ベレスに妹入れてみた   作:ひーらぎ@1341

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11話

 私たちの学級の課題である警備。学級の皆で、相手の狙いを予想したところ、目的はわからないが、【聖廟(せいびょう)】と言うところにあるだろうと考えた。敵の狙いもわからないが、私もその場所が何なのかはよくわからないと言うのは生徒には言えない。

 

 聖廟に向かうための唯一の階段を張り込み、不審な者たちが入り込むのを確認。出入り口は一つだけのようで、そこを私たちが追いかける形で逃げ出すのを阻止する。

 

 皆んな少し緊張しているようで、地下に続く階段を降りる時の乾いた足音だけが響く。

 

「うっ…うぷっ……」

 

 その静かな中に、突如誰かの嗚咽が混じる。まだ何も始まってもいないと言うのに、体調を突如崩してしまったのだろうか。足を止め、後ろを振り返る。その嗚咽の主は…私の妹だった。

 

「ハル、大丈夫?」

 

「うっ……はぁ、はぁ…だ、だいじょぶ」

 

 顔を顰めながら苦しそうにそう言うが、誰の目から見ても大丈夫では無い様子だ。ハルには引き返して貰った方が良いだろうか。

 しばらく考え込む。

 

「うーん……、誰かハルを連れて上に戻って欲しい」

 

 本当は私が隣にいてあげたいのだが、教師という立場がある。下に賊がいるというのに、生徒だけにそれの対処を任せるのはいけないだろう。

 

「あ、あの…あたし、引き受けます」

 

 名乗り出たのは、学級内で一二を争うほどの内気な生徒、ベルナデッタだ。

 辺りからは、ベルナデッタが自分から進んで行動を起こした事に動揺が広がる。

 

「うん、よろしく。ベルナデッタ」

 

「ふふ、責任重大よ」

 

「は、はい!頑張ります!」

 

 ベルナデッタの肩に身を預けるハル。ベルナデッタは背中をさすりながらゆっくり階段を上がっていく。

 

 しかし、ハルがあそこまで体調を崩すのは初めてだ。さらに、何の前触れもなくあそこまでとは。ハルは大丈夫だろうか。

 

「大丈夫よ、先生。ベルちゃんはやる時はやる子よ」

 

 何も言っていないのに、不安を見透かされたのか、ドロテアに励まされる。彼女は他人の心情を察することが上手だ。

 

「……わかっている」

 

 階段を降りきり、聖廟に着く。

 

「さあ、行きましょう先生」

 

 今は、この場にいないハルの事を考える時では無い。生徒を死なせないように、この正面の敵を倒す。それに集中しよう。

 

「皆んな、行くよ」

 

 地下深くでの戦いが今始まる。

 

 

 

 


 

 

 

 

「はぁ、はぁ、あぁぅぅ…うぷっ…」

 

「あ、あう…す、凄い熱…」

 

 なんとかハルスちゃんを部屋に連れて行ったが、苦しそうにしているし、熱もある。こ、こういう時どうすれば良いんだっけ……。看病なんてした事がないから、どうしよう…

 

「ハルスちゃん!ちょっと待っててね!」

 

 ハルスちゃんを部屋に置いて、私は人を探す。今は儀式の真っ最中で、他学級の生徒も警備にあたっている。

 

 小走りで警備場所へと向かう。周りから白い目で見られるが、それは問題ではない。

 髭を生やした片眼鏡のおじさん。この人も…教師だったか。

 

「そ、その!マヌエラ先生、どこにいますか!」

 

「む、君は…黒鷲の生徒だったか。マヌエラ君か。彼女はあちらだよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 また、マヌエラ先生のところに向かって走り出す。

 

「ゼェ…はぁ…ゼェ…マ、マヌエラ、はぁ……先生」

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて、どうしたの?」

 

 マヌエラ先生の元に辿り着いた時には、私の息も絶え絶えであった。でも急がないと…

 

「そ、その!ハルスちゃんが!」

 

「……!怪我でもしたのかしら?」

 

 一気に真面目な顔つきになる先生。保険医というだけあって、やはり頼りになる。

 

「その、すごい熱で、体調悪そうで、気持ち悪そうで、えっと」

「わかったわ。どこにいるの?」

 

「ハルスちゃんの部屋です!」

 

 マヌエラ先生は急いで走って行った。これでとりあえずは一安心だろうか。かといって私も何かしたかったので、歩き、上がった息を取り戻しながら向かう。

 

「あ、あの…大丈夫、ですか」

 

「ええ、安静にしてれば問題無いと思うけど…。あとは濡れタオルで適度に汗を拭いてあげれば良いと思うわ」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 そう言ってマヌエラ先生は先程までの場所に戻っていった。今はハルスちゃん1人にかまっていられる状況では無いからだろう。

 

 ハルスちゃんが寝ている隣で座っている私。苦しそうにしているため、何かしてあげたい。……そうだ。タオル、濡らしてこよう。

 

「ハルスちゃん、ちょっと待っててね」

 

 寝ているため、この声は聞こえないだろうが一応言っておいた。

 自分の部屋からタオルを持ち出す。水を求めて、水道へ行く。

 

 なんで私は自分からハルスちゃんの看病を立候補したのだろう。いや、別に後悔している訳ではない。ただ、自分で自分がわからないのだ。聖廟内で戦いたくないから、進んでそれを受け入れた……のは少し違う気がした。頭があまり回らない。

 

 じゃぶじゃぶと、水でタオルを揉む。手で感じるひんやりとした水の温度が、私の頭の熱も冷やしていく。

 

 私は……恩を返したいのだろう。事情がどうであれ、私に話しかけてくれて、命までも助けてもらった。

 恩を売るつもりでは無いが、私ができるささやかなお返しとして、私は引き受けた…のだろう。きっとそうだ。

 

「う…ん、うみゅぅ……お姉、ちゃ…」

 

 熱にうかされるハルスちゃんに、冷たいタオルを頭に乗せる。いつの間にか目を開けている。その目線は私に向いているが、とてもボーっとしている様子だ。意識は朦朧としている様子だ。

 

「え、えーっと…大丈夫、すぐ良くなるよ」

 

 この声が届いているかはわからないが、励ましの言葉を送る。

 

「……お姉、ちゃん」

 

 そう呟いて、私の手を弱々しく握る。どうやら、私を先生と勘違いしているようだ。頭を優しく撫でてあげると、また寝てしまった。

 かわいいなぁ。私に妹がいたらこんな感じなのだろうか。

 

 そうだ。汗、拭いてあげなくちゃ。流石に体全体を拭くのは、起こしてしまいそうで申し訳無いので、起きてからにしよう。それまで、首筋とか、袖を捲って腕とかを拭くとしよう。

 

「んん…うん……すぅ……」

 

 首筋に冷たいタオルを当てると、気持ちいいのだろうか。今までの苦しそうにな声では無かった。

 

 

 

 

 

 

「えっと、袖を捲ってっと。……え?」

 

 

 

 

 

 

 この時私が見た物は、私の胸の内に閉まっておく。




水道なんてあるんかなぁ。この世界
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