灰燼~アラミゴの風~ 作:みずき
設定は盛りましたが、エオルゼア史実と違うかもです。
アラミゴは東側の国からの侵攻には徹底的に防戦するために高い壁を築き、それもあってか勝ち続けてはいる。だが西側のベロジナ川の下流の方では不穏な動きがあるらしい。魔獣軍団に属しているせいか、その手の噂はよく耳に入ってはくる。軍団の中にはそういう噂話を売っては小銭を稼いでいる奴もいる。まったく、この国は世知辛い。
だが竜騎士……おっと。パイク兵と言った方がアラミゴでは通りがいいな。パイク兵の俺にはその手の話は関係のない。
ん? パイクが判らない奴もいるのか。
パイクというのは長い槍のことだ。パイクを用いて戦うパイク兵は防衛戦では必ず派兵される。俺はパイク使いではあるのだが、普通ではない任務に就いているため、そういう意味では楽なのかも知れない。
ちなみにパイクという名前はふらんすごのpique(ピケ)をえいごでpike(パイク)と読ませた言葉である。
それを言ったらグリフィンはえいごのgriffinで、ふらんすごだとgriffon(グリフォン)になるし、他にもどいつごのGreif(グライフ)とか、にほんごの鷲獅子(しゅうしし)なんてのもある。グリフィンは翼と上半身が鷲で、下半身がライオンという伝説のいきも……。
あれ? ふらんすご? えいご? 何だ? 食い物か? まあ、野獣の類ではなさそうだし問題ないか。
それはいいとして。
出没する野獣や魔獣は倒した後、皮を剥げるものは剥ぎ、食える肉は食う。だが獣の中でも魔獣の多くは殺しても使えるところの方が少ない。今のアラミゴは決して豊かな国ではないが、飢えて死ぬ者が大量に出るほどではない。貧しいが一応は生産力はある。
ただ、問題は山岳地帯に囲まれた厳しい環境である、ということだ。家畜を飼おうにも厳しさに耐えるものしか飼えない。騎獣グリフィンは餌もさほど要らないし、元々、この辺りで生きていた魔獣だから問題はない。けれど外から持ち込んだ家畜はそうはいかない。だから畜産も貧弱で、肉や乳など必要最低限の量しか確保出来ない。
辺りの山から鉱石などの資源は採れるため、それを交易品として商売は出来る。……のだが、通行料の問題もあって、近頃では商人もなかなか入ってこないから産業と交易のバランスも崩れている。まあ、鉱夫は戦士として働ける者ばかりだから、食いっぱぐれることはないが。
だからアラミゴは傭兵として出稼ぎしている者も多い。屈強な身体で相手を叩きのめすという、判りやすい戦法を用いる、要するに筋力にものを言わせることが殆どなのだがそれでも勝つのだから問題はないのだろう。……俺には向かない戦法だ。
他にもパイク兵はいるが、彼らは国を守るのが主な仕事だ。国王を守り、攻めてくる者を追い返す。広いスペースを活かし、長い柄を振り回して一刀両断にする、というのが基本の戦法だ。パイクを力任せに振り回す腕自慢が命知らずに駆けてくるのだから、相手はたまったものではない。だからなのか、アラミゴのパイク兵は今のところは無敗を誇る。
武器の長さ故か、パイク兵と騎獣兵を兼ねている者は少ない。その少数がパイクを担いで騎獣グリフィンを駆り空を行く。……のだが、グリフィンは長距離を飛べないという弱点がある。しかも幼獣の頃からしっかり躾けないと自由に操れない。戦闘に使うには不向きなため、偵察任務が多くなる。俺もまあ、パイクを使ってはいるが、グリフィンを駆りながら空から攻撃なんてしたことがない。投擲するにはパイクは長すぎるのだ。
戦いに特化した国家、それがアラミゴだ。山岳地帯に元から暮らしているものですら、今ではアラミゴに取り込まれている。生きる為の糧を得る代わりに戦力になっている、という訳だ。
この辺りはそういった血なまぐさい話とは無縁に見える。長閑な風景を眺めていると、森の所々にある取引所が見え隠れする。この辺りには木工細工を生業とする職人と材木売りが商売する取引所が、木の上に設置されているのだ。この付近に出る獣は高くは飛べないものだけだ。だから取引所も木の上にはあるのだが、それほど高さはない。
彼らがいなければ俺も困る。何しろ俺が使っているパイクは彼らの手製の品だ。腕の良い職人との取引はなかなか難しい。何しろアラミゴには外からの商人が殆ど来ないのだ。もちろん職人だって外からは入ってくることは滅多にない。アラミゴで生きている職人の殆どは祖先が移民で、家業を受け継いでいるのだ。
俺は馴染みの職人が見える程度に高度を下げた。俺の乗るグリフィンの羽根はとても大きいが、音を殺して飛ぶことが出来る。優秀な騎獣だから譲って欲しいと言われることもよくある。が、さすがに金で変えられる相棒ではないので、話を持ちかけられるたびに断ることになるのだが。
材木屋と話をしている、と思っていたのだが、職人が話していたのはこの辺りでは珍しい木こりだった。黒衣森ではよく見かけると聞いたことがあるが、一人でこの森にいる木こりは初めて見た。大抵は通行料の高さに辟易して一人では森越えはしてこない。少なくとも通行料に見合う人数で来るのが普通だ。
アラミゴには木こりはそれほど多くない。交易が盛んだった頃はけっこう居たというが、今では滅多に見ない。木を切っても職人が少なすぎて儲からないのだ。通行料を支払って入って来る木こり達はある程度の量の原木を刈り取り、材木職人に一気に品を卸す。だから取引所にも原木が積まれているところがある。中にはちゃっかりと取引所を工房にしている職人もいるという。
軍事国家といわれるほど、軍事に傾いたアラミゴに多いのは兵士は勿論だが、やはり鉱夫も多く、次に多いのが冶金職人だ。冶金職人は鉱石から金属の精製だけでなく、加工までを行う。槍の刃は彼らが作っているのだ。
パイクの刃も当然……高い。が、幸いなことにこれらは兵士には無償で支給される。命を賭けて戦うのだから当たり前といえば当たり前だろう。
俺はもう一度、取引所にいる職人を見た。木こりとの話は続いているらしい。
「カーサ。降りるぞ」
声を掛けなくても手綱をたぐれば思い通りに動いてくれるのだが、俺はグリフィンのカーサに話し掛けた。するとカーサがゆっくりと職人の方に向かう。職人も俺に気付いたらしく、木こりとの会話を中断して空を仰いで手を振ってみせた。
「ぺこねこさん! 今日は見回りかね?」
気さくに話し掛けてきたのは職人のオヤジだ。それまで会話していた木こりは近づくと随分と若い男だということが判った。しかも細身のエレゼンだ。ゆっくりと着地したカーサの頭を撫でてから、俺は鞍から飛び降りた。パイクを担いで二人に近づく。
取引所の入り口近くに降りたカーサの身体が仄かに光を帯びて一気に縮まる。子供より小さくなったカーサが俺の肩に飛び乗る。この大きさになれるからこそ、グリフィンの餌にはそれほど困ることはないのだ。
「珍しいな。ここで一人で木を採っているのか?」
馴れ馴れしいかとは思ったが、俺は気取らない口調で訊ねた。すると若い男がぎこちない笑みを浮かべて頷く。
「黒衣森で伐採していたんですが、うっかり迷い込んでしまいまして。帰り道を教えてもらっていたんです」
どうりで。そう思いつつ、俺は職人のオヤジと顔を合わせて頷いた。
パイク、厳しい環境、山、傭兵。
それらの単語から連想するのはスイスですかね。
なのでスイス的な感じで書き直しました。
あくまでも自分が思うスイスなので、スイスの歴史とは違うと思いますw