ベレスに妹入れてみた   作:ひーらぎ@1341

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難産。急展開過ぎて自分でも引いてる。


15話

 村が炎に包まれる。村全体を巻き込む程に酷く炎上している。

 

 事の発端は、ルミール村…私達の傭兵団が良くお世話になっていた村に異変があるとの情報が入ったのだ。村人が急に暴れ回ったり、昏睡したりと普通の病気などでは片付けられない症状が出ていると言う。

 

 そしてある日、事態は急変した。

 村人同士で殺し合いを始めたそうだ。私達はすぐさま村へ向かった。

 

 

 惨劇、としか言いようがない景色だった。火の手が随所から上がり、理性を失った者が暴れ回る。どうして…こんな事が起こっているのか。辺りを見渡すと、死がそこらじゅうに蔓延っている。

 武器を持った大人から、戦う力のない女子供まで。そしてそれを眺める黒衣の者達…奴らが首謀者なのだろうか。

 

 こんな…こんな事があって良いの……?

 

「ちょっと、ハルス!?……行きましょう、先生!」

 

 エーデルガルトの私を静止する声は聞こえている。でも、嫌だ。この光景を目の当たりにして冷静になるなんて、私にはできっこない。

 胸のペンダントが光を放つ。

 

「お、おい待てよ!ハルス、お前が前に出ちゃ…」

 

「ウ”ウ”ウ”ガァァァ!」

 

私が踏み出すと、暴徒と化した村人が遅いかかって来る。

 

「……ごめん」

 

「ウ”…ギャ…」

 

 荒れ狂う村人を死なない程度に、それでいて力一杯殴り付ける。

 

 ……最悪の気分だ。何の罪も無い人に、どうして手を上げないといけないのだろう。

 

 

「あなたは……」

 

 怪しげな男達の本陣へ私は単騎で踏み込む、そこにいたのは何処かで見たことがある初老の男だ。

 

 

 

「わしの名はソロン、人の世の救済者だ。トマシュと言うのはわしのからの姿だ…驚いて声も出んか」

 

 人の世の…救済者?見たことのある男の姿が突如変貌し、禍々しい気配を纏った姿になった。

 

「ふん、単騎で来るとは何とも間抜けな…やれ」

 

 私の後ろから部下と思わしき、重装兵が一人。

 まずは重装兵前に出てくる。槍を突き出し、私を貫かんとする。

 

「な、何だと…!?」

 

 私は槍の柄を掴む。相手は槍を何とか引き戻そうとするが、私はこの手を放さない。

 

「力比べは、私の勝ち」

 

 掴んだ手を、力一杯握り締める。槍はもう使い物にならないくらいに変形する。そして、その衝撃に男が気を取られた一瞬に、鎧を爪と力で砕く。

 

「燃えろ」

 

 鎧を砕いたその手から火を放つ、逃げ場のない炎に男はなす術もなく焼かれ、絶命する。

 

 

 その背後から飛んできた魔法を腕で払う。袖が焼け落ち、私の腕が露わになる。

 

「な…まさか、貴様は…眷属か!?」

 

 私の腕を見てそう言った。そう、私の……

 

 常人と違う、竜の腕を見て

 

 

 

 眷属…というのは私の事を言っているのだろうが、何のことだかわからない。そもそも、こいつらの言っていることはわかりたくない。

 

「お前達は、絶対に…絶対に許さない」

 

 人のものと比べると圧倒的に硬い表皮。そして普段は制御している、手首から下にも、鋭く尖る爪。さらに人の数倍もある筋力。

 

「……ふん、実験の成果は十分だ。ここは退かせて貰おう、貴様のことは…覚えておこう」

 

「な…!逃がさない!」

 

 すぐさまそいつの元へ飛び込み、攻撃を加えようとしたが…

 私の攻撃は空を切った。男は何処かへ消えて…逃げられた。こんな惨事を引き起こしておいて、自分だけ逃げ延びるなんて…

 

 この村の人達の仇は…討てなかった。自身の不甲斐なさに反吐が出る。

 

 

 雨が…降ってきた。この村の火災を抑えてくれると共に、私の頭をも冷やしてくれる。

 

 

 

 あぁ…やっちゃったなぁ…

 

 

 

 激情に駆られて、飛び出した事に後悔する。皆にどう説明しようか。もう、このまま居なくなってしまいたい。

 

 後ろから知らない水溜りを踏み締めて、馬の蹄の音が聴こえる。

 

 誰だろう、フェルディナントとかかなぁ。

 

「それが、お前の本気、か。良いぞ、それを、それを待っていた」

 

「なっ……!死神騎士……!?」

 

 私は即座に距離を取り、臨戦態勢を作る。何で…こいつだけ撤退して無いんだ。

 だが丁度いい。村の皆んなの仇は…こいつで済ませよう。

 

 死神騎士はすぐさま大鎌を振りかざし、私に襲いかかってくる。

 

 こいつの鎌は腕で防ぐのはリスクがある。そのため避けるしか無い。下がる際に火を放ち牽制をしておく。

 

 一旦離れられたと、そう思ったが死神はすぐさま距離を詰めてきた。あんな重い武器を振った直後に、さらに私の攻撃も喰らったのに、こうも早く次の行動に移ることができるなんて。

 避ける事は出来ない。故に腕で受け止めるしかない。

 

「ぅッッ…!」

 

 痛みに耐え、拳を一発返すが上手く躱された。腕に血が滲む。対して死神騎士は鎧の端が欠けただけだ。

 以前よりも太刀筋が鋭くなっている。前は痺れる程度であったが、今回は軽症ではあるが、確かに私に傷を負わせた。

 

 死神の猛攻は止まらない。私に火を撃つ余裕を与えさせない様に、常に距離を詰めてくる。だが、私の腕が届かない距離で鎌を振ってくるために、手出しが出来ない。

 躱しきれない斬撃は受け止めるしか無い。だが受け止めても私は傷を負う。

距離を取るにも、馬の機動力にはとても勝てない。

 

 反撃の一手を考えようにも、その時間すら与えてくれない。距離を取っては詰められ、斬撃は全ては避けられず、傷は確実に増えていく。

 

「がッッ……!う、ぁぁぁぁ」

 

 傷ついた表皮に、もう一度鎌が当たる。今まで以上の痛みが私に走る。

 よろめいた隙を見逃してくれる筈もなく、鎌の柄で殴り飛ばされる。

 

「どうした…その程度か」

 

 なんとか立ち上がろうと、足に力を込めるが上手く行かない。ここまで強いだなんて想定外だ。竜の力を使っているのに、今の状況で勝てる未来が見えない。

 

「わ、私は…負けない…こんな事する奴らに…負けては…やらない……!」

 

 この村には、私に良くしてくれる人も沢山いた。平穏な普通の村だった。それを踏み躙ったこいつらを…許すわけにはいかない。負けるわけにはいかない。

 

「まだ、まだだ」

 

「ハァ…ハァ……クソっ!何がだ!」

 

「まだ、貴様は本気を出していない。なぜ出さん。さもなくば死ぬぞ」

 

 またも殴り飛ばされ、地面を転がる私。

 今の私じゃ……勝てない、どうやっても。でも駄目だ。この姿で討ち取れないのは正直言って誤算だった。

 

 這いつくばったまま、自身の無力さに打ちひしがれる。

 

 馬の蹄の音が近付いて来るのが聞こえる。

 嫌だ…まだ死ねない。こんなところで…私は……

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……何の、真似だ?」

 

「貴方こそ、勝手な真似はしないで欲しいわね」

 

 ハルスに刃が届く前に、何とか間に合った。死神騎士の大鎌を斧で受け止め、助けることは出来た。

 

 私としては死神騎士がここへ来るのは計算外であったが、それ以上にハルスが激情を露わにして一人で突撃して行った事の方が想定外であった。

 

 ハルスは…俯きながら何かを呟いている。

 

 命には別状は無いだろうが、その…人の物とは思えない、鱗が付いた腕には多くの傷痕が残っている。

 

「ハルスちゃん、大丈夫!?」

 

 いつの間にかベルナデッタも追いついてきていた。必死に呼びかけているが、ハルスは何の反応も見せない。

 

 そして、死神騎士に襲いかかる者が一人…先生だ。

 幾度か打ち合った後に、お互い距離を取る。

 

「……やはり貴様こそが我が逸楽。良いぞ…」

 

「許さない。村だけでなく、ハルまでも…!」

 

 今まで滅多に感情を出さなかった先生が完全に怒っている。村を焼き、最愛の妹を傷付けた死神騎士に対して。

 

「ちょ、ちょっと!ハルスちゃん!?」

 

 ベルナデッタの狼狽する声が聞こえ、後ろを振り向くと、こちらにふらふらとしながら歩いて来るハルスの姿があった。目元は良く見えない。そして立ち止まったかと思えば…

 

「ッッッ!?」

 

 こちらを、いや、死神騎士に視線を向けるハルス。しかし、いつも通りのハルスではない。顔を上げた瞬間に、凄まじい威圧感を感じた。今のは一体……

 透き通るような綺麗な碧眼は、

 

 

 飲み込まれそうな程の、漆黒に染まった瞳へと変化している。

 

 

「…っ!ハル!」

 

 先生もハルスの異変に気づいたようだ。どこか焦っている様子が見られる。こちらに戻ろうとするが、死神騎士に阻まれて、思うように動けない。

 

「ジェラルトさん!?何を…」

 

 後ろから二人の父、ジェラルト団長が来たと思えば…槍の柄をハルスの後頭部に全力で振りかぶった。

 

 かの壊刃ジェラルトの一撃を受けて、常人であれば首の骨がへし折れている所だろう。だが、吹っ飛びもせずに、少しだけよろめいてハルスはその場で倒れ込んだ。

 

「……ったく。手間のかかる奴だなぁお前は」

 

 倒れ込んだハルスを抱きかかえる。行動の意図は全く持ってわからないが…娘を想う確かな父親としての姿がそこにはあった。

 

 

 死神騎士はいつの間にか退散していた。分が悪いと判断したのだろうか。

 

「先生、今日の事は…」

 

「ごめん、暫くは誰にも言わないで」

 

「……わかったわ。でも先生、ハルスは…前に進むべきだと思うわ。あのままじゃ、精神の方が擦り切れてしまうわよ」

 

 あの姿を見られる事だけを、ハルスは避けていた。他人と違う自分の姿を、蔑視される事に怯えながら、今まで生きてきたのだろう。

 彼女が本当に捨て子だと言うので有れば……

 

「彼女は…眷属では無い…?」

 

 どうにか…こちらに引き込む方法は無いだろうか。その為には…彼女の自立が必要だ。姉への依存を断ち切り、ハルス自身が道を決めていく、そうならなければ…

 

 ……私も、一人の少女にここまで思い入れをしてしまうとは、自分が思う以上に、彼女は私の中で大きい存在になっていたようだ。

 

「ハルス……あなたは何者なの…?」

 

 

 

 

 

 

 

 




エーデルガルトに師(先生)呼びさせて無いですけど、仕様です。だからって何か変わるわけでは有りませんが。書きにくいから許して( ˘ω˘ )
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