では、スタートー!
世の中、思いもしない所にアイデアがある。なんてのは良く聞く話であるが、まさか本当にあるとは思わなかった。
そう痛感せざるを得ない事がナツキの目の前で広がっていた。
「BUILD DiVERS……」
エースから推されて時間のある時に見始めたジャスティス・カザミの動画。その動画内でナツキが注目したのは、カザミーーではなく、彼と同じフォースに所属しているヒロトと言うダイバーだった。
彼の乗っているガンプラはガンダムよりも一回り小さな大きさをしているコアガンダムだった。換装することでサイズが通常のガンプラ程度にまで大きくなり、更に様々な状況に対応できるらしい。
「そうか、それがあったか……!」
しかし、ナツキの興味はコアガンダムのコアドッキング・システムではなく、別の物にあった。
「そうと決まれば……!」
ナツキは直ぐ様ノートを取り出すと、設計を始めた。
***
第4話
砂上の帆立貝
***
「うぁ~~~」
翌日、アッシュの隠れ家にてナツキは机に突っ伏して変な声を出していた。
「ナツキ、どうしたの」
机に突っ伏すナツキの隣にセレンが座る。ナツキはそれに気づいて顔だけ横に向けた。
「実はね。新しいアイデアが浮かんだんだけど、全然形に出来なくて……」
顔の真ん前を人差し指で円を描くながら呟くナツキ。セレンはそれを表情変えずに見ていた。
「また何か思い付いたのか?アイデアって何だよ」
コーヒーを淹れていたアッシュがマグカップを片手に机に座った。マグカップの中にはコーヒーが入っており、良い香りが漂ってくる。
「支援機なんです」
「支援機?悪くないアイデアだけど、採用するのは何でだ?」
支援機……ガンダムシリーズに幾度か出てくる、戦闘支援を目的とした機体で戦闘機タイプが多い。
ナツキはウインドウを開いてG-Tubeを開くと、とある動画を見せた。それはカザミが配信しているフォースBUILD DiVERS の動画である。
「この支援機みたいに、スターダストの戦術を広げるための支援機を作ってみたいなーなんて思いまして……」
ナツキが指を指したのはコアガンダムの支援機コアハンガーである。アッシュはそれを見ながら「ほーう」と関心を向けた。
「具体的にはどうしたいんだ?」
「ビクトリーやインパルスみたいな分離パーツの予備と、武装パッケージを載せたいなって思ってるんですけど……アイデアがこれ以上浮かばなくて……」
また机に突っ伏すナツキ。アッシュとセレンは互いに顔を見合う。アッシュは頭をかきながら提案した。
「あー、ナツキ、ぺリシアエリアに行ってみるのはどうだ?」
「ぺリシアエリアって、あの?」
ぺリシアエリアーーそれは、ガンプラビルダーの聖地とも言われる砂漠のど真ん中に存在する場所である。
「でも、今の僕じゃガンプラを出せないから、行くのも一苦労ですよ?」
ぺリシアエリアでは特定のランク以上でないとガンプラは出せず、未だEランクのナツキでは広い砂漠からぺリシアに向かうのも一苦労である。
「だが、そこさえ何とかすれば、メリットだらけだろ?」
「それは……確かに」
ぺリシアはガンプラビルダーと言われるに相応しい程に様々なビルダーがこの地に集まって自身のガンプラを見せ合って意見を交換し合っている。
「問題はどうやって行くかだな……」
「それは……あっ」
移動手段に関して考えていたナツキはふととある事を思い付く。ナツキはすぐさまウインドウを開いた。
***
『駄目だね』
幼馴染……ヴィオレからの返答はNoだった。
「お願い!ぺリシアに連れていって欲しいんだ」
『舐めないでほしいね!私はそんな軽い女じゃないんだよ』
ヴィオレなら連れていってくれるかも……と期待して連絡してみたら、速攻で拒絶された。
『忘れたのかいナツキ。私が乗り物に乗せたい相手は女の子さ!野郎だけなんて意地でも乗せないよ!』
「そこを何とかさ、ね!?」
『フン!なら可愛い女の子を連れてくると良いさ!まぁ、ナツキが女の子を連れてこれるとは思わないけどね!』
ヴィオレのNOの一点張りにナツキは頭を抱える。ヴィオレのオーダーをどうにかして突破すれば解決するのでは……と考えた時、ふと隣を見た。
「……?ナツキ?」
そこには、
***
砂漠のど真ん中に一台のモビルワーカーが走っていた。鉄華団が使用していたもので、後方部分にはナツキが立っている。
「助かったよ、ヴィオレ」
『ぐぬぅ……まさかナツキが既にこんな可愛い女の子と知り合っていたなんて……』
『ヴィオレ、暑苦しい』
『あぁん、そんな事言わないでよセレンちゅわ~ん』
操縦席から聞こえるのはヴィオレとセレンである。このモビルワーカーはヴィオレが自作したものらしく、ガンプラなので操縦席のスペースは二人乗りできる。とは言え、今は三人なのでナツキが後方部分に立っているのだが。
「ごめんね、セレン。巻き込んじゃって」
『ん、平気。お出掛け、慣れてる』
『セレンちゃんは偉いな~!』
『ん、むぅぅぅ~!』
ヴィオレがセレンに抱きついているのが容易に想像できる。「ガードフレーム呼んでやろうかな」とナツキは一瞬考えてしまった。
『んふふふふふ~……あ、見えてきたよ!』
ヴィオレの報告でナツキは視線を前に向ける。砂漠のど真ん中に大きな町が見える。
「ここも二年半ぶりに、なるのかな……」
砂漠の聖地・ぺリシア。
ナツキにとって2年半ぶりのそこではどんなものがあるのか、心の何処かでワクワクを感じる自分がいるのを感じた。
***
ぺリシアエリアは二年前と変わらず多くの人で賑わっていた。
ある人は自身の作品を披露するため。
ある人は展示された作品を見に行くため。
ある人は観光目的でーーー
「凄い。人が沢山だね」
「声、沢山聞こえる」
ナツキとセレンはその人だかりに少し気圧されつつも、その地へ踏み込んだ。
「それじゃあ、一時間後にここ集合ね」
「え、ヴィオレはどこか行くの?」
「私には私の思惑があってここに来たからね。それじゃ、セレンちゃん、また会おうね~」
ヴィオレはナツキに背中を向けると、人混みの中に消えていった。急に置いて行かれた二人は棒立ちになるが、すぐに互いの顔を見る。
「僕達も行こうか」
「ん、わかった」
ナツキの後ろをセレンが追いかける様に歩く。ナツキはふと初対面の時を思いだした。
「(あの時と逆だな……)」
挫折を味わされて、戻ってくるんじゃなかったと後悔していた時、セレンが手を差し伸ばしてくれた。
あれがなかったら、アッシュが師匠になってくれず、今頃自分はGBNを辞めていただろう。
「ありがとう、セレン」
「ん……何が?」
無意識に言葉に出してしまっていたことに気づくナツキ。唐突に感謝されたら誰だって困惑するはずだとすぐに察した。
「あぁいや!何でもないよ!」
「そう?なら、良いよ」
「そ、それはそうと、どれから見ようかな~」
照れ隠しに話を逸らすナツキ。だが、正直色んな作品が展示されているせいで何が何だかさっぱりな状態なのは事実だった。
「お困りっすかね?」
すると、誰かから呼び掛けられた気がしてそちらを向く。
ナツキに話しかけたのは、水兵の服を着た中性的な顔つきが特徴の少年だった。
「えっ……と、僕達?」
「そうっすよ。辺りをキョロキョロしてましたし、もしかして迷ったのかなって」
「あぁ……まぁ、実質迷子なのかな?」
ナツキは水兵の少年にここに着た経緯を話す。それを聞いていた少年は笑顔で大きくうなずいた。
「成程!そう言う事だったんすね!なら、僕に案内させてくれませんかね?」
「良いのかい?助かるよ!」
ぺリシアに詳しい人から案内されるのはとても助かった。これならあちこち行って迷子になることは無いだろう。
「僕はスカロプって言うっす!よろしくお願いするっす!」
「よろしくね、スカロプくん。僕はナツキ。この子はセレンって言うんだ」
「ん、よろしく」
互いに自己紹介をすると、スカロプがナツキと言う名前に反応した。
「ナツキ?どこかで聞いたような……気のせいっすね」
「ん?どうかした?」
「いいえ、大丈夫っす!さぁ、行くっすよ!」
一人増えて三人になったナツキ達はぺリシア散策を行うことにした。
***
それから一時間しかないと言うことで少しハイペースで展示されたガンプラを見て回っていたが、ナツキからはあまり目ぼしいものは見つからなかった。
「むしろ、色んなものを見すぎたせいで頭が混乱しちゃってる……」
「大丈夫っすか?一旦休憩にするっすよ?」
「ありがとう。でも、時間は結構少ないし、大丈夫だよ」
スカロプが心配してくれたのをナツキはありがたく思いつつも、散策は続けることにする。
ふと、セレンがいない事に気づいて辺りを見回すと、とある展示されたガンプラの前に立っているのが見つかった。
「セレン、どうかしたの?」
「ん、あの子……」
セレンが指を指したのは劇場版ガンダム00に出てくるガンダムハルートだった。オレンジ色なのが空色にカラーチェンジされており、背部コンテナ部分も大型のウイングに変更されている。
「このハルートがどうかしたの?」
「この子も空を飛ぶことが好きって言ってる」
セレンのまるでガンプラが話しているかのような独特な言い回しにナツキは少し困惑するが、彼女の感性が人一倍良いんだと自己完結する。
「この子もって、他に誰かいるの?」
「ん、私。私も、空が好き」
セレンの視線がハルートから更に上……偶然雲一つない青空に視線が向けられる。
ナツキもそれに合わせて空を見上げた。
「私は皆のもっと飛びたい、遠くへ行きたいって気持ちを貰って生まれてきたの」
「え……?」
ナツキはセレンが独特な感性を持っていると自己完結したが、そうでは無いとすぐに気づいた。
「セレン、君は一体……」
セレンが何者なのか、それが気になって聞こうとしーーー
「あの、気に入ってもらえましたか?」
「え?わぁっ!?」
ナツキは誰かに話しかけられたのに気づいて直ぐ様立ち上がる。
そこにはナツキやスカロプと年の近そうな二人の少女がいた。片方は白を基調とした大人しそうな、もう片方は青を基調とした活発そうな様子で、二人は色違いの同じ和服を来ていた。
「私達の作品、良かったかな?」
「えっと、二人で作ったんですか?」
青い活発な方の少女の私達と言うワードからナツキは二人で作ったことを聞く。ナツキの問いに白い大人しそうな方の少女が答えた。
「はい。私とソーンで作ったんです」
「私とブランが作った自信作なんだ!」
「お二人で作ったんですね。とっても良い機体ですよ」
青い活発な方はソーン。白い大人しそうなのがブランと言うらしい。
ナツキはハルートを見ながら自身の感想を素直に答えた。隣にいたセレンもハルートを見る。
「二人に作ってもらえて凄い嬉しいって言ってる。本当に幸せそう」
「そう?良かった……」
「私とブランが組めば最強のビルダーコンビだからね!」
ソーンが自慢げに胸を張って答える。ブランはそのソーンを見て微笑ましそうに笑っていた。
「二人で一緒に、か……」
ナツキはふとハルートからセレンを見る。その時、何か点と点が繋がっていくような感覚がした。
「それじゃあ、私達はもう帰るので……」
「もっと色んな人に見せたかったんだけどなー」
「仕方ないでしょ。展示にも順番があるんだから、次の人の為に空けておかないと」
ブランとソーンは展示を終えてぺリシアエリアから離れる様子だった。
「あの、最後にありがとうございました。僕、ちょっと悩んでた事があったんですけど、答えが見つかりそうです」
「それは良かったわ。私達も、最後に誰かの力になれて嬉しいもの」
「また会ったら、君のガンプラも見せてねー!」
ブランとソーンはハルートを消すと、ナツキとセレンに別れを告げて人混みの中に消えていった。
「おーい、ナツキさーん!」
すると、入れ替わるようにスカロプがやって来る。
「ごめん、待たせちゃった?」
「大丈夫っすよ。暇潰しにガンスタ見てましたし」
「が、ガンス……何それ」
悲しい事にナツキは復帰勢ではあるが、中堅ダイバーとして活動していたため、全て知っている程詳しくはなかった。
「ガンスタグラムっすよ、ナツキさん。SNSみたいなものっす」
「へ、へえ、成程?」
G-Tubeは知っていたが、まさかそんなものまであったとは知らなかったナツキは少し置いてけぼりにされてるような感覚になる。
「それで、僕がずっと応援してるダイバーの方が
スカロプがガンスタグラムの画面を見せる。
そこには、ガンプラを背景に女性ダイバーとツーショットをする
***
ぺリシア散策から一時間後、集合時間になったナツキとセレンはスカロプと共に集合場所でヴィオレと合流していた。
「ヴィ、ヴィ、ヴィオレさん!?」
スカロプは集合場所に来たヴィオレを見つけて大きく動揺する。当の本人であるヴィオレは少し首を傾げていた。
「んー……あ、もしかして、私のファン?」
「ひぇっ!?ひゃい!僕、毎日ヴィオレさんの投稿見てるっす!」
「マジ!?嬉しいなぁ~。あ、アカウント教えてほしいな。フォローしとくから」
「ふ、フォロー!?ぜ、是非お願いしますっす!」
大興奮のスカロプといつものノリで接しているヴィオレを「世間って狭いなー」と軽い気持ちで見ていた。
「ヴィオレ、有名人だったんだね」
「まぁね~。ガンスタグラムでトップクラスのフォロワー数だから、サ!」
ヴィオレはガンスタグラムで様々な写真を投稿していいねを稼いでいる俗に言うガンスタグラマーと言うやつである。ヴィオレはその中でもかなり有名らしい。
「どんなの投稿してるの?」
「んーと、GBNの美味しいご飯とか、他の人のガンプラとか、可愛い女の子とか!!」
「あ、うん、だろうと思った」
ヴィオレだから女の子とか狙ってるんだろうなぁとすぐに考えたが、まさにその通りだった。実際、スカロプに投稿を見せてもらった時は一日一回必ず女の子とツーショットがあった。ナツキがヴィオレと再開した時もだ。
「よーし、じゃ、そろそろ帰るとーー」
ヴィオレが帰るためにモビルワーカーを出したその時、ナツキのウインドウが突如出現して警報音に似た音が鳴り響いた。
「な、何これ!?」
「それって、エマージェンシーアラート?私それ切ってたけど、ナツキがいない間に実装されたし仕方ないか」
エマージェンシーアラート。
通常ディメンション内でプレイヤーキル、もしくはそれに相当する行為が行われた時に広範囲内のダイバーに救助要請を送るシステムである。
これで助けられたダイバーもいれば、逆に戦闘中に通知が来て邪魔になったり、単にうるさいと言う理由で通知をオフにしているダイバーが大半である。
ナツキの場合、そのシステム事態を知らないので通知をオフにしてなかったのだ。
「ナツキ、ナツキ、あの子が助けてって、言ってる……!」
「あの子……?」
セレンがナツキの袖を引っ張って助けを求められていることを訴える。セレンの言うあの子が誰なのか一瞬疑問に感じたナツキだったが、すぐに思いだした。
「青いハルートか!」
青いハルート……即ち、ブランとソーンが作ったガンプラに何か危機が迫っている事にナツキは気づいた。
「ヴィオレ、モビルワーカー借りるよ!」
「えっ、ちょっ、ナツキ!?」
ナツキはヴィオレの出したモビルワーカーに乗り込む。セレンもそれを追いかけてコックピット内に転送した。
「ナツキ、あっち!」
「分かった!フルスピードで行くよ!」
全速力でモビルワーカーを飛ばす。車輪が飛ばした砂煙にヴィオレは咳き込みながら呆れたように呟く。
「あのお人好しめ!どうしよう。私バトルとかする予定なかったからあの子置いてきちゃったしなぁ……!」
ヴィオレにもバトルをするために自作したガンプラがあるのだが、今日の予定ではバトルは無かったのでリアルの方にある。
「あの、大丈夫っすかね?」
心配したスカロプがヴィオレに話しかける。ヴィオレはスカロプを一瞬チラッと見た後、再度スカロプの方を見た。綺麗な二度見である。
ヴィオレはガッチリとスカロプの肩を掴む。捕まれたスカロプは「ひゃあ!?」と声をあげてしまう。驚きと言うよりかは、歓喜の方が近かったが。
「あの、私のファンとして、お願いを聞いてくれないかな……?」
「あ……はい、是非!」
ヴィオレの願いをあっさり聞いてしまうスカロプ。人はそれを惚れた弱み……と言うのかもしれない。
***
一方、砂漠のど真ん中で一機のMSが倒れていた。それは、ナツキが見たガンダム青いハルートである。
「ソーン、しっかりして!早く動かないと……!」
「う、あ……!」
ハルートが複座式であるように、二人のハルートも複座式の仕様であるのだが、本来機体操縦をするはずのソーンは完全に動けずにいた。
『手こずらせないでほしいですね』
「「っ!?」」
ブランとソーンはその声を聞いてハルートを振り返らせる。そこには、紫の黒の恐竜を模した見た目のガンダムレギルスがいた。
『全ての物事に終わりがあり、終わりを迎えることで完成します。貴方のガンプラもそうであるように』
紫のスーツを着た眼鏡の男『ギル』は自身のガンプラ『ガンダムレギルスビトレイ』を前進させて、二人のハルートへ迫る。
「ごめん。ごめん、ブラン……私がぺリシアに展示しようって言っちゃったばかりに……」
「ソーン……」
二人のハルート……『ハルートスワロー』は二人で一緒に空を飛べるようにと考えて一緒に作ったガンプラなのである。
「ソーンは悪くないわ。だから自分を責めないで」
「ブラン……ごめん。ううん、ありがとう……」
ブランは振り替えってソーンの顔に触れると、泣きそうになっている彼女の額に額を合わせて宥めるように言葉を紡ぐ。
ソーンも冷静になってブランに感謝の言葉を口にした。
『抵抗はしないのはこちらにとっても助かりますね。それでは……良き終末を』
レギルスビトレイが手のひらからビームサーベルを伸ばしてハルートスワローを切り裂こうとした、その時だった。
「やめろぉぉぉぉぉっ!」
激昂と共にレギルスビトレイの頭に弾丸が直撃した。弾丸はレギルスビトレイの頭部の装甲を凹ませた。
『……何方でしょうか』
ギルは攻撃を中断して自身の妨害をした相手を見る。それは、ナツキとセレンが乗るモビルワーカーだった。
「貴方は、さっきの……」
「助けてくれた……?」
ブランとソーンが助けが来てくれたことに驚く。
しかし、改造されたものとは言えモビルワーカー。ヴェイガンが作り出したガンダム、その改造機であるレギルスビトレイで対抗できるとは誰も思えなかった。
『まさか邪魔が入るとは……仕方有りません。まずは貴方から終わらせてあげましょう』
ギルの意識がモビルワーカーに向けられる。
ナツキはセレンに意識を向けた。
「(セレンがいる以上、無茶は出来ない。全速力で逃げ回って、助けが来るまで持ちこたえるしかない!)」
ハルートスワローが強制ログアウトやぺリシアエリアからの離脱出来る時間さえ作れれば実質ナツキの勝ちな様なものだった。
ナツキはモビルワーカーの銃口をレギルスに向けたまま全速力で走り出す。それと同時に両サイドに装備された機関銃連射する。
『たかがモビルワーカーの一つ程度……取るに足らないと分からないですか?』
レギルスビトレイの背部に搭載されたテイルブレードが伸びてモビルワーカーに飛ばされる。
「っ!!」
モビルワーカーを回避させようとする。
テイルブレードはモビルワーカーの真横に突き刺さるが、その衝撃によってモビルワーカーが横転してしまった。
「ぐぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃぁぁぁっ!?」
何度も回転した後、横になったまま砂漠を滑る。
「ぐっ……大丈夫、セレン」
「ん、大丈、夫……」
揺れる頭の意識を正そうと頭を揺らす。モニターには目の前まで迫るレギルスビトレイがいた。
『大見得を張った割には呆気ないですね。これでおしまいにしましょう』
レギルスビトレイの銃口が倒れたモビルワーカーに向けられる。
ナツキが攻めてセレンだけでも逃がそうとした、その時だった。
「そこまでっすよ!」
声が聞こえたその時、ギルの耳にアラートが聞こえた。レギルスビトレイは見上げると、その影が見えた。
ーーその瞬間、鉄の雨が降り注いだ。
レギルスビトレイはすぐさま回避をする。
『新手ですか』
モビルワーカーとレギルスビトレイの間に割り込むようにそれは降り立つ。
それは、灰色の混じったようなくすんだ水色をしたグフイグナイテッドの改造機だった。両肩にはザクウォーリアのシールドが付けられており、左腕には3連装ガトリングが装着されている。そしてその上から六銃身ガトリングが装着されたシールドを持っていた。
一言で言うなら、グフイグナイテッドとグフカスタムを合わせて+αしたような機体だった。
「大丈夫っすか、ナツキさん!」
「スカロプくん!来てくれたのかい!?」
「ヴィオレさんから頼まれたっすからね」
グフイグナイテッドの改造機『グフシェルカスタム』に乗っているのはスカロプだった。
グフ
「ぺリシアエリアで展示目的で来ていたダイバーを狙う極悪ダイバー……噂に聞いてましたが、ホントにいるとは思わなかったっす」
『噂が立っていましたか……ですが問題は有りません。ここにいる全員を終わらせれば良いだけです』
レギルスビトレイがビームライフルを構えると、即座に発砲した。グフSCはそれを避けると、ガトリングから弾丸を連射する。レギルスビトレイは空中に飛び立つと、背部のウイングを広げた。
『そのガトリング、弾数は兎も角厄介では有りますね……こちらも本格的に仕掛けさせてもらいましょう』
レギルスビトレイの背中から光の粒子が展開される。特殊なビット兵器『レギルスビット』である。
レギルスビトレイが腕を振るうと、レギルスビットからビームが放たれた。今度はグフSCが避ける側になる。
「破壊できないビットなんて、厄介すね!」
飛んでくる数多のビームをグフSCは避けていく。レギルスビトレイはライフルを構えて回避を続けるグフSCに向けて放った。
「うわっ!?」
グフSCは肩のシールドを構えてビームを防いだ。
『ほう、シールドにはビームコーティングですか』
「グフだからと侮ること、なかれっす!」
グフSCはビームの弾幕の中から抜け出すと、ガトリングシールドを発砲しながら接近する。
『甘いですよっ』
レギルスビトレイはレギルスビットを前方に固めてシールドのようにして弾丸を全て防いだ。
「そこを待ってたっす!」
グフSCはシールドのガトリングを外すと、大きく跳躍した。レギルスビトレイはテイルブレードを飛ばす。しかし、グフSCは肩のシールドでそれを受け止める。テイルブレードはシールドに突き刺さるが、手持ちのシールドに納められたヒートサーベルを引き抜いてワイヤー部分を切断した。
『なんと……!?』
「せりゃーっ!」
肩のシールドをパージして手持ちのシールドを捨てると、3連装ガトリングガンを発砲して背部ウイングを撃ち抜いた。
『肉を切って、骨を断つとは、良く言ったものです……!』
「まだっす!」
グフSCは急降下してヒートサーベルを振り下ろすが、レギルスビトレイはそれを避けてライフルを構えた。
「させないっすよぉっ!」
グフSCはヒートサーベルを投げ捨てると、腕部に内蔵されたヒートロッドを伸ばしてライフルに先端を当てた。即座に電流が流し込まれてライフルは爆発してしまう。
『このままでは……っ!』
爆煙で視界を塞がれてしまったレギルスビトレイ。その直後、爆煙から弾丸が胴体を貫いた。
『バカな……!?』
レギルスビトレイは胸部から上をパージ。レギルスコアになって飛び出した。
地上を見ると、グフSCがガトリングガンを構えており、爆煙越しに狙い撃ったと考えられる。
『満身創痍ですが、一旦退けばこちらのものです。今度会った時こそ、終わらせてーー』
「逃がしはしないっすよぉぉぉぉぉっ!」
スカロプは残っていた肩のシールドに仕込まれていたビームアックスを引き抜くと、急上昇してレギルスコアを切り裂いた。
『あぁ、私が完成してしまう……!』
ギルが己の最後を悟った時、レギルスコアが爆発した。
「ふぅ……終わったっすよ~!」
「た、助かったぁ……ありがとう、スカロプ!」
通信が繋がってスカロプのサムズアップが映る。ナツキはホッと一安心すると、サムズアップをし返した。
***
ギルを倒したナツキ達は改めてぺリシアエリアを後にした。ナツキとセレンはスカロプのグフSCに乗り、ハルートの二人はヴィオレのモビルワーカーに乗せて、ヴィオレはその背部で立っていた。
ナツキが何故モビルワーカーを運転しなかったのかと聞くと、ヴィオレは真面目な表情で答えた。
「百合の間に割り込むような事は出来ない」
ぶれないなぁとナツキは苦笑してスカロプの元に向かった。
「本当に、ありがとね。助かったわ」
「ホント、あのままじゃ私達お陀仏だったからねー」
「あの時泣きかけてたのは誰かしら?」
「それ言わないでよブラン~!」
ブランとソーンの微笑ましい会話にヴィオレは合掌している。
「どうかしたの?」
「いや、うん、てぇてぇ……」
セレンが合掌しているヴィオレは壊滅した語彙力の中で言葉を振り絞る。ナツキはそっとしておこうと決心した。
「ん、ナツキ、フレンド」
「え?あぁ、そうだね」
折角三人も出会えたのだから今の内にフレンドのお誘いをする。
「良いわよ。またぺリシアに行くなら呼んでね」
「私的には少し勘弁かな~」
ブランとソーンはすぐに了承すると、別れを告げてその場を去っていった。
「スカロプもどうかな?」
「僕っすか?是非!よろしくお願いするっす!」
「あ、じゃあ私ともフレンドなろうよ」
スカロプともフレンドのお誘いすると、語彙力が復活したヴィオレもスカロプとフレンド申請をする。
「ふぇっ!?えっ、えっと、不束者ですが、よろしくお願いします!」
「あはは、何それ!まぁとりあえずよろしくね」
「僕の方もよろしくね」
ヴィオレとナツキがスカロプとフレンド登録をすると、ヴィオレは本来の趣旨を思い出してナツキの方を見た。
「そう言えばナツキ、何か良いアイデアは浮かんだかな?」
「え?あぁ……うん、大丈夫」
支援機のアイデアは既に固まっていたナツキは視線をセレンの方に向ける。セレンはその視線に気づいてナツキの方を見返した。
今回出てきたスカロプくんは恋文さんに作ってもらいました。この場を借りて再度感謝させてもらいます。ありがとうございます!
あと皆さんが待ってるであろう設定集は次回の話出したら出す予定です。待っててください。ちゃんと出しますので……
では、次回予告
***
次回予告
遂に形になるスターダストの支援機。
それを製作するためにナツキはリアルで行動を始める。
そのナツキに意外な再開が待ち受けていた!
次回、空への祈り
お楽しみに……