終わりが見えてきたゲームの実況プレイ、続きます。前回はアナスタシア姉貴が噛まれて感染したところで終わりましたね。今回は丸1日飛ばしたところから再開です。
そんなわけで11日目、アナスタシア姉貴は薬と水で完全復活しました。復活! アナスタシア姉貴復活! などと言いつつ、朝ごはんの時間なので席につきましょう。しかし……なぁんかめぐねえさっぱりしましたね。髪切った?*1
あとめっちゃ距離近いっすね、アナスタシア姉貴の真横に座ってご機嫌に朝飯食ってます。断髪式を終えて別人のようになるなんてまるでルーク・フォン・ファブレみたいだぁ……。*2
──はい。
ちなみにアナスタシア姉貴の現在の格好は、ショッピングモールで着せ替え人形にされてたときにくるみ姉貴から渡されたスーツ姿です。
コートとセーターは噛まれた際に血で汚れたので洗濯中らしいですが、つまり服を脱がされたということです。裸を見られた以上はもうお嫁にいけないので、めぐねえは責任取って♡
……さて、本日の予定は最終イベントに向けての前準備であるお手紙イベントを発生させます。後回しにしようと思いましたが、悪党がやって来た以上、そろそろ脱出を目的にするべきでしょう。それでは風船を求めて売店へ。スーツにティハールのみで武装していざ鎌倉。
くるみ姉貴とゆきちゃんを連れて購買へ向かい、風船を探しましょう。
……おっ、ありましたね。あとは理科室からヘリウムガスを発掘してフラグを発生させ、お手紙イベントを強引に起こします。オラッ! 理由はともかくさっさと手紙を書け!
よく分からないまま手紙を書いて座標を刻み込んで、終わり! そいだば屋上で風船にヘリウムガスをつうずるっこんでから紐で入口を縛り、ビニールに入れた手紙とを繋いで飛ばします。
──ヨシ!(ロシア猫)
それではめぐねえの皿洗いを手伝うところで短いですが今回はここまで。次回、アナスタシア姉貴の素性を話します。ではまた。*3……*4
──快復したアナスタシアがリハビリを兼ねて二階の購買に向かった際、ゆきがどこからか風船を見つけて持ってきた。
「ねーねーアナさん」
「……ン、なんだ?」
「風船見つけた!」
「そうか……」
「これ何かに使えないかな?」
「……どうかな」
空気を入れると膨らむなら、可燃性のガスを注入すれば爆弾に使えるかもしれないが、それなら普通に爆弾を作れば済む話である。
「爆……じゃなくて、そうだな。膨らませれば良いんじゃないか?」
「おー、天才!」
「そうか」
アナスタシアの脳裏に、ふと、幼い頃の記憶が甦る。母親に連れられて歩いていた道の途中、なにかの記念で渡された風船。──核戦争が起きたのは、その直後だったか。
慌てて逃げる人々。地下鉄に逃げることを選んだ母。その近くには、赤子を連れている母親も居たような気がするが定かではない。
「アナスタシアさーん、そろそろ上に戻ろうぜ……ってなぁに見つけたんだ?」
「風船だよくるみちゃん! あとで皆で膨らませて、最後まで破裂させなかった人が優勝のチキンレース……しよう!」
「しねーよ」
「あぁん……」
バッサリと切り捨てられたゆきはぶうぶうとヤジを飛ばしながら購買を出たくるみとアナスタシアの背中を追う。ちらりと
「風船、か」
「まさかあんたも風船で遊ぼうって言うんじゃないだろうな……」
「いや。だが……良いんじゃないか、一回くらい遊んだって罰は下らない」
「そうかねぇ。でも風船飛ばすならヘリウムガスが要るし……ああでも実験室にあるか」
はた、と立ち止まり、くるみとアナスタシアは顔を見合わせる。
「出来ちゃうな」
「……やるか?」
「……やりますか」
それから困ったように眉を片方上げて、二人は口角を緩めていた。
「──それで、お手紙……ですか」
「ああ。風船につけて飛ばして、遠いどこかの誰かに届けよう……ということらしい」
「成功……するんでしょうか?」
「さて、それはわからん」
机で手紙を書いているゆきを見ながら、アナスタシアはあっさりと否定する。
「でも──なにもしないよりはマシだろう。ほんの僅かにでも希望があるなら、誰だってそれにすがりたいんだ。私だってそうさ」
「アナスタシアさん……」
「私の仕事は、ああいう子供を守ることだからな。今日くらい、好きにさせてやれ」
「そうです────ねぇっ!?」
慈は突然うなじに刺激を受けてすっとんきょうな声を上げる。口の端を吊り上げて笑うアナスタシアと、柔らかい感触だった事から、不意打ちでうなじに口を付けたのだと察した。
「っ……アナスタシアさん!」
「髪が短いと、しやすくていい」
「……っ、も、もう……」
生徒会室の壁に寄りかかるアナスタシアは、顔を隣に立つ慈の髪にうずめてまぶたを閉じる。少ししてゆきが手紙を書き終え、それからヘリウムガスのボンベを担いで屋上に向かう。
風船にガスを詰めて浮かせて、手紙と絵、それに書き込んだこの場所の座標を再確認して──ビニールに入れて紐で風船と繋ぐ。
風に乗って何処かへと飛んでゆく風船を見送ってから実験室に戻すべくガスボンベを担いだアナスタシアに、気になったことをくるみが問う。
「なあ、ヘリウムって爆発しないのか?」
「ヘリウムは不活性ガスだから、しない。勢いよく噴射したら危ないし、ボンベが破裂したら破片で怪我をするが。気を付けろ」
「へぇ~~~」
また一つ賢くなったくるみと共にボンベを戻し、生徒会室へ。アナスタシアは慈の皿洗いを手伝おうとスーツを脱ぎ、ワイシャツの袖を捲り髪を後ろで縛ると台所に立った。
「……む、む。こうか?」
「ええ、上手ですよ……」
「おお……泡が……」
「洗剤は出しすぎないように、スポンジの柔らかい方で泡立てて、固い方で汚れを落とすんですよ。力も入れすぎないように」
「ンン、難しいな」
「ふふ、変なところで可愛いですよね、アナスタシアさんって」
「……そうか」
殆ど密着しているような距離で、肩を密接させながら台所に立つ二人の背中を見ながら、くるみを筆頭に悠里達が口を開く。
「もう完全に夫婦のそれなんだわ」
「良いんじゃないかしら、めぐねえってその……言ったらなんだけど、なんだかんだで恋人とか出来なさそうじゃない?」
「……先生とはそんなに顔を会わせたことないですけど、なんかわかるんですよね」
「あ、その意見私だけの考えじゃなかったんだ。良かった仲間がいて」
「この場合、アナさんがパパなのかな」
くるみの意見に悠里が同調し、その意見に続けて美紀が答える。しれっと辛辣な意見にも関わらず誰も指定しない現状に圭もまた口を開き、最後にゆきが爆弾を落とす。
「──酷い言い草だ」
「なにか?」
「なんでもない」
皿を洗う水の音で聞こえなかったらしい慈はアナスタシアの肩に頭を置きながらそんなことを言うが、アナスタシアの耳は鮮明に背後の井戸端会議を聞いていた。些細な音をも拾わなければならない地下鉄で鍛えられた聴覚故である。
「……なあ、メグミ」
「はい?」
「……夜になったら、全部話す」
「──それ、は」
手に付いた泡が水で流れてゆく様子を目で追いながら、彼女は慈に言う。
「私が何者で、どんな人生を歩んで、どうしてここに来たのかを、話したい」
「……無理をしなくても良いんですよ」
「無理はしていない。それに私は……メグミ達だからこそ、話したいんだ」
きゅっと水道の蛇口を閉めて、タオルで腕を拭く。結んだ髪をほどいて、アナスタシアは自然な動きで慈の腰に手を回す。
「──んっ」
ちゅっ、ちゅっと音を立てるキスをする二人を前に、くるみはげんなりとしていた。
「…………コーヒーくれ」
「耐えてください」
次→そのうち