灰燼~アラミゴの風~   作:みずき

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ざっくり書いたので後で修正するやもです。


刺と毒

 結局、ロージアンに連れられるようにして俺は目的の集落に到着した。集落に入った途端に通りすがりの木こりの老人が話し掛けてきた。

 

「お、ローヴァンテノー。見回りか?」

 

 どうやらロージアンではなく、ローヴァンテノーというのが本当の名前らしい。確かにローヴァンテノーという名前の方がしっくりくる。ロージアンだとフォレスターにしては短いし、据わりが悪い気がしていたのだ。俺が本名を聞いても何とも思わなかったのか、ローヴァンテノーが笑みを浮かべて返事をする。

 

「ああ。この子が襲われていたんだ。転んだらしいから手当てをしようと思ってな」

 

 誰が転んだ。という突っ込みは今は不要だ。俺はローヴァンテノーの影に隠れるようにして老人の目を避けた。すると老人が嫌われたかな、と苦笑してから手を振って去って行った。

 

 そのまま俺は監視用の建物に連れられた。やっぱりそうなるか。半ば諦めて俺はローヴァンテノーに言われるままに建物の二階に上がって部屋に案内され、勧められるままに椅子に腰掛けた。するとローヴァンテノーは弓と矢筒を壁に立てかけ、テーブルを挟んで俺と向き合う格好で腰掛ける。

 

 もしかして尋問か。しかも子供のふりをしているのだ。怪しまれても仕方ない。俺が身構えるとローヴァンテノーが困ったように笑う。

 

「大丈夫ですよ、ぺこねこさん。無理にお話を訊いたりはしないので」

「じゃ、何でこんなところに連れてきたんだ」

 

 監視塔はローヴァンテノー以外には誰もいない。他の誰に話を聞かれることもないからと連れてきたのだろう。俺はそう考えていた。が、ローヴァンテノーは苦笑をすると席を立ち、壁際の戸棚を開けて中から木箱を取りだした。

 

 こういうのも俺が感心するところだ。グリダニアは木工細工が得意な職人が数多く、テーブルや椅子だけでなく、身の回りの小物なども木で作ってしまう。戸棚などもだが、宿屋にあるような背の高い椅子やカウンター、ベッド、建物などの大型のものまで作られている。木工細工の職人だけではなく、革職人も多い。グリダニアに手先が器用な民が多いことがよく判る。

 

 ローヴァンテノーが木箱から取り出したのは薬瓶だった。

 

「おいおい。俺は怪我なんかしてねえよ」

「駄目です。擦り傷でも放っておくと良くないですから」

 

 そう言ってローヴァンテノーが俺の橫にしゃがみ込む。

 

「ちょっと待て! 擦り傷なんか」

 

 そこまで言った俺はローブの上から膝をつかまれてうっかり顔をしかめてしまった。くそ、さっき攻撃を避けた時に下草で擦ってしまったのを見られていたらしい。俺は渋々ローブをめくり、ズボンの裾をまくった。

 

 膝に出来た擦り傷にローヴァンテノーが薬瓶の中身を塗りつける。俺はそれを見ながらぼそりと呟いた。

 

「おまえはおかんか」

「おかん?」

「おまえは母親かって言ってんだよ! この程度、ほっとけば治る!」

 

 照れ隠しに早口で言って、俺はそっぽを向いた。すると背負っていた荷物が急に動く。驚いた俺は慌てて荷物をテーブルに乗せた。すると荷物の口の隙間からカーサが顔を覗かせた。

 

「おいおい、まだ出ちゃ駄目だろ」

 

 もしかしたらカーサは聞き覚えのあるローヴァンテノーの声を聞いて出てきたのかも知れない。それに俺も普段通りの喋り方に戻っていたから平気だと思ったのだろう。カーサはもぞもぞと荷物から這い出して俺の肩にちょこんと乗った。今だけだぞ、と言い置いてから、俺は何気なく膝に目を落とした。

 

 いつの間にかローヴァンテノーが俺の膝に白い布を巻き付けている。そこまでしなくても、と言いかけた俺は、ローヴァンテノーが苦い顔をしていることに気がついた。

 

「この程度、ではありません。あの辺りの茂みには刺のある植物が群生しているんです。毒性が強いものもあるので、すぐに手当てをしないと危険なんです」

 

 そう言ったローヴァンテノーの手にはごく細い緑の尖った物が二個乗っていた。どうやら俺の膝に刺さっていたのを抜いてくれたようだ。だから薬を塗ってから布まで巻いてくれたのだろう。親切はありがたい。……のだが、ローヴァンテノーはどうしてここまでしてくれるのだろう。俺は見るからに怪しい訳で、下手をすると捕まって連行されるのではないかとヒヤヒヤしていたのだ。

 

 だがその謎はすぐに解けた。ローヴァンテノーがさて、と言い置いてからテーブルに乗せたのは小さく折り畳まれた紙片だった。俺はそれを見て目を疑った。次の情報交換の相手は酒場の店主だったはずだ。

 

 俺はふと気付いた。もしかしてローヴァンテノーはこちらの様子を見ているのかも知れない。俺はまだ知らんふりをすることに決めた。

 

「なんだよ、それは」

「ちょっとした行き違いです。いつも私が近くの酒場で受け渡しをしていたものです」

「はあ?」

 

 橫を向いて素知らぬ顔をする俺をよそに、ローヴァンテノーがテーブルの上で紙片を広げる。俺はさすがに驚いて慌ててそっちを見た。

 

 こんなとこで広げる奴があるか、馬鹿! と、言いかけて慌てて言葉を飲み込む。

 

「グリダニアはアラミゴをかなり警戒しているものの、今は様子見と言ったところでしょうか。上はこちらから動くのは得策ではないと考えているようです。ですが」

 

 小声で話すローヴァンテノーにつられて俺は身を乗り出した。こちらはグリダニア特有のエレゼンの古代文字を混ぜた暗号になっている。古代文字を知っていても簡単には読めないのだ。それを見てこれは本物だと俺は確信した。

 

「仕方ない。読むか」

 

 俺は心の底からため息を吐いて荷物からグリダニア用の解読表の書かれた木の板を取り出した。ローヴァンテノーには全部見抜かれてるのだ。この密書が本物だということがそれを表している。それなら遠慮することはない。俺はさっさと書かれた内容を読んだ。

 

 アラミゴの情勢を詳しく教えて欲しいというのはいつものことだ。だが続けて書かれていた内容に俺は思わず驚いてしまった。グリダニアのお偉方がアラミゴと内密に話し合いをしたいと考えているというのだ。

 

「冗談……じゃなさそうだな」

 

 ぼそりと呟いて俺は赤い印のついた紙片をローヴァンテノーに差し出した。すると今度はローヴァンテノーが解読表を出そうとする。俺はそれを制して自分のものを貸してやった。どうせ解読表の内容は同じなのだ。

 

「アラミゴ魔獣軍団……本気ですか、これは」

「らしいな」

 

 アラミゴはグリダニアを警戒している。だがこのところ、商人たちから取っていた通行料が入りにくくなった。楽な方法で稼ぐことしか知らなかった者たちが焦るのは仕方ない。が、彼らはとうとうグリダニアを攻めることで利益を得ようと考えたらしい。

 

 そのためにアラミゴ魔獣軍団を率いてグリダニアに攻め込むという計画があるという。国境であるベロジナ川を越えて、だ。それらの情報は俺ではなく、他の密偵や軍の連中から得たものだ。

 

 俺はアラミゴの密偵もやっているが、同時にグリダニアに情報も流している。どちらにも情報を流すことで情報料はそこそこ取れる。アラミゴの方はそこまでではないが、グリダニア側はかなり気前よく払ってくれる。このご時世、基本的に物々交換で取引されるので金など価値もないに等しいのだが、この先を考えたら貯めておいて損はない。……まあ、俺が生きてる間に使えるかどうかは知らないが。




アラミゴの話のはずが……グリダニアの方が多く……w
もうすぐ戻りますからー!(汗)
多分ですけども!
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