かなり難産
「あはは!ハルスちゃん、私とお揃いー♪」
「女の子なんだから、お洒落しないとね?」
「あ、あの、二人とも…そろそろやめてあげた方が…」
私は今、二人の女性にいじめられています。
「ど…どうしてこんなことにぃ…」
その原因は数時間前、軽々しく部屋に招いたのが間違いだった。
「あ、あの…ヒルダ。そ、その、時間…空いてる?」
もちろん普段なら誰かに声なんてかけない。ましてや誰かを誘うなんて。しかし、ヒルダには以前、悪いことをしてしまったので、私からお誘いをしたのだ。
「うん、暇だよ、どうかしたー?」
「あ、いや、えっと…わ、私のお部屋に……どうでしょう」
「…………」
私の顔を見つめて固まるヒルダ。しばらく沈黙が流れる。な、何か喋って欲しい…。迷惑、だったかなぁ。
「え、えっとその」
「うんうん!行く行く!もー!かわいいなぁハルスちゃんはー!」
急に動き出したかと思えば私を強く抱きしめる。やわらかいけど少し息苦しい。
「じゃあ、後で行くからねー!」
軽い足取りで立ち去るヒルダ。私は部屋に戻り、軽く片付けを済まし、ベッドを椅子代わりにしてヒルダの到来を待つ。
……落ち着かず、貧乏ゆすりが止まらない。
ノック音がして、ヒルダの声が聞こえた。扉を開けると…あ、あれ、3人?
「え、あ、あの」
「あ、ハルスちゃーん!お邪魔するねー!」
「うーん、あんまり女の子って感じの部屋じゃないわねぇ。お姉さんが手取り足取り教えてあげようかしら」
「ド、ドロテアさん…」
ヒルダだけ呼んだつもりが、ドロテアと…ええっと、イングリット…さんだったか。
「ど、どうして二人も?」
「だって、面白そうだったもの♪ねぇ、グリットちゃん」
「はぁ…ごめんなさい、ハルス。この2人を一緒に相手するのは難しいと思ったもので、ドロテアは止めようと思ったのですが…」
「うう……ま、まぁ、良いです」
ま、まぁ想定外だが、ヒルダと2人きりというよりは、少し楽になる…かなぁ。話題とかが尽きることは無くなって良いのかもしれない。
「それじゃあ、始めよっか」
「え、何を?」
何かを始めようとする2人。ヒルダとドロテアはそれぞれ小さめの鞄を持ってきていて、中から何かを取り出し始める。
「はい、お化粧道具よ」
「これ、あたしの自作のアクセサリー。まだ試作品なんだけどね」
「え……ちょ、ちょっと待って!」
しばらく考え、この先起こる事を予想しする。
そして部屋から急いで脱出を試みる。
「あ、だめだめ、逃げないでねー!」
ガッとヒルダに腕を掴まれる。な…つ、強い!どこからそんな力が…。引き戻され、拘束される。
「はーい、それじゃあ、手始めに髪の毛から行きましょうか」
笑みを浮かべながらこちらににじり寄ってくるドロテア。こ、怖い。その笑みが怖い。
「た…助けてぇ…」
イングリットに目線でも助けを求める。しかし、「諦めろ」と言わんばかりに首を横に振られる。
「うん、真っ白で綺麗に透き通ってる髪だね。サラサラだし、羨ましいなぁ」
それから、髪の毛を弄られ、お化粧を施され、まるで着せ替え人形だ。
「ほーら、とても可愛くなったわよ。グリットちゃんもそう思うでしょ?」
「うぅ…イングリット…」
イングリットに再度、視線を送る。
「だ、大丈夫ですよ。そ、その、とても愛らしいですよ」
「そ、そう言うのじゃなくて…!」
とうとう、イングリットまであちら側になってしまった。こ、こういうの、柄じゃ無いっていうか…。私には似合わないっていうか…。
「んー、ハルスちゃんの着けてるネックレスって、何かなぁ。うーん…半透明で…見たことない宝石だなぁ」
ヒルダが私が首に掛けていたネックレスに目を付けた。これは肌身離さず身につけている物だ。その先には少し濁った白い宝石が付いている。
「こ、これは…大切なもの」
ジェラルトが私を拾った時から身につけていたそうだ。家族の形見なのだろうと言われている。
「うーん、それならあたしが持ってきたアクセサリーとかはやめとこうか」
私は本当にこれを外したことは無い。と言うのも、もう付け慣れてしまい、外しているとどこか落ち着かないのだ。さらに、外して生活していたら不安で仕方が無い。取り外さないというか、もはや取り外せないと言うのが正しい。
「よし。それじゃあ、お外行きましょうか」
「え…外?」
こ、このまま、外へ出ると言った?
「うんうん。せっかくなんだから、皆んなに見てもらおうねー」
「ひぃ…それだけは!それだけは許してぇ!」
「ほーら、恥ずかしがらずに。グリットちゃん取り押さえておいてちょうだいね」
またもやイングリットに取り押さえられる。そ、そんなぁ。一度ならず二度までも…
「ご、ごめんなさい。でも、自分に自信を持っても良いと思いますよ」
「はーいそれじゃしゅっぱーつ」
「ど、どうしてー!」
ドロテアに右側、ヒルダに左側で腕を組まれ、外を歩き回ることになってしまった。
隣の2人の影響もあり、辺りからの視線もいつもの倍以上になっている。ど、どうかベレスには見つかりませんように…
「あら先生、こんにちは」
「うん、ドロテア。…………ハル?」
「あ、先生、このハルスちゃん。どうですかー?」
なんで会いたく無いと思った矢先に出くわしてしまうのだろう
「…………」
しばらく無言になり、私を見つめるベレス。
「先生?どうしたんですかー?」
まだ無言が続く。な、なにこの時間…
そして、突如ベレスの腕が私に伸びる。
「ちょっ、ちょっと!なんでぇ!?ベレスー!」
ベレスに強引に連れ去られる。は、速い!どこに連れてかれるの!?周りからの視線もまた集まり、恥ずかしい。
「ちょ、やめて…離してぇ!」
この後、走り回ってたのをセテスさんにに怒られた。
ハルスちゃんはコミュ弱なので、人を誘うことなんてできません。(実体験)