なぜかあり得ないぐらい展開が早くなってしまうのは何故だろうか。
1話
「おい、起きろハルス」
聞き慣れた声が眠っている私を起こす。寝起きで眠い目を擦りながら私を起こした父に返事をする。
「ん…おはようジェラルト」
どうやらいつの間にか机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。軽く背伸びをし、そのまま立ち上がる。視界には父、ジェラルト・アイスナーが身支度をしながらこちらを見ていた。
「おう、目が覚めたんならとっとと部屋に戻って支度しな。ついでにお前と同じ寝坊助を叩き起こしてこい」
父は傭兵団を率いる団長で私、ハルス・アイスナーと姉であるベレス・アイスナーはその一員として活動している。次は王国での仕事なために夜が明けたら出発すると言っていた様な気がする。外は薄暗くそろそろ日が昇る頃だろう。すこし急いで準備をしなければならなそうだ。あの寝坊助、というのは恐らく姉であるベレスのことだろう。そう思い支度を済ませ、上の階にある姉の部屋へと向かう。
案の定姉は眠っていた。肩を揺さぶり声を掛ける。
「ベレス 、起きて」
何度か呼びかけ、ようやく目が覚めた姉はどこか浮かない表情をしていた。
「また、夢でも見ていた?」
「戦争の夢…大平原を埋め尽くすほどの大軍の激突の…」
姉はよく同じ夢を見ると話していた。今話した大戦争の夢と、緑の髪をした少女の夢を。しかしその様な大戦争など300年は起きていないそうだ。それにその様な少女も見たことはない。
「それは置いておいて、早く支度したほうが良い。夜明けに出発だから。」
「…そうだっけ」
「もう…みんな準備始めてるから、早めにね」
そう言い残し私は父がいる下の階へと降りた。起こしてきたかと問われたので頷き、父と共に姉を待つ事にした。外では出立の準備が着々と行われている。暫くして、用意を済ませたベレスが降りてきた。
「まったく、遅いぞ。明日は夜明けには出るって言ったろう。こんなギリギリまで寝てやがって。ほら、2人とも外の準備手伝いに行ってこい」
軽く呆れながらそう言う父にベレスと共に頷き外へ出ようとした。その時にうちの傭兵団の1人が少し慌てながら扉を開けて入ってきた。
「ジェラルトさん!少し来てもらってもいいか?」
「ああ、何かあったか?」
父と姉、そして私の3人は外に出る。そこには私より少し年上そうな男性2人女性1人がいた。1人目は槍を装備している真面目そうな金髪の青年。2人目は弓を装備している飄々としていそうな黒髪の青年。3人めは白色の髪をした斧を持つ少女。
「おいおい、こんな時間からガキどもが揃って何の様だ?」
こんな早朝から傭兵団を訪ねてきた青年達に驚く父。私とベレスも只事では無い雰囲気を感じていた。
「私達は今盗賊団に追われているのです。野営中に襲われてしまったのです。どうか力を貸していただけませんか?」
「盗賊団だと?」
そんな時、村の外に武装した人影が見えた。どうやら彼らの話は本当のようだ。
「父さん。結構な人数いるよ。囲まれてる」
「来やがったか。この村を見捨てる訳にはいかねぇ。おいお前ら、行くぞ!」
父の一声で傭兵団の皆は散らばり盗賊へ各個応戦しに行った。
「ハル、気をつけてね」
ベレスはそう言って剣を腰に携え走り出して行った。ちなみにハルというのは姉が私を呼ぶ時に使うあだ名の様なものだ。私は追いかけるようにベレスの後ろを走り出していった。
既に戦闘は始まっていた。傭兵団の皆が筆頭に戦っている。しかし訪ねてきた3人も強い。剣術などはよくわからない私の目から見てもそれがわかる。的確に矢で敵を射抜き、盗賊達の攻撃を絶妙な槍捌きでいなしながら戦い、斧を巧みに扱い力と技能で相手を捻じ伏せる。そんな3人が戦っているところで私の姉も戦っていた。
そんな時、横から剣を持った盗賊が私に襲いかかってきた。男は私に向かって剣を振り上げながら走ってくる。そこに素早く私は【ファイアー】を発動させる。私が唯一使える魔法であり、現状唯一の攻撃手段だ。初級的な魔法だが軽装備な盗賊達には十分な力を発揮するだろう。それから襲いくる盗賊達に私は次々と魔法で攻撃していく。
しかし予想以上に数が多い。私たちの所へ訪問してきた斧を持った白い髪の少女が疲弊して意識が散漫になった所にまた盗賊が襲いかかる。
「間に合って!」
それに気づいた私は急ぎ【ファイアー】を発動させ少女に襲いかかる盗賊に放つ。
完全に盗賊に不意を突かれる形になった少女は今にも振り下ろされる斧を見て目を強く閉じた。そこになんとか私の魔法がその斧が振り下ろされる前に間に合い、盗賊は後ろに軽く吹き飛ばされた。冷静さを取り戻した少女は吹き飛ばされた盗賊に斧を振り下ろしとどめを刺した。
「あの…大丈夫ですか?」
「ええ、助けてくれてありがとう。腕が立つのね」
危なかった。あのまま目の前で死なれてしまったら目覚めが悪いというものだ。
「一旦退いてはどうでしょう。ここは私達が引き受けますから」
「…そうね。ごめんなさい。貴方達に任せるわ」
そう言って少女は前線から下がっていった。私は一度ベレスと合流するために周囲を探す。少し探して戦場を歩き回った先では父とベレスが盗賊と戦っていた。
「くそ!なんで壊刃のジェラルトなんて凄腕の傭兵がこんな所にいやがるんだ!」
「文句を言いてぇのは巻き込まれたのはこっちの方だよ!」
【壊刃】とは父のその強さから名付けられた異名だ。姉は【灰色の悪魔】だったか。確かにベレスは感情の起伏が薄く無表情で剣を振るう様は恐ろしいが余り考えを口に出さないだけで思いやりのある良い姉だ。もちろんジェラルトも良い父親だ。
「ハァッ!」
父が馬上から槍を振るい盗賊達のリーダーらしき人物に手傷を負わせる。
「糞が!こんな仕事割に合わねぇじゃねぇか!退くぞテメェら!」
そう言って盗賊達は慌ただしく移動を始めた。恐らく逃げ帰るのだろう。こちら側の損害はまだ確認できていないが私の目の前で命を落とした者はいないはずだ。
安心し息を深く吐いた。傭兵業自体いつ命を落としてもおかしくない仕事のために手の届く範囲では誰にも死んで欲しくない。
「ハルス!危ねぇ!」
そんな時に怒鳴る様な父親の声が聞こえる。それに反応して周りも見渡すと、そこには剣を振り上げる盗賊団の1人がいた。反応が遅れた。魔法を撃つには時間が足りなさすぎる。やむを得ず私は腕で頭を守り、目を強く瞑る。
しかしいつまで経っても私の腕に剣が当たった感触は無い。
目を開けると姉がその剣を受け止め、その盗賊を軽く切り捨てた。
「間に合って良かった。大丈夫?」
「……え?あ、ありがと」
「ベレス?お前、今何か…」
ベレスが助けてくれた。しかし私と父はどこか違和感を覚える。ベレスが近くに居たとは言えども私が襲われるのを予期して居なければ間に合わなかったと思う。
不思議に思っていると重装備をしている騎士の様な人達が戦場の跡となった村にやってきた。
「生徒達を脅かす盗賊共め!セイロス騎士団ただいま参っ……む?盗賊達が逃げていくではないか!お前たちは奴らを追うのだ!」
髭を蓄え大きな斧を担いだ大男、どうやら彼が指揮官の様だ。
「おっと、面倒なやつが来ちまったな…」
「ジェラルト、知り合い?」
「あぁ…そうだな。昔の部下ってやつだよ」
彼を知っている様な言い方だったので聞いてみたら、昔の部下?傭兵になる前はその、セイロス騎士団?というものに所属していたのだろうか?
「…む?むむむ?あなたは…」
そう言ってこちらに歩み寄ってくる髭の大男。私はさっとベレスの後ろに隠れた。どうにも知らない人は苦手だ。ベレスとジェラルトとしかまともに話すことができない。
「やはり!ジェラルト団長じゃないですかぁ!お久しぶりですなぁ!団長が20年前に突然いなくなってしまった時はどうしたものかと…。私はずっと生きていると信じてましたぞ!」
「相変わらずうるせぇ奴だなアロイス、ほらハルス、こいつは声はでかいが悪い奴じゃねぇ。安心しな」
「うん…」
「むぅ、怖がらせてしまったか」
ジェラルトの元部下と言うだけあって確かに悪い人ではなさそうだ。
「さて、じゃあまたなアロイス。またどこかで会ったらな」
「はいはいそれでは、また何処かで…ってなるわけないでしょう!ガルグ=マク修道院まで来ていただきますからね!」
「はぁ…まぁ、そうなるよなぁ…」
ジェラルトが露骨にため息を吐く。
「ところでそのお二人は団長の…?」
「娘、私はベレス。ほら、ハル」
「あ、その…ハルス…です」
「やはりそうか!外見はともかく雰囲気が団長そっくりであるなぁ。どうか君たちにも大修道院を見てほしい。ついてきてくれるかな?」
ちら、とジェラルトの方を見てみると、やれやれと言った感じで頭を抱えていた。私はどんな所か気になるのでその大修道院とやらに少し行ってみたい。そんな事を考えていたらベレスを呼ぶ声がどこからか聞こえた。
あの3人組だ。私はベレスに連れられてその3人の所へ一緒に行った。
もっと改行した方が良さそうだなぁ。
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