上下半身が分離したスターダストだった。
「そこぉぉぉぉぉ!」
分離した上半身を上下反転させると、ザクを背後からビームライフルで蜂の巣にする。撃ち抜かれたザクは倒れる前に爆発する。
『な、何だよコイツ!ホントに初心者かよぉぉぉぉぉ!!』
ザメルは全力で後ろに後退しつつ、スターダストにカノン砲を連射する。
スターダストは更に上半身を分裂……否、分離させる。
『コイツ、分離すんのかよぉ!』
コアファイター、トップフライヤー、ボトムフライヤーの三機に分離したスターダストはザメルのカノン砲を簡単に避けると、空へと飛び立つ。
「スターダスト、ドッキング!」
コアファイターが変形、レッグフライヤーとチェストフライヤーが挟み込む様に合体する。
「うおぉぉぉぉっ!!」
合体したスターダストはビームサーベルを引き抜きながら急降下していく。
ザメルは抵抗する前にビームサーベルによって串刺しにされた。
「はぁ、はぁ……はぁぁぁ~~~」
ザメルが動かなくなったのを確認すると、ナツキは大きな溜め息と共に一息つく。しかし、これで一段落……と思った矢先だった。
『まだ、終わってないぞぉ!』
「なっ!?」
ナツキが動揺すると同時にザメルがスターダストに突進する。ザメルはスターダストを巻き込んで前進すると、岩にぶつけた。
『俺達に恥をかかせやがって……そのまま、潰れろぉぉぉ!』
「う、ぐぅぅぅ……!」
ザメルは己のボディと岩でスターダストを挟み潰そうとする。スターダストも抵抗しようと動くが、圧力によって動けずにいた。
「そんな、もう……!」
ナツキは今度こそ撃墜かと諦めかけていた、その時だった。
ザメルの頭上から一閃のビームが飛んでくる。ビームはザメルを貫通させると、今度こそ停止した。
「た、助かった……?」
スターダストはザメルを押し出すと、間から抜け出す。しかし、抜け出した直後に押し潰されかけた影響かふらついてしまった。
「わっ、ととっ」
膝を着いて体勢を立て直すスターダスト。その時、頭上から何かが降りてきた。
ナツキはザメルを止めてくれたダイバーだと気づき見上げる。
「ガーベラ・テトラ……」
それは、ナツキとスターダストの原型であるガンダム試作1号機の兄弟機である試作4号機を改造したMS『ガーベラ・テトラ』だった。
「あ、あの、助けてくれてありが……えっ」
ナツキはすぐに通信を繋げて感謝を述べようとする。しかし、その感謝の言葉は途中で止まってしまった。
ナツキを助けたガーベラ・テトラのダイバーはナツキも良く知っていた。知らないわけがなかった。
「ノゾム……!?」
そのダイバーこそ、ナツキの幼馴染の1人『冬木ノゾム』こと『ノゾム』だった。
『……懐かしいな、ナツキ』
「まさか、こんなところで会えるなんて!皆元気にしてた?ルナは?ヴィオレは?」
まさかの再開に興奮を隠せないナツキ。ノゾムは通信越しにそんなナツキを冷めた目で見ると、ガーベラ・テトラの改造機がスターダストに銃口を向けた。
「の、ノゾム?」
『何で……何で今になって戻ってきたっ』
ノゾムはそう言うとビームマシンガンを発砲する。スターダストはそれを即座に回避するが、ナツキ自身は困惑していた。
「な、何で急にっ!?」
『もう遅いんだよ……お前が逃げなかったらこんなことにならなかったのにっ!』
ガーベラ・テトラの改造機……ブラックローズはビームマシンガンでスターダストを狙って撃つ。
スターダストは訳が分からず、回避に専念し続けた。
『なのに、何故戻ってきた!』
「もう、もう逃げたくないんだ!あの出来事から、もう!」
『二年間ずっと逃げ続けてきたお前に、向き合う資格があると思うなっ!』
ブラックローズが急浮上の後に急降下する。ブラックローズのキックがスターダストに突き刺さり、スターダストは背中から地面を滑っていく。
『お前が逃げたから、俺も、ルナも、ヴィオレもバラバラになった!もうあの時みたいには戻れないんだよっ……!』
「そんな……」
『それなのに、お前はそうやって呑気に戻ってきたっ!お前は……戻ってくるべきじゃなかったんだ!』
戻ってくるべきじゃなかった。それを聞いたナツキはもうあの頃の様に四人で笑い合える事は出来ないと知って失意のドン底まで叩き落とされる。
ブラックローズが腕部ビームノズルに内蔵されているビームサーベルを排出してビーム刃を出す。
「それでも……僕はもう逃げないって決めたんだ!」
『何度も言わせんな!手遅れっつってんだろ!』
ブラックローズがビームサーベルで突きを繰り出す。スターダストはビームライフルに付けられたサブユニットからビーム刃を伸ばしてビームジュッテにする。
『おおおぉぉぉぉぉっ!』
「やあああぁぁぁぁぁっ!」
ビームサーベルの突きをビームジュッテで受け流す。スターダストはバックパックのビームサーベルを引き抜いた。
しかし、ブラックローズは腕部ビームノズルからビーム刃から伸ばしてビームトンファーとして使う。
「あっ……!?」
ビームトンファーはビームサーベルを掴んでいた腕を熔断される。ブラックローズはスターダストに突進すると、スターダストは倒れてしまった。
「ぐっ……!」
倒れたスターダストを立ち上げようとした時、コックピットにビームサーベルと向けられる。反撃しても、即座にコックピットを貫かれるだろう。
『これでおしまいだ』
「そん、な……」
このまま機体を貫かれるーーそう思った矢先、ブラックローズはスターダストから離れてビームマシンガンを拾った。
『早くここから抜け出してログアウトしろ。二度とGBNに来るな』
ブラックローズはそう言うとその場から離れていく。ナツキはレバーから手を離して膝を着く。
それでもと叫んだナツキの願いは、ノゾムと現実に届くことはなかった。
主人公補正で初勝利だけで済むと誰が言った。
キャラ設定は組み上がり次第随時更新していく予定です。
お楽しみに……
では、次回予告へ
***
次回予告
再開したノゾムに拒絶されたナツキ。
失意の中の彼に手を伸ばしたのは一人の少女。
彼に導かれたナツキは一人の男と出会う。
第3話 再起の兆し
お楽しみに