ベレスに妹入れてみた   作:ひーらぎ@1341

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19話

 まだ、ジェラルトの傭兵団が発足して間もない時のこと。

 

「ちょ…ちょっとジェラルトさん!その子は!?」

 

「あぁ…話すと長くなるんだが…ちょっとな」

 

 団員に詰め寄られるジェラルト。

 その理由は彼が抱えているものにある。

 

 自身の娘であるベレスはまだ幼く、生後一年程しか経っておらず、やっと歩き始めたばかりの年頃だ。仕事の時は女性団員に預けている。

 

 そして帰ってきたと思えば…宝石の付いた首飾りを掛けた赤子を抱いて帰ってきたではないか。

 

 まるで妻に隠し子がいたか事がバレたかのような状況だが…

 別にその女性団員の子供という訳ではない。それでも急に赤子を抱えて帰ってくるのはおかしいだろう。

 詰め寄るのも無理はない。

 

「はぁ…仕事で行った村でな、誰の子でも無い赤子が捨てられてたそうだ。引き取る余裕がねぇから親を探してやってくれって言われて押し付けられてなぁ…」

 

「そ、そうなんですか。それなら…まぁ…」

 

 充分に不可思議な状況ではあるが、隠し子などでは無いという事は理解したようで、自身が所属する傭兵団の団長の尊厳は守られた事に安堵した様子だ。

 

「それに…だ。引き取る余裕が無いって言うよりは気味が悪いから…だそうだ。見てみろ」

 

「えぇ…えっと………え!?」

 

 赤子を包む布をゆっくりと剥がす。見てみると…小さな翼の様な物が背中に生えているでは無いか。よく見ると、腕には鱗の様なものもある。

 

 

「どうやら人じゃあ無いらしい。そりゃあ身近に置くには心配だろうなぁ…」

 

 

 唖然。女性団員はしばらく声が出なかった。

 

「な、な…大丈夫…なんですか!?」

 

「んん…?あぁ、見た目は人そのものだから大丈夫だと思うが…。問題は親を見つけるって所だよなぁ…ったく」

 

 人では無い何かを気味悪がって側に置きたく無いという村の人達の気持ちを女性団員は理解した。自分と違うもの、理解ができないものは恐怖の対象になる。自分自身でそれを実感した。

 

 

「うぅ…あぅ…?」

 

 

 つぶらな瞳で、赤子はじーっと団員を眺める。

 

 

「ま、まぁ、親が見つかるまではこの子も私が面倒見ますよ!」

 

 別にこの子に罪は無いわけだし、子供は好きだから少し違うくらいどうにでもなるだろう。と、結局ジェラルトと同じ考えに至った団員。

 

 

 

 

「でも、面倒見るって言っても、私はこの子達のお母さんでもなんでも無いんですから、団長がしっかり面倒見てあげないといけませんよ!ベレスちゃんに関しては特に!私がお母さんって誤認されたらとんでもない事ですよ!」

 

「あぁ…これからしばらくは新しい仕事は取るのは止めておくか」

 

「あと、この子について団長から皆んなに言ってあげないと、団員からも気味悪がられかねませんよ!」

 

「あ、あぁ、わかってるよ」

 

 ジェラルトはこの団員には頭が上がらないと、改めて感じた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 私は一人、父の日記を読んでいた。

 

「ふーむ、見た目によらずチマチマした字を書きおるわ」

 

 …正確には一人では無いが、まぁ良いだろう。

 まずはパラパラと流し見る。随分と前…私が生まれる前からもこの日記は書いていた様だ。

 

 父がここまでマメに日記を記しているとは思わなかった。長いこと一緒にいたと言うのに、まだ知らない一面があったのだと…

 きっと、私の知らない一面はもっとあるのだろう。

 

 存命であったなら…それを知る機会はあったはずだ。

 

 

 涙が私の頬を伝わる。

 

 

「……時を戻してもなお、救えなかったとあらば…それは運命としか言いようがなかろう」

 

 人生は一度決めた選択は変える事ができない。幾つか制約はあれど、それを変える事ができる私。

 

 本来であれば、やり直し(リセット)などありえない。誰が死のうが、その未来は変える事ができない。

 …諦めるしかない。そんな事は理解している。

 

「それでも…私があの時…!」

 

「ふん。もっと上手くやれたかも、と言いたいのか?この大馬鹿者め!一回目で失敗したから、二回目は上手くいくとは限らん」

 

 ……唯一の、血の繋がった家族だった。喜怒哀楽を共にしてきた。そんな肉親を失って冷静になれ、などと…

 

 

 

「……ほれ、そのページを見てみよ。ふむ……む?お主ら、姉妹では無いのか!?まるで同い年の様な書き方では無いか!」

 

 不意に開いていたページにソティスが反応する。これは…父さんがハルを拾ってきた時の事か。

 そう言えば、ソティスには言っていなかった。

 

「ハルは…成長が遅いの。多分…そもそもの寿命が私達とは違うんだと思う」

 

「むぅ…となるとハルスは何者なのじゃ…」

 

 私が物心付いた時はまだハルは赤子だった。私とハルとの外見も精神年齢もいつのまにか離れていってしまっていた。

 

 

 父さんとハルと過ごしていた時期を思い出す。ハルがまだ私を「お姉ちゃん」と読んでいた時の事だ。

 

 しかし、いつしかそう読んではくれなくなった。父さんの事も昔は「お父さん」と読んでいた。

 その理由は…後ろめたさだろう。

 

 自身が捨て子だったと言う事実を知ってからは態度も余所余所しくなり、私達を名前で呼ぶようになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ハルスは、初めて父の仕事に着いて行った。

 

 仕事が大切な事だとはわかる。でも、その時間は父と姉がいない…それ故に、非常に退屈な時間だった。

 

 何度か着いていきたいと父に願い出たが、もう少し大きくなったら…と先延ばしにされ続けていた。

 

 そんな父を見返したくて、少女は槍を使えるように一生懸命に努力した。

 その甲斐もあり、実力的には申し分ない…と言う事で、渋々承諾して貰った。

 

 初の戦場に於いて、彼女の胸の奥に込み上げてくるものがあった。

 

「はぁっ……はっ…はっ…!」

 

 まだ戦ってもいないのに、やけに息が上がる。何かが、熱い何かが、胸の奥から迫り上がってくる。

 少女の胸のペンダントは発光を始める。

 

「…おい、どうした…?」

 

 ジェラルトや団員が、少女の異変に気付いた時には遅かった。

 

「はぁっ……うぅ…!グガッ…!」

 

「……っ!離れろ!」

 

 服を突き破り、背中から翼が生え、額からは角が伸び、歯は牙へと変わる。

 そうして次第に人の原型を無くし、身体は竜の巨体へと変貌した。

 

 竜は暴れ回り、やっとの思いでジェラルトはそれを鎮め、気絶した少女を連れ帰った。

 

 

 

 

 目を覚ました少女は、自分が異質である事を知った。人としても、家族としても。

 

 

 

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