「のうおぉぉぉぉ!倫也先輩!二本立てですよ二本立て!」
「おめでとう。出海ちゃん」
「これはもうメインヒロイン交代でいいんじゃないですかね??」
「それなんて死亡フラグ?」
スライディング土下座する出海。その先には恵は困った顔をしている。
「出海ちゃん、そうやってわたしのイメージを下げるのやめてくれないかなぁ?」
「倫也先輩、恵先輩がしゃべりましたよ!」
「加藤ぉ・・・・」
涙目になる倫也。もはや主人公としての風格とか威厳とかまったくない。
「というわけで、今回は健気で可愛い後輩ヒロインの癒し方ボツ原稿集になります♪どうぞー」
「たくましいなぁ・・・」
※ ※ ※
短編と倫也とのデートを勝ち取った出海は朝からテンションが高かった。待ち合わせのテンテコ舞浜駅に少し早く着いた。LINEの着信。
「お兄ちゃんからだ」
>出海おめでとう。メインヒロイン昇格が決まったよ!
「なんと?ついに世間がわたしに追いついた?」
もう気分は過去最高である。続いて、倫也から電話がかかる。
「ん、倫也先輩?」
「ごめん、出海ちゃん・・・なんていうか説明しにくいんだけど、でも人の命に係わることなんだ。詳しいことはまた後で連絡する・・・ちゃんと報告連絡相談するから・・・」
「・・・」
出海が呆然としていると恵からも電話がかかってきた。
「出海ちゃん、メインヒロイン変わってくれてありがとう」
「・・・」
「うわぁーん」
泣き出す出海。「ドッキリ」のプラカードをもって現れる倫也。
【本編】
※※※
出海がストロベリーチュロスを持っている。
「・・・とまぁ、こんな風に険悪になったときにですね・・・」
出海が倫也と反対側を向いて、もごもごしている。もご・・・もご?もごぉぉぉぉ!!
「出海ちゃん一本は無理だから!!」
「こうひゅるんでふ」
「ぶはっ!」
そのあと噛めないし口から取り出せないしでスタッフが大変でした。
※※※
お城の前の広場で出海が絵を描き始める。ここは用意しておいたくだらないエピソードトークでつなぐ。
「このツンデレラ城のツアーって、クルーが案内してくれて、最後の敵を倒すと記念メダルがもらえたんですよ」
「ほう」
「でももらえるのは一人だけで、手をあげて立候補するんです。わたしまだ臆病でなかなか手をあげられなくて・・・でもお兄ちゃんが代わりに倒してメダルをもらってくれたんです」
「伊織ってなんだかんだいいやつだよな」
「その後、悔しくってなんどか挑戦したんですよ。そしたらその都度お兄ちゃんがメダルもらってました・・・」
「さっきの取り消すわ・・・」
「だからうちにはメダルが5個あるんですけど・・・ああいうのに選ばれるのも才能なんですかね?」
「そのクルーって女性?」
「たぶんそうだと思うけど」
「才能なんじゃないか・・・」
「ですよねぇー。あっ、倫也先輩できました!」
出海が倫也に絵を見てもらう。
その一枚絵は丁寧に描かれていた。背景のお城とその前に広がる広場。そこには倫也と伊織がいた。倫也が離さないように強く伊織を抱きしめている。じっと身を任せる伊織。
「って、実の兄をBLネタにするのやめようよ!」
「テヘ」
※※※
「ただ最後だけ滝があるので、その時は両手を万歳してください」
「どうして?」
「そのほうがいいからです?お願いします」
「わかった」
そして、コースター滝を急降下で降りる。
「ギャー」
「脱出!」
出海が謎のボタンを押す。
シュバァーーーー!!
倫也の座席が空中へ飛んでいく。
※ ※ ※
「まだ何かあるの?」
「写真が出来上がるんです」
二人でショップの前で待つ
「これですこれ」
「おおっ、って出海ちゃん何しているの?」
「これは隣で絶叫している倫也先輩とそのほっぺにチューする可愛い後輩ヒロインです♪」
「もう安全ベルトはずしちゃってるじゃん・・・」
※ ※ ※
出海が両手を差し出す。倫也が手をぎゅっと握る。
「・・・50」
倫也は恥ずかしくて出海をみていられない。その目線が泳ぐ。
「・・・40」
そして倫也の目線の先には・・・
「・・・っ!!」
倫也が出海の手を払って駆けだした。
そして恵を抱きしめる。
「・・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・もうどこにも・・・はぁ・・・いかないでくれっ!」
恵が倫也を突き放す
「ちょっと走りすぎじゃないかな?」
「はぁはぁはぁ・・・」
「リテイク」
「・・・加藤ぅ」
※※※
出海が両手を差し出す。倫也が手をぎゅっと握る。
「・・・30」
倫也は恥ずかしくて出海をみていられない。その目線が泳ぐ。
「・・・20」
そして倫也の目線の先には・・・
「・・・っ!!」
倫也は出海の手を払いのけようとするが、すかさず出海が倫也の手をつかむ。
シュババババッ
激しい攻防が続く。
それをため息つきながら眺める恵
「・・・リテイク」
※※※
出海が両手を差し出す。倫也が手をぎゅっと握る。
「・・・30」
倫也は恥ずかしくて出海をみていられない。その目線が泳ぐ。
「・・・20」
そして倫也の目線の先には・・・
「・・・っ!!」
倫也は出海の手を払いのけ、猛然とダッシュする。
すかさず反転して追いかける出海。そして倫也の足にしがみつく。
出海を引きずりながら進む倫也
「・・・もうどこにもいかないでくれっ!」
恵はジト目で出海を見下ろす。負けじとにらみ返す出海。
「・・・出海ちゃん」
「こ・・・このドロボウ猫!!」
さすがに固まる倫也とスタッフ
しゃがみこんで出海ちゃんと目線を合わす
「そうだね、出海ちゃんの言う通りだよ、わたしがドロボウ猫でしたぁー。ごめんなさい。これからは、メ・イ・ン・ヒ・ロ・イ・ン・・・がんばってね」
「うわぁー。ごめんなさいごめんなさい。調子乗りすぎました!」
「・・・(ため息)」
額を地面につけて土下座する出海
「そういうのパワハラしてるみたいになるから、やめてくれないかなぁ?別に怒ってないよ?」
「恵先輩・・・」
「加藤・・・お前、顔と言葉が一致してねぇぞ・・・」
「ねぇ出海ちゃん。このネズミーランドって走って一周すると何分ぐらいかかるの?」
「えっ、そんなの知りませんよ?」
「そう・・・?」
「・・・」
「何分ぐらいかかるんだろうねぇ?」
猛ダッシュでその場から走りだす出海
「おまえなぁ・・・」
「ナニ?アキクン?」
「なんでもありません、恵さま!」
ヘトヘトになって出海が戻ってくる。
「何分でしたか?」
「えっ?測ってないよ?」
「・・・」
「出海ちゃん、わたしは別に走って確かめてきてなんて一言もいってないよねぇ?」
「すみません」
「それに、他のお客様にも迷惑になるし、事故が起こるかもしれないし、よくないと思うんだよ」
「すみません」
「そういうわたしがパワハラをしているみたいな演出はほんとやめてくれないかなぁ?」
「はい!次は台本通りがんばります!」
「うん。次はちゃんと測るね。よーい・・・どん!」
「恵せんぱーい・・・」
走っていく出海。
※※※
出海が両手を差し出す。倫也が手をぎゅっと握る。
「・・・30」
倫也は恥ずかしくて出海をみていられない。その目線が泳ぐ。
「・・・20」
そして倫也の目線の先には・・・
「・・・っ!!」
倫也が出海の手を払って駆けだそうとすると、出海はすかさず倫也にカニばさみをかけて倒す。流れるような体術でそのまま蠍固めをキメた。
BGMが『The curse of the main heroine』になる。
「あれ・・・倫也先輩・・・」
「やりすぎだよ・・・出海ちゃん・・・」
コツンッ・・・コツンッ・・・コツンッ・・・
足音が近づいてくる。
「だって・・・倫也先輩・・・わたし・・・台本通りに・・・」
出海が顔を上げる。そこには加藤恵が立っていた。
「ごふぅ・・・!」
出海が吹き出す。倫也は俯いたまま顔をみない。
そこにはチュロス半分を口にいれた恵が立っていた。
「おしゅふぁい」(おしまい)
【エピローグ】
「お疲れー」
美智留が『The curse of the main heroine』の演奏をやめる。
「なかなか良かったわよ、波島さん」
「やるわね、波島出海!」
出海は恵の元へいき頭を下げる。
「ご指導ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
恵もペコリと頭を下げた。
「澤村先輩、カメラ上手くとれました?」
「ばっちりよ、あたしを誰だと思っているのよ」
「ありがとうございます!」
「よし。予定よりだいぶ時間すぎたし、どこかで飯でも食おう。俺がおごるよ」
「おっ、トモ、気前がいいな」
「音声担当をしてくれてありがとう、美智留」
「ずいぶんと売れたみたいですものね。あのソフトは」
「おかげさまで。今作もよさそうです。脚本と演出の詩羽先輩」
「やっぱりこういう場所だと映像が映えるわよね」
「それはカメラ担当の英梨々のおかげだよ。ありがとう」
「なんか、照れるわね・・・」
「助演女優の出海ちゃんもお疲れ、いい演技だったよ」
「はい!ってあれだけやっても助演なんですねぇ・・・」
「主演にしようか?」
「いえ!けっこうです!」
「・・・それから加藤もおかえり」
「・・・ただいま。安芸くん」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あのぉ加藤・・」
「あのね、安芸くん・・・」
「あっ・・・」
「えっと・・・」
「・・・」
「・・・」
見つめ合う二人。
優しいメロディーを奏でる美智留。
次の台本をチェックする出海
ため息をつく詩羽
そして、ふてくされた顔で英梨々が言う。
「もう、キスでもして、さっさとこの物語を終わらせなさいよ」
倫也と恵がお互いを見てうなずく。
「せーの」「せーの」
こうして一つの物語が終わり、次の物語がはじまる。
【エピローグ②】
「って、なんですかこれはぁぁぁ!主演はわたしです。わたし。これはわたしの短編のボツ集ですよ。ボツですボツ。なかったことです。わかりますか?」
出海が肩を揺らして激しく息をしている。どこかを走ってきたのだろうか。
「・・・そういうわけで、メインヒロインを呪いとして扱うこの負け犬シリーズも折り返しといったところでしょうかね・・・。では次の負け犬ヒロインの育て方5もよろしくお願いします!」
出海が周りをキョロキョロみて警戒している。
「あと、倫也先輩と恵先輩の二人がでてくるとラブラブ展開になるのは断固反対します!人の短編の中まででてくるのはずるいです!ヘイト集まりますよ!」
出海がため息をつく。
(了)
負け犬5に続きます。