ベレスに妹入れてみた   作:ひーらぎ@1341

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次の話どうしよう…


7話

 

私達の学級の課題の盗賊団の討伐。すでに戦闘は始まっている。

 

 嫌だなぁ…引きこもっていたい。

 戦場においても、その考えは変わらない。いくら騎士団にお膳立てされている戦場であっても、絶対に命の危険が無い訳ではない。

 

 私達と盗賊達とを隔てるように大きな谷があり、それを繋ぐのは正面と脇道にある一つずつの橋だ。

 

 私は皆んなの後ろで弓を引く。ここならば比較的安全に戦うことができる。別に学級の皆んなを囮にしているとかそうのじゃ無い。後方にて皆の援護をすることだって重要な役割だ。

 

 盗賊達が一人、また一人と斬られ、突かれ、時には私の矢で撃ち抜かれ倒れていく。私が弓を引けば引くほど、その弦が重く感じてくる。自分の手で誰かの人生を終わらせると言うのはこうも苦しいものなのか、でもやらなければならない。私がやらねば誰かが危険に晒されるかもしれない。

 

エーデルガルトさんやカスパルさん。そして先生が前線に立ち、もはや盗賊団はほとんど押さえ込まれている。戦況は有利。

 

 私は気を抜いて、周りの子達から出遅れてしまった。初の実戦訓練をやり遂げた。早とちりながらそう思ってしまった。

 横から、突如押し飛ばされる。私は地面へと押し飛ばされ、倒れ伏す。突然の事で、一瞬思考が停止した。すぐに私が突き飛ばされた原因を確認する。そこには斧を抱えた盗賊らしき風貌の人が…

 

 私に向かって今にでも斧を振り落とさんとしているでは無いか。

 

「ぴぃぃぃぃ!ごめんなさぁぁぁぁい!」

 

 我ながら無様な悲鳴だっただろう。誰かがこの悲鳴に気づいてくれて助けてくれないだろうか。いや、多分無い。私に出来ることなど、目を瞑り、祈ることだけだった。

 

「ファイアー!」

 

 突如、熱気に晒されて、瞑った目をゆっくり開ける。

 

「だ、大丈夫?」

 

 あったのは焼けた盗賊と、ハルスちゃんだ。

 

「あぅぅぅ……ありがとうごさいますぅぅ!」

 

 なんとか助けてもらって、安堵する。この場から一旦離れて皆と合流しようと立ち上がり…あ、あれ?腰が抜けて立てない…

 

「た、立てる?」

 

 へたれ込む私にそっと手を差し伸べてくれた。私はその手を取って立ち上がろうとする。するとびくっとハルスちゃんが震えて、手の力が緩んだ。え、なんで?

 

「あ、いや…ごめん。なんでもない」

 

 すぐに手に力を入れ直し、私を引っ張ってくれた。気には止めず立ち上がる。

 

「歩ける?」

 

「あ、はい、大丈夫です!」

 

 と、言ったものの、まだ力が入らずすぐにハルスちゃんにもたれかかる形になってしまった。

 

「肩、貸すよ」

 

「あぅぅぅ…ごめんなさい…」

 

「べ、別に、気にしないでください。動けない人を放置してた方が危ないので」

 

 赤面しながらそう答えるハルスちゃん。優しい子なんだなぁ。

 なんとか歩き始め、合流を目指す。もう皆んなは正面の橋を越えて進軍している。随分と遅れちゃったなぁ。

 

「え、えと…名前、ベルナデッタ…さん、だっけ」

 

「あ、うん。そうだけど」

 

 あわわ、名前教えたこと無かったと思うのに、知っててくれたんだ。少し嬉しい、かな。

 

「まだ、動けないよね」

 

「う、うん。まだ…って、ひぃぃ!また出たぁぁぁ!」

 

 またもや盗賊団が、今度は2名も私達の元へとやってくる。今、先生達が攻め込んでいる正面の橋とは別に、西側にも一つ橋はあったんだった。裏から攻めたてて、挟み撃ちの形を取るつもりだろう。

 

「は、ハルスちゃん、わ、私も戦うよ」

 

「…………だめ。危ない」

 

「で、でも、一人じゃ二人は…」

 

 間違いなく、私は足手纏いだ。ハルスちゃんが一人を抑えることができても、もう一人は動けない私を狙いに来るだろう。ハルスちゃんは私を置いて逃げる事はしないと思う。この短時間でも、この子が誰かを見捨てられる様な子じゃないことがわかった。

 となると、ハルスちゃんは一人で、二人の盗賊と戦う事になってしまう。それは、厳しい事だと思う。

 どうすれば、なにか私に出来る事は…

 

「ベルナデッタ…さん。目、瞑りながら待ってて」

 

「え、で、でも!それじゃあ!」

 

 私だって、死にたくはない。死にたくはないけど、私のせいで、それに私の目の前で、し…死んじゃうなんて、耐えられない。

 

「大丈夫、死ぬ気なんて、ない。信じて」

 

 そう、真っ直ぐ私を見据えて言う。私を優しく地面に降ろし、盗賊達に向き直る。

 

「目、瞑っててね」

 

 だっと盗賊達に向けて駆け出す。ああ、そんなことをしては…

 彼女が斧に裂かれるところなど見たくはない……私は硬く目を瞑った。

 

 幾度か炎の音と、甲高い金属音。そして何かに驚愕する様な盗賊の声。何が起こっているのかはよくわからない。そもそも音だって全部は拾えていない。

 恐る恐る目を開けてみる。見えたのは盗賊一人と相対するハルスちゃん。と、思ったら、盗賊は後ろへと倒れていった。すでに決着はついていたのだ。

 

 ハルスちゃんって、そんなに強いんだ…という驚きに駆られている最中、私のもとへと歩いてくる。そして、また手を差し伸べてくれた。

 私はその手を取る。すぐにもう自分で立てる事に気づき、服に付いた土を払ってから、ありがとうと一言告げる。

 

「う、うぅ…そ、その、ベレス達と、合流しよう?」

 

 すぐに周囲を警戒する。そんな時、人影が一つ…

 

「おや、見当たらないと思えば、この様なところにいたとは…」

 

 うひゃぁ…ヒューベルトさんだぁ…この人は苦手だ。年上だし、目付き悪いし、不気味だし……引きこもりがいう事ではないかもだけど…

 ヒューベルトさんは苦手だけど、二人だけよりはよっぽど心強い。これできっと安全に合流できるだろう。

 

 あぁ…良かったぁぁぁ…

 

 


 

 

「何か用かしら、ヒューベルト」

 

「はっ、エーデルガルト様、少々お話が…」

 

 

 

 

 

 盗賊団の討伐は非常に順調であった。みるみる押し込まれて行く盗賊達、その表情に余裕は無かった。このまま戦いは終わるだろうと思った。

 

 しかし、ある事が気にかかった。

 

 そう、ハルス殿の姿が見当たらないのだ。戦場において、私との役割は同じはず。軽く見回せば見つかるであろう距離に居るはずの彼女がいないのだ。

 彼女は先生にとっての特別、彼女に何があっては先生の指揮に関わる。

 

 そこで、彼女を探す事にした。前線から離れた位置にて、彼女は見つけられた。

 そこには盗賊団の一味らしき者が二人と、そして地面にへたれ込む、あの後ろ姿は…ベルナデッタ殿か、そしてそれを庇う様にして立つハルス殿…

 

 助太刀を…と考えたが、彼女の手の内を知りたいと思った。もし、ハルス殿に大事がある様ならば手を出す。それまでは静観する事とした。

 

 彼女には何ができるのか、単純な魔法を無制限に使う事ができる。たったそれだけなのだろうか。不思議ではあるものの、それだけであれば、まだ、大した問題では無いだろう。

 

 しかし、そんな事などちっぽけな問題だと、私は直ぐに気付かされた。

 

 状況はよく分からないが、ベルナデッタ殿は何かしらの理由で動けないのだろう。だからハルス殿は盗賊二人に突撃しに行った。無謀だ。私は直ぐに魔法の準備をした。

 彼女は左手で魔法を使い、一人の盗賊を仕留めた。しかし、二人を同時に仕留める事などできず、もう一人は剣を、ハルス殿へと振り下ろす。それを彼女は余った右腕で受けようとした。

 本来で有ればその剣は肉を裂き、骨へと達して、鮮血が散る。そんな光景が容易に浮かぶ。彼女も無事ではいられない筈だ。

 

 しかし、現実は違った。その盗賊が振り下ろした刃は鮮血を散らす事も、肉を裂くこともなく……彼女の腕、その表面で止まっていた。

 

「な、なん…だとぉ!?」

 

 盗賊の声が、私の気持ちを代弁してくれた。

 

 彼女はそのまま、余った左腕で至近距離から魔法を放ち、盗賊は生き絶えた。

 

 今、一体何が……ベルナデッタ殿に手を差し伸べる彼女。ベルナデッタ殿は気づいていない様子だ。あの光景を目にしたのは、私と、そして既に息絶えた盗賊だけだったのだろう。

 

「おや、見当たらないと思えば、この様なところにいたとは…」

 

 私はさも偶然、そして今見つけたような演技をした。これは恐らく、彼女が秘密にしている事の一つだろうと、私は考えたからだ。信頼を得られていない現状、不用意に刺激することは避けたかった。

 

 彼女はすぐに先生のところへと向かっていった。彼女の腕を見てみたが、やはり彼女の袖の部分には切れ口があった。

 

「ベルナデッタ殿」

 

「うひゃい!?なんでしょうか…」

 

「先程、何かおかしな点はありませんでしたかな」

 

「へ、変なこと?な、何も無かった気がしますけど…」

 

 嘘を言ってはいない雰囲気だ。恐らく見ていないのだろう。

 

 腕に何か、鉄板などを仕込んでいる様子は見えない。それでは一体これはどういうことだろうか…

 

「……ハル、その腕」

 

「あ、いや、怪我は、してない」

 

「そう、なら良かった」

 

 先生はさして怪我もしていなく、裂かれた服というのも大したものでもない。それなのに自身の羽織っていた服を一枚、彼女に被せた。その行動がやけに気になった。

 

 

 

 

 

「と、いうことなのですが…」

 

「そう…なら、私もそれとなく探ってみるわ。同性の私の方がやりやすい所もあるでしょう」

 

「はっ、それでは」

 

 エーデルガルト様の目指すべき道、その覇道の障害になることは無い所考えていたが、少々彼女には不安な要素が多すぎる。

 しかし、彼女に手を出せば、先生だけでなく、あのジェラルト殿を相手に回す恐れがある。人望と実力を兼ねそろえている彼と敵対するのは避けたい。

 

「今は…監視を続けるしか無さそうですね…」

 

 彼女は普通ではなく、不安要素である。しかし、我々の力となってくれるのであれば‥

 それにエーデルガルト様も彼女を気に入っている。できれば悪い様にはしたくはありませんな。

 

 

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