ダンジョンで英雄を目指さないのは間違っているだろうか 作:神無月雫
「1万と9千ヴァリス。今日もたくさん稼ぎましたね~」
日もだいぶ暮れてきた時間。ギルドで魔石やドロップアイテムの換金をしてきた帰り道。俺とソフィアはのんびりそんな話をしていた。
「都やローラにも言われたがそんなに稼いでいるのか?この前ライラプスのサポーターでついていったときのほうが稼ぎはよかったが」
「そうですね~。私が聞いた話だと下層あたりでLv.1の冒険者5人パーティが一日ダンジョンに籠ったらだいたい2万5千ヴァリスぐらいの稼ぎになるそうですよ」
「そんなもんなのか」
「そんなもんみたいですよ。もちろん個人差はあると思いますし、私から見たらアルは敵を倒すペースがだいぶ早いですからね~。少なくとも普通のLv.1の冒険者たちよりは多く稼いでると思いますよ?」
「あまり実感がわかないけどな」
自分の知る先輩と比べるとそんな気は全然してこない。彼らや傍にいるソフィアと比べると自分なんてまだまだだ。
そんな自分を見てソフィアは苦笑いをする。
「アルは比べる相手が違うと思いますよ~。ライもミヤちゃんも私も
そう話しながら2人で先日サポーターとしていつもより下の階層へ行ったことを思い出す。
「あの時は11、12階層をメインで回っていた上にライとミヤちゃんが喧嘩?勝負?を始めてどんどん敵が倒されていきましたし、インファント・ドラゴンも出てきたのもあってたくさんドロップアイテムや魔石がありましたからね~。あの時は拾うのも運ぶのも大変でしたね~」
少しだけ下の階層を見学するのもいいだろう、と言った先輩の一言から始まった11、12階層見学だったが、下りたら下りたで「このくそ女狐ぇ!!」という
ちなみにその日の帰りはドロップアイテムが持ってきたバッグに入りきらなかったため警護役の1人を除いて4人でドロップアイテムを両手に抱えて地上まで持っていったな。
「Lvってのはどうしたら上がるんだ?」
思わず聞いてみる。以前ファミリア内のベテラン冒険者に聞いたら「お前にはまだ早い。もっと強くなってから聞くんだな」と大笑いされてそれを知ることはできなかった。
「そうですね。私はあまり実感がなかったですけど冒険を繰り返して
「試練?」
「自分が超えなきゃいけない困難やすごく強い敵を倒すことを指すみたいですよ。それを一回だけではなく何度も」
「何度も・・・具体的には分からないのか?」
「そうですね。試練の度合いにもよりますからねぇ。難度が高いほど数は少ないとは思いますが・・・」
「あれ?これって言っていいんでしたっけ?」と首をかしげるソフィアを横に空を見上げる。今挑んでいる敵では到底試練というにはほど遠い。せめて10階層よりも下に行かなければそんな機会はやってこないと思う。
そんなことを考えているとソフィアが人差し指を立てて俺の顔に近づけてきた。
「でも、無理と無茶をしたらメッ!ですよ。下の階層に行くほど危険ですし、無理をして死んでしまったら元も子もありませんからね~。私はアルが死んでしまったらすごく悲しいです」
彼女はそう微笑んで続ける。
「これは
「力と知恵・・・」
「その時になって絶対に後悔しないように、明日皆で笑っていられるように。必要な時に自分がいられるように。そう思いながら1歩ずつ歩いていくんだ。っていつも言ってます」
「力があれば、なんて後悔したことはあった。だから少しでも早く強くなろうとすることは間違いなんだろうか」
「違わないと思いますよ。でも、焦って強くなろうとしてもアビリティが全然上がらなくてさらに無理をしてしまって、それで死んでしまって・・・そんな人達が息をするようにいるのがこのダンジョンですからね。
まぁ1人で深層に潜ったり、階層主と戦う人が言うと説得力がないかもしれませんけどねぇ~、とついこの前も仕事をほうって1人深層に修業に向かい帰りの道すがらオマケとばかりに
確かにそんな人がいうと説得力が薄れていくような感じはする。
「私もLvが上がるのに3年はかかりましたし、オラリオで一番早くLvが上がった人も1年ぐらいはかかったって聞きましたから、ゆっくり強くなりましょう。って言ってもアルは納得できないと思いますからせめて一緒にいさせてくださいね。強くなりたいのは皆一緒ですから、辛いこと大変なことも皆で分け合っていきましょう」
「一緒に、か」
「私は回復魔法しか使えませんからアルみたいに1人では戦えませんけど、傷ついた人がまた戦えるように、明日また挑戦できるようにお手伝いをすることはできます。アルが怪我をしたら私が治してあげますね」
「じゃあ、そんなソフィアを俺が守ってやらないといけないな」
「はい。その時はお世話になります」
そう2人で笑いあう。
このファミリアに来た時一刻も早く強くなろうと1人で勝手にダンジョンに潜ったときは先輩たちにすごく怒られた。主神や団長をはじめ威勢がいいと笑った人もいたが、一週間ダンジョンへの冒険を禁止され傷は自分で治療しろと言われた。
長く1人でいた身としてはホームで誰かといることは慣れないことが多く(むしろダンジョンにいた方が落ち着く)、1人たそがれていたころに最初に近づいたのがソフィアだった。説教が終わった後、自分の部屋にこっそりとやってきて少しだけ傷の治療をしてくれた。どうして治しに来たのか尋ねたら、傷だらけのままじゃ可哀想ですからね~、とのんびりとした口調で答えられた。それが最初の出会い。
そこから、彼女はことあるごとに俺のところにきて色んなことを教えてくれた。街のこと、ダンジョンのこと、普段の生活のこと。散歩をしながら、ホームの中で資料を見せてくれながら。ダンジョン禁止令が解かれソロで行動することを禁止された今でもこうしてよく同伴してくれているし、騒がしくも頼もしい同僚を紹介してくれたのも彼女だ。ここにきてから世話になりっぱなしでそれではいけないと思い薬草の採取を少し手伝いもしたがそれでも恩は返しきれてはいない。「そんなに気にしなくてもいいですよ~」とは言われたがそれを言われてもだ。俺の気が済まない。彼女が危険にさらされたときは必ず守る。そのために少しでも強くなろう。
もう二度と奪わせてなるものか。
そう1人決意するとホームが見えてきた。うちはそこそこ大きいファミリアのためホームも大きかったりする。魔石灯がホームを照らしている中で喧騒が聞こえる。中ではもう晩御飯が準備されているところだろう。
警備をしている団員にただいまと挨拶を交わしホームの門をくぐった。
第一話と題名をつけておきながらまだプロローグだったりする。
もう少しつづく・・・